EVER LASTING MOMENT VOL.3

■EVER LASTING MOMENT
○全編昭和の薫り漂うWEBマガジン(ほぼテキストオンリー)
○推奨年齢50歳以上
○無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
○小説/散文/妄想/企画 或れ此れ其れ何れなんでも有り
○誤字脱字間違い辻褄合わず各自適宜補完にてよろしく哀愁

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■映画/ドラマ/スポーツなど(2024/08/22現在)
●2024年
○放送中 虎に翼(朝ドラ)伊藤沙莉
○放送中 光る君へ(大河ドラマ)吉高由里子
○放送中 海のはじまり(フジ月曜21:00)目黒蓮
○放送中 新宿野戦病院 (TBS水曜22:00)小池栄子 脚本クドカン
○配信中 STAR WARS アコライト(Disney+)※全8話
○配信中 ハウス・オブ・ザ・ドラゴン2(U-NEXT)※全8話
○配信中 ザ・ホワイトハウス(U-NEXT)※全7シーズン
○公開中 ルックバック(2024=押山清高)58分 ※一律1700円
○公開中 デッドプール&ウルヴァリン(2024=ショーン・レビ)128分
○公開中 ロイヤルホテル(2023=キティ・グリーン)91分
○公開中 劇場版モノノ怪 唐傘(2024=中村健治)89分
○公開中 ツイスターズ(2014=リー・アイザック・チョン)122分
○公開中 コンセント 同意(2023=バネッサ・フィロ)118分
○公開中 ブルーピリオド(2024=萩原健太郎)115分
○公開中 夏の終わりに願うこと(2023=リラ・アビレス)95分
○08/03土~08/30金 太陽族とギラギラの若者たち(神保町)
○08/17土~08/23金 生誕百年記念 シネアスト安部公房(ヴェーラ)
○08/04日〜08/25日 八月納涼歌舞伎(京極夏彦)
○08/26月〜09/08日 全米オープンテニス
○09/03火 井上尚弥vsTJドヘニー ※Leminoで無料生配信
○09/06金 ナミビアの砂漠(2024=山中瑶子)137分 ※河合優実
○09/06金 ハンドボール新リーグ「リーグH」開幕
○09/08日〜09/22日 大相撲9月場所
○09/30月 おむすび(朝ドラ)橋本環奈
○09/30月 呪術廻戦最終回(少年ジャンプ)
○10/05土〜02/11火 モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)
○10/08火 機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(Netflix)全6話 ※1年戦争
○11月 プレミア12
○11/10日〜11/24日 大相撲11月場所
○11/22金 海の沈黙(2024=若松節朗)※倉本聰35年ぶり映画脚本
●2025年
○01/01水 ローズパレード(京都橘3回目の出場)
○1月 べらぼう(大河ドラマ)横浜流星
○02/14金 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド
○コブラ会 最終シーズンPART3(Netflix)※24年7月PART1/24年11月PART2
○3月 第6回WBC
○03/18火 MLB開幕戦ドジャースvsカブスat東京ドーム
○4月 あんぱん(朝ドラ)今田美桜
◯6月 サッカークラブW杯(新方式、32チーム)
○10月 ばけばけ(朝ドラ)
○09/13土〜09/21日 世界陸上(東京)
●2026年
○1月 豊臣兄弟!(大河ドラマ)仲野太賀
◯02/06金 ミラノ・コルティナ五輪
◯3月 WBC
○05/22金 STAR WARS新作
◯06/11木 サッカーW杯アメリカ/カナダ/メキシコ大会
○8月 Jリーグ秋春制第1シーズン
○12/18金 STAR WARS新作
●2027年
○世界陸上(北京)
○バスケW杯
○ラグビーW杯オーストラリア ※20→24に増加?
○12/17金 STAR WARS新作
●2028年
○EURO2028イギリス/アイルランド
○07/14金〜07/30日 ロサンゼルス五輪
●2029年
○世界陸上(バーミンガム?)
●2030年
○サッカーW杯モロッコ/ポルトガル/スペイン大会(100周年記念大会)
●2031年
○世界陸上
●2032年
○EURO2032イタリア/トルコ
○07/23金〜08/08日 ブリスベン五輪

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■委員長の裏の顔
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

「なんで髪の毛ぼさぼさ?」
「え、あ、ちょっとVRやってて」
「へえ、私が来るのに、エロVRでシコってたんだ」
 図星だったけど羞恥心が邪魔をして正直に言えず、
「ちがうよ。映画見てたんだよ」と虚勢を張った。
 僕の部屋に委員長が遊びに来るくらい、どうって事ないんだからね、という風を装うとするが、内心はドキドキしていた。
 この部屋に女の子が遊びに来るのはこれが初めて。
 ほんの数分前に出したので、いまは賢者タイムの筈なのに、下半身に血が集まって頭がぼーっとしているような気がする。
 内心の動揺が顔に出てない事を祈りつつ、
「5時だったよね、約束の時間……」
 さりげなく、窓を開ける。
「いまごろ窓開けたって遅いよ。全然匂ってるから」
「ウソ!?」
「15分前なんて約束時間の範囲でしょ……どうせ、早打ちしないように直前にシコっておいたんでしょ」
 委員長の口から〈シコって〉なんて言葉が連発するなんて。
「委員長ってそんなキャラだっけ?」
「学校ではネコかぶってるに決まってるじゃん……いまからする事、広志以外には絶対内緒だからね」
 キスしそうな距離まで顔を近づけられて、委員長の香水なのかシャンプーなのか、とてもいい匂いがして、股間の奥が疼いて、心臓は飛び出そうなほど激しく脈打っている。
「もし広志以外の誰かに言ったら、タダじゃすまないからね」
 委員長ってこんなにかわいかったっけ?
 委員長ってこんな顔だっけ?
 いま目の前にいる女の子ってホントに委員長?
「わかった? 返事は?」
「わ、わかった」
委員長の眼力が強すぎて肯定の言葉しか出ない。
「じゃあ、そこに寝て、下は全部脱いで」
 え、ちょっと。展開早すぎない?
「広志から聞いてるでしょ? いやならやめるけど、どうする? いまやめたら、多分、二度と来ないけど」
 もちろんセックスはしてみたいけど、つきあった経験も、デートもキスもなしに、いきなりこんな急展開で、経験してしまっていいの?

「亜嵐って委員長と仲よし?」
 部活終わりの下校中に広志に訊かれた。
「委員長ってうちのクラスの佐山の事?」
「なんか、委員長、って呼びたくなるんよなあ」
「ほとんど話した事もないけど、なんで?」
 公園のベンチで広志から聞かされた委員長の話は、とても信じられる話ではなかった。勉強にしか興味がなさそうな、あの委員長が広志の部屋に遊びに来て、委員長が主導権を取って、上に乗ってさせてくれたなんて、そんなの信じる方がどうかしてる。
「でさあ、この話を亜嵐に言っといて、って」
「どういう事?」
「次は亜嵐って予告だったりして……頭が良すぎる女の子ってナニ考えてんだろうなあ」
 ……最初から最後まで、よくできた広志の作り話だと思っていた。
 今日の放課後、委員長の佐山薫が近づいてきて、耳元で、
「今日、亜嵐くんトコ、遊びに行っていい?」と囁かれるまでは。
 
 本当は初体験は一番好きな山辺麻帆としたかったけど、告ってもいないし、こうなったら流れに身を任せて、練習と思ってやってみよう。
 でも、ちゃんとできるかな?
 委員長にいきなり毛布をまくられた。
 初めて他人に触られて、想像以上に気持ちがいいのに、緊張でなかなか硬くならない。
「はじめて? こういうの」
「え、う、うん」
 げんみつには、性の知識がなかった十歳の頃に、幼馴染の佐倉美和とおたがいにちょっとだけいたずらした事があるけれど、あれはなんにも判らずにしてたからノーカウントにした。
「横になって……深呼吸して……好きな子の事、想像して……私じゃなくって、その子が触ってるの……いま……こんな風に……亜嵐くんのここを……」
 委員長が耳元で囁く声は教室で朗々と国語や英語の教科書を読む、よく通る明瞭な声とは全然別の声に聞こえる。言われた通りに目を閉じて、山辺麻帆に触って貰っている所を想像しようとしたら、気がついたら山辺麻帆の顔は佐倉美和になっている。
 佐倉美和に触られて、佐倉美和に触れた時、性の知識はなかった筈なのに、なぜか、いけない事をしている感覚は強くあって、全身が火照っていた。

 佐倉美和の指の感触が明瞭に蘇る。
 もう少し経ってからまたこんな事をしたいと思っていた。
 もう少し経ったらこんな風にちょっと触るだけでなく、もっと、ちゃんとしたいと思っていた。
 いや。そんな筈はない。
 あの時は性の知識はなかった筈。
 いまこの瞬間の記憶が過去の記憶を侵食しているのかな?
 佐倉美和はあの後、六年生になる前の春休みに転校して、年賀状のやりとりも数年で途絶えてしまった。佐倉美和から返事が来なかったのか、僕が出すのをやめたのか、よく思い出せない。
 そもそも、いま、委員長に触れられて訊かれるまで、佐倉美和の事はほとんど忘れていたのだ。
 いつのまにか、僕の欲棒は、しっかり硬くなりつつある。
 ……委員長の唇が、先端の先端に、ほんの一瞬、触れた瞬間、なんの前触れもなく射精してしまい、放った白液は、委員長の制服のリボンを汚してしまった。
「ごめん……気持ち良すぎて……」
「気にしなくていい」
 委員長はリボンについた白液をティッシュでぬぐって、メガネをかけて、後ろで結んでいた髪をおろした。そうすると、いつも教室にいる、常に冷静沈着で、何を考えているかよくわかならい、いつもの委員長に見える。さっきまでエッチな事をしていた女の子は誰だったんだ?
「今日はココまでにしとこう」
 委員長はそう言い残して振り返りもせずにさっさと帰ってしまった。
 気にしなくていいって言ってたけど絶対怒ってる。
 明日から教室でどんな顔で会えばいいんだ?

【続?】

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■U-NEXT見放題(R18)
○あかり(21)大学3年生(2023年9月)
・水着で入る露天風呂ででナンパ設定、曇っていて風もあって寒そうに見える
・最初のシーンで真ん中の子も悪くないがからむのは左側の子だけ
・他の作品でも何度も見たことがあるアイドル風(素人設定を楽しむ為にあえて女優名は調べない)
○せりなさん(2023年8月)
・瀬戸朝香ちょい似のややエキゾチックなルックス。目を見開いていると圧強めだが伏し目がちな笑顔は充分魅力的。
・病院の待合室のような部屋の冒頭やりとりで座っている茶色のソファ、少々年季が入っているようにも見えるがなかなかい良さげ。 
○えり(27)(2023年8月)
・ぱっと見じみかわ系で惹きつけられる。石川佳純か石川佳純以外で分ければ石川佳純。
・服がいまいち(おばちゃんっぽい)。
・からみは照明・カメラワークともにいまひとつ。
○【初撮り】なかみちゃん21歳(2023年8月)
・ぱっと見普通にかわいい、よく見るとそうでもないが、リアルで出会ったら充分と思えるレベル。
 横顔と人懐っこい感じの目が魅力的。正面から見ると鼻が少し大きくて鼻の下の部分が少し長い。
・観覧車のシーンの左斜めからの顔がかわいく撮れている(13分頃)
・室内の行為シーンは全般的に明るすぎる画
○れいわしろうと ゆゆゆ(2019年6月)
・角度によってはアナウンサー風の清楚系
・冒頭は明るすぎ&正面から撮りすぎであまりよくないが、日陰で並んで歩くショットはそれなりの吸引力
・駐車場(?)の着衣フェラ、比較的即興風のカメラの動きが悪くない(僕が苦手なカメラ目線殆どなし)
・ホテルの部屋での絡みの照明、前半はやや明るすぎるが、ベッドに移って以降はまあまあ

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■島耕作
島耕作プロフィール
生年月日 1947(昭和22)09.09(乙女座/B型)
出身地 山口県岩国市
出身校 私立鷹水学園高校
出身校 早稲田大学法学部(1970年卒業)
資格 普通自動車免許
資格 実用英語技能検定1級
身長 177㎝
父親はサラリーマン
母親は呉服商
ひとりっ子
大学時代ESS
好きな食べ物 サラミ 
好きな食べ物 トリュフ
好きな食べ物 オリーブオイル
嫌いな食べ物 酸っぱいもの
ワインに詳しい
バリ島が好き
77年結婚、89年離婚(怜子)
12年再婚(島耕作65歳、大町久美子45歳)
長女 奈美(79年誕生)
孫 耕太郎(03年誕生)
※参考文献「島耕作クロニクル 連載30周年記念エディション」

●課長007 ブルークリスマス
◯部長会議で社内スパイに関する証拠書類を配る
・本社宣伝企画担当部長会議(84年12月24日)
・福田部長(前々回と前回に登場、名前が与えられる)の指示で証拠提出(水野専務失脚)
・福田部長とふたりで飲む(ニューヨーク勤務打診、ふぐ料理)
・サラリーマン出世ストーリーの本格的な始まり(長期シリーズの可能性)
・妻との冷めきった関係(島の顔も見ないで生返事、「家族と仕事とどっちが大事?」)
・娘(奈美)との良好な関係(手作りクリスマスカードをリクエスト)
・クビになった関連会社専務を街で見かけて小暮(グレちゃん)と飲み明かす(家族とのクリスマス台無し)
※家族の話は長いシリーズの布石(サイドストーリー)
*本社営業本部販売助成部宣伝課課長
*課長 島耕作 第1巻(1985)
*モーニング85年1月3日号掲載

●課長008 アイ ラブ ニューヨーク
◯街で声をかけて一夜をともにした外人女性は仕事仲間だった(課長002のバリエーション)
・ニューヨークに単身赴任(短期間の海外勤務は出世コース)
・ハツシバアメリカ日本人社員約50人現地採用アメリカ人100人
・日比野とグランドセントラル駅地下のオイスターバー
・日比野は同じ大学で同期入社(学生・就活に登場?)
・ソーホーで店の場所を尋ねてアイリーンと知り合う(典型的金髪美人風)
・アイリーンととジャズバー「ニューディール」からホテルへ
・宇佐美常務と福田部長(島を高評価)
※明確に長期シリーズになる方向性(出世ストーリーと私生活のあれこれ)
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第1巻(1985)
*モーニング85年4月4日号掲載

●課長009 ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET
○アイリーンのもうひとりの男とケンカして仲良くなる
・アイリーンと屋外のベンチで昼食(ニューヨークの感想)
・セントラルパークで毎朝ジョギングしてカフェで朝食
・アイリーンが男のクルマから降りてキス(昨夜一緒に過ごしたムード)をカフェで偶然目撃
・アイリーンとの逢瀬は市内のホテルで週1〜2回
・アイリーンの自宅(ブルックリン)で先日目撃した男を紹介される
 ロバート・アレン(イラストレーター、通称ボブ)2年前からアイリーンと交際
・アイリーンは父親(牧師)がKKKに殴殺されて白人嫌悪症になった(ボブの台詞)
・ボブと殴り合いのケンカをして仲良くなり、3人で馬車でレストランへ
※カフェの値段はクロワッサン、マフィン、ベーコン、オムレツ、コールスロー、トマトジュース、コーヒーで4ドル50セント、当時の1ドル250円換算で約1130円、24年8月なら50ドル以上?(1ドル150円換算で7500円)
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年8号掲載
*https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2310/02/news012.html

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■ガンダム50音かるた(5-7-5)
さ 三倍の 速度で迫る 赤いザク
さ 最初から やりなおしだね シミュレーション
さ ザンジバル 木馬を追って シャアが行く
さ 戯れ言を やめろと叫び シャアが来る
し 塩がない タムラが嘆く 戦力ダウン
し ジャブローに 毎度おなじみ 定期便
し 宿命の ふたり邂逅 刻(とき)を見る
し 出撃ね 半舷休息の はずなのに
し 将校の 扱い求める 捕虜コズン
し 新米が よくなる病気で アムロ萎え
し 重力に 魂引かれた アースノイド
す 水道が 壊れてミライの サービスショット
す すこやかに 愛あたためる ビギニング
す 少し間に合わないかもしれない つぶやくミライ 死の予感(大幅に字余り)
す スペースノイド 異なる思想の 宇宙(そら)の民
す 彗星が 赤はガンダム 白ヤマト
す 少しでも 敵の戦力 削りたい
す スレッガー 指輪遺して 宇宙(そら)に散る
せ セイラ・マス 軟弱者と 平手打ち
せ セイラ・マス 小説版は 18禁
せ セイラ出撃 アムロ脱走 リュウが逝く
せ 政治屋は スペースノイドを 悪者に
せ 戦場で 会ったらこうは いかないぞ
そ ソロモンの 最後の砦 機動ビグ・ザム
そ ソロモンは 名前変わって コンペイトウ

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■1986年8月(仮)
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

八月に入っても雨模様の日が続いている。
 昼過ぎに目が覚めて、ベッドの横の窓を開けて空を見上げると、今日もどんよりとした雲。いまにも雨が降り出しそうな気配。むっとするような温気の生ぬるい微風がまとわりつくように吹き込んできて、たちまち、全身から汗が滲んできた。
 内壁に肩がぶつかりそうな狭いシャワーボックスで立ったままシャワーを浴びている時は、吹き出る水の音も、床や内壁に当たって弾ける音も、皮膚の表面に当たる生温い水の温度も、たしかに現実と感じられる。「あー」と声を出してみれば、その声はたしかに自分の声と感じられる。
 このシャワーボックスが世界で世界にいるのは自分だけだ。
 そんな錯覚が僕の心に束の間の平穏な平衡を与えてくれる。
 玄関の横に公園の公衆トイレボックスのような小さなシャワーボックスが備え付けられているのを見た瞬間に、この部屋を借りよう、と決めた。築ウン十年のボロアパートとは言え、渋谷で家賃四万円でシャワー付きは掘り出し物だ。
 石鹸を泡立てた手で股間の欲棒を握ってさすってみる。
 今日も何も感じない。
 身体の他の部分に触れているのと同じような感覚。
 夢の中ではあんなに勃っているのに、握る力を強めても、硬くなる気配は全くない。
 去年の十月に二十歳になったので、この夏は二十歳の夏。
 世間では、性交未経験の二十歳、やらずの二十歳を〈やらはた〉と略すのが流行っている。
 五年前、十五歳の頃は、この先の五年間で、普通にたくさん性的な経験をする事になるだろう、と思っていた。大学生になれば、やりまくりとはいかなくても、普通にガールフレンドを作って、それなりに楽しんでいるだろう、と思っていた。まさか〈やらはた〉になり、それどころか、男女問わず、ある一線を越えると、まともに会話もできない状態になるなんて、想像もしていなかった。
 〈やらはた〉なんて言い方は、五年前にはまだ流行っていなかった気がする。いつ、誰が、言い始めたんだろう。気が付けば、いつの間にか、ラジオの深夜放送のリスナー投稿ではおなじみの言い方になっていたようだ。
〈やらはた〉なんて言い方は、あっと言う間に廃れて、いまでは誰も言わない。
 ……また、いつもの〈侵食〉だ。
 意識の中にふいに浮かぶ声。
 僕が知らない筈の事をつぶやく声。
 いまでは誰も言わない? 
 いまではっていつだ?
 そもそも、最近の若者は二十歳を〈はたち〉と言わない。普通に〈にじゅっさい〉という。
 それを自分がはっきり知っているような感覚が、意識の片隅に、一瞬、激しく煌めいて、やがて、潮が引くように薄れていく。
 食欲はないのでコーラを一杯だけ飲んで部屋を出た。
 人が殆どいない裏道を歩いている間は、シャワーを浴びていた時の平穏な平衡が続いているが、大きな通りに出て、視界にいる他人の姿の数がどんどん増えてくると、いつものように、透明な膜が全身を覆ってくる。現実感覚がどんどん喪失して、鋪道を踏み締めている足の裏の感覚も薄れていく。
 右足が鋪道に接する寸前に左足を振り上げて、左足が鋪道に接する寸前に左足を振り上げて、それを繰り返して、鋪道の数センチ上を、ほんの少しの空中遊泳で進む。人間がそんな風に動ける筈はないので、この透明な膜が僕の脳を騙している。渋谷駅に向かう坂を降りていくに連れて、人はどんんどん増えてくる。接触する寸前で人波をすりぬけて、空中を泳ぐ速度はどんどん速てなっていく。
 教室のように同じ方向を向いた長机が整然と並んでいる明るい部屋で、赤いボールペンを世界史の答案用紙に走らせる。ただひたすら、正確に採点する事だけを心がけて、無心で採点をしている間は、体を覆っている透明な膜は気にならない。
 いつものように、誰ともなるべく視線が合わないように、一番前の左隅に座っている。今日は金曜日で時給が50円高いので、いつもよりたくさんの人が背後にいる気配がある。
 文章問題以外の採点が終わった分をまとめて、隣のテーブルの主任バイトの川原さんに渡す。川原さんはW大学の大学院生。主任は、僕ら一般バイトの採点をダブルチェックして、文章問題を採点する。最近は、週末のこの時間の主任はたいていこの人。銀縁メガネで小太りで、見るからに真面目で人が良さそうな雰囲気で、急に距離を詰めてくる事もないので、この通信添削のアルバイトで、唯一、割と普通に話す事ができる人だ。
 去年の夏を過ぎた頃から大学に行かなくなった。
 このまま中退するつもりだったが、両親と何度か電話や手紙で話をして、とりあえず、今年一年は休学する事になった。
 13:00から休憩をはさんで20:00まで、通信添削のアルバイトを週に3回(金土日)。金曜日と土曜日はその後、朝までやっている居酒屋の厨房で皿洗いや調理補助のアルバイト。ふたつのバイト代は合計で月十万円程度にはなり、四万円の家賃を払っても、なんとか食べてはいけている。実家からは、休学していても五万円の仕送りが毎月振り込まれているが、こちらは手をつけずに、バイト代だけで生活している。
 一度完全にゼロにしてリセットしたい気もするが、いま住んでいる部屋を引き払って、実家に帰れば、いろいろ訊かれるかもしれない。いまは誰にも何も訊かれたくない。このままでは将来の展望は全く開けないが、それでも、いまは誰にも何も訊かれたくない。
 昨年の夏、この性的不能をなんとかしないと始まらない、と思って、泌尿器科を受診して「神経と血管には異常はなさそうなので精神的な原因でしょう」と言われて、精神科を紹介された。
「原因にこころあたりはありますか?」と精神科で訊かれて、とうぜん十七歳の夏の体験が脳裏に浮かんだが、実験動物を見るような冷ややかな目で僕を見るその医師に対して心を開く事はできそうになく、なかば無意識に「特にありません」という言葉を発していた。
 あの時、正直に全てを話していれば、性的不能も治って、普通の大学生に戻れていたのだろうか?
 思い返せば、ものごころついた頃から、自分の感情をそのまま発露するのが苦手だった。特に、不快な感情や怒りの感情は、常に、いったん咀嚼して、ごくごくたまに出す場合も、声の大きさや使う言葉を考えてから発していた。こうやって溜め込んでしまう性質が根本原因なのだろうか。なぜあの時に「特にありません」と言ってしまったのか。
 大学のクラスやサークルの友人の前で〈普通の大学生〉を演じる事は、去年の春まではなんとかできていたが、夏を過ぎると、日に日に辛くなってきた。飲み会で繰り広げられる性体験に関するあけすけな話はただ聞いているだけでも辛くなり、大学に足を向ける回数はどんどん減って、今年に入ってからは皆無になった。 
 いつものように他の人があらかた出てから部屋を出ようとすると、
「この後、時間ある? ちょっとだけつきあってくれない?」
 顔と体型に全く似合わない甘くソフトな二枚目ボイスに耳をくすぐられた。川原さんの声を聴くとなぜかほっとする。居酒屋のバイトは23:00から。いつもなら軽く食事して映画館で時間をつぶすのだが、川原さんとなら大丈夫かな、と思って、付いて行くと、その辺の喫茶店や居酒屋ではなく、高級そうなマンションのエントランスに入って行き、暗証番号を押してオートロックを解除する。ろくに話した事もない人の部屋にいきなり行く事を躊躇するような臆病な部分と、日常生活を逸脱する何かしら新奇な事を体験してみたいと思う大胆な部分が激しく争って、一瞬、すーっと意識が遠のくような感覚に陥って目を閉じる。
 目を開けるとマンションのエレベーターの中にいた。
「僕の実家は八王子の方で」
 エレベーターの中で川原さんが言う。
「大学もバイトも遠すぎるんで、勉強部屋として借りてもらってるんだ」
 靴のままで、と言われて部屋に入る。相当広い部屋の奥に大きなベッドがあり、その手前にあるソファにこちらを向いて女の子が座っている。見かけた事があるような顔だ。
「適当に座って」
 冷蔵庫から何かを出している川原さんに言われても、部屋に流れている、なんともいえない不穏なムードで動けない。回れ右して「すみません、やっぱり、今日は帰ります」と言っていますぐこの部屋を出た方がいい、という予感がぴりぴりと充溢してきて、僕を覆っている透明な膜の内部の密度が増してくるのがはっきり判る。
 女の子は目を見開いて瞬きもせずに正面から僕をじっと見ている。
 目をそらす事も体を動かす事もできない。
 まるであの時のようだ。
 あの時?
 あの時っていつだ?
「なんだか、妙なムードだねえ。とにかく、座って」
 川原さんに軽く背中を押されたら金縛りが解けて、なんとか、体を動かして、女の子が座っているソファの正面のソファに座る。
「何度か、話しかけようとしたの、気づいてたよね?」
 そう言われて、通信添削のバイトで何度か見かけた事がある女の子だと気づいた。
「なんで私を避けてたわけ?」
 業務連絡的な二言三言以外で僕がちゃんと話した事があるのは、川原さんだけだ。「学部どこ?」「サークル入ってる?」「亜嵐って変わった名前だね」などと話しかけられてそれに答えただけなので世間一般では〈話した〉うちに入らないだろうが、僕の中では相当だ。女性に関しては、この女の子に限らず、こっちを見ているような気配を感じただけで、視線を避けて、なかば無意識に距離を取っていたかもしれない。
 この状況はいまの僕には無理だ。普通に何気なく優しい口調で話しかけられととしても、うまく応える事ができそうにないのに、眼光鋭く尋問調で訊かれて、まともに言葉が出てくるわけがない。
 透明な膜の内部の密度はますます高まって息をするのも苦しくなってくる。なんとか、いますぐに立ち上がってこの場所から逃げて、添削のバイトもやめてしまおう。ソファに座った流れで俯いて女の子の目を見ないで済む姿勢にはなっている。とにかく、なんとか立ち上がって、幸い靴ははいたままなので、玄関を出て、このマンションから出れば、なんとかなるだろう。
「とりあえず、これでも飲んで」
 立ち上がろうとした瞬間に、川原さんにグラスを手渡され、川原さんが、肩に手を触れてくれているからなのか、透明な膜の圧力が少し緩んで、僕は自然にグラスの飲み物を口にする。独特な甘みと香りがある、いままでに飲んだ事がない味の飲み物。とても飲みやすい。
「江美も、いきなり、そういうんじゃなく。徐々に、徐々に」
「裕ちゃん、ホントにこの木偶の坊が〈候補〉なの?」
 裕ちゃん?
「あ、僕、裕太郎、下の名前」
 僕の心の声が聞こえたのか、川原さんがこっちを見て言う。
 そのソフトな声と柔和な笑顔に何かがほぐれるような気がする。
「あくまで〈候補〉だからね。全然、出てきてないのかもしれないし」
「やつらの間違いなんじゃないの? 童貞臭丸出しだよ?」
 江美と呼ばれた女の子がソファを立ってこっちに近づいてくる。
 逃げるな。顔を上げろ。別に命まで奪われるわけじゃない。
 そんな声がどこからか聞こえてくる。いつもの〈侵食〉だ。
 頭の中で鳴り響く〈侵食〉の声が勢いを増すにつれて、僕の肉体はますます萎縮して、透明な膜はどす黒く濁ってくる。
 江美と呼ばれた女の子の顔がすぐそばにあるのが感じられ、声を発しているようだが、その音は、人間が発する言葉ではなく、濁ったノイズにしか聞こえなくなってくる。
 髪の毛を引っ張られて強引に顔を持ち上げられる。
 眼の前にあるどす黒い円形の物体の下の方で虚無に追わせる穴が蠢いて、耳障りなくぐもったノイズを発している。そのまま、その虚無に吸い込まれてしまいそうな恐怖だけが僕の内部で炸裂する。
 「いや、ちょっと、それは、強引すぎるって」
 この声は誰の声だっけ。誰かとても信頼できる人の声だ。
 次の瞬間、僕は虚無に飲み込まれる。
 ……ほんの一瞬の間に永い夢をみていたようだ。
 虚無と光が永遠に続く戦いをしている夢。
 虚無が光を駆逐してすべてが虚無に包まれる寸前に目が覚めた。
 斜め下から覗き込むような角度ですぐ目の前に江美の顔がある。
 さっきまでの自分が消失そうな感覚は消えて異常にクリアな視界。
 至近距離にいる江美と目と目があった瞬間、普段は一番奥に厳重に閉じ込めている塊が、いきなり何千倍にも膨張して、僕を裡側からのっとろうとしてくる。
 こんな女性と仲良くなってセックスしたい。だけどそれは無理。本当に無理なのか。普段自分で触れて勃たないのが実際のセックスで勃つ筈がない。本当にそうなのか。逆に女性に触れて貰ったらちゃんと勃ってちゃんとできて、それがきっかけで、全く普通に戻るかもしれない。いやいや。楽観的観測にも程がある。そもそも、江美は多分川原さんの彼女だし。こんなおじさんみたいな男でも、江美みたいな美人の若い女の子と仲良くなって、あんな事やこんな事をしてるのか。いや別につきあってるわけじゃなくって川原さんは勉強を教えているだけかも。いやいや、そんな筈はない。その程度の仲なら、こんな風に会話してこんな風な雰囲気は醸し出せない。ああ。こんな魅力的な女の子とは僕にこの先ずっと死ぬまで縁がないのか、でも、もし、万が一、こんな女の子とそういう展開になって、それでも全然ぴくりとも反応しなかったら、それこそ一生ダメかもしれない。
 そんな妄想が急激に渦巻く。本能と理性。本当の自分と演じている自分。言葉で表現してもしきれない葛藤と混沌。いったい何が起きているのか、自分で自分が理解できない。
「大丈夫? 亜嵐くん?」
 この声は……。そうだ。川原さんの声だ。
 なんとか声を出そうと試みるが声が出ない。
 目の前の江美から目をそらす事ができない。
「どう? なんか判った? うまくいきそう?」
「こいつはダメだよ。なんかの間違いだよ」川原さんの問いかけに、吐き捨てるように答えた江美は立ち上がって、僕から離れていく。
 ダメだよ。
 あの時の声。あの時の声に似ている。
 あの時。十七歳の夏。はじまりの日。
 あの時の弥生もさっきの江美と同じように僕の右隣にいて。
 ダメだよ。

「亜嵐だってホントはやりたいだけなんでしょ」
「そんな事ないよ」
「じゃあ、もし、私とつきあっても、何にもできなくても平気?」
「つきあってくれるの?」
「つきあっても、手も繋がない、キスもしない、抱き合ったりしない……それでも平気?」
 弥生はこっちをまっすぐ見て顔を近づけてくる。
「もちろん、その先の、もっとエッチな事は想像するのもダメ」
 斜め下から覗き込むような角度ですぐ目の前に弥生の顔がある。毎晩触れる事を夢見ている弥生の唇は、勇気を出して、ほんのすこしだけ顔を前に出せば、自分の唇を重ねる事ができる距離にある。家に他に誰もいない事を確認して僕の部屋に来て、こんなきわどい話をして、こんな風に顔を近づけてくるのは、実は誘ってきているんじゃないか? 勇気を出せ。ほんの少しだけ、迷わず、一気に顔を動かせば、触れられる。それで弥生は怒って帰ってしまうかもしれないけど「小林弥生とキスをした」という事実は永遠に残る。何を迷ってるんだ。いまが決断の時だ。
 どれだけ自分を奮い立たせても、僕は、1ミリも動く事ができなかった。
 息をする事さえ忘れていたかもしれない。
「……」
「いま、想像したでしょ?」
「想像?」
「私とエッチな事する想像……」
「してないってば」
 本当は毎晩寝る前に、弥生の体のありとあらゆる部分を想像して、とんでもないエッチな妄想で自主トレしては精を放っていた。
「ふうん。じゃあ、亜嵐は、私をそういう目でみてないし、私とそういう事をしたいって思ってないんだ?」
「思ってないよ」
 自分の本当の部分を正直にぶちまけた方がいいのかもしれない、と思いつつも、どうしても、素直になれない。
「じゃあ、何をしたいわけ? もし私とつきあったら?」
「それは、だから、一緒に勉強とか、一緒に練習とか」
「勉強?」
「お互いに判らない問題を教えあうとか」
「じゃ、勉強しよ」
「え?」
「私がここにこうしていても、普通に勉強できるよね?」
「もちろん」
 どうして僕は本心と逆の事ばかり言ってしまうのだろう。どうして僕は女の子に何か訊かれると何も知らない子供のようなふりをしてしまうのだろう。この状況に頭がついていかなくて、何が正解で何が不正解なのか判らない。自分で自分がよく判らない。
「これ、読んでみて」
 うながされて弥生が適当な頁を開いた英語の副読本を両手で持つ。
「声に出して読んで……私は別の勉強するから」
「別の勉強?」
 弥生の手が僕の内股の当たりに触れる。
「動いちゃ駄目。読み続けて。声に出して」
 弥生の手が、ゆっくり、股間の中心部分の方に滑ってくる。思わず後ずさろうとするが、後ろも左側も壁なので逃げ場はない。立ち上がって避けるという選択肢はなぜか意識に浮上してこない。
「たしかめてあげるから」
 弥生の指がその部分にかすかに触れてくる。
「ホントに私の事、そういう目でみてないか」
 弥生の指がズボンのジッパーを下げていく。
「そういう目でみてないなら、何があっても、反応しないよね?」
 弥生の指がズボンの裡側をあちこちまさぐり、その都度、生まれて始めて味わう、ぞわぞわするような感覚が、おしりの穴のあたりから発してくる。ブリーフの裡側から欲棒をそっと引っ張り出すその手つきは慣れているようにも感じる。
「ダメだよ。反応しちゃ」
 はっきり目を見て真面目な口調で弥生が言う。
 夢にまで見たこんな状況で、こんな風に触られて、十七歳の健康な男子が反応しないわけがない。からかわれているんだ。よし、じゃあ、どこまで反応しないか、できるだけ我慢してみよう。
 脳はとてつもなく興奮しているが、弥生の指に包まれている欲棒は、あまりの予想外の状況に、本当に反応が追いついていないのか、完全に初期状態。先端部分の半分程度は皮を被っている。
 弥生が、ゆっくり、ほんの少し、握った手を上下に動かすと、英語の活字を目で追えなくなるような白い火花が視界に弾けて、足のつま先から脳天まで何かが駈ける。
 ダメだよ。反応しちゃ。
 こんなソフトな刺激で反応してたまるもんか。普段の自主トレでは、根元部分をもっと強く握ってぶるんぶるんと震わせるようにして奮い立たせる。もちろん自分でやるのと、大好きな女の子にやって貰うのは全然違うけど、この程度の刺激なら耐えられる。
 むきだしの欲棒が弥生に刺激されているのは妄想で、実際は、ひとりでこの副読本を読んでいる。そう思い込んでも、自分の右手ではない、初めて味わう感触の細い柔らかいしなやかやな指は、予測できない動きをはさみつつ、次第に、少しづつ、握る力を強めて、動く速度を速めていき、その刺激に全てを委ねたくなるのを必死で抑え込む。
 ダメだよ。反応しちゃ。
 まだまだ。まだ耐えられる筈。
 何に対して意地をはっているのか、自分で自分がよく判らない状態で、僕はなんとか目の前の副読本の英語の文章を正確な発音で音読する事に意識を全集中させようとする。
 どうせ、高校二年の男子なんて、ちょっとエッチな話をして、ちょっと触ればすぐ勃起してすぐ射精すると思ってるんだろ。そうじゃない男子もいるって証明してやる。あともう少しだけは。
 あれ? もし弥生がそう思ってるとしたら、そういう経験があるってこと? 相手は誰なんだ。僕の大好きな弥生とそんなエッチな事をしたのは。そんな事をしてるからには、その男も弥生にいろいろエッチな事をして、ひょっとしてひょっとしたら、最後の一線も超えちゃってるかもしれない。
 くそー。どこのどいつだ。よく噂になっているサッカー部の山木か。それとも生徒会で一緒の儀拯の奴か。生徒会室の鍵をかけてカーテンの奥で不純異性交遊っていう噂も本当だったのか。神聖な生徒会室でそんな事をするなんて、なんて、羨ましい、いや、嘆かわしい。
 あ。しまった。弥生が山木や儀拯とエッチな事をしている想像をしたら、ちょっと勃ってしまいそうになった。いかんいかん。そう簡単に勃ってたまるか。毎晩の最高強度の自主トレは伊達じゃないって事を証明してやる。
 ダメだよ。反応しちゃ。
 どうだ。これで判っただろう。頭の中でどれだけエッチな事を考えても、制御しようと思えば制御できるんだ。男をなめるなよ。
 ん? え? なにいまの感触?
 副読本から視線を落とすと、すぐそばで、弥生のポニーテールの赤いリボンが揺れている。
 欲棒の先端に生暖かいぬるぬるしたものが触れている。
 え。これってまさか。
 欲棒の先端部分をなぞるように弥生の柔らかい舌が触れている。先端の先端の射出口を緩ませるように、ゆっくり、繊細に、揺れるような舌先が、触れては離れ、離れては触れる。生まれて初めて体験するその感触に理性と呼ばれているものが溶けそうになる。
 手に持っている副読本を放りだして、いま、この行為を施してくれている弥生の顔が少しでも見える大勢を取りたい衝動があるのに、なぜか、僕の副読本を音読する事をやめる事ができない。
 普段の自主トレの自らの手が与える力強い快感とは全く別の、どこか懐かしいような感じがする感覚に、欲棒が従順に従って膨張しようとするのを、僕の裡の何かが必死に押し留めている。
 いったい僕は何と戦っているんだ?
 弥生の舌は、次第に触れる強度と動く速度の段階を上げて、欲棒の先端部分の様々な箇所で踊るように動き、裏側の際の部分を何度も丹念に擦り上げる。
 なんとかしてこの指を動かして、視界の殆どを覆っている副読本を取り除きたいと思っても、なぜか、体を動かす事ができない。僕の目は僕の本当の意思とは無関係に英文のテキストを追って、僕の口は僕の本当の意思とは無関係にそれを音読している。そんなばかな。
 ダメだよ。反応しちゃ。
 そう言われて、簡単に反応したら負けなような気がして、ゲーム感覚で、自らへの挑戦と、男子を軽くみているような弥生に対する妙な対抗意識で、少しでも勃起するのを遅らせてやる、と思ったのは事実だ。だけど、どんなにがんばっても、実際に、弥生の手で直接刺激されたら、せいぜい数十秒で我慢できなくなると思っていた。もし弥生が続けてくれたらあっさり発射して、「そんなの無理に決まってるじゃん」と笑い話にしようと思っていた。ほんの数分前までは。
 この金縛りのような状態はいったいぜんたい何なんだ。体の自由は効かず、音読をやめる事もできない。さっきから同じ見開き頁のテキストを、オートリバースのカセットのように、繰り返し読んでいる。もういい。変な意地を張るのはやめよう。直接手で触ってくれるだけでもびっくりなのに、実際の経験がないので、自主トレで妄想する事さえほとんどない事を、いま、実際に施して貰っているのに。あまりに予想な事が起きているから脳も体も誤作動を起こしているのか。
 自分の体が自分の体のように感じられない。副読本を握っている指の感覚も、床に触れているおしりの感覚も、壁によりかっている背中の感覚も、いつもとどこか違う。まるで夢の中にいるような。ひょっとしてこれは夢なのか? 夢だからこんな変な事になっているのか? いや、夢ならば、こんなにリアルに状況を自覚する事はできない筈。
 でも、もし、生まれて初めて見る、いまだかつてないリアルな夢だったとしたら?
 やがて、欲棒の先端全体が生暖かい柔らかいものにすっぽりと覆われた。
 夢か現実かなんて、いま、この瞬間には関係ない。
 いまこの瞬間、僕は、生まれて初めて、大好きな女の子に一番して貰いたい事をして貰っている。弥生の生暖かくてぬるぬるしている唇の感触がはっきりと感じられる。何が起こっているかを自覚はできている。
 だけど、僕と僕の体の神経接続は、僕のいまこの瞬間の意思とは無関係に誤作動が続いている。弥生に施して貰っている、いまのこの状況を、全身全霊で楽しんで、思う存分最大限に勃起して、もし弥生が許してくれるなら弥生の口の中に存分に放ちたい。もし弥生が許してくれるなら、僕も弥生の身体に触れて、一線を超えられるなら超えてみたい。
 僕はそう思っているのに体を動かす事はできず、弥生の唇に覆われて至高の刺激を受けている事は認識できても、欲棒が硬くなる気配は全くない。
 ダメだよ。反応しちゃ。
 いくらそんな事を言われても、こんな刺激を受けたら反応せずにはいられない筈なのに、今年で一番素晴らしい事、いや、もしかしたら、人生で一番かもしれない出来事が、現実に起きているのに、こんな事ってあるだろうか。
 なにか方法はある筈だ。あきらめるな。
 どこからか、そんな声が聞こえたような気がする。
 眠っている時に金縛りになった時は、あせればあせるほどとけなくなる。
 いったん落ち着こう。
 でも、目を閉じて深呼吸をしようとしても、目が英文テキストを追い、口がそれを音読するのを、どうしても、止められない。僕の目は僕の意思とは無関係に時々瞬きをして、僕の鼻は僕の意思とは無関係に必要なだけ呼吸をして、僕の口は僕の意思とは無関係に低い声でつぶやくように言葉を発し続ける。体の制御を取り戻そうと必死に強く念じてみても、指先さえ動かせない。そして、僕は、いまのこの状態は、それでもなお、僕の意思で行っている事なのだと、意識の奥底ではちゃんと判っている。
 副読本の向こうでに見える、弥生のポニーテールのリボンは、最初に比べて揺れ幅が大きくなっている。弥生が口に含んで施してくれている感触はたしかにあるのに、欲棒がその刺激に正常に反応する回路はどこかで遮断されている。
 ……弥生が僕の欲棒に触れてからどれくらいの時間が経ったのだろう。
 一分も経ってないような気もするし、果てしなく長い時間が過ぎているような気もする。
 ほんの少し顔を右側に向ければ、学習机の上の時計が視界に入る筈なのに、顔を動かす事ができない。
 金縛りから逃れようとあまりにも強く念じすぎたせいなのか、瞼が急に重たくなってくる。
 副読本の文字がかすんで歪んで判読できなくなり、僕の唇からは発する音は、針がひっかかったレコードのようにさっきから同じ部分を繰り返している。
 こんな状況で眠たくなるなんて、そんなばかな。
 そう思っても、瞼が閉じられて意識が溶界していくのをどうしても押し止める事ができない。
 瞼が閉じられる瞬間、何かが手から滑り落ちたような感覚と、何かが何かに当たったような音が聞こえ、欲棒の先端が、それまでの柔らかい感触ではなく、やや硬さを感じる部分に擦るように触れ、薄れゆく意識の中で、その一瞬の擦るような刺激で、勃起もしていない欲棒から、快感を感じる事もなく、何かが迸ったような……。
 目を開けると薄暗い場所にいた。
 自分がどこにいるか一瞬理解できず、やがて、自分のベッドにうつ伏せになっていると、だんだん、判ってきた。
 窓の外はすっかり暗くなっている。
 学習机の上の時計の針は4時過ぎを指している。
 こんなに暗いのにそんな時間の筈はないと思ってよく見ると秒針が止まっている。
 弥生がこの部屋に来たのは4時15分前くらいだった筈。
 部屋を見回しても弥生はいない。
 紐を引っ張って天井の電気を付ける。
 僕は下半身に何も身に付けていなかった。はいていた筈のズボンとパンツはベッドの下に乱雑に脱ぎ捨てられていて、学校に行く前にきちんとメイクした筈のベッドはぐちゃぐちゃに乱れている。
 服を着て1階に降りて時計を見ると6時過ぎ。まだ両親は帰って来ていない。
 弥生の家に電話をしてみると弥生の母親らしき女性が出て、
「今日は塾があるので遅くなるんですよ。電話があった事を伝えておきますね」
 と言われた。
 翌日の放課後、早めに部室に行って、で弥生に「昨日の事なんだけど……」と話しかけると、
「ああ、昨日、電話くれたんだってね。すごく遅くなったので返さなかったけど、なんだったの?」
 と言われ、咄嗟に、
「あれ、なんで電話したんだっけ? 思い出せないよ」
 と半ば無意識に返す。
「なにそれ」
「昨日、寝るまでは覚えてたんだけどなあ」
「どうせくだらない事でしょ」
 弥生はしきりにカバンの中をまさぐりながら吐き捨てるように言う。
「なにか忘れもの?」と訊くと、
「いつもここに入ってる筈なんだけどなあ。いつもの赤いの」
 揺れる弥生のポニーテールの赤いリボン。
「あ、いつもの赤いリボン?」
「そうそう、おっかしいなあ、あれ結ぶと練習で気合入るんだけどなあ」 
 口調も表情もいつもと同じ。吹奏楽部の同学年男子とのどうって事のない会話。
 嘘をついているようには全然見えない。
 弥生はいつも部室に入ると練習前に髪を束ね直して赤いリボンを結ぶ。
 昨日はリボンを結んでさあ練習開始という所で顧問の体調不良が伝えられた。
 弥生は本番想定の全体練習を好み、顧問と部長ではダメ出しの精度が違うので顧問がいない時の自主練習(自由参加)はパスする事が多かった。
 僕は完璧にはほど遠い部分がいくつかあったので、少しだけ自主練習をするつもりだったけど、
「いまからちょっとだけ亜嵐の家に遊びに行っていい?」
 と弥生に言われて、断る理由もないので承諾したのだ。僕の記憶では。
 今日は通常通り5時半頃まで吹奏楽部の練習が行われた。
 弥生はいつもの赤いリボンがないせいか、普段よりもミスが目立った。
「昨日は巻いていたよね、いつもの赤いやつ」
 楽器を片付けながら弥生に話かけてみる。
「うん、昨日はあった。結んだ所で今日は中止って」
「何してた?」
 あくまで何気なく、さりげない口調で。
「何って?」
「昨日、急に、中止になって」
「あれ、何してたっけ……なんで、そんな事訊くの?」
「いや、俺はすぐ帰ったんだけど、なんか、家の近くで見かけたような気がして」
「私を?」
「遠くからだから、よく判んなかったけど」
「ああ、昨日は早めに塾に行って、自習とかしてたんだ」
「そっか。じゃあ、人違いか。じゃ、また明日」
「じゃーね」
 どうやら、弥生が僕の部屋に来た事も、弥生がいそいろしてくれたのに金縛りで体の自由が効かなかったのも、一瞬の刺激で勃ってもいないのに弥生の口の中に出してしまったかもしれないのも、全て夢だったようだ。
 では、なぜ下半身裸だったのか、なぜベッドが乱れていたのか。
 それは、つまり、夢遊病的なあれで弥生とエッチな事をする夢を見て、自分で脱いで、自分でベッドで暴れた、という事なのだろう。自分でも信じられないがそれしか考えられない。自らの性欲を持て余している十七歳の男子高校生なら、どんな摩訶不思議な事も起こり得るって事なのだろう。
 夢の中では部屋の隅っこの壁に寄りかかった体勢だったが目が覚めたらベッドにいた。
 夢はもっと続いていて、ベッドに移動して、もっといろいろしていたのかもしれない。
 どうせなら、その夢も覚えていたかった。
 そう思ってベッドにダイブして、クッションを弥生に見立てて、下半身を押し当てて動かす。
 昨夜は夢の衝撃が大きすぎて久々に自主トレをする気がしなかったが、いま、想像して、こうやってクッションに押し当てるだけで、欲棒はじわじわと充溢してくる。ああ、夢とは言え、なんでちゃんと勃たなかったのだろう。
 クッションに腰に押し当ててぐるんと横に一回転すると、ベッドと窓際のすきまの床に何かが落ちているのが見える。なんだこれ、と顔を近づけると、夕日を浴びてきらりと光ったそれは、赤いリボンだった。ぞくっとして欲棒が縮み、その瞬間を境に、僕の欲棒は全く不能になった。
(続く)
 
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■未来大戦BEPP-IN
 炸裂エクスターナジー 
 近未来セクシーSFコメディ(R18)

セックスのエクスタシーを超強力エネルギーに変換する画期的なテクノロジー(通称・エクスターナジー)が理論化された近未来、「本当にエネルギーに変える事ができればこれが究極の自家発電だ」「実験に使われた人物は特殊な体質で汎用性は疑わしい」「エネルギーに変える為の装置を作るには莫大なコストがかかるので経済的合理性はない」と議論は紛糾して実現化に向けた開発予算はつかず、その研究じたいがシャットダウンされかけていたまさにその時、突如異星人が地球に襲来、異星人と地球は戦争状態に陥る。

異星人が発する特殊な強力な妨害電波(通称・E電)が半径1㎞内のコンピュータの処理能力を著しく低下させるという軍事技術ギャップにより地球側は連戦連敗(兵器の能力じたいはほぼ互角)、敗ける度に領土割譲を要求され、このままでは地球人の住む場所がなくなってしまうのでは、と誰もが危惧しはじめた頃、エクスターナジーを応用した技術がE電を無効化できる事が判明して地球側は反抗に出る。

エクスターナジーを採用した特殊突撃機(通称・エクスウィング)が大量に実戦に投入され、フランス、イタリア、スウェーデン、アメリカなどセックス好きを正々堂々と公言できる人が多い国ほど異星人側に勝利して領土を回復して行く中、実はセックス好きでもそれを隠す傾向が強い国民性の日本はエクスウィングを使いこなせる人材の絶対数不足でじりじりと領土が削られていく。ここに至って遂に日本政府は重すぎる腰を上げ、エクスターナジーのスペシャリストを養成する特別士官学校を九州・別府温泉地区に設立。様々なテストや実技(グループセックス)で「ベスト・エクスターナジー・パーソン&パーソン」(通称・BEPP)を選抜・養成するシステムが始動。この特別士官学校の卒業生は性的合体のコールとして「BEPP-IN」を使用する名誉を与えられる(正式な発音は「ベ〜〜っぷ いん!」だがすかして軽く「ぺっぴん」と発音する者もいる)。

特別士官学校BEPPに、数多くの実践で鍛えてきたセックスの猛者・杏奈(19)と愛国心に燃える童貞の秀一(19)が入学する。杏奈は抜群のルックス、日本人離れしたスタイル、アメリカ仕込の強烈な性技と三拍子揃ったスーパーな素材(トップ合格)。秀一は実践経験値ゼロながら、基礎体力とVRセックススコアは超ハイスコアの逸材。ふたりは小学生時代に半ば冗談で将来を誓い合った幼馴染み、小学校の途中で杏奈がアメリカに引っ越した為、約10年ぶりの再会。杏奈は秀一に「10年前の約束を覚えてる?」と訊かれてつい嘘をついて自分も処女を守ってきたように答えてしまうが、そんな杏奈の嘘はすぐにバレて、秀一は杏奈を避けるようになる。

全員の相性チェックをする為のグループセックス実技で秀一は杏奈の相手をする事を拒否、他の女子生徒を相手にした試技はこととごとく失敗する(勃起しない)。一方の杏奈は他の男子生徒を全員骨抜きにする実力を見せるが、エクスタシー能力が高すぎて逆にアンバランスが発生してエクスターナジーが安定駆動しない(双方同レベルのハイレベルな快感が望ましい)。実技以外の各種テストでは杏奈と秀一の相性は空前の高数値を示している。愛国と性技に燃える熱血女性教官は秀一を覚醒させて杏奈とペアを組ませるべく、特別授業を試みる。教官が様々な技を繰り出すが秀一は勃起しない。完全に自信を喪失した秀一は学校を脱走する。

異星人の母船が地球の衛星軌道に到着する。異星人は地球完全征服の橋頭堡を築く国として日本が最適という結論を出す(施設が豊富、水と食事がおいしい、人民は従順、軍は脆弱)。日本完全占領の為の大戦力が母船から襲来して、日本の周囲の領空は支配され、福岡、大阪、名古屋、横浜、東京、仙台、札幌は多数の戦闘機・爆撃機による同時攻撃にさらされる。通常戦力もエクスウィングも次々に撃破されて、日本の完全占領は時間の問題。杏奈と秀一の両親を含む多数の日本人が捕虜になる。

※くだらない内容をヒーロードラマのノリで演じる(アオイホノオ)
※本来はペアでしか発動しない筈のエクスターナジーをVRの妄想力でひとり(ソロプレイ)で発動させる特異体質の男・范(通称・范ソロ)
※「セックスもエクスタシーもテクニック」と豪語する天才型ライバルは肝心な所で逃げる(勝てる勝負しかしない)

※クライマックス
秀一と杏奈は最後のエクスウィングに乗り込んで最後の攻撃に出る。
杏奈「メインフレームは健在。わたしたちが同時に絶頂に達して、最大出力のエクシターナジーボムを母船の原子炉破壊の目標スポット(コードネームはGスポット)に的中させれば破壊できる。だけど……」
秀一「判ってる。母船の爆発に巻き込まれて僕たちは助からない可能性が高いんだろ?」
杏奈「……それでも行くか?」
秀一「やれるとは言えないけど、ここまできたらやるしない」
ここに至ってふたりの性交確率は100%だが作戦の成功確率は限りなく0%に近い。
ふたりが搭乗したエクスウィングは事前に入手した偽装コードで敵を欺きながらオートパイロットで母船に迫る。
杏奈が最高強度のフェラを秀一に施すが秀一のチンポは反応しない。
異星人側の戦闘機が不審な動きをするエクスウィングに気付いて背後から迫ってミサイルを発射、あわや撃墜される寸前で、戦域を離脱していた天才型ライバルがミサイルを撃墜、そのまま異星人側の戦闘機群と戦闘になる。
杏奈と秀一はシックスナインの体勢も依然として勃起しない。
母船の内部に侵入。
范ソロのVR的な何か(これから考える)で遂に秀一が反応する。
エクスターナジーゲージが表示限界値へピューン、防御バリアの出力は表示限界を超え、異星人側の
砲撃を全て跳ね返す。
挿入したとたんにエクスターナジーゲージが表示限界値へピューン。
しゅう計測限界を超えて計器が壊れて煙が出て機内に火の手が上がる。
秀一と杏奈「BEPP-IN(べーっぷ いん!)」遂に合体するふたり。
秀一「ああ。すごいよ杏奈。全身が熱い。燃えるようだ」
杏奈「私も。ああ凄い。熱い……ちょっとホントに燃えてるよ」
エクスウィングは炎上したまま原子炉に突っ込む。
その灼熱の中で秀一と杏奈は同時に絶頂に達してエクシターナジーボムが放たれる。
爆発する母船。
 
※アイディアメモ
○絵に書いたようた平凡な学生が適性検査でバトルマシンのパイロットに特A判定、特A判定が出た学生は有形無形の圧力で志願させられる方向に誘導される
○シニカルな技術士官「もちろんコンピューターが万全ならパイロットなんて要らない。これはもう秘密でもなんでもなくなってると思うけど、やつらはCA(コンバットエリア=戦闘空域)では強力なジャミングとハッキングをかけてくる。そんな設定の人気アニメもあったと思うが、これによって誘導兵器が使えなくなるので近接戦闘になる。って言っても、目で見えるうような距離ではない。このメットを装着する事で、これも昔の人気アニメにもあったような設定だが、君たちパイロットの脳は、バトルマシンのメインフレームに神経接続されて、言うなれば、脳で念じるだけで武器管制も操縦系も同時にコントロールできる、厳密に言うと、それを司っているコンピューターと共同作業が行える。ところが、さっき言ったように、敵さんはジャミングとハッキングをかけてくるので、これに対抗しなければいけない。詳しい話はここでは端折るが、脳メインフレーム統合オペレーションシステム、通称・BMSを防御して、なおかつ、その出力を上げるには、この理屈は私自身よく理解できないが、とにかく、エクスターナジーが現状最有力、というか、エクスターナジーが発動していない状態でCAに入れば、やられに行くようなもんだ。だからパイロットは言う「やれれるに前にやりはじめろ」。
○アムステルダム条約で操縦ブロック(ライフコアブロック)の破壊に至るレベルのハッキングは禁止されているが、物理攻撃の直撃度合いによっては、このブロックが破壊されないとも限らない。万が一パイロットふたりに危険が及びそうな場合は、腹巻きかコルセットのように腹部を覆っている特殊スーツが、瞬時に全身を覆う事になってはいるが、その時に結合状態だった場合はふたりともひとつのスーツにくるまれてしまう。戦闘不能になってその状態で回収された場合は〈任務外のお楽しみ〉とみなされて同僚パイロットや担当メカニックに食事をオゴる事になっている。

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■35→50(ミドルエイジクライシス)
「課長 島耕作」第2回(1985年)は「35歳 胸がキューンと熱い人生まん中あたり」というコマで終わる。柳沢きみおの80年代90年代の作品の登場人物は35歳でミドルエイジクライシスに悩む。柳沢きみお「寝物語」VOL.22の最後のコマ「私は明日36歳になる」は、谷崎潤一郎「痴人の愛」最終行の引用と想像するが、谷崎の時代から80年代までは35歳は完全なる青春の終わりだったのだろう。当時を生きてきた僕の感覚でも、少なくとも1980年代前半までは男も女も30歳を過ぎれば明確に中年で(20代後半の女性は熟女と呼ばれてた)35歳は人生の折り返し地点だった。
 80年代前半まではアイドルは20歳まで、処女性をほのめかす歌を歌うのは17歳までという暗黙の了解(?)があったが、そんなものはとっくに崩壊して(私見ではアイドル歌謡界の諸々のあり方の形が変わるきっかけはおニャン子クラブのヒット)、いまは30歳を過ぎてもアイドル。かつては夢に挑戦するのも25歳までと言われていたのが、30歳になり、40歳になり、錦鯉の成功により(少なくとも芸人は)50歳までは挑戦し続けて良いというムードになっている。アイドルの寿命も今後更に伸びるだろう。「人生100年時代」と言われるいまは80年半ばの35歳はいまの50歳相当と言い切っても過言ではない。僕の場合はミドルエイジクライシスと呼びたくなる明確な諸々の衰えは、55歳頃に明確に始まって、コロナ禍が重なって一気に坂道を転げ落ちたような感覚がある。今後は更に寿命が伸びて「人生120歳時代」になり、ミドルエイジクライシスと言えば60歳頃から、なんて事になる可能性もあるのだろうか。ひょっとして人生150年時代になって、ミドルエイジクライシスと言えば75歳頃から、なんて事になる可能性も絶対にないとは言い切れない(山中伸弥さんに期待!)。

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■ダジャレで覚えるスペイン語
【 maleta 】スーツケース ※スーツケースを盗まれた
【 aeropuerto 】空港 ※空港でエロってピュ〜っと
【 queso 】チーズ ※そのチーズ食えそう?(発音はケソ)
【 azucar 】砂糖 ※食べ過ぎないよう砂糖をあずかる
【 quiero 】欲する、〜したい ※飯食ってセックスしたい(食いエロ)(発音はキエロ)
【 abuelo 】祖父 【 abuela 】祖母
 じいちゃんばあちゃんあぶく銭、じいちゃんエロい、ばあちゃんエラ

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■20XX(最後の打席)

前半3イニングを終えて6-0とリードされたが、後半は僕が4回と5回に2打席連続ソロ本塁打、投手陣も後半3イニングは3人とも無失点で4点差で最終回(6回裏)を迎えた。
 一番の僕はどん詰まりのセカンドゴロ、二番山原もセンターフライで2死走者なしの絶体絶命の状況から、3番中根がヒット、4番坂井が三塁手のエラー(イレギュラーバウンド)で出塁、5番後藤がウォーク、6番笠井もウォークで押し出しで1点返して3-6の3点差、なおも2死満塁の場面で、この試合7回目、このイニング2回目の打席がまわってきた。
 ここで俺が満塁本塁打を打てば逆転サヨナラでチャンピオンシリーズ優勝、凡退すれば相手チーム優勝だ。まさか、現役最後になるかもしれない打席がこんな場面でまわってくるとは……。
「打てば優勝するっていう場面であなたが打席に入る夢を見たよ」
 朝食の時に妻の弓枝が言っていた夢が本当になった。
「で、僕、打った?」
「打席に入って構えた所で目が覚めちゃった。でも、もし、本当にそうなったら、なんか、打てそうな気がする」
 いつもの弓枝の屈託のない笑顔。
 この笑顔にずっと何かの力を貰い続けてきた。
「打てそうな気がする」は高校の野球部のマネージャーだった弓枝の当時からの口癖。
 弓枝の言葉と笑顔にガツンと癒やされたのは僕だけではなかった筈だったが、なぜか弓枝は僕を選んでくれた。出会ったのは35年前、結婚したのは25年前。過ぎてしまえば一夜の夢。初めて会った時の弓枝の
笑顔はいまも脳裏にありありと残っている。
 バッターボックスに向かう途中で時の流れが止まって視界から周囲の光景が消えた。高校時代の弓枝のイメージをきっかけに、様々な過去の記憶が360℃VRシネマのように僕を取り囲み、その当時の感情が強烈に次々に去来する。
 父親としたキャッチボールでグラブにボールが収まる感触と音。
 グラブに擦り込むオイルの匂い。
 平凡なフライを落とした時の恥ずかしさ。
 死産を告げる弓枝の泣き笑いのような笑顔。 
 プロ野球最後の年に打った代打サヨナラ本塁打の放物線。
 野球場の歓声。照明灯の光。滑り止めスプレーの匂い。
 バッターボックスに向かいながら状況を整理する。
 本塁打を打てば逆転サヨナラ、長打でも同点になる可能性が充分あるので、打てそうな球が来たら初球から強く振る。カウントによってはウォークでもいいが、見逃し三振は絶対にしない。普段の打席とほぼ同じだが、打てそうな球が来たら強く振る事はより強く意識付けする。
 相手投手の渡辺は、クローザー経験6年目の32歳、190㎝110㎏の右投げ。何度も対戦して手の内は判っている。基本は速球とスライダーとチェンジアップ。左バッターの僕の内角低めに曲がって落ちて来るスライダーは見逃がせばほぼボールだが、たまにバックドアでゾーンに投げてくる事もあるので要注意。チェンジアップは重要な場面では殆ど投げない。今日もここまで一球も投げていない150㎞/h前後の速球が内角高めまたは外角低めのゾーンにビシッと来たらヒットはもちろんファアゾーンに打つのも難しいが、そこに決まるのは滅多にない。特に外角低めに来る事は滅多にない。全般的に速球の制球はややアバウトながらも、力でねじふせて、ファウルアウトを狙ってくる典型的なパワーピッチャー。今日はここまで速球もスライダーもゾーンにあまり来ていないが、連続押し出しを避ける為に初球はゾーンを狙ってくる筈。狙い球は真ん中近辺の速球だ。 
 初球。真ん中近辺に来た球を迷わず強く振りに行くが、タイミングがあわずに空振り。速球ではなく、初球には滅多に投げないチェンジアップだった。いつもなら低めに来るチェンジアップが真ん中やや高めに来た。予測していれば打てた球だがこの球はなかなか予測できない。
 2球目。内角膝もとのスライダーを見逃してボール。いつもならもっとはっきりボールゾーンに来る球がけっこう際どい所に来た。渡辺もここに至って最後のアドレナリンが出てきたのかもしれない。ベンチにちらっと目をやると、本永監督からいつもの「強く振れ」のサインが出る。

「バッティングだけならまだ何年かできるんじゃないか?」
 肩が衰えて以前のようにライトのポジションからホームまで鋭い返球をする事ができなくなったので、今季限りでの現役引退を決意して、シーズン後半開始当初に本永監督にそれを告げると即座に慰留され、打者専念の可能性を尋ねられた。たしかにバッティングには五十歳シーズンの今年も限界を感じてはいないが、僕はもともと打撃よりも守備で売り出した選手で、新野球が打者/守備者完全分離ルールを採用した後も、少なくとも前半3イニングは守備にもついていた。プロに入ってからもずっと憧れていたイチロー選手が果たせなかった「少なくとも五十歳まで現役」という夢を、独自ルールの新野球ではあるが、なんとか達成して、肩も衰えたし、キリが良い年齢でもあるので、五十歳の今年でやめるのが自然な流れだと昨日まで感じていたが、実際に「今日で引退」という日を迎えてみると、僕の心は揺れているようだ。「現役最年長選手・鶴田、今季で現役引退の意向」という記事は出ているが、正式な引退発表はしていない。

 プロ野球なら次の3球目も際どいコースを狙ってくる可能性が高いが、新野球は3ボールでウォークなので、満塁のこの場面ではゾーンに投げ込んでくる。次こそ一番の武器である高めの速球が来ると予測する。
 3球目。高めの速球に迷わず強くバットを振りに行く。芯に近い部分で捉えた感触があるボールは、鋭いライナーでどんどん遠くに飛び、大きくカーブを描いてライトポールの数メートル右側を通過して内野スタンドに飛び込んだ。真ん中高めに来たと思った速球は若干内角寄りに制球されていたようだ。1ボール2ストライクと追い込まれ、バッターボックスを外して軽く素振りをする。

 今日も少し早めに球場に来て、いつものルーティーンをこなした。軽いウェートトレーニグ、ジョギング、ストレッチで身体をあたためて、キャッチボール。緩いやまなりなら長い距離を投げられるが、少し力を入れて低い軌道で速い球を投げてみると、やはり、肩・肘・背中など身体のあちこちが小さな悲鳴を上げるのが感じられ、100%の全力で投げたらどこかが故障しそうな感覚がはっきりある。昨年から今年にかけて様々な治療を行ってみたが全く改善しなかった。外科手術によって改善する可能性は指摘されたが、投手でもないのでそこまでやる気はない。
 練習の合間に記者が声をかけてくる。最近の若い選手は合間の取材もオンラインで受ける事が多いが、僕は一貫して直接取材派。現役引退に関する質問は予めNG指定しているので、直接的にその言葉は出さないものの「いよいよ今季最後の試合ですが今日の調子はどうですか?」的な質問はやはり多い。「いつも通り、なにしろ、トシもトシなので、どこかを壊さない程度に、自分なりの全力で」そんな内容の答えを微妙に違う表現で話す。記者との関係は、近づき過ぎず、遠ざけ過ぎず、常に微笑と適度なユーモアで、という方針で、若い頃から、ずっとやってきた。

 バッターボックスに入り直す時に状況を再整理する。
 この場面で投手として一番避けなくてはいけないのはもちろん本塁打、本塁打なら逆転ナヨナラでウチが優勝。その次に避けるべきは長打で走者一掃の同点。当然外野は深く守っているが、打者も走者も完全分業・交代自由(アメフトのようなルール)の新野球では、当然、満塁の走者は全員走塁のスペシャリストなので外野フェンスに到達する当たりなら一塁走者も帰ってくる確率が高い。もちろん連続押し出しで2点差になるのも嫌だが、スライダーやチェンジアップの制球ミスによる本塁打や長打は悔いが残る。ここに至っては、開き直って一番自信がある速球を、打ってもファウルというゾーン近辺に続けて投げてファウルアウトを狙ってくるだろう。150㎞/hを超える速球を内角高めにビシッと制球されたらかなり難しいが、なんとかフェアゾーンに鋭い打球を打つ。
 僕は若干バットを短めに握り直した。内角高めはコンパクトに鋭く、もし外角低めに来たらなんとかバットに当てて逆方向だ。
 4球目。内角高めの速球をファウル。見逃せばボールだったかもしれない。

 試合前のバッティング練習でいつものようにゲージに一番最初に入った。いまは試合でやる事は殆どないが、習慣として、最初の数球はバント練習。三塁側、一塁側に転がし終えると、これも試合でやる事は殆どないが、バスターで三遊間にゴロを何球か打つ。打撃投手のタイミングを判った所でしっかり捉えてライナーを打つ練習に移る。こうやって試合前にバッティング練習をするのも今日が最後かもしれない、と思うと、不思議な感覚がした。
 たしかに、守備は完全にあきらめて打撃専門選手としてなら現役を続けられるかもしれない。監督が言っていたのはリップサービスで戦力外通告をされても、他のチームから声がかかるかもしれないし、独立リーグに移籍する手もある。
 で、僕は、自分がまだ、野球を続けたいと思っているのか?

 5球目。真ん中低めのスライダーを見逃してボール。
 カウントは2ボール2ストライク1ファウル。

「いまから10スイングで3本スタンドインしたら、今日スタメンな」
 いつの間にかケージの後ろに立っていた監督にそう言われたのは、プロ野球に入って数年が経ったある日の試合前。そう言われたら、それまでは何本かスタンドに届いていたのが、全然飛距離が出なくなった。
 天性の長距離打者なら、多少詰まっても、多少先っぽでも、もともと持っているパワーでスタンドに運べるが、僕のような中距離打者は強いライナー性の打球で外野手の頭上を超えるのがベストで、その打球にたまたま角度ついて力がうまく伝わった時はスタンドに届くが、いくら力んで遠くに飛ばそうと思っても、狙って本塁打を打つのは難しい。
 当時20代前半の僕はそのあたりを充分には理解しておらず、監督が軽い冗談のつもりで言ったその一言で、多分余計な力が入ってしまっていた。
 打撃投手が投げる130㎞/h程度のボールは反発力が期待できないので距離を出すのが難しい、僕の場合は140㎞/h程度のやや高めのストレートが一番飛距離が出やすい、と判ってきたのは30歳を過ぎてからで、年齢を経るにつれて、どんどん力みは取れて、バッティング練習は「バッティングとはこういうものだ」という事を念の為に復習する動作になってきた。特に今日は、これが最後かもしれないという妙な開放感もあって、一切力きまず、しっかりミートするだけを心がけて打っているが、やけにボールが素直に綺麗に飛んでいく。
 今日の試合でもし本塁打を3本打てたら現役を続けようか。
 そんな考えが頭に浮かんでも、体はリラックスしたままで、バッティング練習を続けて、最後の一球も理想的な放物線でスタンド届いた。

 6球目。再び内角高めの速球をファウル。
 4球目と同様に見逃せばボールだっだったかもしれないがこの場面で見逃がすのは難しく、かといってフェアゾーンに鋭く打ち返すのも難しい球だった。
 これで2ボール2ストライク2ファウルの完全フルカウント。
 次の1球がこの打席最後の1球。
 ファウルなら2ストライク後の3ファウルでアウト。
 見逃してボールならウォーク。
 見逃してストライクなら三振。空振りならもちろん三振だ。
 現役最後になるかもしれない打席で見逃し三振だけは絶対にしたくない。はっきりボールと判る球以外はとにかく振って行こう。

 今朝の明け方に目が覚める直前に見た夢の世界には、新野球は影も形もなく、僕は39歳で引退してそのまま所属していたプロ野球球団のコーチになり、若手選手のお手本としてバッティング練習をしていた。なんの気負いもなくリラックスしてバットを振ると、自分でも意外に感じるほどきれいな打球がはるか遠くに飛び、まだまだ現役でできたかもなあ、と思っていた。バットの真芯でボールを捉えた時に伝わってくる感覚、その瞬間に感じた「バッティングは力じゃない」と思った意識は、とても夢とは思えないほどリアルだった。

 7球目。
 投手が投げた瞬間、今朝見た夢がフラッシュバックして、ほんの一刻、自分がどこで何をしているか判らなくなった。
 ………………。
 ……大歓声と相手野手の動きで、ボールが大きな放物線を描いてライトスタンドに向かって飛んで行くのが判った。
 これって僕が打ったって事だよな?
 右翼手の頭上を超えてそのままスタンド最前列に飛び込むうように見えたボールは、その寸前で大きくジャンプした右翼手のグラブの先端にかろうじて収まった。
 僕は1塁をまわった所で立ち止まって打球が捕られたあたりをしばらく見つめ続けた。僕の打球を捕球した右翼手は、両手を上げたまま、勢いよく僕のすぐ横を駆け抜けて、マウンド付近に集まった歓喜の輪に加わった。
 試合に負けてチャンピオンシリーズ優勝を逃したにも関わらず、なぜか、あまり悔しさはこみあげてこない。できれば自分もこの歓喜の輪に加わりたい。そんな突拍子もない考えがふいに浮かんで、あわてて、自分の中で打ち消した。
 バックネット裏に視線を送ると、泣き笑いのような笑顔の弓枝が立ち上がって、小さく、手を振っている。

※TPBB(タイムパフォーマスベースボール=Tボール)の主な独自ルール
・6イニング制(前半3イニング/ハーフタイム15分/後半3イニング)
・3ボールでウォーク、2ストライク後の3ファウルでアウト
 2ボール2ストライク2ファウル=完全フルカウント(最多7球で打席終了)
・打者/走者/投手・捕手・野手の完全分離
 打者は6人、打者は原則打つだけ、各打者に専属走者
 投手・捕手・野手は毎イニング交代再出場自由(イニング中は原則不可)

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■京極夏彦「邪魅の雫」2006年発行

細かいメモを取らない限り、誰が誰だか判らなくなる事必至。
最後に京極堂が語る「澤井に乱暴された話」は誰から聞いたのだろう?
全ての言葉(物語)は嘘と言えば嘘であり、
人から人へと語り継がれる度に最初の話から少しづつズレていく。
人の数だけ物語があるという事をこの小説全体が語っている。

邪魅の雫メモ(拾い読みするなら21、4、7、11、13、17、28)
1 私(西田)が石井警部にストーカー行為に関して相談(喫茶店「茶房松木」)
2 益田が今出川(榎木津の母方の従兄)から調査依頼を受ける(薔薇十字探偵社)
3 江藤が死体を発見して山下警部補の尋問を受ける(現場→交番)
4 青木が木場に澤井変死事件に関して話す(普通の青酸カリではない?)
5 大鷹が真壁恵と話す(回想でもうひとりの真壁恵の身辺警護の話、大磯の海岸)
6 女(真壁恵?)に男(赤木?)が話す(内的描写)
7 益田が中禅寺と関口の話を聞く(京極堂)※小説の批評、世間
8 私(西田)が宇都木実菜に関して語る(海に面した館)※原田美咲(画商)
9 青木が江藤と話す(所轄の交番)澤井と赤木のつながり
10 江藤がおかみさんと話す ※大仁田良介(うはあ)
11 益田が関口に相談(中野駅前の喫茶店)※神崎宏美(榎木津が過去に交際)
12 大鷹が赤木と話す、大鷹が雫を欲しがる若者と話す(隣の駅の保養所)
13 青木が中禅寺の話を聞く(京極堂)※石井部隊、帝銀事件 ※敦子(科学と悪)
14 私(西田)が美咲、あやめ、大仁田の話を聞く(西田邸)
15 益田が関口と話す(大磯の馬場)※関口の愛憎論 ※神崎礼子(調教師)
16 江藤が赤木の部屋で雫を発見、榎木津に遭遇 ※江藤から見た大鷹
17 青木と斉藤が情報交換(商人宿)※澤田(誤植?)※郷嶋 ※赤木死亡
18 大鷹と真壁恵が話す(保養所から高田屋に移動)
19 益田と関口、雑貨屋のなべから重要証言→山下と話す
20 女性(主語なし)と男(多分江藤)の会話 ※地の文
21 捜査会議→内輪の会議(公民館→平塚署)※まとめ(混乱したらこの項)※大鷹死亡
22 私(西田)が宇都木実菜の死を知る(自宅)※内的混乱 ※小壜を持った男が来る
23 益田が関口と話す(平塚署仮眠室→取調室)※整理 ※青木、亀井
24 神崎宏美の内的告白 ※主語なし ※毒薬を作った祖父は逃げた
25 青木、関口、益田が榎木津を迎えに行く ※6人目の被害者
26 私(西田)の独白(彼奴を殺した)
27 榎木津が大仁田を視る(女性)、郷嶋・京極堂登場(平塚署)※益田視点
28 京極堂が全容を語る(西田邸)※西田視点 ※澤田再び

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■オビ=ワン・ケノービ(全6話)Disney+

EP3のラストシーンを劇場で初見で観ている最中は、双子の太陽、ルークの家、あの音楽、似すぎている若いオーウェンおじさん、EP4を初めて観た中1の夏の興奮も蘇り、STAR WARSの<新作>を映画館で観るのはこれが最後、という感傷的な気分に浸っていたのだが、鑑賞後に冷静になって考えると、EP3の終わり方はEP4にうまく繋がっていない、という疑問が生じてきた。ヨーダとオビ=ワンがあんな風に将来の事をちゃんと相談する事ができる余裕があるのなら、バラバラに20年も隠遁する必然性はない。ルークもレイアも含めて一緒にアウターリムのわびしい星に身を潜めて、ジェダイの残党を集めて機を伺えば良い。基本的に一緒にいる方が身も守りやすい。2005年のその時点では、EP3とEP4の間を埋める<新作>が制作されるなんて夢にも思っていないので、ちゃんと繋がってない気がするけどもう終わりだからまあいいか、STAR WARSというコンテンツが現時点の映画6作品で完全に終了なら(情緒的に)許そう、という気分だった。EP3の初見後に感じたこの感想は17年を経た今も変わっていない。

もっと具体的に言えば、ジェダイと共和国が壊滅的な打撃を受けて、連絡手段も失って、各自緊急避難をして、ルークとレイアもオビワンやヨーダが自ら託すのではなく、一緒にいると守りきれない程の窮地(数的不利)に陥りそうなので、やむなく信頼している人に任せた(誰がどこに連れていったか判らない)、くらいの支離滅裂な逃走劇でないと繋がらない気がしたのだが、アニメ「バッドパッチ」「反乱者たち」を見ると、EP3〜EP4の間も、旧共和国残党はそれなりに組織化されて活動しているようなので、EP3のラストからではすんなりとは繋がらない問題は更に強くなっている。

ルーカスは、EP3を作った時点では「これが最後のSTAR WARSだから、多少無理が生じそうでも、細かい事は気にせずに、なんとなく未来の希望に繋がるムードでEP4に直結する感じで終えてしまおう」と考えたのではないか、と想像する。そもそも「STAR WARSはEP4当初から9部作として構想されていた」という話は眉唾ではないか、と当時から思っている。ルーカスの中に大雑把な展開案はあったにせよ、各キャラの細かい生涯年表レベルまでの構築は、EP3制作時点でもできていなかったのではないか。

今回のドラマシリーズは、うまく繋がってないように思える部分を、何か凄いアイディアで補っているのだろうか、と期待しつつ見たが、1話と2話を見た限りでは、その部分の難しさは残ったままだった。

今回のドラマ(全6話)の時代設定はEP3の10年後。
オビ=ワンは普通の肉体労働者として働きつつ、10歳のルークを双眼鏡で観察して見守っている。ルークを普通の農夫として育てたいと思っているらしい育ての親のオーウェンはオビ=ワンの干渉を嫌っていて、オーウェンのこの姿勢はEP4に直結するが、こうなると、そもそもEP3の最後に預けた時にどんなやりとりがあったのかが気になってくる。

オビ=ワンはオーウェンに「そろそろジェダイの訓練を始めないといけない」などと言うので「だったら最初からオビ=ワンとヨーダがどこかで自分達で育てれば良かったじゃん」とつっこみたくなる。砂に埋めた古いトランクに入っていた通信機が生きているのもつっこみポイントで、おいおい、だったらEP4でレイアがR2に託さなくても良かったんじゃないの!? この後の10年間で完全に壊れて買う金もなかったって事!? と言いたくなる。

EP3最後の時点ではオビ=ワンもヨーダも身を隠すのは短い間のつもりだったが、この10年間の間に更に大きな状況変化があった、という可能性もあるが、今作でそれが描かれる事はなさそう(あるならまずはそれを描いて欲しい)。

オビ=ワンはEP3の最後であんな風にアナキンに<勝利>してはいけなかった。
アナキンが生死不明でどこかに落ちる的な展開にして、オビ=ワンはアナキンを殺してしまったかも、なんとか引き戻す事はできなかったか、というショックと自責の念からジェダイオーダーにも疑問を感じて、ヨーダとの連絡も取れなくなって命からがらオーダー66を逃れてひとりでアウターリムに隠遁。ジェダイ残党狩りを逃れる為に通信手段なども処分して身分を隠してひっそりと暮らしている。で、どこかの時点でヨーダと再会して、ヨーダの導きで霊場でクワイガンに会ってジェダイの心を取り戻し、ヨーダにアナキンの息子の監視を依頼されてタトゥウィーンに来る(アナキンの息子がダークサイドに落ちるのなら成長する前に殺す!?)……という展開なら、現状のスピンオフを活かしつつ、EP4に繋がらなくもないが、EP3のあのような終わり方からEP4に繋ぐのは、相当いろいろ考えないと難しそうだ。

以下、箇条書きで。
○1話と2話の最大の見どころは10歳のレイア。
 性格的にEP4以降に繋がっていて台詞も面白い。
○STAR WARS的世界観はまずまず楽しめる。
○全体的に若干冗長でメリハリ不足。盛り上がるアクションシーンは殆どない。
○オビ=ワンは素手やブラスターで戦うより、レイアが勝手に飛び乗ったスピーダーに嫌がりつつも乗って欲しかった。
○御大が作った新作の劇伴は悪くはないが、従来の曲も使って欲しかった。特にレイア登場シーンでは、レイアのテーマのあのピアノ部分(EP9のエンドロール)を使って欲しかった。
○第1話冒頭で<前回までのあらすじ>としてEP1〜EP3のエッセンスが語られるのは非常に新鮮。

今シリーズの今後に期待する点。
○アナキン(ダース・ベイダー)がルーク/レイアの存在を知るくだりは描かれるのか?
EP4の初登場時(レイアと話す時)にレイアが自分の子供であると知っているようにはとても見えないのだが、どの時点で、どのように知る事になるのか?
○「反乱者たち」で描かれたエズラとダース・モール、オビ=ワン目線で再構成はあるか?
○C-3PO&R2-D2がレイアに会うシーンを見たい!
○アソーカ、アンドー、ソウ・ゲレラなどの登場はあるのか?

…と、乱文乱筆でいろいろ好き勝手な事を書いてるけど、誰に頼まれた訳でもないのにこんな文章をついつい書いてしまうのは、STAR WARSの新作、それも旧知の人物が登場する新作となると、44年前の夏のあの日に気分が直結して血が騒いでしまう、という事なんだろうなあ。

※2022.05.28追記
第1話47分頃のサードシスターの台詞「奴(オビ=ワン)は戦争で娘(レイア)の父親(アナキン)とともに戦った」を素直に解釈すると、レイアは自分の娘である事をアナキン(ベイダー)はこの時点で既に知っている可能性が高い? それとも今作の重要キャラっぽいサードシスターが独占的に得ている可能性もある? EP4の冒頭でベイダーとレイアが会うシーンは、ベイダーが娘である事を知っているようには見えないのだが…。

※2022.06.01追記
第3話鑑賞。
ダース・ベイダー登場シーンにあの音楽がかからない!
どうやら今シリーズは過去の音楽を一切使わない方針のようだ(全く同意できない!)。
オビ=ワンとベイダーが対決、オビ=ワンは一方的に防戦。
EP4で戦う時はそれなりの戦いをしているので、どうやら、やはりEP3から今作の10年の間に何かがあってオビ=ワンはジェダイとしてすっかり衰えてしまい、今作の間(または今作からEP4までの間)にある程度復活、という事らしいが、だとしたら、過去10年間の間の何かをしっかり描いて欲しい。
ここまでのオビ=ワンはEP8前半〜中盤のルークを見るようなもどかしさ。
オビ=ワンに弟がいる事が判明。
それにしても、本当に、一切過去の音楽は使わないのか!?

※2022.06.08追記
第4話鑑賞。
帝国軍基地に潜入してレイアを救出する。EP4オマージュ。
会話をしなくても有効なマインドトリック、この見せ方は初めて見るような。
デス・スター内をウロチョロしていた黒い四角いドロイド(ピーピーピピピ)登場。
旧共和国派はこの時点でも部分的に出動・攻撃ができるレベルでそれなりの活動をしているという事がはっきり描かれる(パス、ネットワーク)。EP3以降の10年間、オビ=ワンとヨーダと生き残ったジェダイは、一体何をしていたのか(ただただ隠遁していただけなのか?)、という疑問は強くなるばかり。オビ=ワンが最後に生きているヨーダに会ったのはEP3のラストが最後、という事になっているのだろうか!?
そもそも、EP5を見た時点では、ヨーダはダゴバにず〜っと住んでいる、ジェダイ・マスターの名誉会長職のような人で、マスターになる最後の試練・テストとして、ジェダイは誰でもダゴバに来て訓練する、という設定なのかと思っていたのだが、EP1〜3やクローン・ウォーズでは、最前線にも行くし、ライトセーバーで戦うし、政治的な動きもする大活躍。あんなに活動的だったキャラが急に表舞台から姿を消すには、それなりの説明や仕掛けが必要。繰り返すが、EP3で全て完全終了なら、その部分は曖昧なままでも許せたのだが、これだけEP3〜EP4の間の話が出てくるとそうもいかない。
例えばこんなシーンが見たかった(EP3からEP4以降のブリッジになる説明・仕掛け)
○EP3の少し後、ダゴバのジェダイ聖堂(簡易的・粗末な小屋)
 ヨーダは目を閉じて座禅で浮遊、かたわらに霊体クワイ=ガン、実体のオビ=ワンがいる。
○ヨーダは衰えつつあるフォースを駆使して宇宙全体のフォースの流れ(現況と未来)を読み、目を開けてクワイ=ガンとうなずきあう
○オビ=ワンは、現時点で生き残っているジェダイとパダワンを結集してトレーニングしてジェダイオーダー再建を図るべきだと提言するが、ヨーダは優しい口調で説得する。
○ヨーダの台詞
・私の寿命とフォースは私の予想以上に衰えつつある。もうライトセーバーを持って自ら戦う事はできない
・この1000年でいまがジェダイ最大の危機、これから10年〜20年の間に下手に動けばジェダイは絶滅して未来永劫復活しない可能性が高い
・お前(オビ=ワン)とアナキンは今もなおジェダイの命運に関わるキーパーソンでyoung skywlkerが最後の希望
・young skywlkerがシスになるか、ジェダイマスターになるか、現時点では判らない、そばで見守るだけなら良いが、young skywlker自身が自分の意思でお前(オビ=ワン)に近づいてくるまで、お前の方から過剰に接触してはいけない
・young skywlkerがジェダイの最後の希望になる、とお前(オビ=ワン)が判断したら私の元に来るように導いてやるがいい、それが判るのはほんの20年程先の事になるだろう
・young skywlkerがもうひとりのyoung skywlkerに正しく出会う事ができれば、フォースは正しい流れを取り戻す事ができる可能性が高い。お前はそれを導く事になるかもしれない
・フォースのバランスの命運はこの先の数十年にかかっている。私もお前(オビ=ワン)もその時は形を変えているかもしれないが、young skywlkerが正しく導かれれば、やがて彼が私の後継者(グローグー)を導いてくれるかもしれない
○オビ=ワンはなおも即時反攻に向けていますぐ動く事にこだわるが、クワイガンが「いずれ私の世界を知ればお前にも判る。悠久のフォースの流れの中では10年〜20年は瞬きするような瞬間でしかない、いましばらくは、フォースから離れて過ごすのだ」と言って諭す

※2022.06.22追記
第5話
パダワン時代のアナキンとオビ=ワンのライトセーバーを使った訓練、ヘイデン・クリステンセンはスタイルはあまり変わらないが、クロウスアップではさすがにEP2の顔とは違う
第6話(最終話)
やっとオリジナルの音楽を使用。おなじみの音楽が使われているだけで全然感興は異なる。
スターデストロイヤーがオビ=ワンたちの船を追撃するシーン(EP4の冒頭オマージュ)でかかっていた音楽は、EP5でスピーダーによるルーク捜索で使われていた曲と殆ど同じに聴こえる。

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■ドラクエⅢ日誌
※当時の日記そのまま採録

1988.03.13(日)第1日(約3時間)
まずパーティを組む。レベルを上げつつ、できればかわグッズを買う(魔法使い以外装備可能)。
しゃりあ(勇者)とりとん(戦士)ゆりあ(僧侶)まある(魔法使い)
かわのぼうし80G/かわのたて90G/かわのよろい150G
少なくともアリアハンを出るまでには3人完全装備するがよろし。
当然のことだが、なるべく死なないように戦うこと。
メラの呪文はスライムやおばけがらすくらいしか一発では倒せない。
最初に必要なのは〈とうぞくのかぎ〉。
これはアリアハン城の西に見えるナジミの搭にある。
全員レベル5以上なら余裕で行ける。
〈とうぞくのかぎ〉をアリアハン城の中で使い、〈まほうのたま〉の情報を入手する。
〈まほうのたま〉はレーベの村の老人がくれる。
これを持ってレーベの村の南東の山を抜、泉のそばの洞穴に入る。
その手前のほこらにいる老人「〈まほうのたま〉を持っているなら洞穴に行け」
洞穴の中の壁で〈まほうのたま〉を使うと壁が爆発して通路ができる。
〜〜〜今日はだいたいここまで〜〜〜
※途中であやまってリセットボタンを押してしまって約2時間分損失
※謎…アリアハン城下町の井戸、レーベの村の石(?)、レーベの村の南の森のワープゾーン
※昼と夜はそれほどこだわらなくてもよいと思われる
※ひのきのぼうは全く役に立たないのでなるべく早めにせいなるナイフ(200G)を買うこと
※どくけしそうも必須アイテム やくそう・どくけしそうはひとり2個づつ持っていた方が良い
※当面の装備目標
 勇者・戦士・僧侶はかわセット+どうのつるぎ
 魔使はかわ帽子+せいなるナイフ

1988.03.14(月)第2日(約5時間)
アリアハン大陸を脱出する。
洞穴はそれほどのダンジョンではない(……が、ルートはもう忘れた)
基本的には登っていけば良い(……?……)
最後の階の左側の扉を開けて中に入るとワープゾーンがある。
ロマリア城の地下に出る。ここがセカンドベース。
王様から カンダタから〈きんのかんむり〉をとりかえせ との依頼。
カンダタはカザーブの村のはるか西、シャンパーニの塔にいる。
ねむりの村、エルフの村にも行ける。カザーブの村の東側は未知。
が、まだまだ弱い。
カンダタに会うも、あっさり、全滅。
ここは辛抱どころ。
もう少し強力な呪文、武器が必要。

1988.03.15(火)第3日(約7時間)
カザーブの村を基点にレベルアップに努める。
ねむりの村(ノアニール)の南の洞穴(……のルビーがある)は、
けっこう、レベル・装備ともに整えないと厳しい。
このルビーと手紙をエルフの女王に持っていくと〈めざめのこな〉をくれる。
〈めざめのこな〉をノアニールの人にふりかけると呪いがとける。
〈まほうのかぎ〉に関する情報が聞ける。アッサラームはロマリアの東。
シャンパーニの塔でカンダタと部下を倒して〈きんのかんむり〉を入手。
ロマリア王に持っていくとけんとうをたたえてくれる(だと思ったが?)
「私にかわってこの城の王になりたいか?」に「はい」と答えると本当になってしまう。
アッサラームに行って情報収集。
西に行くとイシスの国。
まず、砂漠の南のほこらの老人に会う。
次にイシスの城(オアシスの森)に行く。
〈まほうのかぎ〉はピラミッドにある。
とにかく〈まほうのかぎ〉を手に入れないことには始まらない。

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■2024年日記
●2024.08.13(火)はれ
○五輪鑑賞疲れなのか夏バテ(冷房負け)なのかなんとなくやる気が出ない。なんとか毎日の運動をやって夕方までほぼベッドで過ごす。
○柳沢きみお「寝物語」全7巻 kindle unlimited
BARで知り合った同い年(35歳)の3人の男の話。エリートサラリーマン、中堅サラリーマン、フリーライター。基本的に2〜3話で終わるショートストーリー。終盤は店に来た他の客の話が増えてきて、最後は他の客のそこそこ長い話で唐突に終わる。続編「夜物語」が出ているようのだがkindle unlimitedには入ってないようだ。
○柳沢きみお「乱造斎おんな絵日記」上下 kindle unlimited
大市民日記の主人公が50を過ぎてエロオヤジになる話。全編基本エロ話。大市民日記と被る世の中への文句、仕事の弟子やBARのマダムがひたすら同意が正直気持ち悪い。主人公の意見に対する反対意見を言わせて欲しい。
○柳沢きみお「マルチェロ」全1巻 kindle unlimited
30代半ばのフリーライターがひたすら女性をナンパする話に、編集者の話、プールで知り合った建築家の話が絡む。これまた大市民日記の亜流かと思いきや、終盤に登場するセックスを卒業した男は見慣れぬキャラ。このキャラは作者の理想の50代男性なのかもしれない。

●2024.08.14(水)くもり
○ダイソーで買ったデジタル時計(300円か500円だったと思う)、表示が薄くなってきたので電池を交換したら、日付から時刻から全て要再入力。むっちゃ面倒。人生の残り時間が少なくなってきたせいか、どうでもいい作業に時間を取られると無性に腹が立つ。
○先日は激しいディレイがあったDAZNの野球中継、今日はGAORAに比べて20秒程度のディレイ。
○柳沢きみお「次男物語」全4巻 kindle unlimited
柳沢きみお作品おなじみの暴走・脱線、この作品は特にその幅が大きく、どんどん暴走する。何をやってもダメだった冴えない男が、飲酒と勃起で別人のようになり、初体験後にヤクザになり、死にかける度に人格が変わる。柳沢きみお作品は全ての作品に共通するが、その都度展開を考えているようなライブ感のようなものがあり、話が進む速度が一定ではない感覚がある。他の作家の作品ではあまり感じられない最大の魅力。

●2024.08.15(木)はれ
○今日はAirPodsProが不調。2個のAirPodsProが両方ともケースもPodsも充電されてなかった。置くだけ充電に長時間置きっぱなしがよくなかったのか相当発熱。MacBook AirもAirpadもAirPodsProも随分前から使い続けているので頻繁に何かしら不調が出る。ネットとデジタルで便利になった分、こうしたトラブルと何かにつけてアカウントを作ってログインする手間は増えた。以前は一度アカウントを作って記憶させれば2回目以降は楽だったが、最近は少し間隔が空くとスマホ認証やらなんやらが必要。dアカウントはログインの度に毎回認証を求められる。超面倒。
現状はこういう事に要する時間と不調な時に要する時間とその間のストレスを考えるといってこいな気がする。PA(パーソナルアシスタント)がこういう面倒な事を一切合切やってくれて、不調な時は勝手に直してくれて、ラジオと呟けば僕の習慣にあわせてその時に聴きたい筈の番組を0.1秒で再生してくれて、次候補/次の次の候補を提示してくれる。そんな本当のデジタル時代が早く来て欲しい。
○台風7号、東京23区の被害は意外とそうでもないような予感(現在8/17午前1:50)。雨が降り出す時間の予報がどんどん遅くなっている。ラジオの気象予報士のトーンが朝に比べて夕方は若干トーンダウン。荻上チキの人は「あるいは東京西部はそうでもないかも」みたいな事を言っていた。

●2024.08.16(金)雨
○François Roland Truffaut「突然炎のごとく」107分 1962年公開 U-NEXT
ふたりの男性(親友)がひとりの女性を共有しようとする話。畑中佳樹「2000年のフォルムランナー」で激賞しているが、正直、そこまでの良さを掴めなかった。日記によると1986年6月にテアトル池袋で鑑賞、同時上映の「アナザー・カントリー」はよく覚えているが、鑑賞した事じたい忘れていた。日記には一言「殆ど寝てしまった」。
冒頭とラストの妙に明るい音楽はオマージュなのだろうか。時代設定は1910〜20年代でモノクロでも、30年代〜40年代ハリウッド作品のような舞台中継収録風のカメラや発声ではなく、自在に動くカメラでいまに通じる発声なので、ルックでただちに違和感を感じる事はない。ペンキを塗っていたJeanne Moreauがあっという間にふたりと仲良くなる飛躍や、橋での駆けっこでJeanne Moreauがズルをするくだり、Jeanne Moreauがいきなり川に飛び込むシーンなど印象に残る部分はいくつもあったが……。ラスト約20分はPSVRで見たが映画館で見るのとはやはり全然違う。いつでも巻き戻せるという甘さがあり、現にこの文章も再度流しながら書いている。もう一度映画館で見てみたい。
○霜降り明星オールナイトニッポン
先週冒頭の電話の話。段取りではなく、夏休みモードだったせいやは本当に立腹していたようで、芸人としてのトークができなかった事をしきりに反省。
○村上春樹「ノルウェイの森」
少なくとも3回は読んでいる筈なのに結構いろいろ忘れていた。他の作品と混同している部分もあった。はるか昔、2回目を読んだ時はもっと1回目に読んだ時の事を覚えていたような気もするがそれも定かではない。はっきり言えるのは50を過ぎてから物事の記憶はどんどんあやふやになっているという事。それでも、昔の記憶は最近の記憶に比べればまだ鮮明で、「ノルウェイの森」の単行本は、80年代半ばに毎日にように覗いていた池袋の芳林堂書店の、入ってすぐの一番手前に平積みされていて、赤と緑でクリスマスみたいだな、と思った事ははっきり覚えている。
キズキと直子以外にもこんなにたくさんの人が自殺する事はすっかり忘れていた。あるいはそんなにたくさん自殺する人がいる小説と記憶すると怖くなるので無意識に忘れていたのかもしれない。
なぜか周りが気にかけてくれる甘やかされている主人公がふたりの女の子との三角関係に悩む話。片方とは一度セックスして手や口でしてもらい、もう片方にも手でしてもらう。それ以外にも寮の先輩におともでナンパしてセックス、最後には中年女性ともセックス。やたら簡単にセックスできるのに、それをありがたがる事もなく、なにやら常に悩んでいる。あえてとことんけなす言い方をすればこんな風にけなす事もできなくはない。
37歳の時点で書かれている事に何か意味がある。80年代半ばの30代後半はいまとは意味合いが違い、ミドルエイジクライシスが始める頃。谷崎潤一郎「痴人の愛」の最後の一行も完全なる青春の終わり。
講談社文庫新装版上巻P296直子が語る直子の姉の話、「自分の部屋に籠もって何もしないでボオッとしてる」と直子が言うが、部屋にひとりで籠もっている姉が何をしているか何故直子に判るのか、細かい部分が気になる僕はひっかかってしまう。体裁は一人称だが実は神視線という事だろうか。同じような描写は他の一人称作品にもあった。

●2024.08.17(土)はれ(暑い)
○眠る前も起きた後もベッドで横になった姿勢でスマホ。入眠にも目にも悪い習慣と判っていながらやめられない。今日も起床後しばらくローテンション。パソコンに向かって作業するうちにだんだん持ち直す。
○9回裏佐藤輝の記録に残らないミス。セカンドランナーの動きを確認して本塁に投げるように指示して木浪が本塁に投げていればおそらく本塁でアウトだった。

●2024.08.19(月)はれ(暑い)/雨
○眠気を感じてベッドに入るがまたもやYouTubeショート動画を延々見てしまう。10時間以上ベッドに横になって約6時間しか眠っていない。
○21:00頃近所のサイゼリヤ。夕方に降った激しい雨で涼しい。数ヵ月ぶりに味わう涼しさ。それなりに飲み食いしてふたりで3000円以下。サイゼリヤ神すぎる。

●2024.08.21(水)はれ/雷雨
○ほんの少しだけ寝直すつもりでベッドに戻り、15分おきのスヌーズを繰り返して延々ウトウト。短い夢を見てはスヌーズでいったん起きて再びウトウトして短い夢を見る。結局今日も遅い起床。アラームをセットしても結果は同じ。
○日刊スポーツCD売上ベスト10。アーティスト名に含まれる漢字は「モーニング娘。’24」の「娘」一文字だけ。世も末だ。
○戸田彬弘「市子」126分 2023年公開 Amazon
ずいぶん前に途中まで見ていたをやっと最後まで。いい感じの光で構成されている画が多い。僕好みの暗めの画もたくさんある。自宅で呼吸装置に頼って寝たきりのきょうだい(?)を殺すシーン(98分頃)、もしなんの予備知識もなくこのシーンだけを見たとしても、多分シーンの最初の方で「あ、これはこの子を殺すんだな」と判る。なぜそう思うのかはうまく言葉で説明できない。そこに漂っているムードのようなもの。逆光のクロウスアップ。不気味な光(フレア)。長い沈黙。映画館でこのシーンを観たら結構圧迫感を感じたような気がする。
○「新宿野戦病院」重傷の犯人を助けるべきかどうか問題、「どうせ死刑になるんだから助けるな」と誰かが叫んでいるシーンで手を止めている医師多数。刑事が医師に監視カメラ写真を見せて、同じTシャツを来ているだけで犯人と断定する台詞を言う。こういうシリアスな題材を扱うと、そうそうコミカルにできないし、リアリティの詰めの甘さが目立ってしまうのでもっと軽い話に徹した方が良いと思う。

●2024.08.22(木)はれ/雨/はれ
○住んでいる部屋のすぐ裏が海で大きな波が来るので慌ててベランダの窓を閉めるが間に合わずに水が室内に入ってくる夢を見た。ここ数年洪水系の夢をよく見る。予知夢かしらん。今日も起きられず、起きた後も愚図愚図してしまう。
○襟足とサイドだけ刈り上げるつもりだったが、迷った末に丸刈りに近いベリーショートにする。帰宅して見て貰うと、後ろ側にも3ヵ所ハゲている所があるらしい。全部で5ヵ所。これだけハゲ散らかすとどうにもならない。いっそスキンヘッドにしても良いが毎日剃るのも面倒。床屋に出かける時はそれほど暑さを感じなかったが、帰宅時は蒸し暑くなってきていた。

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