■EVER LASTING MOMENT
○全編昭和の薫り漂うWEBマガジン
○推奨年齢50歳以上
○無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
○小説/散文/妄想/企画 或れ此れ其れ何れなんでも有り
○誤字脱字間違い辻褄合わず各自適宜補完にてよろしく哀愁
■映画/ドラマ/スポーツなど(2024/07/18現在)
●2024年
○放送中 虎に翼(朝ドラ)伊藤沙莉
○放送中 光る君へ(大河ドラマ)吉高由里子
○放送中 新宿野戦病院 (TBS水曜22:00)
○配信中 STAR WARS アコライト(Disney+)※7/18最終話配信(全8話)
○配信中 ハウス・オブ・ザ・ドラゴン2(U-NEXT)※月曜10:00新着
○配信中 ザ・ホワイトハウス(U-NEXT)※全7シーズン
○公開中 先生の白い嘘(2024=三木康一郎)117分
○公開中 ルックバック(2024=押山清高)58分
○公開中 WALK UP(2022=ホン・サンス)97分
○06/29土〜07/26金 越路吹雪(神保町)
○07/13土〜08/09金 フランク・キャプラ(ヴェーラ)
○07/19金 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(2024=グレッグ・パーランディ)132分
○07/19金 HOW TO HAVE SEX(2023=モリー・マニング・ウォーカー)91分
○07/24水 デッドプール&ウルヴァリン(2024=ショーン・レビ)128分
◯07/26金〜08/11日 パリ五輪
○08/01水 ツイスターズ(2014=リー・アイザック・チョン)122分
○08/04日〜08/25日 八月納涼歌舞伎(京極夏彦)
○09/06金 ナミビアの砂漠(2024=山中瑶子)137分 ※河合優実
○08/09金 夏の終わりに願うこと(2023=リラ・アビレス)95分
○08/26月〜09/08日 全米オープンテニス
◯9月 ハンドボール新プロリーグ開幕
○10月 おむすび(朝ドラ)橋本環奈
○11月 プレミア12
●2025年
○01/01水 ローズパレード(京都橘3回目の出場)
○1月 べらぼう(大河ドラマ)横浜流星
○4月 あんぱん(朝ドラ)今田美桜
◯6月 サッカークラブW杯(新方式、32チーム)
○09/13土 世界陸上(東京)
●2026年
◯02/06金 ミラノ・コルティナ五輪
◯3月 WBC
○05/22金 STAR WARS新作公開
◯06/11木 サッカーW杯アメリカ/カナダ/メキシコ大会
○12/18金 STAR WARS新作公開
●2027年
○世界陸上
○ラグビーW杯オーストラリア ※20→24に増加?
○12/17金 STAR WARS新作公開
●2028年
○EURO2028イギリス/アイルランド
○07/14金 ロサンゼルス五輪
●2029年
○世界陸上
●2030年
○サッカーW杯モロッコ/ポルトガル/スペイン大会(100周年記念大会)
●2032年
○EURO2032イタリア/トルコ
■20XX
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
ゲーミングチェアの背もたれに深く躯を委ねている男の目は、かすかに開いてはいるが、どこにも焦点があっていないようだ。
デスクの下に座っている女は、男の股間に顔を埋めて、指と唇と舌で刺激を与え続けている。
男の欲棒は全く無反応。
パソコンのキーボードに触れてはいる手指もぴくりともしない。
遮光カーテンは閉めっぱなしで昼夜いずれか不明。
男の髪はボサボサ、髭は伸びっぱなし。
酒を飲み始めてどれくらいの時間が経ったのだろうか。ずいぶん飲み続けている気もするし、ほんの半刻しか経っていないような気もする。 酒を飲み、タバコを吸い、ポテトチップスをかじり、薬を酒で流し込む。そんな作業を延々と続けて、酒と薬で前後不覚、半ば我を失ったような状態になると、いつものように、どこかからか、言葉にすれば執筆意欲のようなものが、かすかに湧いて来て、女に連絡した。
部屋に来た女はいつものように一心不乱に施している。
酒と薬と寝不足なのだから勃つ筈もないし、こんな精神状態で小説のようなものが書ける筈もない。そんな冷静な判断がちゃんとできる平時の理性は、かなり以前に完全に喪失している。
ふにゃふにゃの状態であっても、ねっとりと生暖かい粘膜に覆われている感覚は、ぼんやりしながら温めのお湯にいつまでも浸かっているようで、決して不快ではない。もっとも、快と不快の境界は、ゆらゆらと揺れていて定かではない。快と感じるも不快と感じるも、いずれ、何かを感じてはいる……。
やがて、ずっとふにゃふにゃだった欲棒が、ほんの少しづつ、反応してくる。
女の尖った舌先は、そそり勃った欲棒の根本から、ゆっくり、若干の強弱を付けながら、裏筋を舐め上がり、先端部分に達して、その丸みの周縁を丹念になぞり、突先の孔から溢れ垂れる透明なエキスをちろちろと搦め取る。
欲棒が次第に硬度を増していくにつれて、それに呼応してキーボードで男の手指が、少しづつ動き始める。男の身体の周囲に漂う文学的言霊は、男に吸い寄せられ、画面に映し出される筆致が華麗に踊りはじめる。
男の股間の奥深い部分に生じた痺れるような快感は脊髄を駆け上り、頭蓋骨の内部の深奥を刺激する。その刺激は、自身が知らない言葉や一度も見聞した事がない文学的表現を、一瞬意識に表出せしめる。女は先端部分を舐めながら、竿の根本部分を握った手の上下運動の強度を上げていく。股間の奥が疼くような感覚が欲棒全体に満ちてくる。女の動きの加速に比例して、キーボードを打つ手指の動きは目にも止まらぬ速さになる。その手元を男は見ていない。ブラインドタッチなどできない筈なのに。
絶頂。精液は出ない。
男は意識を消失してぐったりと背もたれに身を預けた……。
遮光カーテンのかすかな隙間から差し込んだ光が男の目元を照らす。
目を覚ました男はプリンターからテキストを印刷する。
流麗な文章が踊るそれは自分が書いた小説には全く思えず、いつものように丸めて捨てた。パソコンのファイルも削除したが、それは、男が眠っている間に、どこかのクラウドに保存されている事を男は知らない。
女はいつの間にかいなくなっていた。
小説を書こうなんて思う男は全員、多かれ少なかれ、性的不能に近いのではないか。若い頃から常に恋人がいて、欲棒がちゃんと勃って、愉しく性交ができているなら、小説なんてものを書こうと思うだろうか。
情交場面が一切なくても、作家は誰でも充たされないなにかがあるから小説を書いている。作家本人に自覚がなくても、底の底にはきっと何かがあり、それは、多かれ少なかれ、性的不満に結びついているのではないか。
いつの頃からか、そう思って既存の小説を読んでいる。
何がきっかけでそう思い始めたのかは思い出せない。
思い返せば、大好きな女性とつきあってちゃんとした性交をする、という、普通の男なら誰でも望む人生の一大事をほとんど完遂する事なく青春は過ぎて、気がつけばこんな年齢になっている。
好きな女性を相手にした時は、そこそこ勃起しても途中で萎える事がほとんどで、ごくまれにフル勃起した時は逆にあっという間に果てた。
人呼んで、中折隊長。
またの名を、早漏番長。
好きな女性との初手はことごとく失敗に終わった記憶しかない。
全然タイプではない玄人女性が主導権を取って自分がほぼまぐろになった時だけは、ちゃんと勃って、ちゃんと持続して、ちゃんと射精に至る事が多かったが、そんな時は、その悦びよりも(こんなブスでデブな女に大枚を使ってしまったのか……)という後悔の念の方が大きかった。
後悔先に立たず、チンポがまず勃つ。
若い頃はあれだけ激烈だった性欲も、気がつけば、すっかり衰えている。毎晩寝る前にするのが当たり前だった自主トレは、一日最低一回が、二日に一回、三日に一回になり、いまは、週に二回あれば多い方で、発射の快感も若い頃に比べて激減している。全盛期の発射の快感の半分以下、溜まっている小便を長く出している時の快感や解放感とそう変わらないレベルに感じる事もある。
多分、身体はもうコレを殆ど欲してない。
雑誌「週刊プレイボーイ」の読者相談コーナーで、リリー・フランキーが「俺はいま59歳だけど、ほんの少し前までは1日2~3回オナニーしていた」と書いていたが〈ほんの少し前〉が実は30年前というネタではないか。
それでも、そっち方面への関心を一切なくしてしまえば、老いのスピードもさらに加速するような気がして、毎晩、U-NEXTでエロ動画をチェックして、好みの女性が出演していれば、たまには自主トレを試みる。自主トレをしても実践の機会は皆無なのに。
こんな文章を書いているのは、たぶん、今朝、目が覚める直前に見ていた淫夢の気分が続いているからだ。淫夢で見た破天荒な男は、女に施して貰いながら小説を書いていて、その男にシンクロしていたのか、目が覚めた時に久々に欲棒が硬く朝勃ちしていた。目が覚めた瞬間は、夢の男が書いた文章の一部をはっきり覚えていて、とんでもない男だけどこの文章はなかなか良いから覚えて置こうと思っていたのに、ベッドを出てノートを手にした時には、一文字も思い出せず、数秒前まであんなに硬くなっていた欲棒もすっかりしぼんでいた。
性欲が衰えるにつれて、淫夢はより鮮明になり、見る回数も増えた。U-NEXTのエロ動画より、淫夢の方がよほどリアルに感じて興奮する。これで淫夢の中でもっと人物にシンクロして、射精に至れれば愉しいのだろうと想像するが、そうなった事は一度もない。
体調も気分も天気も良いので、たまには普通の映画を観ようと思いたって、昼過ぎに家を出た。
自宅の室内はそうでもなかったのに、外のひなたは五月とは思えない夏のような暑さで、観光客らしき外国人の多くは半袖短パンで歩いている。寒がりで暑がりの僕は、下はジーパン、上は半袖Tシャツに薄手の上着を着て出たが、15分も歩くと汗だくになってくる。年齢なんて気にしないで、半袖短パンにすればよかった。些細な行動にも、大きな決断にも、たいてい、なにかしら後悔がつきまとう。
渋東シネタワーには2D用のスクリーンがまだ残っていて、壁のスクリーンに表示されている上映時間を見ると約60分後に「猿の惑星 キングダム」の次回がある。
視力矯正機能だけをONにしていたスマートグラスのフレームの右隅の物理スイッチ(指紋認証)に一瞬軽く触れてネットをONにして、「猿の惑星 キングダム」の上映時間が視界の中心に来るように壁のスクリーンを見ると、ARに連動したシネマアプリが自動的に起動する。僕が好む席はPA(パーソナルアシスタント)が学習済みなので、中央通路の前の列や最後列の空席が濃い目の青で点滅。この劇場は最後列からはスクリーンが遠かった記憶があるので、中央通路の前の列の真ん中あたりの席を視線で確定して瞬きで確定して購入する。スマートグラスをネットにつないでから数秒で購入終了。映画料金は500ポイント(約1000円)。OMNICポイントは文化的なモノに関しては割安感がある。
裏手のマークシティ側をぶらぶらと歩いて軽く食べられそうな店を探す。昼間からやっている居酒屋もたくさんあるが、入ればつい飲んでしまい、飲むと映画の途中で眠たくなるだろうと思って避けて、いつも利用している富士そばで冷たいかきあげそばを注文する(300ポイント)。
僕はやっとスマートグラスを視線や瞬きで操作する事に馴れてきた所だが、いまの若者(若者に限らないのかもしれないが)の主流はブレインインターフェース(脳波による操作)。スマートインナーレンズ(眼内レンズ)とこめかみのあたりに埋め込んだチップと脳神経を接続すれば(こうしたい)と思うだけで操作できるらしい。
「誤作動とかないの?」と先日HIROBAのBARで隣にいた二十代若者に訊いてみたら「時々あるけどどうってことないかなあ。グラスと違ってなくす心配もないし」と言っていたが、僕は体に埋め込んで脳に接続するのはちょっと怖い。まだ実装されて日が浅いので、本当に安全なのかどうか、しばらく様子を見てみようと思っている。
そばを食べ終えてもまだ少し時間があるのでぶらぶらと歩く。冷房が効いた店内で冷たいものを食べて、日も落ちてきたので外の暑さはあまり気にならない……と思ったが、数分歩くと、やはり蒸し暑さはある。
渋東シネタワーができたのはインターネットが世の中に普及するより随分前だ。ネットによって世の中の仕組みも日々の生活も随分変わったが、渋東シネタワーのビル自体は変わらず、その裏側のごちゃごちゃした感じも、外側から見ている限りは、3D看板が増えた以外はあまり変わらない。
初めて渋東シネタワーに来た時は映画館はどこも基本自由席で出入り自由な時代だった。「ぴあ」でチェックして観たい作品の前売券を金券屋で買って財布の中に入れて持ち歩いていた。「もののけ姫」は封切り直後は都心の映画館を何軒かまわったがどこも満員だったのでその日はあきらめて、平日に川崎の映画館の遅い回に行った。前売券(もちろん紙製)は全国共通なのでどこの映画館でも使えたのだ。「もののけ姫」は極端な例だが、そこそこの人気作品は公開直後は混むので、ロビーや階段で20〜30分次回上映を並んで待つのは普通だった。どれくらい混むのか、どの席に座れるのか、あるいは満員で座れないのか、行ってみなければ判らなかった。
「もののけ姫」が大変だったので「千と千尋の神隠し」は当日渋谷の大きな映画館に電話して混雑状況を確認してみたら「いまからお並び頂いても次の回はお座りいたけるかどうかわかりません。指定席はいまなら連席のふた席、ご用意できます」という状況だったので、1000円だか1500円だかの追加料金を支払って指定席を購入して、背もたれに白いカバーがかけられている席で観た。指定席も満席で立ち見の人もたくさんいて場内は熱気むんむんだった。
いまはスマートグラスを装着して視線でアプリを選べば、僕が観たいと思う筈の作品三作品がどーんと視界中央に新聞を広げたより更に大きな面積で表示され、視線をずらせば次の候補三作品がどーんと出る。作品を視線で選ぶと、現在位置に近い映画館の近い上映時間と空席選択画面がどーんと出るので、あっという間に確定できる。あとはスマートグラスを装着して映画館に行けば自動チェックイン。たしかに便利で確実になったが、前売券を握りしめて行っていた頃の方が、映画を観に行くという行為に様々な不確定要素があり、大袈裟に言えばちょっとした冒険をしているようなワクワク感があった。
財布の中に前売券①②③が入っていて、作品①が激混みなので同じビルに入っている作品②に変更したり、急遽時間が空いたので映画を観ようという事になって映画情報誌をチェックして作品③を観たり、なんて事が度々あった。あの頃は若かったので、いまのように人混みが苦手ではなく、どこに出かけるのも躊躇がなかったからかもしれない。
思い返せば、全席指定事前予約が当たり前になってから、OMNICシネマのような統合アプリやそれに連携するPAが登場するまでのネット黎明期が、なにかといろいろ面倒だった。
観たい作品が決まっていても、いまの統合アプリとPAのように、最善のサジェストはされないので、いくつかの映画館のホームページを開いては作品と上映時間をクリックして空席状況を調べるという作業を何度も繰り返さないといけなかった。席を選んでからも、メンバーログイン、支払い方法選択、確認事項にチェックを入れる、などなど、いくつもの行程が必要で、スムーズに予約できた場合でも数分、いろいろな条件でベストを探す場合は確定まで20〜30分かかる事もあった。
観たい作品がいくつかあって、新宿か渋谷の上映時間を調べたい、と思ったら、「ぴあ」があった時は見開きのその頁に付箋を付けておけば数秒でチェックできたが、ネット黎明期は、そもそも、新宿と渋谷の全ての映画館の全ての上映時間が一瞬で確認できる一覧ページは存在しなかった。
予約すれば確実に座れるのはいいけれど、確定までにいろいろしなければならないのが面倒で、今日は映画でも見ようと思っても、予約の確定の寸前でなとなく面倒になってやめてしまった事が何度もあった。これなら前売券と「ぴあ」を持ち歩いていた時の方が、映画館に行く、という決断が気楽にできた。そんな風に感じる事も度々あった中途半端な時代だった。
統合アプリとPAが連動してアシストしてくれるいまは、作品から選んで確定するのも、映画館がある地域から選んで確定するのも、びっくりするほど簡単になったが、僕は、映画を観にいくという行為を新鮮な冒険に感じられるように、時々、今日のように、事前に調べずに、散歩がてら映画館に行ってみて、観たい映画があればロビーで予約する、という事をする。どこかで、紙の前売券を握りしめて映画館に行ってみる、という、行ってみないとどうなるか判らない、という出たとこ勝負を追体験したい、と思っているのかもしれない。
地下にあるスクリーンは渋東シネタワーができたばかりの頃に「おもひでぽろぽろ」を観た劇場だ。以前は使えた1Fエレベーター横の階段はなくなっていて、表の歩道に面したエスカレーターで降りる。
映画「猿の惑星 キングダム」は、ほとんど全てのショットがCGを使っているのだろうが全く違和感はなかった。10年前頃までは、CGを使ったショットには、どこかCGっぽい感じがまだ少しは残っていたのが、いまや、まるで本当に存在する景色を見ているような感覚。朽ちた都会が緑に覆われた未来の世界を〈実景〉で堪能して、充分な気分転換にはなった。
映画館の大きなスクリーンで、ちょっとした非日常感を味わうのが、気分転換として、むかしもいまも、僕には一番合っている気がする。エネルギーがありあまっている若い人には、イマーシブVRシネマの方が楽しいのだろうが、いまの僕には肉体的にハードすぎる。
映画を観て、ほんの少し日常を逸脱した気分のまま、何度か利用した事がある、奥渋谷の静かなカフェでコーヒーとチーズケーキのセット(600ポイント)を頂きながら、書きかけの小説の続きを少し書いた。
■映画/ドラマの英語表現
【 conspiracy 】陰謀……超頻出。ドラマ「24」で絶対使用されていた筈。
【 get involved with〜】〜に巻き込まれる……超頻出。何かのconspiracyがあれば人物はget involved withする羽目になる。
【 custody 】拘留、監禁、親権……超頻出。ドラマ「24」で絶対使われていた筈。
【 spermicidal lube 】避妊ゼリー……「スーパーバッド童貞ウォーズ」で使用。
【 coed 】男女共学の(coeducationの略) ……「アメリカン・パイ」シリーズのどれかで使用。大学生の男性主人公が入った寮が男女共用で、バスルームに裸の女子学生がウロウロしている、というアメリカではごく一般的な状況で使われたw
■島耕作
島耕作プロフィール
生年月日 1947(昭和22)09.09(乙女座/B型)
出身地 山口県岩国市
出身校 私立鷹水学園高校
出身校 早稲田大学法学部(1970年卒業)
資格 普通自動車免許
資格 実用英語技能検定1級
身長 177㎝
父親はサラリーマン
母親は呉服商
ひとりっ子
好きな食べ物 サラミ
好きな食べ物 トリュフ
好きな食べ物 オリーブオイル
嫌いな食べ物 酸っぱいもの
ワインに詳しい
バリ島が好き
77年結婚、89年離婚(怜子)
12年再婚(島耕作65歳、大町久美子45歳)
長女 奈美(79年誕生)
孫 耕太郎(03年誕生)
※参考文献「島耕作クロニクル 連載30周年記念エディション」
●課長 STEP1 カラーに口紅
◯1回だけセックスした部下から自宅に電話がかかってくる(結婚の報告)
・課長昇進の内示を受ける
・部下の田代友紀は一見グータラ、実は仕事ができる
・カラオケスナックで男3人に絡まれて走って逃げてラブホに入る(60年代日活映画的展開)
・係長の不器用な抱き方が好き(田代の台詞)
・島の自宅(一軒家、黒電話、大きなスピーカーのステレオセット)
・田代の結婚相手は茨城の養鶏屋
・早く部長になってね!(田代の手紙)
※ヒロシ&キーボー「三年目の浮気」
*本社営業本部販売助成部宣伝課制作課係長
*課長 島耕作 第1巻(1985)
*モーニング83年3月10日号掲載
●課長 STEP2 あなたにセンチメンタル
◯新宿のデートスナックで連れ出した女性が就職面接に来る
・面接の予行練習としてデートスナックへ(カメラマン荒田の誘い)
・飲み放題3000円、連れ出し代7000円、プレイ代2時間2万円
・女性にいろいろしてもらったが勃たない(首長竜)
・昨夜連れ出した女性(桜井恵子)を面接(互いに認識)
・桜井は入社して人事部に配属
・桜井に誕生日前日に呼び出されてホテルの部屋でダンス、ネクタイを貰う
・桜井が社員購入券で安く買った大きなラジカセ(ウォークマン発売直前)
・”お父さん”へのプレゼントはネクタイと相場が決まっている(桜井の台詞)
・35歳 胸がキューンと熱い人生まん中あたり(「人生100年時代」と言われるのは約30年未来)
※シナトラ「I’m Getting Sentimental Over You」(毎回歌を絡める展開はこの回で早くも終了)
※桜井恵子は「逢いたくて、島耕作」に登場(STEP34)
*本社営業本部販売助成部宣伝課課長
*課長 島耕作 第1巻(1985)
*モーニング83年7月21日号掲載
●課長STEP3 チェインジングパートナー
◯広告賞の見返りにスワッピングをした相手は妻の友人だった
・福田部長から博通広告賞をなんとかするように強く言われる
・博通広告賞の審査委員長・中西に夫婦スワッピングを持ちかけられる
・北海道で30時間のフリータイム、魅力に抗えずに抱いてしまう
・中西の妻は島の妻の大学時代の友人(島の結婚式に出席)
・函館山の山頂で傘を飛ばす(男なんて大っ嫌い)
※福田の株は50円高(株に例えるのは今回だけ?)
※中西の利点がよく判らない(中西の相手は既にねんごろになった小料理屋の女将)
※一般的には「チェンジ」と表記するが英語の発音に忠実に「チェインジ」と表記
*本社営業本部販売助成部宣伝課課長
*課長 島耕作 第1巻(1985)
*モーニング・マグナム増刊84年4月12日号掲載
■ガンダム50音かるた
あ あえていおう カスであると ギレン吠え
あ アクシズで 再興計る ネオ・ジオン
あ 憧れの なんでも知って そうな女性(ひと)
あ あなたなら できるとセイラに おだてられ
あ 脚なんて 飾りと言われて シャア不満
あ 脚なんて 飾りと言うのは 気にいらん
あ あの人に 僕は勝ちたいと 拳あげ(字余り)
あ あの人は わたしたちとは ちがうのよ
あ アムロとの 違い認めて 恋終わり
う 美しい ものが嫌いな 人がいて?
う うろたえるな これは地球の 雷だ(字余り)
え エネルギー ゲインが5倍 以上ある
え エルランが スパイだったね テレビ版
お 親父にも 一度もぶたれた 事がない
お オデッサの 激闘のさなか マチルダ散り(字余り)
お 鬼子です 言い切るセイラの 目に涙
■U-NEXT見放題
○俺の素人Z かんなちゃん(2023年7月)
・角度によってはやせた長澤まさみ
・下着越しの素股体験がエスカレートしてという展開
○マジ軟派、初撮り。1765(2022年3月)
・アイドル風、声かわいい
・カラオケボックスでデートな雰囲気(このシーンもっと長くても良かった)
○初撮り 清純派美少女 マカロンも手作り(2022年2月)
・小動物系ファニーフェイス
・明るすぎないライティング(ノーライトのようにも見える)
○マジ軟派、初撮り。1702 看護師1年目のお姉さん(2021年10月)
・冒頭インタビュー角度によっては加藤多佳子、清純系アナウンサー風
・ASMR録りませんかナンパは初めて見るパターン
○マジ軟派、初撮り。1611 下着メーカー(2021年3月)
・冒頭インタビュー角度によってはかわいらしいお嬢さん風
・白レースのガーターとストッキングを付けたまま合体
■杜丘聡未の話
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
朝からずっと晴れていたのに夕方になって急に激しい雷雨になって、昼過ぎに遊びに来ていた聡美と桐子と弓佳がみんな泊まっていくという展開をひそかに期待するもそれはかなわず、雨が弱まると、桐子は弓佳は「明日朝からバイトだし」とそそくさと帰ってしまったが、聡美は「私は明日なんにもないから、もう少しいるね」と残ってくれた。
この部屋で聡美とふたりっきりという状況は初めてではないが、さっきまでの豪雨の興奮がどこかに残っていて、エコアンを付けていても若干の蒸し暑さも感じられ、その興奮と熱気が僕の内心のドキドキと混乱に拍車をかけているようだった。
「あれって吉川晃司?」
カーテンレールの上にジャケット面を見せて飾ってあるレコードを手に取ろうとしてベッドの上に立った聡未が、バランスを崩して倒れ込んで行くのがスローモーションのように見える。
時間にすれば一秒もない筈の時間がとても長く感じられる。
(これは聡未がきっかけを作ってくれているんだ。桐子と弓佳が帰る時に聡未も一緒に帰っても良かった筈なのに、そうしなかったのは、部屋でふたりっきりになる状況をあえて選んでいるのだから、多分チャンスは多いにある)という声が、どこからか、お告げのように脳内に響く。
僕はお告げの声に導かれるように、半ば無意識で、自分もバランスを崩したふりで、
「あぶない、あぶない」
と言いながら聡未の上に倒れ込んだ。
上半身と上半身が触れ合う。
手も握った事がないのに。
聡未は「え、ちょっと」と体をひねって僕に背を向けて腕を胸の前でクロスさせる。
僕は半ば強引に聡未の首の下に左腕をこじいれて体を密着させて後ろからぎゅっと抱きしめる。
僕の胸と聡未の背中、僕の下腹部と聡未の臀部が密着する。
「ちょっと待って、ほんとにちょっと待って」と聡未は体を離そうとするが、
「ちょっとだけ」と腕に力を込めて離さない。
「いいから、一回離れて」
聡未は体をひねって離れようとするが、力を込めて、そうはさせない。
「誰にも言わないから……」
聡未の耳元で囁くように言うと、聡未のこわばっている身体がほんの少し脱力する。
「誰にも言わないから、なに?」
「ちょっとだけ……」
「ダメ」
「じゃあ、せめて、このまま、あとちょっとだけ」
「ダメだってば」
「あと一分だけ」
「ながい」
「三十秒」
「まだ、ながい」
「じゃあ十秒」
「十秒だよ?」
(聡未が本当に心底嫌がっているなら、この状態でさえ無理な筈。あせらず、じっくり、行ける所まで行ってみよう)という声が、再び裡から響く。二十歳の素人童貞の僕の無意識が囁く声にしては妙に的確で落ち着き払って達観しているような声。この声に従って行動すればうまくいきそうな気がする。
(髪の毛をかきあげて……そう……そのあたりから……そっと……軽く触れる程度で……)
裡なる声に身を委ねると、僕の右手は、自然なしなやかな動きで聡未の項のあたりの髪の毛をゆっくりあきあげて、僕は生え際あたりに、軽く、そっと唇で触れる。
聡未は肩をすくめてビクッとする。
「……十秒経った」
「……女の子と、こういう事、した事ないから」
「うそ」
「ホントだよ……だから、びびってプルプル震えてるし……」
「……」
「だから、ちょっとだけ、教えて」
本当は風俗には行った事はあるし、そんなに好きでもない女の子を相手になら、やったも同然的な経験はあったが、好きな女の子・憧れている女の子とこういう事態になるのは初めてで、実際に僕の全身は武者震いで震えていて、心臓は胸郭を突き破る勢いでバクバクしている。
「だって……彼氏いるし……」
「サークルのみんなにも、誰にも、絶対言わないから」
「……でも……裕典に悪いし……」
(そうそう、彼氏の名前は〈小湊裕典〉だった。結婚披露宴に出席したのにすっかり忘れてた)
僕の裡なる謎の声がまた訳の判らない事を言っているが、言われてみれば、聡未の彼氏、数年後には夫になる男の名前は小湊裕典だったような気がしてきた。結婚披露宴で聡未の横に立っている男の
映像が、知っている記憶のように脳裏にフラッシュする。いまのは一体なんだ? いまの男が聡未の夫(この時点では彼氏)とまるで僕が知っているような……。
僕は妙な幻覚と感覚に気を取られて無意識に聡未を抱きしめる腕の力を緩めたが、聡未は身体が密着しているこの状態を、仕方なくしばらく受け入れるかのように、静かに息を吐いて、
「……大阪勤務になったって話、誰かから聞いてる?」
「2コ上だからこの春から社会人……だっけ?」
「最初の3ヵ月はこっちで研修で、毎週会えてたのが、7月から大阪で、月イチになっちゃって」
「月イチはちょっと寂しい?」
「……私、もともと、あんまり、あっち方面はあんまり興味なかったんだけど」
話が急に跳んだ。
「あっち方面ってのはこっち方面?」
聡未を抱えている右手を下腹部の方にスライドさせていくと、
「私って不感症なのかなあって思ったりもして……」
聡未が僕の右手をつかんで引っ張り上げるので、今度はその動きに便乗して、さり気なく聡未のバストのあたりに触れる位置まで移動させると、聡未はほんの少し僕の腕を下げる。それでも僕の右手はかすかに聡未のバストのふくらみを感じられる位置にいる。
「他の男としてみたら気持ちよかった、っていう話?」
「ううん。そもそも、そこまで興味なかったって言うか、雑誌に載っているような凄い快感とかホントかなあって思ってて……あと、これはホントに絶対内緒だけど、桐子は、毎回、結構凄いって……」
ついさっきまで僕の部屋に一緒にいた桐子、聡未と僕は、大学のサークルの同学年。全員同じ沿線の近所の駅に住んでいるので、ふたりとも、何度も僕の部屋に遊びに来た事がある。
「毎回凄い感じるって事?」
「絶対絶対内緒だよ……失神するほど感じるんだって、桐子」
「失神?」
「ずーっと、されると、勝手に腰が浮いて、なんか奥の方がひくひくして、変な声が出て、潮吹きって言うんだっけ? ぴゅーっとなんか出るんだって」
「されるってのは、つまり、彼氏のが挿入ってて……」
「ううん、その前の……あの……」
「あれ、聡未って、そういう言葉、言えない人だっけ?」
「言えなくはないけど」
「じゃあ、言ってみて」
「だから、男の子が女の子に、口でするやつよ」
「ああ、クンニね」
「それよ」
「言ってみて」
「何?」
「クンニって」
「やだ」
「どうして」
「なんか、やだ」
「言えないんだ」
「別に言おうと思えば言えるけど、亜蘭くんには、聞かれたくない」
「……クンニされると、そんなに凄いんだ、桐子」
「こないだ遂に失神しちゃったって……ホントにそんな事あるのかなあ」
「聡未は失神した事ないの?」
「私は失神した事はないけど……こないだ、裕典と久々にした時、いつもは、私、舐めて貰ってもそんなに感じないのに……なんか、桐子が言ってた事思い出して、初めて結構感じた気がして……あれ、私、亜蘭くんになんでこんな話してるんだろ……」
「結構感じた気がして……どうなったの?」
聡未の耳元に唇を寄せて囁くように訊く。
「裕典に……もっとしてって……初めて言ったの」
「もっとしてくれた?」
あえて耳元から唇を離して普通の口調で訊いてみる。
「うん……なんていうか……こういう事だったんだって初めて判って、その時は、とっても嬉しかったんだけど」
「けど?」
「なんか違ったような気がして、冷静に振り返ると」
「違ったって言うと……」
「あーほんと恥ずかしい。私、亜蘭くんの部屋で、こんなにくっついて、なに話してるの……ねえ、私と亜蘭くんって、さっきまで、割と仲良しの、単なるサークルの仲間だったよね?」
「僕はできれば聡未とこんな事をしたいって、ずっと思ってたけどね」
「うそ。いつから?」
「初めて聡未に会った時から」
「うそばっかり」
「……大丈夫」
「何が大丈夫?」
「誰にも内緒にするし、聡未から言われない限り、これっきりにして、人生の想い出にして、墓まで持っていくから」
「みんなにそんな事言ってるんでしょ。結構言われてるよ、亜蘭はみんなにいい顔してるって」
「そんな事ないよ。かわいい子だけだよ。こうやって優しくするのは……。ブスな女は、ひとつふたつ張り倒して、さっさと脱げよって」
「うそっぽーい」
「うそに決まってる。ホントに経験ないし」
「それもうそっぽいなあ」
「聡未にかっこつけても……」
「かっこつけても?」
「もし、いまから、もっと先に進んだら、どうせバレる」
「……進みたい?」
「進みたい。でも、さっきの話の続きも気になる」
「続き?」
「裕典くんの話……なんか言いかけてたよね……せっかく私が目覚めてきたのに、会えるのが月イチで体が疼いて困っちゃう、って話だけじゃないような」
「まあ、現実問題、21歳女子のカラダは月イチじゃ疼いちゃうんだけどね」
「いまこの瞬間もちょっとは疼いてる?」
「……確かめたい?」
「確かめていい?」
「ちょっと待って。せっかくだから、この際、全部言わせて」
「うん」
「……先月は、無我夢中だったんで、あんまり判んなかったんだけど」「裕典くんの話の続き?」
聡未はうなずいて、
「先週も、やっぱり、凄い気持ち良かった……凄い気持ち良かったけど」
「何かが違った?」
「大阪行っちゃってから、違うの、こないだはっきりそう感じた……前は、もっと、全然、なんていうか、雑な感じだった」
「それって、つまり、テクニック的な?」
「そう、前は、もっと、単調で、まあ、私があんまり感じてなかったせいもあるんだろうけど、ただただ舐めてるだけって感じだった」
「テクニックが上達して、感じるようになったとして、何が問題?」
「……そんなに急にうまくなる? 二年くらいずっとおんなじ感じだったのに」
「いや、それを経験のない僕に訊かれても……でも、ほら、二年間毎週だったから、どっかマンネリになっていたのが、月イチになって、新たな気持で、とか……」
「勝手に香水も変えてたりして」
「勝手に変えちゃダメなもんなの?」
「聡未が好きなのにするよ、って、一緒に選んだのに」
「それは、その、社会人になると、いろいろ、あるんじゃないの?……って、なんで、僕が彼氏を弁護する側?」
「……向こうに、いるんだよ、誰か」
「浮気してるって事?」
「最低月に1回は会おうって言ってたのに、来月は仕事が忙しいからムリかも、って言われた」
「社会人一年目だし、実際、忙しいんじゃないの?」
「眠れない時とか、光景が浮かぶんだ……私より断然大人っぽい大人の女性って感じの人が、裕典としてるのよ……その女が、もっと舌をとがらせて、とか、丁寧にゆっくり、じっくり、とか言うと、裕典はちゃんとその通りにするの……そうそう、それくらいてちゃんとできないと彼女にも逃げられちゃうわよ、なんて、その女が言って、裕典は言う通りにして……もうなんか悔しくって全然眠れなくなっちゃって……」
「……それって全部、聡未の妄想だよね?」
「すごいリアルに浮かぶんだもん」
「この際、裕典くんにはっきり訊いてみるとか?」
「訊いてもどうせホントの事なんて言わないでしょ」
「そういうAVとか見て研究しただけって可能性もあるし」
「こんなの妄想なんだからってどれだけ思っても、ありありと浮かんできて、裕典の声も相手の声も、まるで、すぐ隣でしてるみたいに聞こえてくるし……」
「すぐ隣?」
「耳、塞いでも聴こえてくるから、だんだん、変な感じになってくるし」
「変な感じ?」
「……昨日もそうだったんだけど……触ってみたら、すごい事になっててた……せっかく感じるようになってきたのに、裕典は大阪だし、他の女とやってるかもしれないし……そういう私も、亜蘭くんとこんな風にくっついて、桐子にも言ってない話をなぜか話したりしちゃってるし……裕典が浮気してるなら、私もやっちゃうからね、って、ちょっと思ってたりもするし……ねえ亜蘭くん、いま、もっと先に進みたいってホントに思ってる? もしそうなっても、絶対の絶対の絶対に誰にも内緒にできる?」
僕はあまりの急展開に戸惑っていた。もちろん、僕の男性の本能は、できれば、聡未と関係を深めたいと思っているのだが、その一方で、十代後半の自意識過剰で女性とまともに話す事もうまくできず、この歳になる今年まで素人童貞な僕が、百戦錬磨の聡未に挑んでちゃんと上手にできるだろうか?
そもそも聡未はどこまで許してくれるつもりなのか。まさか本当の本当にそうなるとは思わずに、裡なる声に導かれて口説いているような言葉を発していたが、いざ本当に行動を求められると全身がすくんでしまう。
それよりも、この先に進むかどうかの判断はいったん保留して、こうやって聡未を背後から抱きしめて、聡未に触れているこの状態が永遠に続いて欲しいような気もする。彼氏の相談に親身に乗っているフリをしているのも、そうすれば、こうやって聡未に触れていられる状態を続けていられるからだ。
僕の中で時の流れが止まり、僕は聡未に触れて、聡未の体温を感じて、そのまま眠ってしまいそうな気持ちで、判断保留の暖かな繭にくるまれていた。
……そんな刹那で永遠の平衡状態は(ここは何をおいてもGO)という強烈な内なる声の指令に瞬時に破られた。
僕は、ふたたび、何かに操られるように、聡未の頬にキスをして、顔をこちらに向かせて、頬に触れた唇を、そうするのが当たり前のような動きで少しづつ移動させて聡未の唇に到達させる。
聡未は顔をそむけようとするが、100%の全力でこの状況から逃れようとする抵抗ではなく「抵抗のポーズ」のように感じられる。
(多分、抵抗したけど強引に迫られたから少しだけ許した、という自分への言い訳が欲しいと思っているだけ、ここは少し強引に行ってみよう)
一瞬触れてすぐに離した唇をもう一度、今度はしっかりと、唇を捉えるようなキスをする。しっかり硬く閉じられている聡未の唇は、ほんの少しづつ、脱力してソフトな感触に変わっていく。その変化に呼応するように、急ぎすぎず、じっくり、少しづつ力加減と角度を変えながら、唇の密着度を高めていく。
永遠に続く刹那。
実際に経過している時間が数秒なのか数分なのか自分ではよく判らない。こうやって自分の体を動かしている根源的な何かは、僕が僕と認識している自分なのか、さっきから頭の中で響いている裡なる声の持ち主なのか、悠久の刻を超えて受け継がれている遺伝子に刻まれた本能なのか、それともそのどれもが混ざりあったような何かなのか。
自分の意思が曖昧に溶けてどこかに拡散するような感覚に身を委ねつつ、僕の唇は、自然な動きで聡未を緩やかにほぐしていくようだ。僕の舌先は、わずかに開かれた聡未の唇の間にそろそろと侵入して、その先端に聡未の舌先をかすかに認める。怯える小動物のように震えながら触れていた僕の舌は、やがて大胆に聡未の舌と絡み合い、聡未の口の中に侵入する。聡未の鼻から吐き出される熱い呼気を感じながら、僕の舌先は聡未の舌、唇、唇の裏側、歯茎を、丹念に大胆に刺激する。
彼氏以外の男性にこんな風に後ろから包まれるようにぴったり密着されて、その温もりはただそれだけで心地好く、こんな心地よさを与えてくれるお返しに、もし私の体を求めているなら、もちろん裕典には内緒で、少しは応えてあげたい、という気持ちはゼロではない。生理的に手も握りたくない、近い距離で顔を見て話もしたくないような人なら、ひとり暮らしの男の子の部屋でふたりっきりになる状況を自ら作ったりしない。
亜蘭くんの部屋に入った瞬間から、もし亜蘭くんに迫られたらどうしよう、という期待が全くなかったと言えばウソになる。裕典が浮気するなら私だってしてやるんだから。私だってその気になれば浮気なんて簡単にできるんだから。
先週の裕典とのセックスからずっともやもやが続いている。
裕典のクンニが上達してセックスで感じるようになったのは本当は喜ぶべき話なのになぜ?
月に一回しか会えないから?
私が平日のバイトを増やして私が会いに行けば会う回数を増やす事はできる。
でも裕典は月1で充分って思っているように見える。
大阪に他の女がいるから?
本当にいる?
それとも全部私の妄想?
でも、私も、何が何でももっと裕典に会いたいとそこまで思ってないかも。なぜ?
はっきりプロポーズされてないから?
結婚するなら裕典しかいないと私の心がはっきり決まっているわけでないから?
考えれば考えるほどだんだん判らなくなってくる。
結婚して子供を産むのなら若い方がいいってなんとなく思っていた。大学一年の夏から裕典とつきあい始めて、去年の夏には、このまま裕典と結婚するんだろうなあって思っていた。裕典が大阪に行って、毎日のように会っていたのが月1になって最初の数週間はすごく寂しかったけど、その分、サークルの人と遊ぶ時間が増えてきて「意外と寂しくないかも」って思い始めた。裕典もつきあい始めの頃はすごく私に気を使ってくれていたけど、去年の夏あたりから、だんだんそうでもなくなってきて、私が料理を作っても、早めに行って洗濯しても、いずれ結婚するんだから当たり前みたいな空気感になってきた。そんな感じが嫌で嫌で仕方がないわけではなく、裕典と結婚して裕典の子供を産んで若いお母さんとして専業主婦になるのも悪くないって思っていて、いまでもその気持ちはあるんだけど、それが当然っていう空気感を出されると、絶対そうなるって決まってるわけじゃないから、まだ正式に約束している訳でもないし、って思ってしまう。
大学のサークルには多分私に好意を持ってるんだろうなあ、っていう男の子が何人もいるけど、その中で、ちょっとからかいたくなる感じがあるのは亜蘭くん。他の人は、例えば、店から店に移動する時にふたりで並んで歩いてる時とか、何かのタイミングでふたりっきりになった時とか、なんていうか、スキあらばっていう感じで私を見ているのがグイグイ伝わってくる感じ。今までの彼氏にもつきあう前はそういう感じがあって、私のようにかわいくてスタイルも悪くない女の子を相手にそうなるのは、男の子として当然なんだろうけど、別にこっちが好きではない相手から、急に距離を詰められたりすると、嬉しい気持ちが全然ないわけでもないけど、気持ち悪いっていう方が全然勝ってしまう。
亜蘭くんはなんだか掴みどころがない。
私だけじゃなく、桐子や弓佳とも何度もデートしてるのに、ふたりがウソを言っているとは思えないので、誰に対してもぐっと距離を詰めてきてない。ちょっとおしゃれで清潔感があって、ひょっとして男が好きなのかな、なんて思ったりもして。
桐子と弓佳が帰る時に「私も帰る」って言わなかったのも、ベッドの上でよろけたふりをして転んだのも、もし私がチャンスを作ったら、亜蘭くんは距離を詰めてくるのかな、ってどこかで思ってたからかもしれない。でも実際にこんなに急に距離を詰められると迷う。ちょっとくらいの浮気なんて誰でもしてる。むしろ女子の方が徹底的に隠し通すから浮気している率は高いかも。でも、もし、亜蘭くんが本気で私の事を好きだったら?
ああ、もう、考えるのが面倒だけど、いろいろ浮かんでくるのを止められない。絶対内緒にする、って言ってるから、少しくらいならいい?そもそもこの状況だって既に浮気といえば浮気だし。亜蘭くんを相手に練習して、今度会ってする時に、私のフェラがいきなり上達していたら裕典はどう思うだろう? やっぱり浮気を疑うかな?
大阪に行ってから急にクンニがうまくなった、と思っても私は裕典に何も訊けないように、もしそうなっても、裕典も私に何も訊けないような気もする。結婚して今後何十年も一緒に過ごすのなら、こういう事も含めて何でも正直に言い合える関係じゃないとダメ? それとも、何十年も一緒にいるなら、逆に、どこかにお互いにこういう隠し事がそれなりにあるのが当たり前?
もし裕典が浮気していて、いまから私が亜蘭くんと浮気をしても、ほんの数回の遊びで終わって、お互いにその事に触れずに結婚して、お互いに性欲も枯れるまで夫婦を続けたら、そんなのはどっちでもよくなっちゃうのかなあ。それともその事が気になって結婚しなくなる?
もし裕典が浮気をしていたとして「他に好きな女ができたから別れてくれ」と言われるのと、お互い何も触れずに、なかった事のようにして、結婚するのとどっちがいいだろう?
判らない。
浮気されていたら嫌だ、という気持ち。
浮気されていても、死ぬまで秘密にして欲しい、という気持ち。
どっちも本当に思える。
そもそも、自分の本当の気持ちなんて、そんなにはっきり白黒つけられるものじゃない。
常に揺れている。いまも揺れている。
裕典は三人目の彼氏。
最初の彼、二人目の彼、裕典。
全部最後と最初の数週間はダブってる。
最初の彼にも二人目の彼にも「会ってお茶しただけだよ。会うのもダメなの?」みたいな嘘を言ってた。別れる時に本当の事を言おうかとも思ったけど、言わないのが優しさだと思って言わなかった。それが正解かどうかんなて判らない。
いま、こうしていて、過去も未来も人間関係も一切合切無視できるなら、亜蘭くんが本当に強烈に私を求めているのなら、ある程度は、応えてあげたい、して欲しいと思っている自分がいる。
ある程度ってどこまで?
クンニされて感じるのは、好きな人にして貰ってるからなのか、それともテクニックの問題なのか、確かめたい?
高校の時の最初の彼とはセックスしなかった。
少しだけ触られて、手で射精させてあげただけ。
二人目の彼とは数回セックスしたけど、毎回あっというまに射精してしまったので殆ど快感もなく、セックスってこんな程度なのかな、と思った。何度も求められて少しだけフェラをしてあげたけど、させられている嫌悪感が勝っていた。何度も求められたけどクンニは許さなかった。あの頃の私は、高校生がセックスをする事に妙な罪悪感を感じていた。子供の頃に通っていた日曜学校、キリスト教の教えがどこかに残っていたからかもしれない。
この歳になってもオナニーする事にためらいがあるのはそのせい?
もっともっと自分から貪欲に快感を求めていけば、桐子のように、凄い気持ちよくなれるのかな。本当に桐子はしょっちゅう失神するほど気持ちよくなってるのかな。
亜蘭くんになら「ここをこうして」って言える気がする。
亜蘭くんになら「どういう風にして欲しい?」って訊ける気がする。
どうして裕典には、言えなくて、訊けないのか?
遊んでいる、って思われたくないから?
裕典には「寸前までの経験はあるけど最後まではしなかった」ってウソをついて、最初にした時に痛みがある演技をした。どうしてあんなウソをついたんだっけ。
いっさいウソをつかないカップルなんているのかな。
これって亜蘭くんの香水の匂い? なんかいい匂い。
人生で一回くらい、何も考えずに流れに身をまかせる事があってもいいかも。「絶対にムリ」って抵抗して、絶交される覚悟でこの部屋を出ていかない限り、いまから何分後には、亜蘭くんにクンニされて、その後で亜蘭くんにフェラしているかもしれない。
どうしよう。どうなるの。
私は本当はどうしたいの?
僕の舌と聡未の舌が触れ合って挑み合って絡み合って、僕の意識は、全方向から聡未に侵食される。数秒か数十秒か数分か判断できない、加速と停滞が渦巻く、切り取られた刻の隙間で、聡未の意識そのものような奔流に飲み込まれている。この渦巻く意識、過去を振り返って裕典の事を考えつつ、いまこの瞬間に〈僕〉との行為を続けるべきかやめるべきか激しく迷っているこの意識は、いまこの瞬間の聡未の意識そのものなのか、それとも、僕が想像している聡未の意識なのか。
そもそも、いま、僕が〈僕の意識〉と思っているのは、本当に僕の意識なのか?
僕の意識と僕の裡なる声と聡未の意識が渦巻いて溶け合って、過去といまと未来が重なりあい、全てが混沌としていく世界の片隅で、それでも、触れ合っている聡未の肉体の感触、ゆるゆると蠢く聡未の舌の感触だけはリアルだと信じて、何もかも委ね続ける。
聡未が僕の舌を強く吸うと、聡未の臀部に密着している僕の欲棒は大きく反応して向きと硬さを変えた。チノパンとスカートの布地越しに僕の欲棒の変化を認識していったんブレーキを踏んだのか、聡未のキスの動きが緩慢になり、僕は、今日はここまででも充分と感じつつも、チノパンに擦れて痛い程に屹立してしまった欲棒は強烈に更なる進展を望んでいる。
(ここは撤退戦も考えつつ、ゆっくり前進してみよう)
裡なる声に導かれた僕の唇と舌は、若干動きを緩めつつも聡未の唇を捉え続け、僕の右手は、まるで僕の右手ではないかのように動き、熟練の職工のような無駄のない動きで、聡未のカーディガンのボタンを下からゆっくり外していく。聡未の逡巡と僕の逡巡は小さな空間にみっしりと詰まって睨みあっている。カーディガンのボタンを外し終えた僕の右手がブラウスの一番上のボタンを外すと、聡未は僕のキスを逃れようとする動きを一瞬見せるが、僕の舌が、もう一度最初からやり直すようにゆっくり侵入すると、聡未の舌は再びおずおずと蠢く。ブラウスのボタンを外して前を開き、僕の右手がブラジャー越しにバストを包み込むように触れ、その頂点部分あたりを指でつまむようにして軽く振動を与えると、聡未は眉をひそめて、聡未の逡巡が空間を駆け巡って激しく踊っているのがはっきりと感じられる。
(逡巡しているが拒絶ではない。もう少し行ってみよう)
僕の右手はしなやかな動きで聡未の背中のブラのホックを外す。
聡未のむきだしの胸に直に触れて、包み込んで揉み上げるように愛撫する。細身の体型のわりには意外と大きめに感じられる、かすかに汗ばんだ聡未の左の乳房は、何度か揉みしだくうちに次第にしっとりと手に馴染んで来る。先端部分に指で軽くつまみ、親指の腹で擦り上げるように刺激すると、その部分が次第に硬く隆起してきて、聡未の鼻から再び熱い吐息が漏れて、ずっと聡未の唇に触れ合っている僕の口元を熱くする。
聡未の唇から首筋へ舌を這わせ、その間も、指先で乳首への刺激を続け、本当に拒絶するのなら、最初の関門になりそうな、乳首へのキスを試みる。聡未の乳首の先端に舌先で軽く触れる。体をひねろうとする聡未の肩を、首の後ろからまわした左手でぐっと抑える。ゆっくり形状を確かめるように舌先で乳首をなぞる度に聡未は身をよじろうとするが、本気で嫌がっている抵抗には感じられない。
セミロングのスカートの裾に手をかけてゆっくりめくりあげようとする僕の右手を聡未の左手が押し留めようとするが、僕の手首に爪がめり込むほど強く握っているわけはなく、僕の右手の動きに全力で反発している動きにも感じられない。僕は聡未の左手を大きく上に持ち上げて、首の後ろをまわしていた自分の左手で抑えて片手だけバンザイをさせているような形に固定して、淡いピンクのショーツが見えるまでスカートをまくりあげる。もう片方の乳首を舌で愛撫しつつ、ショーツの三角の部分の頂点あたりに指先でそっと触れる。コットンのショーツ越しに、その柔らかい部分がかすかに湿り気を帯びているのが判る。そのままゆっくり指先をなで上げてクリトリスを探るが、さすがにそこそこ厚みがありそうなコットンのショーツ越しには明確には判らず、見当をつけた辺りで軽い振動刺激を与えると、聡未は小さな声を漏らして「ホントにちょっと待って」と半身を起こしてた。
「ねえ亜蘭くん、正直に言うけど、私、どこまでできるか、自分でも判らない。私が、ホントのホントにイヤって言ったら、今日は、そこでやめてくれる?」
「わかった」
「そのかわり、亜蘭くんが、すごい事になっちゃったら、最低限の事はしてあげるから」
僕は「してあげる」という聡未の言葉に目がくらみそうになるほど興奮していたが、それを極力隠すように務めて頷くと、天井の電気を消して、ジーパンを脱いだ。
僕の心臓は破裂しそうな勢いで脈打っている。
ゆっくり聡美のショーツを脱がせる。
聡美は両手で顔を覆って無言。
脚を開かせて、顔を近づけて行くと、聡未は手でその部分を覆って脚を伸ばそうとする。右脚はそのまま伸ばさせて、左脚の膝の裏を押してぐいっと開かせて、その部分を間近に見る。聡未の指の合間から顔を出している細い柔らかい陰毛に鼻先で触れて、唇を寄せて指の間に舌を差し入れて見当をつけて、一瞬、舌先で触れる。
その部分を隠す聡未の手をゆっくり移動させてると、ベッドの足元にあるテレビの光に照らされた女性器が妖しく煌めき、かすかにどこか懐かしいような匂いがする。左脚の付け根の窪みに唇をつけて、最初はかすかに、次第に強く下で凹みをなぞる。まっすぐに伸びていた右脚の先が少しづつ外側を向き始め、固く閉じられていた扉が、仄かな雫をともなって緩み始める。
聡美の手は僕のおでこの辺りを押しているが、そのまま、扉の突端にある、一番敏感な筈の場所にむけて、周辺をなぞりながら、ゆっくり、舌先を進めていく。
その寸前で一度動きを止めて、その部分に、ふーっと息をふきかけると、聡美の口から堪えきれないような「っあっ」というかすかな声が漏れる。
その部分の周辺を、多少の強弱をつけながら、ゆっくり、じっくり、丹念に舌先でなぞるようにするうちに、僕のおでこを押す手の抵抗はだんだん弱まってくる。恥毛が茂っている部分を親指で軽く引っ張り上げるようにして、その部分を少し露出させて、舌先のそっと触れる。
「……いやっ……っんっ……っあっ」
「いや」という言葉はあったが「ホントにホントにイヤ」とは言っていないので、僕は、半ば冷静に、半ば夢中で、その部分を舌と唇に嬲り続ける。
言葉に出して何も言ってないのに、私がして欲しいと思っている動きを亜蘭くんがしてくれるのはどういう事?
触れるか触れないかのような、じらすような舌先の動きでさんざん焦らされて、無意識に声が出てしまう。極力小さな大きさで出したつもりだった私の声は、思いの外、大きな音だったように聴こえた気がした。私の耳がそう感じているだけ?
唇ではさんで少し吸い込むようにされるとクリトリスが充溢していく感覚があり、多分かなり剥かれて露出してしまっているその部分に、亜蘭くんの舌先が、ちろちろと、ゆっくり、時折リズムを変えて刺激を与えてくると、抑えようとしても自然に短い声が出てしまう。
スイッチが入っちゃった、と思った瞬間、亜蘭くんの舌の動きが急に強く速くなり、それが永く永く続いて、こないだ、裕典にこれに近い舐め方をされた時、もっとこれを続けて、って思ったけど、口には出せなくて、それでも、それまでの裕典のクンニに比べたら相当気持ち良かったけど、これをもっと強くもっと早く、ずっと続けられたらすごく気持ちよくなれたかもっていう舐められ方。
だめ。これを続けられたら変になっちゃう。
でも。続けて欲しい。
腰の奥がじんじんしてくる。その舐め方。
そう。円を描くような舌先の動き。
だめ。やだ。もっと。だめ。
ほんとにだめって思う頃に強めに吸われる。
それを続けて、それを続けて、それを続けて。
もっともっともっと、そうそうそう。
舐めて、吸って、舌先で、強く。
気持ちいい。腰が勝手に震えてくる。気持ちいい。
奥の方からなんか溢れてくる。気持ちいい。
変になっちゃう。変になっちゃう。なんか出そう。
いきそう?
いくってこれ?
桐子が言ってたのってこれ?
なんか出そう。もうだめ。奥が。中が。
裕典。亜蘭くん。桐子。ああ。あああ。
………………。………………。………………。
経験ない、みたいな事言って。
亜嵐は相当なうそつきだ。
面倒だから呼び捨てで呼んでやる。
でも男と女のこういう時はうそついてナンボなのかな。
秘め事。
こうなったからって別に亜蘭とつきあいたいとは思わない。
だから逆にさらけ出せる?
どう思われたっていいってどこかで思ってた?
そうかもしれない。
こんなに恥ずかしい声、裕典にも聞かれた事がない声を聞かれた。
やだ。絶対、ホントに、内緒だよ。
仕返ししてやる。
亜蘭もひーひー言わせてやる。
そうだ。口と手でいかせる事に挑戦してみよう。
いつも途中で疲れてやめちゃうけど今日は続けてみる。
私だけこんなにさらけ出した。ずるい。
ひーひー言っても続けて射精させて挿れさせない。
挿れさせなければ一応「やってない」と言える。
でももしすっごい勃ってたらちょっと挿れてみたくなるかな。
とにかく今度は私の番。
もうちょっとこの腰の奥の震えが収まったら。
聡未の感じる筈の部分をひたすら舐め続けている時に、再び、自分が消えるような感覚に襲われた。正しい場所を正しいやり方で舐めているのか、もっと下の挿入するべき部分も舐めた方がいいのか。裡なる声と侵食してくる聡未の意識のようなものは、僕が普段当たり前に持っている制御力、僕の体を僕の意思で動かす力に干渉して、僕の唇と舌は、僕のそれではないような動きを続ける。同時にその動きはまぎれもなく僕の動きであるという妙な確信もある。憧れていた女の子にする人生初の行為による興奮からか、まさに僕は我を忘れるように没頭する。ディープキスの時に感じた喪失感と充実感の同居。時間感覚の消失。そもそも時間ってなんだろう。舌のつけねにかすかな疲れを感じた時に、聡未の腰が浮いて何度か痙攣するように震え、僕は聡未の絶頂感を我が事のように体感した。
ディープキスをしている最中に始まった非現実感、リアルな夢を見ているような気分は、聡未の身体と性的に関わる進行度合いによってどんどん強くなってきているようだ。
気がつけば、僕は全裸で仰向けに寝ていて、やはり全裸の聡未に乳首を舐められながら、欲棒を握られて緩やかな往復運動を与えられている。欲棒を触られながら乳首を舐められる、その初めての感覚に、僕の現実感はますます希薄になっていくが、聡未に与えられる刺激で、欲棒が刻々とかつてないほどに硬く屹立している感覚だけは強固に感じられる。聡未の舌先に何度も嬲られると、僕の小さな乳首は隆起して感度を増し、聡未のしなやかな指先は欲棒の先端から溢れている透明な液体をすくい取り、先端部分に塗り込むうように広げ、先端部分を指の腹で撫で回す。その指の絶妙な感触に僕の口から変な声が漏れる。感度が悪い古いヘッドフォンを通したような変な音。
その声は自分が漏らした声の筈なのに誰か他の人の声のように聴こえる。欲棒の先端に触れている聡未の指先は、まるで女性のクリトリスに触れるかのように繊細に、触れるか触れないかのような刺激を繰り返し与え、時に力強く触れてくる。
せっかく聡未とこんな夢のうような展開に陥っているのに、あまりにも刺激が強すぎるのか、僕の現実感はますます希薄になり、その一方、乳首と欲棒のとろけるような快感は、僕の肉体との繋がりを強烈に主張しているようだ。
「もっとしてあげようか?」と訊かれると、僕はその意味をはっきりと理解できないまま反射的にうなずいた。全裸で僕に触れている聡未の荘厳な美しさはとてもこの世のものとは思えない。
これは本当に現実なのか?
聡未の舌先が僕の欲棒の先端にそっと触れた瞬間、痺れるような、快感を超えた何かが、その場所から脳天まで電気のように走り、僕の視界は真っ白になった。
杜丘聡未とセックスしそうになる夢を見た。
信じられないほどリアルな夢。
目が覚めても久々にこんなに朝勃ちしている。
夢の中の僕は、若い頃の僕の肉体に憑依していて、当時憧れていた同じサークルの同学年の杜丘聡未とセックスしそうになっていた。
聡未とふたりっきりで部屋にいて、聡未を後ろから抱きしめているだけで満足しそうになる当時の僕を、50代半ばの僕が叱咤激励して、なんとか事に及ぼうとする。
いくら夢とはいえど、あまりにもありえない設定なのだが、夢の中の僕は、それを、当たり前の出来事として認識していて、当時の僕の意識と肉体を、自分にぴったり重なるレイヤーのように自分のそれとして感じていた。行為がどんどん進行して興奮が昂まると、いまの僕と当時の僕の区別がつかなくなり、そのうち僕と僕と聡未の区別さえ曖昧になる。おそらく、いま、まさに性欲が絶賛衰え中の50代半ばの男の妄執がこんな夢を見せてくれたのだろうが、それにしてもリアルな感触の夢だった。
ベッドから出て顔を洗ったら、さっきまであんなに鮮明に最初から最後まで覚えていた夢の記憶の大半は消えてしまっていた。
唯一、聡未に口でされている時の感触だけが残っていた。聡未のフェラは、まさに僕にとっては理想的なフェラで、球袋をやさしく包み込んだ聡未の手に軽く刺激を与えられ、もう片方の手でしごかれながら、先端を舌と唇でなぶられ、舌先が執拗に先端の中央部と裏側の一番感じる部分を刺激して、触れるか触れないかの動きでじらされた後で、深く咥えて強いストローク。
その繰り返しで、僕はどんどんたかまっていって、もう我慢できないから聡未の中に入りたいと思い、聡未に「ゴム付けるから、ちょっとだけ挿れさせて。聡未の中で出したい」と訴えても、聡未は何かの仇のように強いフェラをやめてくれず、僕はそのまま聡未の口の中に射精してしまう。その瞬間の快感の記憶が異様に生々しく残っている。
直後にしっかりと先端を舐めて最後まで吸い取ってくれる唇と舌の感触も、ある意味では現実よりもリアルだった。淫夢に限らなくても、こんなにもリアルな夢は見た事はこのトシになるまで過去に一度もない。
現実の聡未は何度か僕の部屋に遊びに来た事はあったが、夢の中のような事は実際には起きなかった。僕の心の奥底にあったかすかな下心を実際に表に出す事はなく、時にふたりだけで会う事があっても、仲の良い異性の友だちという関係性を逸脱するような出来事は何も起きず、聡未が結婚してからは次第に疎遠になった……と記憶している。
何度思い返しても、実際には絶対に何もなかった筈なのに、夢の映像や感覚があまりにも超絶にリアル過ぎて、ひょっとして、実際こういう事があったのに、何かのきっかけで記憶を封印してしまったのではないか、という気さえしてきて、押入れの奥のダンボールから当時の日記を引っ張り出して読み返してみた。
当時の日記には記憶と違う事が書いてあった。
“畠仲桐子が帰った後、杜丘聡未と限りなくCに近い体験。あまりの衝撃からか一番肝心な所で失神? 目を覚ますといなくなっていて、さっき(22:30頃)電話してみるが留守電。
キスをして服を脱がせて乳首や下を舐めた感覚。これだけはっきり残っている記憶と感覚が実は夢だった、という可能性もある?
全裸になって聡未に手で触られて戦闘状態になって、先端に聡未の舌が触れた筈なのに、そこから記憶がなく、目が覚めると普通に服を着ていて聡未はいなかった……。
若い健康な男子が人生で初の好きな女の子とのセックス寸前で寝てしまうなんて。しかも寝ている間に無意識で服を着る?
頭で理性的に考えれ、ばみんなが帰った後で寝てしまった時に見たとてつもなくリアルな夢としか考えられない。だけど、夢にしては、唇や指や舌に残る感触、聡未のあの部分のかすかな匂い、聡未の漏らした声、全ての記憶が怖いほどリアル。現実を超える夢ってあるのだろうか?”
“夜、サークルの飲み会。いつもの店。桐子と弓佳と聡未に「こないだみんなが帰ったのって何時頃だっけ?」と訊いてみると桐子「たしか8:00過ぎじゃない?」弓佳「そうそう」聡未「帰ってシャワー浴びて出たらニュースやってからその辺」。
みんなが帰った時の記憶が曖昧で、多分帰った後ですぐ寝ちゃったみたいなんだけど、とても言えないような凄い変な夢見ちゃって、などと冗談めかして言ってみると、聡未は「どうせエッチな夢しょ?」、桐子は「ひょっとして私たちが登場したとか?」。桐子に耳元で「ふたりとも帰ったと思って、ひとりでエッチなビデオ見てたら、実は帰ってなくて、ひとりでしてるトコをもろに見られるっていう夢」とその場の作り話をささやくと、桐子が弓佳と聡未に耳元で伝えて、ふたりともきゃーきゃー。先日のアレはやはり夢だったようだ。それにしても、返す返すも、恐ろしくリアルな夢。”
こんな事を体験した記憶も日記に書いた記憶もないが、どう見ても、僕の手書きの文字。なんとも不思議な感覚。僕が僕の記憶として覚えている事なんて、実際に体験した事のほんの数%なのかもしれない。それにしても、こんな、ちょっとしたコントになりそうな面白い話を体験して日記に書いていても、ここまで完全に忘れてしまうなんて事がありえるだろうか。アルツハイマーが始まりつつあるのだろうか。
また聡未の夢を見れたらいいのになあ、と思いながら、眠ろうとしても、眠りに落ちそうになる曖昧な意識でセクシーな事を夢想すると、今夜も、眠れそうで眠れない、という状態になってしまった。20分程眠ろうとして眠れないのでいったんベッドを出て、少しウイスキーを飲んで仕切り直す。
アルコールに頼って眠ると短い眠りで目が覚めてしまう事が多いが、眠れないよりはマシだ。50歳を過ぎた頃から、もともと不眠症気味で眠りが浅い傾向は更に強まって、すんなり眠れても、そのまま朝まで5〜6時間眠れる事は殆どない。若い頃はほぼ毎日寝る直前に自主トレをして心地よい疲労感で眠りに落ちていたが、いまはそんな事をすれば眠る為のエネルギーを使ってしまうのか逆に寝付けなくなる。
若い頃は射精の瞬間に、膝から尻穴あたりまでが震えるような快感があり、その快感と放出感がやがて疲労感にかわって眠りにいざなって貰えたが、50代半ばのいま、たまにするそれは欲棒の先の方にかすかな快感があるだけで、正直、溜まっていたおしっこを出す感覚とさほど変わらず、なんだかもやもやするだけで、それによって強烈な眠気が来る事もない。
性欲自体も限りなくゼロに近づきつつある。
極端に言えば、若い頃は、射精直後の20分程度(〈賢者タイム〉と言う言葉は当時は存在していなかった)を除けば、いつでもできれば誰かとセックスしたい、それこそ「穴があれば挿れたい」と思っていたが、最近はそういう風に思うのは、たまにする自主トレでしっかり勃起した20分程度だけである。
たいして快感もないのだから、自主トレもやめてしまえばいいのに、と思う事もしばしばあるが、たとえ〈実戦〉の機会は今後ないとしても〈練習〉も完全にやめてしまえば、本当にあとはただただ老いさらばえていくだけで老化のスピードもさらに早まるのではないかという、日々消えていく若さへの未練がましい執着が、完全にそれを断ち切る事を押し止める。
実際は、性欲の有無や自主トレの頻度と関係なく、外見も記憶も、どんどん、衰えていっている。
若い頃は記憶力にだけは多少自信があった。
地元では一番の進学校に合格できたのも、多分、人よりちょっとだけ暗記能力が勝っていたからだ。20代半ばからほころびを見せ始めた記憶力は、年々、衰えに拍車がかかっているようで、俳優やタレントの名前が咄嗟に出てこないのはむしろ当然で、例えば「茶碗蒸し」などの名詞が、突然、出てこなくなる事もある。こんなに記憶力が衰えては、小説を書く仕事も、近い将来覚束なくなるかもしれない。それにしても、最近の出来事、35歳以降の出来事の記憶は全て曖昧でも、若い頃の記憶、特に15歳頃から25歳頃までの記憶は、いくつになっても結構覚えているつもりだったので、聡未の夢の記憶、それを日記に書いていた記憶が全くないのは結構なショックだった。聡未の夢は「忘れていた事を思い出せ」という警告なのかもしれない、と思わないでもないが、いずれ、20歳の頃の記憶なんて30年も経てば夢のようなもの。記憶力が衰えてくると、夢で見た記憶と現実の記憶の区別もどんどん曖昧になる。やがて、生きている事と死んでいる事の境界も曖昧になるのだろう。
20代半ばから約10年交際して結婚するつもりでいた女性にフラれて以降、特定の彼女を作る事を半ば無意識的に避けていて、50歳を過ぎてからはほんの短い期間のアバンチュールめいた事もなくなり、常にひとりで過ごすのが当たり前になってきた。パートナーがいない男性は早死する確率が圧倒的に高いというネットニュースを読むと、孤独死する自分の姿が目に浮かんで急にとてつもない不安に襲われる事もあるが、誰かがいた所で、いずれ、死ぬ時はひとり。
聡未の夢を見た事が何かの呼び水になったのか、最近は大学時代の事をよく思い出す。聡未は当時つきあっていた彼氏と卒業してすぐに結婚したが、桐子と弓佳は当時は特定の彼氏はいなかった筈で、もっと本気で口説けば桐子か弓佳と結婚していた可能性もあったかもしれない。それができなかったのは、自意識過剰に塗れてロクに女の子と話す事さえできなかった暗黒の10代後半の反動で、あの頃は、女の子とただ普通に話すだけでも幸福を感じていた、普通の男子の恋愛遍歴から十年近く遅れた状態だったから、なんて事まで思い出した。
風邪のような症状が数週間続いている。
熱が上がったり下がったりを繰り返していて、倦怠感があり、座っているとすぐに全身が重たくなる。ちょうど雑誌の連載が終わった所で締め切りがある仕事はしばらくないが、来月から大学の新学期が始まる。いま住んでいる所は大学の寮のような部屋だが、もし教授としての仕事ができないようならどうなるのだろう。即解雇、即退去という事はないだろうが、そのあたりも調べておきたいと思ってもパソコンを開こうという気力が湧かない。大学のサーバーに入る為のIDとパスワードを記したファイルがどこにあるかも思い出せない。
今日も微熱と倦怠感があり、いったん咳が出るとなかなか止まらず、このまま呼吸が止まってしまうような感覚がある。病院で貰った薬を服用すると数時間はやや治まるが、薬が切れるとまた咳が出る。
朝からベッドで横になって、ラジオを聴きながらうとうと、起きているか寝ているか、自分でもよく判らないような状態で過ごしていると、スマホが音声通話の着信を知らせるメロディを鳴らす。最近は音声通話は滅多にかかってこない。声を出して話をしたら、また咳が出るかもしれないので、このまま出ないでおこうかと思ったが、なかなか鳴り止まない。着信拒否して消音しようと思って、スマホを手に取って見ると、発信者の表示が〈畠仲桐子〉だったので応答ボタン(音声のみ)を押した。
「さっきのメッセージ読んだ?」
「メッセージ? 届いてないみたいだけど」
「いま、弓佳と一緒にいて、私は電話しようって言ったんだけど、弓佳がとりあえずメッセージにすればって言うから、メッセージにしたんだけど」
「もう一度送ってみてよ」
「いいよ、もう。いま電話で話してるし」
「誰か死んだ?」
極力、冗談めかして言ってみたが、我ながら声に張りがない。
「なんか、あんたが死にそうな声だね。体調でも悪いの? 罰が当たったんじゃない?」
「罰? なんの罰?」
「亜嵐も一応作家のはしくれだから、自分の事を書くのは商売だから仕方ないけどさあ、実名はダメだって。結構本気で怒ってたよ」
「誰が?」
「誰がって、聡未よ。決まってるじゃない」
「聡未? 聡未がなんだって?」
聡未の名前が出て心臓のあたりにズキンと痛みが走った。
「なに寝ぼけた事言ってるんのよ。何十年も昔の事だから別に言いだろう、どうせ誰も読まないだろうって思ったのかも、なんて弓佳は言うけどさあ、書かれた聡未はたまったもんじゃないでしょ。まあ、私と弓佳は、きゃーきゃー言いながら一緒に読んで、ちょっと若返った気分だけど……ねえ、これってどこまでホントなの? ホントの事だから聡未が怒ってるんでしょ、って弓佳は言うけど、私はそれなりに脚色してるんじゃないかって」
「ちょっと待って。話が全然見えない」
「いい年してとぼけないでよ。もし話題になれば、本人も読むし、私たちも読んじゃう事くらい予想できるでしょ。無断で実名は駄目だって。で、聡未とはもう話した? ホントに結構マジで怒ってる感じだったから、下手すりゃ裁判起こされるかもだよ」
「ホントに、全然、判んない。聡未が何に怒ってるって?」
「あ、ちょっと、仕事の電話入ったから、いったん切るわ。またね」
実名?
聡未が怒っている?
何の話かさっぱり判らない。
あまりに意味不明な電話に体がびっくりしているのか、久々に電話で桐子のいつもの調子の声を聞いて若い頃の何かが蘇ったのか、なんとなく、体調は少しマシになった気もするが、心はモヤモヤしている。
とにかく、聡未が、何かに怒っているらしい。
パソコンをチェックしてみるが、桐子からも聡未からも何も来ていないので、何はともあれ、聡未に連絡してしようと思って、さてどんな文面にしようか、と思案していると、当人から直電が来た。桐子と聡未と同じ日に電話で話すなんて当時ぶり以来ではないか。
「メール読んでくれた?」
聡未も、なんの挨拶もなく、完全に相当怒っている口調。
「届いてないよ」
「うそ」
「ついさっき、桐子から電話があって、桐子からのメッセージも届いてないので、こっちの回線かマシンに問題があるのかも」
「そんなこと言ってればうやむやにできるって思ってんの?」
「桐子が、なんか、聡未が怒ってるって」
「怒るでしょ、普通」
「いや、それが、桐子が何の話してるのか、全然」
「いまさら何十年も前のこと言っても仕方ないけど、ぜったい誰にも内緒って言ったよね? 書くのはいいよ、作家なんだから。なんで実名なの? 亜蘭は若い頃の武勇伝的なアレで済むかもしれないけど、私の夫まで実名はひどくない?一応全力で否定してるけど、あんなに事細かく書く事ないでしょ。とにかく、いますぐ、なんとかしてよ。とりあえず、公開停止とか」
「ちょっと、マジでちょっと待って。僕が聡未や聡未のだんなさんの事を何か書いたってこと?」
「……そうやってとぼけられると、ますます腹が立ってくるんだけど。ふざけてんの?」
聡未からURLだけが書いてあるメッセージが送られてきた。
URLをクリックすると、亜蘭圭「杜丘聡未の話」と言うタイトルに続いて、文章が連なっている。駆け出しの頃に利用していた小説投稿サイトのようだ。
一応小説の形になっているらしいその文章にざっと目を通すと、そこには、先日夢でみた聡未とセックスしかけた話が、事細かに綴られている。もちろん、僕はこんな文章を書いた記憶も、ネットにあげた記憶もない。誰かが僕の名前を騙っているのだ。一体どこの誰がこんなたちの悪いイタズラを。僕の心臓は早鐘のように激しく脈打ち、頭に血が登っているのか視界がふらふら、細部を読み込んでいくと、数日前に見た夢が詳細に蘇ってくる。
到底偶然の一致とは思えない。
同じサークルの誰かのイタズラなのか。
それにしても僕が見た夢の詳細は僕しか知らない筈。
こんなに何かもかも夢で見た出来事と細部が一致するなんてありえるだろうか。
混乱。錯乱。
あまりにも現実とは思えない事態に直面して僕は現実を正確に認識できなくなり、自分がきちんと呼吸をしているのか、自分の心臓がちゃんと機能しているのか、自分の脳がちゃんと自分を管理しているのか、何もかも判らなくなり、
「ねえ、ちょっと。何か言いなさいよ。こんな事、私に無断で書いていいわけないでしょ。聞いてるの?」
聡未の声が聞こえているが、僕は言葉を発する為に何をどうすればいいか、どうしても思い出す事ができない。やがて僕の意識は、聡未の舌先が触れたあの瞬間よりも、もっと白く輝く眩しい光の渦に飲み込まれていく。
■1984年日記
1984.07.02月
5·6体育は体力測定。異常に疲れる。腹筋で首をちがえる。
ローレルにてSW3。久々に飛鳥。
京都のKに電話。電話代が心配。
いいともは原田知世。
※ローレルは映画館?レンタルビデオ店?
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1984.07.03火
暑い暑い。とにかくやる気がおきなくて、食欲もなく、ジュース飲んでばっか。
Kにハガキ出す。飛鳥にて今日は洋物。あー無駄使い!
映画観ず。いよいよ試験だというのに。
※飛鳥はどうやらレンタルビデオ店、無駄使いと言いたくなる程レンタル代が高かった?
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1984.07.09月
新宿プラザで「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」。
冒頭のナイトクラブからゴムボートで急流下りまで息もつかせぬ面白さ。
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1984.07.10火
飲み。かなり酔う。
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1984.07.12木
T.Kよりハガキ。
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1984.07.13金
S.K(サークルの1年女子)から電話。
いま欲しいのはウォークマン、ミニスピーカー、ラック、ワープロ、ポケコン。
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1984.07.15日
「羽なしティンカーベル」に感動。
「グレイストーク」は壮大なスケール。
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1984.07.24火
夏休みの予定考える。
仏2宿題と政治学リポートはマスト。
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1984.07.25水
午後から池袋へ。
ビックカメラでミニスピーカー。
にっかつでS.Kと話す。
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1984.07.26(木)
帰札。
■2024年日記
2024.07.01月
「有吉ゼミ」チャレンジグルメ1本目。スタジオで延々喋り続ける女の声が耳障り。ギャル曽根完食の瞬間はおごそかに音楽とナレーションだけで見届けたい。
ドラマ「海のはじまり」第1話。ながら見でもかったるい。普通の人、普通の会話、普通の構成。
実は全ての言動に裏があって、目黒蓮も有村架純も古川琴音も悪人だった、なんて事になったら面白いが、そうはなりそうもないw
ウィンブルドン開幕。大坂なおみ1回戦勝利。1セット圧勝もまたいきなり崩れたかと思ったが立て直して2-1。解説の伊達公子は技術的な問題を指摘(相手が弱く返してきて低い打点になった時の対応)。
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2024.07.02火
1〜2時間寝ておくつもりが4時間目が覚めず、オランダ戦丸ごと見逃す(オランダ3-0ルーマニア)。EUROとCOPAとウィンブルドンを全部LIVEで見るのは到底無理w
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2024.07.03水
ジャイアンツ井上の試合後インタビュー、相変わらず中学生のような喋り方。弟キャラ。
クドカンのドラマ「新宿野戦病院」第1話。変な人、変な台詞、予想できない展開。普通のドラマの3倍くらいの情報量でどんどん進む。「海のはじまり」に比べて断然引き込まれる。
R16オランダの3点目交代で入ったFWマーレン自分で持ち込んで自分で決める(たぐいマーレンな得点感覚)。
錦織の試合見ながら寝落ち。寝ている間に錦織と大坂なおみ敗退。錦織(2-3)大阪(0-2)。
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2024.07.04木
Preston Sturges「サリヴァンの旅」1941年 U-NEXT 小林信彦激賞だが、正直、冒頭5分でもうつまらない。走る列車の上での戦いは当時としては頑張っているのだろうと想像はできても、
「MAD MAX」最新作のトレーラー攻防戦とは比ぶべくもなく、セットとスクリーンプロレス見え見えでコントにしか見えない。室内で3人の男が話すシーンはこの頃の映画で毎度おなじみ、舞台中継のようなカメラ、立ち位置、人物の動き。妙に力んで一本調子で話す口調も含めて、とにかく、全てが古臭い。仮に映画館で大きなスクリーンで観たとしても〈映画〉を観ている気はしないと思える画。むかしのアメリカのテレビドラマのような感じ。とにかく、何もかも古臭くて〈勉強〉と思わない限り見る気が起きない。40年代50年代のモノクロ映画でも、日本映画の場合は現代劇でロケーションがある程度あれば、当時の風景・風俗や当時の話し方・流行語をチェックしようという気になれるが、アメリカ映画の場合はそこまでギアを入れ替えて勉強のつもりで見ようと気がなかなかおきないのは人生の残り時間問題もあるのだろう。昔の作品を見るから日本映画を見たい。
西岡2回戦敗退。0-3で完敗。対戦相手20歳のGiovanni Mpetshi Perricard(フランス)は身長203㎝の本格派シングルバックハンド。言われてみれば最近はシングルバックハンドは少ない。現役ではチチパスしか浮かばない。身長の割に全然華奢に見えない。おしりから大腿部のあたりしっかりしている。西岡は例によって不貞腐れたような態度のプレイ。チチパス2回戦敗退。シングルスを回避したマレー、兄と組んでダブルスに出場して1回戦敗退。
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2024.07.05金
夜になってから近所散歩。この蒸し暑さなのにガーデンプレイスの野外シネマ大盛況、スロープの上の方まで座っていた。左右2Fの座って観られる場所もほぼ塞がっていた。ほんの30歳ばかり若ければ1回くらい観てみようと思ったかもしれないが、いまの年齢では想像しただけでおしりや腰が痛くなってくるw
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2024.07.06土
夕方とてつもなく激しい雷雨。過去最大級の雷の音。
MacBook Air(2019年購入)のバッテリー、スリープ中に放電してシャットダウン。〈正常〉と表示されるが実際は経年劣化か。PRAMリセットとSMCリセットを実行。
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2024.07.07日
Jonathan Glazer「関心領域」なかなかのアート作品。メインタイトル後「事故?」と思えるほどに音楽のみの黒い画面。通奏低音のように隣から聞こえてくる不気味な音が耳に残る。赤ん坊だけが隣で行われている事に反応して泣いている(多分)。
仲本工事の母校・長谷戸小学校で都知事選投票後、サワー188円の看板に釣られて恵比寿西「ヤミツキ」。ファミレス風半個室。料理の味は普通、メガハイボール濃いめ。
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2024.07.08月
Michael Mann「フェラーリ」例によって予備知識なしで予告編の印象だけでフェラーリのカーレースの歴史をF1まで描く作品なのかと勝手に思っていたが全然違っていて、ごく短い期間の家族の話だった。アヴァンの軽快な音楽の昔のレース映像はなくても良かった気がする。悪くはないが全体的にやや間延びの印象。詰められるショットはたくさんあった。レースシーンは大好物のドライバーの主観ショット少なめで迫力不足。「マッドマックス フュリオサ」のこれでもかというアクションシーンに比べれば相当淡白。フェラーリもマセラティも車体が赤なので非常に紛らわしい。ドライバーの数が多すぎてキャラが描ききれていない。当時のレーシングカーはシートベルトさえなかったようだ。主演俳優の目はどこかで見た事があるような気がしていたがアダム・ドライバーと全然気付かなかった(エンドロールで判明)。
※宇多丸さんの映画評聴いたらもう一度見返したくなった。映画は最低3回は見ないと気付けない要素は多分たくさんある。あのベテランドライバーがパトリック・デンプシーだとなぜ気付けなかったのか、我が認識能力の衰えはいよいよ激しい。
歩くと暑いので電車で戻って「EBISU FOODHALL」初利用。料理3品とも美味。
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2024.07.09火
QFスペイン2-1フランス、どうせ堅い展開になると思って深夜散歩に出たら最中に3点(全得点)入ってた……。
【メモ】恵比寿ガーデンシネマの会員はシニアでも年間7回以上鑑賞で得になる。
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2024.07.11木
ジータスでイースタン戦。ジャイアンツ横川、3人で抑えた4回は少し投げ方が変わって球の勢いがあるように見えたが、2点取られた6回は以前と同じように見えた。
連日の蒸し暑さで早くも夏バテ気味。午後、柳沢きみお、小林信彦、黒川博行読む。夜に散歩。完全に暮れていても蒸し暑い。軽く30分程度のつもりがついつい1時間近く歩いてしまう。山手通り、音大の坂、代官山通り、恵比寿通り。ピーコックで弁当とおかず、先日割ってしまったミニグラス。夕食は、チャーハン弁当、鶏皮揚げ、キムチ、金麦500。SWアコライト#7とウィンブルドン見ているうちに眠たくなってくる。
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2024.07.12金
ほぼ1日中雨。外出せず。本日復帰の坂本進塁打からの若林サヨナラ打で6連勝。若林は西武でもサヨナラ打、同一シーズンで複数球団でサヨナラ打は史上初。西武借金30は72年以來52年ぶり。
※72年は西鉄ライオンズの最後の年
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2024.07.13土
Todd Haynes「メイ・ディセンバー ゆれる真実」最近やや前目で観ていたので小さい劇場の最後列はかなりスクリーンが小さく見えた。最初のシーンでジュリアン・ムーアが冷蔵庫を開ける時にサスペンスな音楽が盛り上がって「ホットドッグが足りない」と言うのは、多分、この映画はブラックコメディです、という宣言。ナタリー・ポートマン演じる女優もジュリアン・ムーアと別種の恋愛体質でヤバい人。学生からのセックスシーンの演技に関して質問されて、演技と実際の境目が曖昧になってくると答えるが、普段の生活でもそうなっている。ナタリー・ポートマンがジュリアン・ムーアにメイクをして貰うショットや鏡にふたりで映るショットの対称性。店で歌ってる調子が良いあんちゃんはちょっとMatthew McConaugheyっぽい雰囲気。
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2024.07.14日
大相撲7月場所初日、先場所に続いて3大関黒星。大の里も負け。
清水2-0大分、長崎と横Fともにドローで再び清水首位。
ウィンブルドン決勝。アルカラス3-0ジョコビッチ(6-2/6-2/7-6)。3セット4-4の第9ゲームでアルカラスがギアをあげてブレイク、サービングフォーザマッチの第10ゲームもあっという間に40-0も、アルカラスも人の子、サーブミスなどで追いつかれてブレイクされる。このセットだけでも取れればジョコ凄いジョコまだやれるのかと思って見てたが結局3-0。過去20年以上ほとんどの4大大会決勝にロジャーかラファかジョコがいた。それがこの大会が最後になるかもしれない、と思うとそれなりの寂しさ。時代は変わって20世紀生まれの人はみんな昔の人になり、やがて、〈歴史上の人物〉になる。アルカラス陣営に竹内力!? と思ったがよく見たら全然別人だったw(アルカラスの父)
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2024.07.15月
EURO2024決勝後半は半分寝落ちしながらベッドで見る。スペイン2-1イングランド、スペインはテニスとサッカー連勝。イングランドは2大会連続準優勝。
COPA決勝に後半から合流。ハーフタイム25分。ちらっと見たがスーパーボウルのようなハーフタイムショー(マイアミ開催)。この試合が代表最後の試合になるであろう37歳メッシはどこかを痛めて後半21分で交代。2014年W杯ブラジル大会で日本がチンチンにやられた時はまだ若手だったハメス・ロドリゲスも33歳。1-0(延長)でアルヘン連覇(史上最多16回目の優勝)。
※入場トラブルでKICK OFFが相当遅れたので後半から観られたと後で知る
※2014年W杯ブラジル大会グループC 日本1-4コロンビア(岡崎)
大相撲7月場所2日目。三段目39雷道(いかづちどう)、全身筋肉質の黒い肌の小兵力士、183㎝95㎏、本名・山田ネリー。若い頃の千代の富士を想起。
朝ドラ「虎に翼」。新潟での親子ふたり暮らし始まる。この時代の中産階級ならお手伝いさんを置くのが当たり前だと思うがそうしない理由は説明されない。
ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」シーズン2 U-NEXT。EUROとCOPAとウィンブルドンが終わって時間ができたのでようやく見始める。シーズン1を見たのがいつだったか記憶は定かではなく、登場人物の顔は見覚えがあっても、関係性やこれまでの話はまるで思い出せないが、見ていくうちに多少は判ってくる。同じ一族の内紛。あいかわらずproduction designはすばらしい。大河ドラマとは段違い。予算も多分桁違い。
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2024.07.16火
黒川博行「疫病神」角川文庫。太田光が宮島未奈との対談でほめていたので図書館で借りて読んでみた。ハードボイルド風の簡潔な文体で読みやすい。周囲の人物は数が多すぎて途中からよく判らなくなった。主人公とバディの関西弁の会話と関係性は面白い。文字通りノンストップでどんどん進むストーリー。ゼネコンと建築現場とヤクザの関わりの描写は非常に具体的で取材に基づいていると思える。
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2024.07.17水
STAR WARS アコライト 全8話。本編を見ているだけではストーリーがいまいち判らなかった。ソルはふたりの母親(?)をなぜ殺したのか?フォースの秘術?を操る事ができるのなら生かしておいて調査するべきではないのか。最後の前のショット、あの男と片割れが赤に転じたセーバーを持って手を繋ぐのは〈シスの誕生〉?ヨーダは最後の最後に後頭部のみ登場、台詞はない。
【メモ】PS4のDisney+の字幕背景の黒帯消し方。PS4の設定→アクセシビリティ→クローズドキャプション設定→文字に輪郭を付けて背景の「不透明度」をゼロにする
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