EVER LASTING MOMENT VOL.5

■EVER LASTING MOMENT VOL.5
○全編昭和の薫り漂うWEBマガジン
○推奨年齢50歳以上
○無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
○小説/散文/妄想/企画 或れ此れ其れ何れなんでも有り
○誤字脱字間違い辻褄合わず各自適宜補完にてよろしく哀愁

いずれ一夜の夢ならば
呑んで謡って ホイのホイのホイ
今宵とことん ホンダラッタホイホイ

———————————————————————————————————————

■映画/ドラマ/スポーツなど
●2024年
○放送中 虎に翼(朝ドラ)伊藤沙莉
○放送中 光る君へ(大河ドラマ)吉高由里子
○放送中 海のはじまり(月21:00フジ)目黒蓮
○配信中 STAR WARS アコライト(Disney+)※全8話
○配信中 ハウス・オブ・ザ・ドラゴン2(U-NEXT)※全8話
○配信中 ザ・ホワイトハウス(U-NEXT)※全7シーズン
○配信中 地面師たち(Netflix)※全7話
○06/28金 ルックバック(2024=押山清高)58分 ※一律1700円
○08/09金 ブルーピリオド(2024=萩原健太郎)115分
○08/16金 フォールガイ(2024=デビッド・リーチ)127分
○09/06金 エイリアン ロムルス(2024=フェデ・アルバレス)119分
○09/06金 チャイコフスキーの妻(2022=キリル・セレブレンニコフ)143分
○09/06金 ナミビアの砂漠(2024=山中瑶子)137分 ※河合優実
○09/07土 しまねこ(2024=今関あきよし)66分
○09/13金 ヒットマン(2023=リチャード・リンクレイター)115分
○09/13金 No Activity(Amazon)※全6話
○09/19水 極悪女王(Netflix)※全5話
○08/31土~09/20金 山口百恵映画祭(神保町)
○09/21土〜10/11金 映画で愉しむ 私たちの偏愛文学(神保町)
○09/07土〜09/27金 プレコード・ハリウッド(ヴェーラ)
○09/27土〜10/18金 カメラの両側で…アイダ・ルピノ レトロスペクティブ(ヴェーラ)
○09/08日〜09/22日 大相撲9月場所
○09/14土・09/15日 デビスカップ ※錦織圭出場予定
○09/25水~10/01火 ジャパンオープン ※錦織圭出場予定
○09/30月 おむすび(朝ドラ)橋本環奈
○09/30月 呪術廻戦最終回(少年ジャンプ)
○10/05土〜02/11火 モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)
○10/08火 機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(Netflix)全6話 ※1年戦争
○11/13水 プレミア12
○11/10日〜11/24日 大相撲11月場所
○11/22金 海の沈黙(2024=若松節朗)※倉本聰35年ぶり映画脚本
●2025年
○01/01水 ローズパレード ※京都橘3回目の出場
○1月 べらぼう(大河ドラマ)横浜流星
○02/14金 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド
○コブラ会 最終シーズンPART3(Netflix)※24年7月PART1/24年11月PART2
○3月 第6回WBC
○03/18火 MLB開幕戦ドジャースvsカブスat東京ドーム
○4月 あんぱん(朝ドラ)今田美桜
◯6月 サッカークラブW杯(新方式、32チーム)
○09/13土〜09/21日 世界陸上(東京)
○10月 ばけばけ(朝ドラ)
●2026年
○1月 豊臣兄弟!(大河ドラマ)仲野太賀
◯02/06金 ミラノ・コルティナ五輪
◯3月 WBC
○05/22金 STAR WARS新作
◯06/11木 サッカーW杯アメリカ/カナダ/メキシコ大会
○8月 Jリーグ秋春制第1シーズン
○12/18金 STAR WARS新作
●2027年
○世界陸上(北京)
○バスケW杯
○ラグビーW杯オーストラリア ※20→24に増加?
○12/17金 STAR WARS新作
●2028年
○EURO2028イギリス/アイルランド
○07/14金〜07/30日 ロサンゼルス五輪
●2029年
○世界陸上(バーミンガム?)
●2030年
○サッカーW杯モロッコ/ポルトガル/スペイン大会(100周年記念大会)
●2031年
○世界陸上
●2032年
○EURO2032イタリア/トルコ
○07/23金〜08/08日 ブリスベン五輪

———————————————————————————————————————

■一字違いで大違い
○一番エラい・一番エロい
○チコちゃんにしかられた・チコちゃんにしこられた Ⓒ赤江珠緒
○おとこまさり・おとこあさり 
○エコ目線・エロ目線
○ノーパソ・ノーパン 
○ノーバン始球式・ノーパン始球式 ※確信犯的見出し
○テロの脅威・エロの脅威
○筆圧・膣圧
○私に言って・私でイッて
○ハンディ・パンティ

———————————————————————————————————————

■ラブシーン暴走
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

 1

「今年のシナリオも結局ご都合主義な展開だねえ」
「他の人の意見取りいれてまとめようと思ったら、メインの話は無難にしないと無理なんだって」
「シーン19、ヒロインの弥生が、広志が浮気したと勘違いして新宿の街をふらふらして、偶然、広志に出会うって、ありがちな偶然だよねえ」
「恋愛なんて、偶然で始まって勘違いで続くもんでしょ、現実だって。ましてや映画をや」
「「なぜかその噴水の周囲には他に人がいない」ってなにこれ?」
「それは、私が書き足したメモ。ほら、私は、ロケで野次馬いるの嫌いだから」
「メモは台本のト書きに書かないで他に書いときなさいよ」
「新宿西口の噴水のていだけど、実際は、どっか沿線の、人が少ないトコで撮るつもり」
「玲佳が自分で書いて自分で撮った方が絶対マシなんじゃない?」
「でも、一昨年のはあんなだっだし……」
「アレは、ちょっと、アレだったけど。ああいう風にはしない、って思って書けば……」
「結局、ああいう感じになっちゃう気がする。私って、結局、感覚派だから。亜嵐こそ、また、書いてみればいいじゃん」
「私は、いい画、ばっちり撮る事だけ考えてたいなあ。シナリオとか書いてるとアタマ痛くなってくるし」
「その割に文句は言うじゃん」
「だって、あんまりにあんまりじゃない、これ?」
「夏の映画は、きれいな海とかわいいヒロインが撮れてれば、ストーリーなんてどうでもいいんだって」
「晴れるかなあ、今年は」
「去年は天気も悪かったし、夜はシナリオで、散々もめて」
「私はモメごと好きだから、あれはあれで楽しかったけどねえ」
「小林弥生、今年のヒロイン、久々になかなかじゃない?」
「十年にひとり、いや、大学自主映画サークル界隈に限ったら三十年にひとりかもねえ」
「おんなの私でも目が合うとドキッとするもん。こないだの衣装合わせの時に下着姿見たんだけど、弥生って、結構いいカラダしてんのよ。亜嵐なんて、伊豆で弥生の水着姿見たらギン勃ちしちゃうかもね」
「私がギン勃ちして撮れば観客もギン勃ちよ。ま、たしかに、ホンはアレでも、ピーカンで小林弥生の水着姿がばっちり映ってれば、」
「あとは、クライマックスのラブシーンがちゃんと撮れれば、なんとかなるって。青春恋愛映画の話なんて編集でなんとでもなるんだから」
「でも、なんか経験少なそうじゃない、小林弥生? 大丈夫かなあ、ラブシーン」
「相手役も広志だし」
「広志だしねえ……あの後、ホントは、やっちゃったんでしょ?」
「やってないって」
「いいのよ。広志なら、私だって、ちょっと興味あるし」
「広志と弥生、どっちしか選べないならどっち選ぶ?」
「小林弥生みたいな美少女に全然興味がないって言えばウソになるけど、どっちかだけなら、やっぱ広志かな」
「やっぱ基本はゲイなんだよね亜嵐って。私とコレやってて楽しい?」
「基本ゲイだけど相当バイ寄りなんだと思うよ、よく判んないけど」
「広志は、たぶん、ルックスだけで、中身はからっぽ」
「そうなの?」
「あの日も、私の方から誘ってくるのを待ってる感じ、見え見えだったもん」
「それなのに、誘わなかったの? 玲佳なのに?」
「誘ったらついてくるし、私があああしてこうしてって言ったら、その通りになりそうな画が見えすぎちゃって」
「玲佳は強引に落とすのが好きだもんねえ」
「亜嵐が合流できるなら、やっても良かったんだけど、普通にやるだけなら別にやらなくてもいいかなって」
「言ってくれればバイト休んだのに」
「でも、たぶん、セックスも下手だよ、からっぽだから」
「からっぽのイケメンかあ。でも、青春恋愛映画には必要よね、顔だけの男」
「広志も弥生もぎこちなければ、それはそれで、リアルな感じが出るんじゃない、クライマックスのラブシーン……それにしても、今日の亜嵐、勃ち、悪すぎじゃない。私のフェラじゃ、新鮮味なさすぎで感じなくなった?」
「玲佳だってあんまり濡れてないじゃない? 私のクンニじゃ、感じなくなった?」
「亜嵐がシナリオの事なんて言い出すから集中できなくなった」
「あ、こないだ、あの店で貰ったドリンク、試してみる?」
「あの店って、新宿のあの店?」
「なんか、ちょっと飲むと、断然感じるようになるって」
「ヤバいクスリじゃないの?」
「ちょっと試してみたけど、大丈夫っぽかったよ。いまの所、合法だって」
「ちょっとって? 亜嵐だけ楽しんだってこと?」
「あの時よ、玲佳たちがハプニングバー行った時。一回女同士で行ってみたいって」
「ああ、あの日」
「分量これくらいだったかなあ」
「あんまり効いてこないみたい。もう少し足してみる?」
「じゃあ、もうちょっと」
「あ、なんか、ジュンってきた」
「あ、こっちも、ビクンってきた」
「ちょっと舐めてみてみて」
「私のも、舐めてみてみて」
「あ、なんか、いつもと、ちょっとだけ違う感じ」
「玲佳のここ、凄いわよ、どんどん溢れてくる感じ」
「亜嵐だって、我慢汁、凄い事になってるよ」
「挿れちゃうよ」
「挿れちゃって……え、ちょっと、亜嵐、なんか凄いんだけど」
「私もなんか凄い……動かなくても気持ちいいよ」
 ……
「このクスリ、ちょっと、やばいかも」
「分量間違えたかなあ」
「コレ使うのは、時々にしようよ」
「あれ? 玲佳なら絶対毎回って言うと思ったのに。途中で気持ち悪くなった?」
「逆。良すぎるからハマり過ちゃう。毎回使ったら」
「玲佳とは思えない発言ねえ」
「5歳若かったら、毎回って思ったかもだけど」
「それ逆じゃない? 五年前よりいまの方がエロ度増してるでしょ、玲佳?」
「それはそうなんだけど……二十五ってなると、いろいろ考えるよ」
「将来のこと、とか?」
「自分が三十歳になる事なんて永遠にないような気がしてたけど、二十五って四捨五入したら三十じゃん? なんか、急に、リアルな感じがしてきちゃって」
「大丈夫よ、その時は、私も三十だから」
「大学だって三留もして、いつまでいられるわけじゃないし」
「え、まさか、ちゃんとした所に就職しようとか、考えてるわけ? いまさら?」
「亜嵐はいいわよ。カメラはつぶし訊くから。演出は厳しいよ」
「とりあえず、会社でも作る?」
「何それ」
「親がさあ、就職する気ないなら、会社でも作れって言ってんのよ」
「マジ? 」
「立ち上げの資金出してやってもいいって」
「え、亜嵐の親って、普通のサラリーマンじゃなかったっけ?」
「私たちがこっち来た後、独立して、いまは経営コンルタントみたいな仕事してて、なんか、株やら土地やらで儲けてるらしいのよ」
「ああ、なんか、週刊誌でバブル景気とか、言われてるやつ?」
「三千くらいなら出してやるって」
「三千って……三千マンエン!?」
「どうせ税金で持っていかれるからって……パパにそんな金儲けの才能があるなんて全然知らなかったからびっくりしちゃって」
「亜嵐と違って、普通の人だった印象しかない。ちょっとびっくり」
「くれるっていうなら貰っておいた方がいいかなあ」
「それは貰っておいた方がいいでしょ。おもしろそうじゃん、会社作るなんて」
「面白いかなあ、大変そうな気がするけど」
「人に使われる仕事より、全然いいじゃん」
「税金とか経理とか面倒くさくない?」
「その辺は人を雇えばいいじゃん」
「雇ってもさあ、自分に知識がないと、見抜けないでしょ、不正とか」
「亜嵐って、カメラと酒とアッチに関する探究心は凄いのに、そういうの、ホント苦手だよね」
「玲佳は、撮る映画はなんちゃってNouvelle Vagueな癖に、結構、実務とか、好きよねえ。人として、分裂してない?」
「経済学部に人の倍在籍してるしね(冗談)。……多分、本質的には実務的な人間なんだと思うのよ、私って。ちゃんとした映画を作ろうなんてこころがけちゃったりなんかしたら、そこそこまとまってるだけの、クソつまんないのになるから、無意識にあらがってんのかも」
「よく判んないっちゃよく判んないのが玲佳だもんねえ。十年一緒にいても、あれ、玲佳ってこんな子だったっけって、いまだに思う事あるもん」
「人間、ホントは、みんな、一皮むけば、出たとこ勝負なんだって。そうならないように、自分で制御してんのよ」
「その制御がポイントポイントで結構緩いんだよねえ、玲佳って」
「亜嵐だって緩みっぱなしでしょ」
「そーそー、私は一貫して緩いの。税金とか経理とか、考えただけであたま痛くなりそ」
「そういうのって、もう既にちゃんとルールが決まってるんだから、それに従えばオーケーじゃん? そういう方が楽だよ」
「じゃあ、玲佳が社長って事で会社、作ろうか」
「えー、私が社長? やだ。亜嵐やってよ」
「えー、私に社長なんてムリに決まってる」
「……来年、1991年、二十六歳じゃん、私たち。数字のキリがいいから、来年から、ちゃんとしよっか?」
「さすがに来年は卒業しないとだよねえ」
「ついつい、七年もいちゃったからね」
「あっという間だったけど」
「……よし、来年は大人になるって事で、今年は、だらだらしよう」
「学生生活最後の夏か……(芝居ががってみる)」
「さらば青春の日々……(芝居っぽく受けてみる)」
「なんだかんだで十年だよ、私たちの腐れ縁も」
「まさかこんなに続くなんて」
「最初は長くて3ヵ月って思ってなあ」
「十五歳から二十五歳の十年、青春まるごと、亜嵐に捧げちゃった(冗談)」
「私以外にも捧げてるでしょ、いろいろ」
「亜嵐だって、あるでしょ、いろいろ」
「私の場合は、相手はたいてい男なんだから、いいじゃない。たいてい玲佳も一緒なんだし」
「私がいない時だってあった」
「そうだっけ?」
「こないだ、私が、ハプバー行った日だって、どうせ亜嵐の事だから試したんでしょ、さっきのクスリ、その場で」
「ああ、それは、試したっていうか、あの店のトイレで、ちょっとだけ」
「相手、どっち?」
「玲佳だって、やったんでしょ? ハプバーで」
「まあ、やったかやらなかったで言えば、一応やったけど」
「どんな感じだったか、まだ訊いてないけど?」
「亜嵐こそ、あそこの狭いトイレで、どんな風にやった?」
「……もう一回だけ、ちょっとだけ、追加する?」
「まだ残ってるの、それ?」
「ちょっとだけ残ってる。なんか、まだ、さっきのが残ってる感じなのよねえ。ちょっと足せば、また、たぎってきそうな感じなんだけど。玲佳が嫌なら我慢するけど」
「実は、私も、ちょっと残ってる。でも、ハマりすぎると怖いから、ちょっとだけにしようよ、追加は」
「じゃあ、せーの、で飲むよ?」
「せーの」「せーの」


 
「ちょっと待って。カメラ止めて」
 ヒロイン(弥生)と恋人(広志)がついに結ばれるクライマックス。
 高校生のふたりが初めてベッドをともにするシーンなので、ぎこちない方がリアリティが出るかと思って、広志にだけ大雑把な段取りをつけて、リハーサルなしでいきなりまわしてみたが、これはダメだ。
 広志の顔が近づくにつれて、弥生は目を見開いてぶるぶる震える。
 その表情と震えは、初体験の緊張というレベルをはるかに越えてホラー映画の領域。
「おまかせはキツそう?」
 別室で弥生とふたりだけになって訊いてみる。
「やればできると思ったんですけど」
「何がキツい? さっきは水着で抱き合って、キスもできたから、広志がどうにも生理的にダメってわけじゃないよね?」
「さっきは、海の中だったから、水に包まれてる感じで、現実感なくて……広志さんは全然イヤじゃないんですけど……」
「けど?」
「ウソなんです……最初に監督に言った事」
「なんだっけ?」
「いろいろ、経験、あるみたいな……」
「実際は、それほど、経験してない?」
「全然、ないんです、経験。そうなりそうな前に、いつも逃げちゃって……」
 清純派アイドル風抜群のルックスの弥生の恋愛話を、じっくり訊きたい気もするが、いまは段取りを決めなくてはいけない。この部屋で撮影できる機会は今夜しかないのだから。
「さっきはずっと目、開けてたじゃない? 目をつぶってもダメそう?」
「目をつぶると、余計に、浮かんできそうで」
「浮かんでくる?」
「できれば、忘れてしまいたい、って思ってるんですけど…」
 距離を詰めて弥生の肩を抱いて、
「なんか、怖かった記憶?(レイプ未遂かな?)」と訊いてみる。
「私が、直接じゃないんですけど」
 弥生の身体はゆっくり弛緩してくる。
「子供の頃、姉の彼氏がウチに遊びに来て……見ちゃったんです」
「見ちゃった?」
「姉と彼氏が……あの……アレを……言ってしまいたいけど……言えない……でも」
「うん」
「玲佳さんなら平気です。玲佳さんが、広志さんの代わりとか、ムリですか?」
「うーん、(カットを)割れば、できなくはないかもだけど。例えば、私がベッドの向こう側で、手を握ってあげてたら、どうだろう?」
「あ、そうして貰えたら、落ち着くかもしれません」
 手を繋いだまま、弥生と撮影部屋に戻り、助監督に「女優の気持ち待ち」と伝えて、いったんスタッフにも出てもらう。
「これ」
 亜嵐が薄いブラウンの液体が入ったグラスを差し出して、
「こないだのアレ、ごく少量だと、気持ちを落ち着かせる効果もあるみたいだから、ちょっとだけ入れた、カモミール」
「さんきゅー」
「どうなりそう? (カットを)割る準備しとく? 割るならライトも変えないと」
「とりあえず、現状維持で」
「了解。いつでも廻せるようにスタンバっとく」
 亜嵐が貰ってきたセックスドラッグ的なドリンク、ごく少量なら問題ないだろう。多分。
「あ、おいしいです、このお茶」
 弥生が半分飲んだグラスを受け取って、残りを飲む。
 落ち着かせようと弥生を抱きしめてみる。
 弥生も背中に手を廻してきて、お互いの身体を密着させて、ぎゅっと抱き合う。
「とりあえず、もう一回、ながまわしでやってみる?」
「……なんか、いま飲んだお茶のせいか、眠くなってきたみたい」
 弥生をベッドに横たえる。
 弥生の髪が顔を隠さないように整えて、なんの気なしに、弥生の唇に軽くキスをすると、弥生は手を首の後ろにまわして、キスを返してきた。
 これってあのドリンクの効果?
 二回目の撮影は順調に進んだ。
 広志は意外とちゃんと段取りを覚えていて、亜嵐の手持ちカメラが弥生の表情をきちんと捉えられるような角度で、弥生の首筋に唇で触れる。
 弥生の身体がかすかに反応する。
 私はシーツの下で弥生の手を握っている。
 さっきは広志の顔が近づくと目を見開いて震えていたが、今回は広志のキスに応じて、弥生もキスを返しているように見える。
 キスをしたまま、広志の手は弥生のブラウスの上からバストのあたりを軽くまさぐり(これは段取りにはなかった動き)、ブラウスのボタンをゆっくり外していく。
 事前の段取りでは、ながまわしはここまで。この後は、セッティングを変えて、シーツを下半身にかけて男優の背中を見せて合体している風のショットを撮る予定だった。
 広志がチラっとこっちを見る。
 亜嵐も一瞬ファインダーから目を離してチラっとこっちを見る。
 即興撮影への冒険心と遊び心がむくむくと湧いてきて、無言で右手の人差し指をくるくる廻して撮影続行を指示した。
 ……その後の展開はよく覚えていない。
「最初に希釈する量をちょっと間違えたかもしれない」
 撮影が終わった後で亜嵐が耳元で呟いた。
 いやいや。ちょっとじゃないでしょ。
 亜嵐の奴、また、やりやがったな?
  
 3
 
 十歳の時、六歳年上の姉のセックスを覗き見した。
 なんとなく寝付けなくて、こっそり襖を少しだけ開けて姉の部屋を覗くと、姉が誰かと抱き合ってキスをしていた。
 当時は性の知識は殆どなかったけど、これは見てはいけないやつだ、と本能的に感じた。
 だけど、なぜか、どうしても目を離せない。 
 ふたりはキスをしながら、お互いに服の上から体のあちこちをまさぐっている。
 その行動が大胆になっていくに従って、私は、平常心を保っていられなくなってきた。
 もう、これ以上、見ちゃいけない。そっと襖を閉めるか、この際、襖はこのままでもいいから、体を反転させてふとんにもぐってしまった方がいい。
 頭はそう命令するけど、体は動かない。
 ……彼氏のジーパンのジッパーを下げてひっぱり出したものを、姉は両手で包み込むようして何度か摩り、形を変えたそれをアイスキャンディーのように口に含む。
 当時はその行為の事を知らなくて、姉はいったい何をしているんだ、と思いつつ、人生で初めて味わう異様な感覚に全身を支配され、金縛りにあったように体が動かなくなった。
 瞬きもできない。
 気を許すと声が漏れてしまいそうになる口を両手で抑えた。
 ……姉の上に下半身裸の彼氏がおおいかぶさって、姉のお腹を押しつぶすように体を動かしている。
 姉は、見た事がない顔で、聞いた事がない声を出している。
 ささやくようなその声が大きくなるにつれて、強烈な恐怖心が、どこからともなく湧き出てきた。
 なぜか、姉が鬼に見えた。
 こういう事をすると私もあんな顔になるの?
 あんな風になりたくない。

 十六歳の時、初めて彼氏ができた。
 何度かデートして初めて彼氏の部屋に遊びに行って、いきなりキスされて、唇が異物に覆われた瞬間、忘れようと務めてきた六年前の姉の記憶が蘇ってきた。女の子なら誰もが憧れる筈のファーストキスなのに、歓びも快感も感動もなく、自分がどこか危険な場所に強引に連れていかれるような恐怖感が湧き上がってきて、体が震えてくる。
 こんな筈はない。
 好きな男の子にキスをされて、こんな風に思う筈がない。
 そう言い聞かせて、彼氏をつきとばしたくなるのを必死にこらえた。
 やっと唇を離してくれた彼氏は立ち上がって背中を向けた。
 いますぐに走って部屋を出よう。
 頭はそう命じるのに体は動かない。
 うなだれたまましばらく呆然としていた。
 顔を上げると、むきだしの男性の部分がすぐ目の前にあった。
 うすら笑いを浮かべている彼氏の顔が鬼に見える。
 あの時の姉と同じ。
 断りたいけどなぜか言葉が出てこない。震えが止まらない。
 震えているのを単なる緊張と思っているのか、彼氏は「大丈夫だから」と言って、手を取って男性の部分に導く。
 催眠術にかかったように、その部分を握ってしまう。
 自分が自分でなくなっていくような感覚が、四方八方から押し寄せてきて圧迫される。
「舐めてみて」と言われた言葉が頭の中で何度も何度も響いて「やだ」という一言がどうしても出てこない。
 彼氏が距離を詰めて、その部分の先端が、唇に触れる。
 周囲から押し寄せてくる圧迫は更に強度を増してきて、その圧迫に押し出されるように、舌を少し出して、ほんの一瞬、舌先で触れた瞬間、圧迫が頂点に達して吐いてしまった。
 吐いている最中に、吐いているものを勢いよく貫いてきた何かが唇に当たった。
 後から思い返すと、あれは彼氏が射精した初弾だったような気もするが定かではない。唇に勢いよく当たった液体が、とろとろ顎の方に流れて行く感触を感じながら、意識は薄れていった。
 
 「こないだの事は誰にも内緒だ。もし誰かにばらしたらこれをばらまく」と言って彼氏が差し出したのは、失神している間に撮られた写真。
 ブラウスの胸元を開けられて、ブラがずらされて乳首が映っている。
 写真の中の少女は、間違いなく自分なのに、なぜか自分ではないように見えて、見つめていると股間の奥が疼いた。

 また同じ夢を見た。
 高校時代の性的体験の夢。
 写真を見せられた日を最後に連絡が来なくなって自然消滅。
 不思議なのは、あの時、激しく吐いた筈なのに、見せられた写真ではどこも汚れていなかったこと。
 吐いた気がしただけで、実際は吐かなかったのだろうか?
 実際は、キスされた時に失神して、その後は全て妄想なのだろうか?
 あの写真を見て彼氏が自分でしているのかも、と想像すると、股間の奥が疼く。
 あの写真がばらまかれていて、他の大勢の男子も写真を見て、自分でしているかも、と思うと、もっと疼く。
 こんな事は誰にも言えない。

 夏合宿のラブシーンの撮影、1回目は鬼の記憶が蘇ってきてダメだったけど、2回目は大丈夫だったらしい。
 2回目は途中から記憶がなくって、翌朝、目が覚めたら性器に違和感があった。ひょっとして撮影中に本当に触られた?
 そんな筈はないと思いたいけど、なにしろ記憶がない。
 唯一、なんとなく、浮かんで来るの記憶は香水の匂い?
 秋の上映会で初めてそのシーンを見た。
 ラブシーンを演じている自分の顔のクロウスアップ。
 全く覚えてないけど、自分で見てもドキドキする。
 フィルムの中の女の子は、本当に感じているように見える。
 羨ましい。股間の奥が疼く。
 上映会の後でトイレで触れてみるとぐっしょりと濡れていた。
 多分これが性的興奮。
 ちゃんと起きている状態で味わってみたい。
 起きている時に普通にセックスして、ちゃんと鬼退治ができているのか、確かめたい。
 この日記に、初めて「セックス」って書いた。
 書いてしまえば、どうって事がない、みんな普通にやっている、なんでもない事のような気がしてくる。

 4

 現像したフィルムの中で、なぜか広志に替わって、私が、弥生の下半身を覆っているシーツの中に入って行く。
「なんで広志いなくなった?」
「ホントに何も覚えてないの?」
 亜嵐は、呆れたような、どこか疑っているような顔。
 亜嵐が言うには、「ホントに触っちゃってみて」と指示しても、広志はびびって尻込みするので、私が自ら動いたらしい。
「これって、ホントになんかしちゃってるのかな?」
「しちゃってるんじゃない? 玲佳だもん、ほら」
 弥生の顔を捉えていたカメラが移動すると、弥生の下半身を覆っていたシーツはなくなっていて、弥生のむき出しの股間に私が顔を埋めている。
「これは、しちゃってるっぽいねえ」
「思い出した?」
 次のロールで弥生の下半身に密着している男の体には見覚えがある。
「え、これって、亜嵐じゃん?」
「そだよ」
「じゃ、これ、廻してんのは、私?」
「広志どかして、私が廻すから、亜嵐替わって、顔は撮らないからって」
「マジで覚えてないわー」
「ほら、ここのクイっと動くカメラ、いつもの玲佳じゃない?」
 映画の中の弥生の感じている表情が真に迫っているのは当たり前。
 なぜならあの時、実際にセックスしていたのだ。
「コレって、完全に挿れちゃってたの?」
「カッコだけのつもりだったんだけど、あてがってたら、ぬるっとはいっちゃったのよ」
「まさか中で出してないよね?」
「玲佳が付けてくれたじゃんコンちゃん、フィルムチェンジの時……ねえ、ホントは覚えてるんでしょ?」
 そう言われても覚えてないが、亜嵐がそう言うならそうなのだろう、という気もしてくる。
 覚えている事と覚えてない事、
 実際に起こった事と実際には起こらなかった事、
 いずれ、たいした違いはない、と誰かが囁いた気がした。
 フィルムの中の弥生の顔は、性の歓びを感受する若い女性の見本のような煌めき。
「弥生のこの顔は最高だね。このショットだけで伝説の作品になるよ」
「使えないトコ(本当にやってるように見えるショット)は廃棄するわよ?」
 亜嵐はそう言ってニヤっと笑った。

 5

「玲佳先輩、こないだの夏合宿の最後の撮影って、なんか、普通じゃなかった気がするんですけど」
「(やばい、ばれた? 訴えられるかも?)そうそう、弥生の演技がとっても良かったから、普通の自主映画じゃ、なかなか撮れない、素晴らしい画が撮れたよ」
「……あの時、亜嵐さんが持ってきてくれたの、なんていうお茶ですか? どこで売ってるんですか?」
「えーと、あれは……(正直に言った方がいいかな?)」
「ちょっといいですか……やっぱり、同じ匂い」
「ちょっと、なによ、突然。弥生みたいなかわいい女の子にこんな風に抱きつかれたら、女の私でもドキっとしちゃうでしょ?(ホントは全然平気だけど一応こう言っておこう)」
「あの撮影の後、よく夢を見るんです……撮影の時にすっごく素敵なキスをされる夢……玲佳先輩、あの撮影の時、私にキスしたでしょ?」
「んなわけないでしょ、広志の演技がちょっと熱が入っちゃって、ホントにちょっとしちゃった瞬間が一瞬あったかもだけど」
「私、あの後、広志先輩と、実際に仲良くなったんです。あの映画がきっかけで」
「実際にって事は……」
「そうなんです。広志先輩と、実際に……(キス)してみたんですが」
「そうなんだ(実際にセックスしたんだ)。ウチは部員同士の恋愛禁止なんて無粋な事は一切ないから。でも、どう、ここだけの話、ああいうタイプ(顔がいいだけの男)って、意外と(セックスは)そうでもなくない?」
「そうなんです……広志先輩と、何度か(キス)したけど……気持ちよくないんです……あの合宿の時みたいには」
「いや、でも、合宿のあれは、あくまで、映画のラブシーンの撮影で」
「わかってます……でも、なんか違うんです。鬼は出てこないけど、全然、何も感じないんです」
「鬼? 鬼ってなに?」

 亜嵐と一緒に弥生の話をとことん聞いてあげる事にして、食事を済ませて、亜嵐の部屋に移動した。亜嵐の部屋は、相変わらず、冷蔵庫には飲み物しかなく、間接照明でいかにも怪しい雰囲気。私は何度来ても落ちつけるけど。
「前から気になってたんですけど、亜嵐先輩って……あの……男の人が好きな人なんですか?」
「亜嵐はナナサンでゲイよりのバイかな」
「どっちかと言えばゲイよ、はっきり言って。女の子相手でも、やればできるってだけ。基本、自分から女の子に行く事はないから安心して」
「でも、亜嵐先輩と玲佳先輩って、つきあってるんですよね?」
「んー、話せば長くなるけど、つきあってるって言えばつきあってるようなもんだけど」
「まあ、世間一般のカップルとはちょっと違うかもねえ、玲佳と私は。玲佳は女もオッケーだし」
「え、そうなんですか?」
「大丈夫、いきなり襲ったりしないから」
「玲佳先輩なら、襲われてもいいですよ、私」
 亜嵐が弥生に酒のグラスを手渡すと、
「……亜嵐先輩と玲佳先輩って、同じ香水使ってたりします?」
「そうそう。最近、おたがい、コレがお気に入りで」
 弥生は亜嵐の手首に鼻を近づけて「あの時の匂い……」と呟いた。

 酒の力と亜嵐のオープンマインドと私の野次馬根性で、弥生の性的トラウマをあらかた聞き出す事ができた頃には、夏の終わりの太陽が登り始めていた。
 姉や彼氏の顔が鬼に見えた理由は、弥生自身にも心当たりがないようだ。
「途中で寝てしまったけど、あの撮影の時、二回目の時は平気だったのは、あのお茶のおかげじゃないかって思うんです」
 弥生に何度も詰め寄られて、
「いやあ、あのお茶じたいは、普通のカモミールティーなんだけど、ちょっとだけ、気持ちを落ち着かせるクスリみたいなのを入れたのよ。
私は何度も飲んで安全なやつ」
 と、亜蘭は本当の事を言っている。
 昨日の夕方からずっといっしょにいて、すっかり弥生に寄りそってしまったのか。私もそれで問題がないと思う。自主映画を撮影中の暴走でも、性的な関係を持つと、一気に親密度が上がるという事なのか? いや、以前、流れで似たような状況になった事があったが、その子とは、私も亜嵐も、ちゃんと覚醒した状態で致したにも関わらず、こんな風な親密なムードにはならなかった。弥生には、どこか放って置けないような、同時に深入りすると抜き差しならぬ関係に陥りそうな、なんともいえない不思議なムードがある。
「……広志先輩とも、本当は、キスだけじゃないんです」
「え?(そもそもキスだけって話だったっけ?)」
「もう少し、先まで行こうとしてみたんですけど、やっぱり鬼が出てくるような気がしてダメで、そもそも、広志先輩とは、キスしても、全然何も感じないんです……でも、合宿の撮影の夢は、夢の中で感じてて、起きた後もまだ余韻があって……玲佳先輩のキスなのか、あの時のお茶なのか、その両方なのか、確かめたいんです」
「ねえ亜嵐、あのドリンクって、まだ残ってるの?」
「残ってるけど、希釈する量、間違ってなかったみたいなんだよねえ」
「間違ってなかったら、なんなの?」
「弥生は効きすぎる体質かもだから、危険かもしれないなあって」

 思いっきり希釈しても弥生の意識は朦朧としているようだ。
「玲佳先輩……おねがい……キスして」
 こんなかわいい後輩に頼まれたら、基本男女問わず来る者拒まずの精神の私(達)としては行くしかない。私も亜嵐もドリンクは飲まずに、まずは私がキスしてみる。
 キスした瞬間に、ふだん寝る時の睡魔とは質が異なる強烈な睡魔に襲われて、意識が遠のいて……まぶたが落ちる寸前に、弥生が亜嵐の手をぐいっとひっぱって、弥生の方からキスをするのが見えた……。
 
 亜嵐の父親が出資してくれた資金で設立した映像制作会社「CINEMAGIKCAL FORCE」の最初の作品は、紆余曲折を経て、小林弥生主演の美少女アダルトビデオになった。
 例のドリンクを適量飲んで、私とキスすると、弥生は必ず性的酩酊淫乱状態になって、幅広く受け入れOKになった。撮影をした日の夜は、夢も見ないで、朝までぐっすり眠れるが、普段はたいてい、例の鬼が出る夢を見ると言う。
「普通にちゃんと目が覚めている状態で、普通のセックスもしてみたいです」と弥生に何度も頼まれて、亜嵐を相手に、例のドリンクを使う場合、使わない場合で、何度かセックスをしてみた。弥生のたっての願いで私もその場に立ち会った。こんなセックスは、全然普通ではない気もするが、ドリンクで酩酊して何も覚えていない撮影に比べれば、ちゃんと意識がある分、全然普通と言う事か。
 数回試してみたが、ドリンクの有無に関わらず、撮影で何度か相手役を務めた亜嵐に対する馴れや信頼もあるからなのか、鬼は出ないが、快感は全くないという。
「いま、亜嵐のが挿ってるのは判る?」と弥生に訊くと、
「挿ってるのは判るんですけど、何も感じないんです」
 つまり、例のドリンクを私生活で単独で使ってもダメで、
 ・ドリンク
 ・私とのキス
 ・カメラに撮られている
 この三条件が揃わないと弥生は性的酩酊淫乱状態にはならない。 
 世間の美少女AVブームの中でも、弥生の作品の売上は突出していて亜嵐と私の会社としては嬉しいのだが、弥生のこの先の人生はどうなるのか。

「まあ、それでも、完全に不感症で何も感じないよりはマシなんじゃない?」
「女に生まれたからには、いまチンポが挿っているこの瞬間の快感を感じてみたい、って思うんだよ」
「女はそうなのかなあ。私の場合は、あんまり、違わないからなあ」
「違わないって?」
「つまり、女性のアソコや男性のアッチに挿れてる時と、男女問わずクチでして貰ってる時と、自主トレしてる時と、快感じたいは、あんまり変わらないんだよねえ」
「そうなの? 溜まってて、私としてる時が、一番気持ち良いんじゃないの?(半分冗談)」
「なんていうか、そりゃ、玲佳に限らず、生身の人間相手の方が、体温も感じられるし、精神的な満足感はあるけどさあ、性的快感そのものはたいして変わらない。自主トレの方が自分勝手に自分のペースでできるから、むしろ肉体的な快感だけなら大きいって思う事もあるかも」
「十年以上つるんでて、初めて聞いたよ、亜嵐の本音」
「男と女じゃ違うかもしれないけどねえ」
「弥生が本気で好きになった相手だったらどうなんだろ?」
「その話もこないだちょっとしたじゃん。好きになっても、そうなった時に鬼が出てきたら、って思うと、気持ちを抑えてしまうって」
「ああそうだった。堂々めぐりだ」
 
「飽きられないうちに辞めたいんです」
 弥生は最初からそう言っていたが、あまりの人気でいろいろなしがらみも発生して、結局、約2年間AV女優を続けて、約50本の作品に主演した。
「かなり貯金もできたので、しばらく世界をまわってきます」
 そう言い残して弥生は日本を飛びたった。
 弥生と普通にセックスして、覚醒状態の弥生をちゃんと感じさせてあげられる男が、世界のどこかにはいるのではないか。時々、弥生の出演作品を見返してはそう願っている。

———————————————————————————————————————

■U-NEXT見放題(R18)VOL.5
○街ゆく清楚系美少女OLさんを高額報酬で(2024年3月)
・普通にちょっとかわいいルックス、特に横顔がグッド、セクシー女優っぽくない雰囲気にそそられる
○SOD社員 総務部斉藤さん(2023年10月)
・冒頭、髪型・メイク・服装で清楚なお嬢様感がまずまず出せている、特に最初のショットがいい(40秒頃)
・事後の上気した表情は一瞬綾瀬はるか(60分頃)
○さくらさん(2003年9月)
・目は整形っぽいが伏し目がちな笑顔は悪くない
○まいち(21)素人ホイホイZ(2023年9月)
・最近一番お気に入りの素人デート設定モノ、このシリーズは最初のショットの一目惚れできるかどうかが殆ど全てなのだがこの作品は整形っぽい目ではあるが派手すぎないメイクでOK、赤みを帯びたいい感じの色合い(多分ノーライト)、同じ女優でも派手なメイクでスタジオで白っぽい照明をガンガンに当てていたらこんなにattractiveに見えない可能性大
・後ろから突かれている顔のクロウスアップ、目を閉じている顔まずまず、あまり見ない画角が新鮮(64分頃)
○薫(20)素人ホイホイZ(2023年9月)
・冒頭のカフェの正面顔はそうでもない(光も平板)感じだが、ホテルのアオリの斜め顔は結構かわいく見える。
○マジ軟派、初撮り。1840 大人の色気漂うお姉さん(2022年8月)
・横浜赤レンガ倉庫でナンパ設定、カフェのテラス席アオリ気味のクロウスアップで目が魅力的、ほうれい線付近のたるみから30歳以上と推定
・ワンピースめくりあげ、ショーツずらしの着衣立ちバック、外から射し込む光の感じもなかなか良い(30分頃)

———————————————————————————————————————

■島耕作メモ
島耕作プロフィール
生年月日 1947(昭和22)09.09(乙女座/B型)
出身地 山口県岩国市
出身校 私立鷹水学園高校
出身校 早稲田大学法学部(1970年卒業)
資格 普通自動車免許
資格 実用英語技能検定1級
身長 177㎝
父親はサラリーマン
母親は呉服商
ひとりっ子
大学時代ESS
好きな食べ物 サラミ 
好きな食べ物 トリュフ
好きな食べ物 オリーブオイル
嫌いな食べ物 酸っぱいもの
ワインに詳しい
バリ島が好き
77年結婚、89年離婚(怜子)
12年再婚(島耕作65歳、大町久美子45歳)
長女 奈美(79年誕生)
孫 耕太郎(03年誕生)
*出典「島耕作クロニクル 連載30周年記念エディション」

■島耕作職歴
1970年4月 初芝電器産業株式会社入社
1970年11月 本社営業本部 販売助成部屋外広告課
1971年11月 本社営業本部 販売助成部制作課
1976年1月 本社営業本部 販売助成部制作課主任
1980年3月 本社営業本部 販売助成部制作課係長
1983年5月 本社営業本部 販売助成部宣伝課課長 *課長島耕作①
1985年1月 ハツシバアメリカ NY支社宣伝部 *課長島耕作①②
1986年1月 本社営業本部 販売助成部宣伝課課長
1987年5月 電熱器事業部 営業部宣伝助成課課長
1988年5月 本社営業本部 販売助成部ショウルーム課課長
1990年5月 フィリピンハツシバ マーケティングアドバイザー
1990年11月 本社営業本部販売助成部総合宣伝課課長
1992年2月 本社総合宣伝部部長
1999年1月 初芝電産貿易株式会社代表取締役専務(出向)
1999年9月 サンライトレコード株式会社代表取締役専務(出向)
2001年4月 本社市場調査室
2001年5月 福岡初芝販売センター代表取締役専務(出向)
2001年10月 福岡初芝販売センター代表取締役社長(出向)
2002年2月 本社取締役九州地区担当役員
2002年6月 本社取締役上海地区担当役員上海初芝電産董事長
2005年2月 本社常務取締役中国担当役員
2006年11月 本社専務取締役
2008年5月 初芝五洋ホールディングス株式会社代表取締役社長
2013年7月 TECOT代表取締役会長
2019年8月 TECOT相談役
2022年1月 TECOT相談役退任
2022年3月 株式会社島耕作事務所設立 UEMATSU塗装工業社外取締役
※2010年1月社名変更(初芝五洋ホールディングス→TECOT)
*出典Wikipedia

●課長010 マイ・フェア・レディ
○先輩が会社の金を横領して愛人が絡んだミュージカルに投資する
・ブロードウェイの劇場に巨大ネオンサイン(HATSUSHIBA)
・水口治雄(ハツシバアメリカ屋外広告課長40歳)にプレスエージェントのクララを紹介される(水口の愛人)
 ブロードウェイのミュージカルの制作の裏側(クララの説明)
 投資は一口8万ドル(2000万円)当時のレートは1ドル250円
・水口が会社の金を横領して二口16万ドル投資(水口本人が認める)
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年11号掲載

●課長011 タキシード・ジャンクション
○会社の金を横領して左遷された先輩が愛人にフラれて会社を辞める
・ミュージカルの初日、観客の反応が鈍い(島の感想)
・社長大泉裕介に水口の件を報告する
・ミュージカルは10日で打ち切り、水口は自宅を売却して会社に金を返す
・クララは水口のプロポーズを断って、投資金目当てだった事を明かす
 「どうして私があなたのような日本人と寝るのよ」
・左遷が決まった水口を勇気一緒にのぞき部屋に入る(基本料金25セント、1ドルで30秒胸にタッチ)
 水口は女性の胸を強く握って離さず、男性数人に袋叩きにされる
※自宅を売却してまで金を返したのなら辞める必要はなかったのでは?
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年12号掲載

●課長012 ムーン リバー
○自宅で妻の浮気の状況証拠らしきものを発見する
・グリニッジビレッジの安ホテルでアイリーンと週末を過ごす
 アイリーンと一緒にいるとリラックス、この気持ちは妻の怜子には感じた事がない
・ニューヨークの物価は1ドル100円で計算すれば大体日本と同じ
・愛と結婚と浮気に関する根源的なやりとり(アイリーン)
・社内宣伝物コンクールで一時帰国(ハツシバアメリカも出品)
・ニューヨークにきてからほとんど妻に連絡してない、妻に連絡しないまま帰国
・妻の浮気を疑って持ち物を調べて、ライターとスキンを発見
・妻には会わずに池袋のカプセルホテルに2泊
・小暮に妻の浮気調査を依頼
※ニューヨークでアイリーンと2日間東京でひとりで2日間の対比
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年15号掲載

●課長013 嘘は罪
○小暮から嘘の調査報告書が届く
・アイリーンと社内でイチャイチャしている所を大泉社長に見られる
・ハツシバアメリカのネオンサインがグランプリ(出世のポイント)
・怜子との結婚を決めた時から離婚が見えていたような気がする
・日本料理店で社長と愛人の待ち合わせに居合わせる(引き分け)
 愛人は銀座のクラブ「クレオパトラ」で働いている
・アイリーンと一緒にエンパイヤステートビルで小暮の調査報告書を読む
※小暮が嘘の報告する根拠としてはもっと過去のエピソードが欲しい
 プロの探偵の職業倫理問題?(友人として無料で請け負ったのか?)
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年16号掲載

●課長014 ニューヨーク ステイト オブ マインド
○アイリーンの恋人が人種差別で仕事をキャンセルされる
・アイリーンと一緒にハーレムのボブのアパートに行く
・ボブのイラストが採用された事を伝える(キャットフードのパッケージ)
・タクシーがつかまらないので地下鉄に乗る(75セント均一のトークン)
・地下鉄は外も内も落書きだらけ
・地下鉄の車内で黒人男性2人組にナイフで脅かされて強盗されそうになるが、拳銃を持った白人男性に助けられ、体を求められる(股間を握られる)
・アイリーン泊まりにきて、ボブが黒人と判明してイラストが不採用になった事を告げる(依頼主は南部出身)
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年19号掲載

●課長015 オータム・イン・ニューヨーク
◯社長にコンゲームを仕掛けてボブのデザインを採用させる
・電話でボブに不採用ななった事を伝える
・依頼主と偶然遭遇(同じアパートに住んでいた)
・依頼主の行動パターンを調べて一芝居打つ(ボブのイラストは引手数多)
・3人でアパートのテラスからセントラルパークを見下ろす(あちこちにボブのイラストの看板)
・地下鉄の車内の強盗・助っ人はグルだった(街で偶然目撃、人生は騙し騙され)
※前回の直後からの続きは初
※金を渡していたゲイの男の目的がよく判らない、金で狂言強盗を仕組んでまでスリリングなシチュエーションで知り合いたい、という事なのだろうか?
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年20号掲載

●課長016 センチメンタル・ジャーニー
◯3人でナイアガラの滝に行く(アイリーン妊娠)
・イメージポスターの社内プレゼン(モノクロで口紅だけアカの特色)
・宇佐美常務が専務昇進
・福田から電話(転勤命令)
・妻から離婚を求める手紙(あなたは課長になる頃から人が変わってきた)
・アイリーンとボブと一緒にナイアガラの滝に行く(ボブが運転)
・ナイアガラの滝はカナダ滝の方が大規模
・島の提案で滝に向かって叫ぶ「来週東京に帰る事になった」「子供が出きた」
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年22号掲載

●課長017 ザ ムーン ワズ イエロー
◯ニューヨーク最後の夜
・大泉から典子の監視を依頼される(次期社長をめぐる派閥争い)
・アイリーンとふたりでニューヨークを歩く
・フランス料理店で3人で食事
・アイリーンとヘリコプターに乗る(ボブの配慮、圧倒的な夜景、最後の長いキス)
※今後更に本格的なサラリーマンマンガになる予感
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年23号掲載

———————————————————————————————————————

■映画雑感
●水の中のナイフ(1962=ロマン・ポランスキー)94分 U-NEXT
○初見。序盤で青年が持っているナイフが出てくるので、このナイフで誰かが誰かを殺すのだろう、と思って見ていたが、最後まで誰も死なない。登場人物は夫婦(中年の男と若い妻)とヒッチハイクの青年の3人だけ。ストーリー自体は30分にまとめられなくもないのに何故かそれほど退屈しない。○当然Nouvelle Vagueの影響も受けていると思われる画面構成・編集・音楽。モダンジャズのトランペットの音が強く印象に残る。うまく言葉で表現できない不思議なムードは映画館で観れば多分もっと強く味わえた。
●去年マリエンバードで(1960=アラン・レネ)U-NEXT 94分
○初見。Nouvelle Vagueの極北!? ゴダールやトリュフォーはまだしもと思える程に難解。予備知識ゼロで判る人はいるのだろうか。殆んど揺れずにすーっと動くカメラは誰の視点なのか?古いホテルのフロアで礼装の大人数がダンスに当然「シャイニング」を想起。
○タイトルだけは何度も聞いた事があり、80年代に読んだ蓮實重彦の著作で言及されていたような気もするが、全く覚えていないので、表層意識としては予備知識ゼロで見た感想は、あのホテルは現世とどこかの中間部分にある時空を超えた異空間、女は自分が死んだ事を認めていない、男はその女を迎えに来た存在なのかあ、といった感じ。明日の昼食の相手(毎回名前が変わる)は天使のような存在? もうひとりの長身の男(カードゲームの主)は、いつか必ず自分がカード(マッチ棒)を最後にひく(死ぬ順番が来る)事を納得させる、死神のような存在?
○あまりに難解すぎて逆に見ているうちに目が覚めてしまう気がする異色作。こんな作品が製作されて公開されて60年後のいまも残って要る事に拍手を送りたい。
●金語楼の子宝騒動(1949=斎藤寅次郎)59分 U-NEXT
○初見。子供15人の金語楼一家の家庭劇。話は正直そうでもないが、短い尺でテンポが良く、画で見せるコミカルなギャグがたくさんあり、その後も長く活躍する俳優がたくさん出ていて、いま見てもそこそこ楽しめる。途中で姉(飯田蝶子)の家に養子に行く子役の美空ひばりが2曲歌って場をさらう。花菱アチャコの台詞「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」は51分頃。

U-NEXTのメインメニューから「邦画」→「一覧から探す」→「見放題」→「古い作品順」と選択すると一番古い作品は小津安二郎「和製喧嘩友達」 1929年。1960年代までの作品、ざっとスクロールした印象では500本くらいありそう。小津安二郎作品、成瀬巳喜男作品、黒澤明作品は多分全て見ているが、他の未見の作品を全部見るにはまだまだ時間がかかりそう。※24年9月20日

———————————————————————————————————————

■20XX(三本打ったら嫁に行く)

 隣の座席でビールを飲んでいる男に、この試合で鶴田がホームラン3本打ったら結婚しよう、と試合開始直後に突然言われた。おいしいラーメン屋見つけたらから今度一緒に行こう、くらいの軽い口調で。
 私は、その男の顔をちらっと見て、おいしいラーメン屋ならつきあうよ、という軽い口調で、いいよ、と答えた。
 本気かもしれないし、冗談かもしれない。
 誰にでもそんな事を言っているのかもしれないし、冗談のような口調を装って一世一代の告白をしたのかもしれない。
 それを、ここで、とことん詰めるような事はしない。
 先の事がどうなるかは誰にも判らないし、ずっと先の事は誰でもみんないつかは死んでしまう、と決まっている。ずっと先に来る筈だった死が、今日、突然、訪れないとも限らない。
 大学二年の夏に親友がダイビングの事故で死んだ。
 私は、その事故をきっかけに、それまでの、何につけても深く考察して一歩踏み出す事を躊躇する生き方を変えて、その瞬間の直感に寄り添って、瞬間のワクワク感やドキドキ感を楽しむ事こそが人生を楽しく生きる最大の要素と考えて、この10年間を過ごしてきた。
 迷ったらGO。
 男に誘われたら、まずは、乗ってみる。
 一緒に過ごしてだんだん嫌になってきたら途中でやめればいい。
 ひと目見た瞬間に、どれだけルックスがいまいちでも、この男は大丈夫そうと思った男は、なぜか常に大丈夫だった。
 ひと目見た瞬間に、どれだけルックスが際立っていて一見爽やかな好青年でも、話す前からなにか嫌な感じがある男がいる。そういう男と話をしてみると、うまく言葉で説明できない、なんとなく嫌な感じが実際にある。それでも、直感が外れる事もあるかも、と思って、若い頃は、そんな嫌な男の誘いにも乗ってみたが、三人連続で、一緒にいてどうにもこうにも楽しい気分になれなかった。何を基準に見た瞬間になんとなく嫌と感じるのかはよく判らない。単純な顔の生理的な好き嫌いだけではない気もする。
 昨日飲み屋で知り合ったこの男は、最初の直感で、特に何も感じなかった。大丈夫そうな感じもしなければ嫌な感じもせず、ただ、なんとなく、言葉でうまく説明できない不思議な感じがあった。そんな事は初めてだったので、その不思議な感じの正体を知りたくて、そのまま朝まで一緒に過ごしたが、結局判らずじまい。顔も体も声も匂いも、ベッドでのテクニックやマナーも、全てが普通。コレという特に良い所も、ココはちょっと…という悪い所もない。
 男は、調査員のような仕事をしている、と言っただけで、殆ど自分の事を話さなかった。年齢は35歳と言っていたが、本当はもう少し上でなないかと思う。常に微妙に笑っているような表情が、もとからそういう顔なのか、それとも意識してそういう表情を作っているのか、どちらとも取れるように見える。その顔は決して不快ではないが、ずっと見ていたい気がする心地よさでもない。なんとも言い難い、過去に出会ったどの男とも違うムード。
 寝ている間に素の表情を見てやろうと思っていたのに、事が終わったとたんになぜか私はすとんと寝てしまい、数時間後に目覚めた時は、男は既に身支度を終えていた。
 ボールパークの内野席に並んで座り、さて、この男とこの先どうなるのか、それとも、これは昨日のおまけみたいなものなのか、と思案しはじめた所に、開口一番のプロポーズは全く予想外の展開。それに対して承諾の返事をしてした自分の心理は、さすがに「誘われたら乗ってみる」の範疇を超えている気がしないでもない。
「背番号9が鶴田?」
「そうだよ」
 男は何も見ずに、当然、という口調で答えた。
「前は、普通の野球の方にいた気がするんだけど?」
「意外と野球知ってるね。プロ野球からTボールに移籍した最初の選手だよ、鶴田選手は」
「えー、でも、Tボールって、結構たつよね、始まってから」
「今年で12年目かな」
「鶴田って新野球でも最初の方からいたよね?」
「Tボールが全国リーグになった1年目の目玉選手だったんだ」
「今年50歳」
「50歳!? 全然見えない。30台後半かと思った」
「今年で現役引退じゃないかって噂されてる」 
「50歳でホームラン3本なんて絶対ムリでしょ?」
 セックスの相性は良い方が良いけれど、ちゃんとつきあうのなら、セックスしている時間よりも、会話をしている時間や、何も話さずに、なんとなく一緒にいる時間の方が長い。他愛もない会話がどれだけできるか、会話がない状態でも平気と思えるかどうかは、長く一緒にいられるかどうかの重要なポイントだと思う。
 「大好き」って思ってしまうのは、その一瞬にはあり得るとしても、所詮その時だけの一種の錯覚。一晩寝て起きて酔いも覚めて、横でだらしくなく口を開けて寝ている顔を見て「あれ。昨日この男の事を大好き、って思った気がするけど、何でそう思ったんだっけ?」という事は多々ある。
 言葉なんてある意味すべてウソ、は言い過ぎだとしても、昨日自分が話した事だって、一晩寝ればほとんどは忘れている。結婚式で永遠の愛を誓った所で1/3は離婚する。好きな相手の言う事なら、どんな言葉も自分に都合良く解釈して、好きがどんどん大きくなって大好きになってしまうが、大好きになった分だけ、相手の言葉にウソがあると気づいた時、自分が相手の言葉を都合よく解釈していただけと気づいた時には、反動も大きい。言葉で語られる事なんて、最初から話半分と思っていれば、失望も少ない。自分の体験では「大好き」と思う気持ちが強かった相手ほど、ちょっとした事であっさり別れてしまい、「嫌いではないかも」程度の相手の方が、なんとなく長く続く事が多かった。
 会話の内容は重要ではない。
 一緒にいて、たとえ会話がなくても、親密な気分になれるかどうか。
 私にとってはそれが最重要ポイント。
 この男の場合、そこがよく判らない。
 そもそも、ワンナイトラブに及ぶ時は、いつもなら、私の方が発火して、それとなくシグナルを出す事が多い。昨夜の私は発火していなかったのに、なぜそういう事になってしまったのか。「ちょっとホテルで休んで行こうよ」とド直球の誘われ方をして(ちょっと酔い醒ましにコーヒーでも飲んでいこうよ、程度の軽い調子だった)、なぜか「うん」と答えてしまったのだ。

 久々の球場は風が気持ち良い。
 Tボールの試合を球場で見るのは初めて。
 今日のようにところどころに雲がある日のデーゲームは、従来に野球だとフライが上がるとたいてい雲に重なってよく見えなくなるけど、Tボールの使用球はオレンジで特殊な蛍光加工もしてあるのか、フライが上がってもとても見やすい。
 Tボールは従来の野球と違って、前半後半3イニングづつ、数年前から更に独自ルールが導入されて打つ人と守る人が完全に別々でOKになってバッティングオーダーは6人になった。その程度の事は知っていたが、なんだか従来のプロ野球に比べてやたらとテンポ良く進む。
 いまのバッターはファウルで粘ってると思ったらベンチに引っ込んでしまい、どうやらアウトになったようだ。なんだコレ?
 「Tボールは、2ストライク後のファウル3本でアウトなんだ。ちなみにボール三球でウォーク。
だから2ボール2ストライク2ファウルになったら次の1球で必ず打席は終わる」
 男が説明してくれた。なるほど。どんなに多くても7球で終了。追い込まれると打者は圧倒的に不利(ファウルで粘って失投を待つ事はできない)なので、どんどん早いカウントから打っていくので、さくさく進むのか。
 シーズン中の普通の試合のつもりで見ていたら、なんと、この試合はチャンピオンシリーズ最終戦で、昨日まで3勝3敗、この試合に勝った方が年間優勝。
 前半3イニングを終えて6-0と相手チームがリード、鶴田も前半3打席はノーヒットだったのになんと後半4回と5回に2打席連続ソロ本塁打。
 えっ。
 って事はこの回鶴田が本塁打を打ったら、私、嫁に行くの? 
 マジ?
 ていうか、私、なんで、〈嫁に行く〉なんて思ってしまったんだろう。
 別居婚や通い婚も珍しくないこの御時世に。
 最終回6回裏。スコアは6-2。先頭打者は鶴田。毎回先頭打者から攻撃が始まる事は今日はじめて知った。
 打って欲しいような、打ってもらいたくないような。
 でも、よく考えたら、この試合で鶴田が本塁打3本打ったら結婚しよう、なんて、冗談だよね。
 もし打ったら「冗談かと思った」と言えばいいんだ。なんて事を考えているうちに鶴田は初球か2球目を打ってどん詰まりのセカンドゴロであっさり凡退。
 ほっとしたような、ちょっと残念なような。
 この男と知り合ってから、なんだか、自分で自分がよく判らない瞬間が増えた気がする。
 次の打者もセンターフライで凡退でツーアウト。
「ダメだったねえ鶴田。2本打ったのにはびっくりしたけど」
「まだわかんないよ」
「だってツーアウトでしょ、もうムリでしょ」
「ここから4人連続出塁すれば、また、鶴田にまわってくるよ」
「いやいや、さすがにそれはないでしょ。相手のピッチャー、球速いし」
 ところが、なんと。 
 3番がヒット、4番が三塁手のエラー(イレギュラーバウンド)で出塁、5番がウォーク、6番もウォークで押し出しで1点返して3-6の3点差、なおも2死満塁の場面で、この試合7回目、このイニング2回目の打席が鶴田にまわってきた。
 もしここで鶴田が満塁本塁打を打てば逆転サヨナラで鶴田のチームがチャンピオンシリーズ優勝、凡退すれば相手チーム優勝。
 こんな凄い場面で私の結婚がかかった鶴田選手の現役最後になるかもしれない打席がまわってくるなんて。プロ野球の日本シリーズでもシリーズ最終戦最終回9回2死3点差で逆転サヨナラ満塁本塁打なんてなかった筈。
 もう私の結婚なんてどうでもいい。
 ここで打ったら野球の歴史に残る。

 打ち上げた大きな打球は勢いよく右中間に飛んで、そのままスタンドに入った。
 すげーなー、最後まで持ってるなー鶴田、と男が言う。
 よっしゃ。こうなった以上は嫁に行ってやろうじゃないか。
 人生どうせこの先何がどうなるか判らない。
 この曖昧な感情の正体を突き止めるには、行ける所まで行くしかない。
 鶴田選手を迎える大騒ぎの歓喜の輪を見ていると、鶴田選手をプロ入り当初から三十年間見続けていたような気がしてきて、気がつくと目頭が熱くなっている。
 
 数日後に男から連絡が来たので夕方から会う事にする。
 男も私も飲食店を予約するのは苦手なので、繁華街を適当に歩いて、カジュアルな洋風居酒屋のような店に入る。ハウスワインが適度に冷えていておいしい。
 男の方からは3本打ったら云々の話は何も言ってこない。
 こっちから訊くのもなんだかしゃくなので、どうでもいい話やどうでもいい話をだらだらと続けて、店を替えて、何杯飲んだか判らないくらい飲んで、自然な流れで、ホテルに行って、キスを交わせば酒の酔いと前回の交合の興奮も蘇り、夢中で貪り合った。
 男の胸に頭を乗せて、脚を軽く絡ませつつ、いまは形をかえて柔らかくなっている男の欲棒を軽く握りながら、夢現の狭間をたゆたう。
 事後のこの時間が好きだ。ずっとこうしていたい。
 この男とは肌が合うのか、他の男に比べて、ひときわこの時間が心地よいような気もする。
 ……いつの間にか男も私もそのまま寝てしまったようだ。
 ぱっと目を開けるとさっきまでは互いの表情が見える程度には明るかった部屋が、かなり暗くなっていて、一瞬、どこで何をしているのか意識と記憶が混乱するが、男の体温と寝息とかすかな体臭で
回路が繋がる。私が寝てしまったので、男が枕元のスイッチで照明を暗くしたのだろう。だけど、照明のスイッチはヘッドボード左側の隅の方にあった筈。私に腕枕をしているこの体勢で届きそうにないような気もするけど。
 いつの間にか握っていたものを話して男の内股あたりにだらんとしている右手をそっと滑らせていくと、かすかな寝息を立てている男の欲棒は、男の意志とは無関係に(?)ハードに屹立している。
 しっかり握ってゆっくり形状を確かめるように摩ってみると、男は「ぅん」と聞いた事がない類の声を出した。
 射精した後でティッシュで拭っただけでシャワーは浴びてないので変な匂いがするかもしれないと鼻を近づけて匂いを嗅いでみるが、なんの匂いもしない。唇の内側で充分に湿らせた舌先で、欲棒の先端の裂孔部分をゆっくりなぞるようにすると、欲棒はぴくんと反応して更に硬度を増した。欲棒の先端の丸みを帯びた部分をゆっくり舌と唇で舐り、ゆっくりその部分全体を唇で覆っていき、強弱をつけながら軽く出し入れする。先端部分の丸みが舌や唇や頬の内側に触れた瞬間のかすかな震えを文字通り味わうのは、むかしから好きなのだけど、この男のこの部分は格別。うまく言葉で表現できないが、私の舌や唇や頬から男の悦びが直裁に私の深い部分に届いているような。
 初めてこの男にこの行為を施した時にもそんな風に感じたけど、眠っている男に施しているいまは、男の余計な雑念がないせいなのか、これまでの数回にも増して、震えが、びんびん、響いてくるような。
 そのまま、右手で宝玉袋をつつみこむようにして軽く揺らすように刺激を与えると、私の口の中のその部分は、より一層、震えと硬度を増したようだ。
 少し首と顎に疲労感を感じていったん唇を離して、握った手指の上下運動は続けながら、
「こないだのTボールの、鶴田のあれ、どうする?」 
 と声に出して訊いてみる。どうせ寝ていて聞こえてないんだろうけど。
「鶴田選手のあれって?」
「起きてた?」
「目も覚めるよ。そんな風にされたら」
「どの辺から?」
「最初っからそんなにちゃんとは寝てない。誰かと一緒だとあんまり熟睡できないんだ」
「そうなんだ」
「鶴田、惜しかったよね」
「惜しかった?」
「なんで疑問形?」
「惜しかった、なんて言うから、なんの事かなあって」
「なんの事って、3本目の、もうちょっとでホームランの」
「もうちょっとでじゃなくって、ホームランだったよね」
「なに言ってんの」
「そっちこそなに言ってんの。結婚とか冗談のつもりだったのに、ホントに3本打っちゃったから、まるごとなかった事にしたいってこと?」
 男が見せてくれたネットニュースはどれも、鶴田の最後の打席はあわや逆転サヨナラ満塁本塁打を相手チームの外野手がジャンプ一番好捕、だった。
 私はあの日、一瞬座ったまま寝ちゃって、夢でも見てたってこと?

 鶴田の試合を観てから1年が経った。
 鶴田のチームの最後の試合をまた男と一緒に観に行って、本塁打3本に結婚をかけてみたが、消化試合だった事もあって鶴田は前半3打席でひっこんで本塁打は打たなかった。
 引退を撤回した鶴田は今シーズンは打者専念で好成績を残し、52歳になる来季も現役続行と報じられている。
 私と男は、結婚はしていないが、週に数回会って、週に1回は交合している。
 来年の最終試合もまた一緒に観に行ってまた本塁打3本に賭ける事になるかどうか、1年も先の事は判らない。1日先の事だって判らない。男から連絡が来て誘われたら、とりあえず、今夜は会うつもりではいる。【了】

———————————————————————————————————————

■愛と感動の映像コント「大リーグボール誕生秘話」
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

○タイトル(当時のおどろおどろしい書体)
 「大リーグボール誕生秘話」

○長屋風のさびれた家の一室(夜、明かりがついていない)
 ※以下全て同セット内で展開

○荘厳な天の声
「父・星一徹は工事現場の仕事、
 姉・明子は買い物に出かけていて、
 その日、家にいたのは、少年・星飛雄馬だけであった」

○ほぼ真っ暗な中、金属がきしむような音がリズムカルに聞こえる(ギシギシギシギシ)

○飛雄馬の声
「……ふう、やっぱり大リーグボール養成ギブスをつけたままで、
 〈自主トレ〉するのは、大変だなあ」
 セリフと同時に、スポットライトが飛雄馬の全身を捉える。
 上半身には、ご存じ、大リーグボール養成ギブス。
 下半身は何も身につけていない(※オンエア時はモザイク)。
 
○スポットライトが消え、再び、ギシギシギシギシという音。
 その音のテンポが次第次第に早まって、

○飛雄馬の声
「うっ」(同時に音が止む)

○物体が放物線を描いて飛んで行く音(ピュ〜〜〜〜ン)

○襖が開く音(ガラッ)

○液体が何かにかかる音(ベチャ)

○部屋全体が明転
 部屋の入り口の所に星一徹が立っている。
 その顔面には白い液体がとろーり…。

○飛雄馬
「(死ぬほど驚いて)と、父ちゃん!」

○一徹、ゆっくりと近づいて来る。

○飛雄馬、横たわったまま、後ずさりして、
「ご、ごめんよ父ちゃん、こっそリ、こんな〈自主トレ〉で、
 無駄な体力を使ってしまって……」

○一徹、更に近づいて来る。
 顔面をとろとろ流れる白い液体は一切無視して、
 力強く目を見開いて、

○飛雄馬
「その上、と、父ちゃんに、
 が、顔面シャワーなんかしちまって……」

○一徹、飛雄馬のそばに仁王立ちして、
「飛雄馬!
 お前がいま、お前のイチモツを握りしめている手は、
 いったいどっちの手だ!?」

○飛雄馬
 「!?(その手を見て)み、右手だ……」(SE:ガーン)
 
○左手を使って、食事、勉強、はみがきetc.をする飛雄馬のフラッシュ

○一徹
「ばっかモン!!(と、ちゃぶ台をひっくり返して)
 左手を鍛える為に、
 いついかなる時でも左手を使えと言ったのを忘れたのか!
(と、飛雄馬をボコボコに蹴る)」

○飛雄馬、体を丸くして、一徹の蹴りに耐えながら
「と、父ちゃん、ごめんよ。
 今度から必ずこんな〈自主トレ〉も左手でするから。
 マネキュアを塗るのもやめて、
 テンガもやめて、
 野球選手らしく、
 正々堂々と左手でやるから……」

○姉・明子、突然入ってきて、飛雄馬をかばい、
「やめて!!
 〈自主トレ〉まで左手でなんて、ひどすぎるわ!」

○明子、飛雄馬を助け起こして
「かわいそうな飛雄馬……
 いま出したばかりなのに、まだ、そんなにいきりたっていて、
 溜まっていたのよね。
 今日は、もっと、徹底的に、すっきりさせてあげる。
(と、飛雄馬の下半身に顔をうずめて、顔を上下させる)
 ※何が何だか全然わからないほど巨大なモザイク

○飛雄馬
「ね、姉ちゃんっ!!
 そんな……すごい……気持ちよすぎ……」

○一徹
「ようし、飛雄馬。
 その体勢なら上半身は使えるな!
 それっ、火の球ノックだ!!」

○一徹が打った火の球ボールがスローモーションで
 飛雄馬に向かって飛んでいく……

○飛雄馬の瞳のアップ(燃える炎)
 
○飛雄馬の下半身(巨大なモザイク)

○荘厳な天の声
「その瞬間、少年・星飛雄馬めがけて飛んでくる火の玉と同様に、
 星飛雄馬の体の奥深くにも、熱い熱い炎が燃え盛っていた。
 大リーグボール完成には、このような、
 美しい家族の愛の物語が隠されていたのであった……」

○飛雄馬の声
「うおーーーーーーっ(絶叫)」

○エンドタイトル(当時のおどろおどろしい書体)
「大リーグボール誕生秘話 完」

———————————————————————————————————————
■覚醒
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
 
 両親はふたりともずっと出張で不在。夏休みになってから連日、だらだらとテレビ、ラジオ、アニメ、マンガ、読書で明け方まで過ごして昼まで寝る生活だったのに、昨夜は妙に眠気を感じて早めに(といっても深夜3:00頃)寝て、2時間目が始まる頃に尿意を感じて目が覚めた。
 目が覚める直前まで見ていた夢の記憶はベッドから降りた瞬間に消えて、とても甘美な内容だったような生暖かい残滓だけがどこか奥深い所に漂っている。寝る前に小林綾乃を想って自分で処理したのに、いまも欲棒は極限状態にまで硬くなっていて、おしっこをする時に強く握って下に向けないとあらぬ方向に飛び散りそうになる。
 朝勃ちは仕方ないとしても、特に刺激もなく、妄想もしていないのに、気がつけば欲棒が硬くなっているという事態、例えば現国の授業中になぜかそうなっている事は、高校二年になってから更に増えた。授業中に、自分では何も妄想をしていないつもりでも、心の奥底では、自分でも気づかない妄想をしているのだろうか。もしくは、そんな刺激や妄想は関係なく、高校二年生男子の性欲というものは、文字通り所構わず、隙あらば発動するのか。十六歳の夏を迎えて一段と勢いを増したように思えるそれは、毎晩自分の手で処理すればコントロールできる、というレベルを越えつつあるようだ。手に余る性欲。ついこの間まで、性の意味も知らない小学生だった気がするのに気がつけば高校二年。高校二年と言えば、青春、恋の季節、早い人は初体験……もし小林綾乃とつきあってそんな展開になったらと妄想して、そんな時の小林綾乃の顔が脳裏全体に浮かび、少し萎みかけた欲棒は再び急に硬度を増して、放物線は左に逸れてトイレの床を汚した。
 小学生の頃は七月下旬のこの時期は、祖父母の家に泊まって連日海に行っていた。数日間の滞在中、多忙な両親がふたりとも最初から最後まで揃う事は殆どなく、時にはふたりとも一時的に仕事の為に一旦戻り、祖父母や初めて会う親戚に面倒を見て貰う事もあった。ひとりっ子で、ものごころいた頃から人見知りだった僕は、そんな日は、とにかく迷惑だけはかけないように、と思っていたが、そういう時に限って、たいてい、何かしら、失敗をした。買って貰ったばかりのラムネの瓶を落として割ってしまったのはまだマシな失敗で、スイカ割りのスイカを食べてお腹を下して海の家の簡易トイレの便座を汚してしまった時は、トイレットペーパーの残量を気にしながら必死に拭き取っていると、薄い壁を通して聞こえてくる周囲の話し声が、僕の失敗を嘲笑しているように聞こえ、身体の周囲に発生した薄い膜がその厚みを増して、すーっと周囲が遠くなるような感じで現実感覚が希薄になり、手が滑って自分の排泄したものに指が触れてしまった。祖父母の元に戻る前に石鹸で丁寧に洗っても、なんとなく匂いが取れきれてないように感じがしてならず、祖父母が笑顔の奥で「うんこたれ」と言っている心の声が聞こえた気がした。
 六年生になる頃には、ひとりで過ごす方が気楽で落ち着く、という事をはっきり自覚して、ひとりで街に出て映画を観て、ファーストフードや喫茶店で軽く食べて、本屋で小説・雑誌・マンガの単行本を買って帰ってくる、という休日の過ごし方をするようになった。ふたりともアカデミックな仕事に就いていて、それなりの収入がある(らしい)両親は、僕がひとりで行動するようになったのを喜んでいたように見えた。それまでは、夏休みと冬休みには、常に三人一緒ではないにせよ、必ず家族旅行に行っていたが、小学六年の冬休みを最後にそれはなくなった。
 両親の書斎にはうなるほどの本や雑誌があり、それを読むだけで無限に時間はつぶせるという安心感の土台に、自分で選んで買った自分の本が増えてくる充実感をどんどん積み重ね、この五年間で、自分の本・雑誌・マンガは、壁一面の本棚を埋める数になってきた。両親の方針で、勉強や文化の為の費用は申告すれば基本的に無条件で全額出して貰えた。最近は家族三人揃って食事する事は滅多になくなった食卓に、家族間の連絡ノートが置いてあり、そのノートに観た映画・買った本や雑誌のタイトルと金額を記入すると、その金額分プラスアルファの金額の現金が数日後に封筒に入れられていた(例えば映画500円、文庫本3冊と雑誌1冊で1200円、合計支出金額1700円なら、数日後に端数切り上げで2000円が入っていた)。アニメの雑誌や世間で低俗と言われているマンガの単行本に関しては、なんとなく、そのノートに記すのがはばかられて、それとは別に昼食代・交通費・雑費として毎月貰っている定額のこづかいの方から捻出した。自宅のマンションは街の中心部に歩いて行けない距離ではなかったし、食が細い僕は、朝をしっかり食べると昼食は小さなパン一個で充分だったので、交通費や昼食代を節約して趣味の雑誌・マンガの費用を捻出するのはそれほど難しくなかった。

 天気も良いので近所の公園に散歩に出た。放課後に歩いて街まで行く時に通リ過ぎる事はあるが、午前中にここに来るのは初めて。平日の午後にはまばらにしか人がいない、それなりに大きい公園には、夏休み期間だからなのか、意外にたくさんの人がいた。定年を迎えていそうな年配の女性がゆっくり歩き、噴水のそばには小さな子供を連れた若い女性が何人かいる。当たり前の話だが、今日この時間にこの公園に来なければ、多分、一生見かけなかった人たちだ。同じ時代に生きていても、同じ場所に同じタイミングで居合わせなければ、人と人は出会わない。僕がいままでに出会った人たちは、家族、親戚、学校の先生、幼稚園・小学校・中学校・高校の同級生、クラブの仲間、子供の頃の近所の公園にいた遊び仲間、塾や習い事の仲間…。すでに数百人の人と出会っているが、親友とまで言える友人がいるかどうかは微妙な所で、一方的に片思いをした女の子なら何人もいるが恋人と呼べる存在は過去もいまもいない。
 いつかそのうち恋人と呼べる人もできるだろう。
 なんとなく、なんの根拠もなく、そう思って生きて来たが、気がつけば、高校二年の夏だ。そんな事を言って自分から何も行動を起こさなければ、一生、恋人もできず、結婚もできないかもしれない。もしくは、なんとなく妥協してつきあって、妥協して結婚して家庭を持って、仕事に追われて、気がつけば50歳を過ぎた頃にふと高校時代を振り返って、あの頃、もし、真剣に小林綾乃にアタックしていれば、違った人生を送っていたかもいれない、と思う。
 そんな未来の映像がスパークして、急に胸のあたりが苦しくなって、ベンチに腰をおろした。
 自分が若いという状態は永遠には続かない。
 いつかそのうち、なんて思っていられるのは、自分が若いから。
 判ってはいても無意識に避けている真実が、急に重みを増して、胸の奥の深い裡が揺さぶられるような感覚が震えるように発現して、同時に、子供の頃に失敗をする度に感じていた、体の周りの薄い膜が強烈に厚みを増す。
 裡と外から僕を刺激する得体のしれない圧力は、僕の存在を極小の何かに押し込めようとするように続き、金縛りにあったように全身が動かない。頭をうなだれて、深呼吸をして、落ち着こうとするが、それもできず、息苦しさと全身の震えが続く。
 どれくらいその時間が続いただろうか。
「大丈夫?」
 若い女性に声をかけられて、反射的に顔をあげると、そこには誰もいなない。
 目に入ってくるのは夏の青い空と白い雲だけ。
 白い雲が移動すると、その奥に、小林弥生の横顔が見えた。
 去年の四月、吹奏楽部の最初のオリエンテーションで綾乃をひとめ見た瞬間に恋に落ちた。希望する楽器を何にするか決めかねていたが、綾乃がトランペットを希望したので、平静を装って僕もそっと手を挙げた。同じ楽器を担当しているので横に並んで一緒に練習する機会は多いのだが、この1年半、事務的な話しかした事はない。
 もし、いきなり、綾乃に告白しても、当然、フラれるだろう。
 だが、フラれたとしても、それで人生が終わるわけではない。告白しなければ可能性は多分ほぼゼロだが、告白すれば可能性はゼロではない。三十年後に後悔するくらいなら、やるだけはやったと思えるだけの事をした方が良いのではないか。

「来月から、毎月、必ず、誰かに告白する事に決めた」
 和樹がそう宣言したのは高校入学前の春休みの事だ。
「告白って、好きな女の子に、好きなんです、って言う、あの告白?」
「十五歳の健康な男子が他の意味で使うか?」
「二次元の妄想じゃなくって、実際に、生きてる女の子に告白?」
「二次元はしばらく封印する」
「毎月っていう事は、つまり、高校生活三年間で36人に告白して、36人全員にフラれるっていう壮大な計画?」僕は素朴な疑問を和樹にぶつけた。
「なんでフラれる前提なんだよ……でも、もし、仮に、万が一、36人全員にフラれたとしても、この話は、将来結婚式のスピーチのつかみで絶対使えるだろ。毎月告白すれば、下手な鉄砲なんとやらで、ひょっとしたら、とりあえずつきあってみるか、っていう女の子が絶対いないとも限らない。どっちに転んでオッケーなわけ」
 将来の結婚式のスピーチなんて想像した事もなかったので、和樹の口からそんな話が出てちょっと驚いた。
 この時は、いつもの冗談なのだろうと思っていたのだが、和樹は、僕と同じ高校に入学後、いくつもの部活にかけもちで入部して、実際に毎月誰かに告白して、ここまで15人全員に、順調にフラれている。最初の数人は誰がみても学校のアイドルタイプの女の子に告白して見事に玉砕、だんだん妥協してレベルを落としたが、誰でも構わず告白するという噂が広まって、普通に笑顔で断られるようになりつつあるらしい。
 ルックス抜群の女子は、
 ①中学時代からの彼氏が他校にいる
 ②入学早々先輩が手を出している
 ③高校時代は男女交際はしない方針
 このどれかの可能性が高いから、さすがに難しい。
 そんなような事を一学期の終業式に和樹は言っていた。
 綾乃は「男女交際はしない方針」なのではないか、と勝手に解釈して、毎晩の妄想では、僕が告白したらその方針はやめた、という展開で発展させている。他の男子とつきあっている噂を聞いた事はないが、他校に彼氏がいる可能性は捨てきれない。

 公園を抜けて、高校に行って部室を覗いてみようと思いついた。今日は吹奏楽部の全体練習日ではなく、夏期休暇中の個人活動届けも出してないが、こっぴどく怒られる事はないだろう。
 ひょっとしたら、綾乃が自主練しているかもしれない。
 部室を覗いてみて、もし綾乃がひとりだけで練習していたらどうしよう。
 高校の門をくぐり、誰もいない下駄箱で上履きにはき替える。いつもはたくさんの生徒でごった返している空間に自分だけしかいない事が新鮮に感じられ、大学は靴のままでOKなので、こんな風に広い玄関で上履きに履き替えるのも、あと一年半で終わりと思うと、なんとも説明できない感覚が胸の奥に生じて、いつもはあたふたと通り過ぎるだけの空間をしみじみと見回した。
 カーテンが閉じられている購買部の横の階段下に誰かがいる気がして、よく見ると和樹だった。声をかけようと進んで行くと和樹の前に女子がいたので咄嗟に反射的に引き返し、十字路の角の所に隠れてそっと様子を伺うと、和樹は握手するように握った女子の手を引き寄せてキスをした。女子はすぐに和樹から体を離して駆けてきて、階段を登っていく。残された和樹はビデオの一時停止のようにほんの一瞬そのままの体勢で凝固したと思ったら、急に走り出し、近くに立っていた僕に目もくれずにその女子を追いかけて階段を登って行った。
 青春映画か青春ドラマで見るような光景を目の当たりにして、僕の胸はまるで自分がファーストキスをしたかのように高鳴っていた。今なら綾乃に話しかけられそうな気がして、音楽室に向かって、誰もいない校舎の廊下を走った。
 音楽教室の方からトランペットの音が聴こえている。
 そっとドアを開けて隙間から覗くと、綾乃がひとりで、コンクールの課題曲のBパートを吹いていた。カーテンを揺らす夏風が綾乃のおでこのおくれ毛を微かに揺らし、額に浮かぶ小さな汗が差し込む光を受けて瞬く星のように煌めく。
 思い切ってドアを開けて「個人練習?」と声をかけた。
「山内も?」
「僕は、今日は、通りすがり」
「なにそれ」
「綾乃は、今日、この後、空いてる?」
「え?」
「〈らんぶる〉で何か冷たいモノでも飲まない?」
「えー、でももう少しやっておきたいし」
「じゃあ、俺、いまから30分後くらいに行って、待ってるから。5分だけでもいいから、ちょっとだけおいでよ」
「どうしようかな……」
「待ってるから!」
 そんな風に強引に綾乃を誘う妄想が、瞬間、脳裏に浮かぶ。
 ドアを開けると綾乃は演奏をやめてこちらを振り向いた。
 マウスピースから綾乃の半開きの唇に細い糸をひいている唾液を凝視すると、昨夜、綾乃を使って精を放った罪悪感の記憶が体を駆け巡り、急に全身が重たくなる。
「山内も個人練習?」
 練習を中断されて少し怒っているような口調。
「……いや、その、日にち間違えちゃって……」
 僕は、典型的なしどろもどろな言葉をぼそぼそとつぶやいて、その場を走り去った。

 廊下の向こう側から来る女子とすれ違う。さっき和樹がキスしていた女子。たしか、一年の生徒会役員の女子だ。廊下の奥の生徒会室に和樹がいるかも、とドアを開けて覗き込んで見るが誰もいない。左奥の資料コーナーの赤いカーテンが少し揺れているように見える。
 そっと近づいてカーテンを少し開けて覗き込むと、左右に天井までの高さのスチールロッカーがいくつも並んでいる資料コーナーの奥の窓際に、長身・長髪の男性が立っている。どう見ても和樹ではない。生徒会長の司さんだ。頭脳明晰、容姿端麗、サッカー部のエースで生徒会長で家は金持ち、という我が校のプリンス。
 司さんは、顎を少し上げて目を閉じて、何かに耐えているような表情。司さんのすぐそばに、こちらに背を向けて、膝立ちしているような姿勢の女子、その後ろ姿は司さんに殆ど密着しているように見え、ポニーテイルが規則的にゆっくり揺れている。
(え? これってもしかして……?)
 距離があるし、女の子の後方から見ているので、断言はできないが、この体勢・この動きは、女性が男性に口で施す例の行為にしか見えない。さっき見た綾乃の半開きの口元がフラッシュバック、初めて味わう驚きなのか興奮なのか、あるいは一種の恐怖なのか、よく判らない何かが、僕の内面に渦を巻き、僕の欲棒は早鐘を打っている心臓の鼓動に呼応するようにぴくんと脈動する。
 司さんは目を開けてこっちを見た。男の僕でも惚れてしまいそうな甘い二枚目。いったい天は何物を与えるのか。司さんは僕を見て少し微笑んだ。
 即座にカーテンを閉めて逃げようと思ったが、なぜか、体が動かない。司さんの目から目を離すことができない。こんな場面をすぐ近くで僕が見ているのに、司さんはどこか嬉しそうな表情に見える。
 ポニーテイルの揺れ方は次第に激しくなっていく。
 司さんは女子の肩のあたりを両手でつかんで立ち上がらせてこちら側を向かせ、女子は両手を膝の辺りにつけて、脚をXの形にして、馬跳びのような姿勢になる。
 司さんは女子のおしりの方からオレンジのミニスカートの中に手を入れて触れている様子。やがて、白っぽいショーツがすーっと降りてきて膝のあたりで止まった。その部分に直接触れているであろう司さんの手の動きに伴って、女子の体は時折びくんびくんと動いて、その都度、ポニーテイルがぴょんぴょん跳ねる。
 司さんはずっと僕の方を見ていて、僕は、目をそらす事も、体を動かす事もできない。
 川の源流で小魚が跳ねるような幽かな水音が響き、女子は抑えきれなような声を漏らして、一瞬、顔をあげた。
(舞香先輩……!?)
 一瞬陽光が照らしたその顔はどう見ても、我が校随一のアイドル、舞香先輩だった。
 司さんと同様に頭脳明晰・容姿端麗、テニス部のエースで生徒会副会長で家は金持ち。司さんと舞香先輩は親も校長も公認のカップル、と噂されていたが、まさか、生徒会室でこんな事をしてるなんて……。
 司さんの下腹部が舞香先輩にぐぐっと密着すると舞香先輩は「っあっ」と、廊下まで聞こえそうな音量で短い声をあげる。
(これって、そういう事!? 司さんのが舞香先輩の中に!? )
 司さんが動いてふたりの体勢が少し角度が変わり、司さんの背後から差し込む夏の陽光が、スカートが腰のあたりまでまくられている舞香先輩の丸いおしりの輪郭を煌かせる。司さんは下半身のリズミカルな律動を続けながら、しなやかな指先で優雅に舞香先輩のブラウスのボタンを外してゆき、ブラジャーの上辺をズラして乳房の先端を露出させると、指先で軽く触れ、人差し指と親指で挟み込んで刺激する。時折カーテン越しに陽光は差し込んでも基本的には薄暗い空間で、逆光で、数メートルの距離があるにも関わらず、舞香先輩の淡いピンクにも淡い茶色にも見えるその部分が隆起してくるのが、なぜか、はっきり判る。
 司さんが下半身の少し動きを速めると、舞香先輩はずっと閉じていた目を開けて、こちらを見た。
 舞香先輩と目があった。
 今度こそ、とにかくこの場から離れよう、と思うのだが、体はますます動かない。
 舞香先輩は僕の方を見で少し微笑んでいるように見える。
 舞香先輩の背後の司さんも腰を動かしながら僕の方を見ている。
「ねえ、そこの君、もし見たければ、そのまま見ていてもいいけど」
「また鍵かけ忘れたの?」
「だから、そこに、彼がいるんじゃない?」
「なんか、何気に自然にいるよねえ、君って」
「いろいろうるさい事を言うヤツもいるから、ドアに一番近いデスクの一番上の引き出しに鍵があるから外からかけてくれないか」
「最後まで見てたいなら、内側からかけて、鍵」
 行為を続けながら話す司さんと舞香先輩の口調はまるで普通の世間話。
 ふたりは、同時に目を閉じると、まるで最初から僕はここにいなかったかのように、ふたりで行う愛の行為を激しくさせ、僕の金縛りはすっと解けた。僕はカーテンを閉めてゆっくり後ずさった。
 言われた引き出しにあった鍵を手に持って考える。
 もし、鍵を外からかけたら鍵はどうすればいいのだろう? 頃合いを見て返しにくればいいのか?
それとも、こんなチャンスは滅多にないのだから、内側から鍵をかけてもう一度カーテンの向こうを見てみようか。だけど、これ以上見続けたら刺激が強すぎて心臓がどうにかなって倒れてしまうかも。
 悩んでいるとドアが開いて綾乃が入ってきた。
 綾乃はほんの一瞬僕の方を見てほんの数ミリの会釈のような挨拶をすると、右側の机の上の小さな引き出しから馴れた手付きで何かの用紙を取り出し、椅子に座って記入しはじめた。横目でちらっと見ると、夏季休暇中の個人練習届けの用紙。職員室に担任が不在の場合は生徒会役員が代理で受理できる規定になっている。立ち上がった綾乃が用紙をトレイに入れた瞬間、かすかに舞香先輩が漏らす声が聞こえてくる。
「……奥に誰かいるの?」綾乃に訊かれて「……あ、いや、えーと……」と言い淀んでいると再び舞香先輩の声。
 綾乃は、その方向に目をやって歩き出し、カーテンを一気に開けて、一瞬の躊躇もなく、その奥に歩を進めて、後ろ手でカーテンを閉めた。
 僕は、あまりの展開に、その場に立ち尽くす。
 驚いてすぐに走り出てくるかと思った綾乃はそのまま出てこない。
 舞香先輩の漏らす声が時々響く生徒会室で、鍵をかける事どころか、半ば思考能力を失って、僕は、ただただ、その場に立ち続ける。綾乃はあの空間で一体何をしているのか、せめてカーテンの隙間から見てみたい、と思うが、足が床に張り付いたような感覚で一歩も動けない。ほんの少し前は、和樹のキスを目撃しただけでびっくりしていたのがこの展開、僕の身体は、人生で初めて体験する出来事の許容量を超えてショック状態に陥っているのかもしれない。……
 目を閉じて、なんとか動かせる左手でみぞおちのあたりをおさえて、深呼吸を繰り返す。生徒会室に入ってからどれだけの時間が経ったのかよく判らない。ほんの数分のような気もするし、綾乃がカーテンの奥に消えてから30分は経っているような気もする。鼻からゆっくり吸ってかすかに開けた口からもっとゆっくり吐く呼吸を繰り返すうちに、次第に下半身の感覚が戻ってくる。なんとか歩けそうなので一歩を踏み出すと下腹部に鈍痛が走る。僕の欲棒はいつの間にか極限まで硬く勃起して、その先端部はズボンの布地にテントを張ったような状態でつきささって固定されていて、重心を少し前に傾けただけで、欲棒の根元に鈍痛が生じる。位置と角度を調整して下腹部に密着するように完全に上を向かせて、歩行に支障が出ないようにして、カーテンの方に足を踏み出した瞬間、カーテンが開いて、舞香先輩がひとりで出てくる。
「あなた、二年の山内徹くんでしょう? 吹奏楽部の」と舞香先輩に訊かれた。
「え、どうして僕の名前を……」
「他にも、いろいろ知ってるよ、山内くん……吹奏楽部の全体練習は来週からよね、今日は個人練習?」
 舞香先輩はそう言いながらすぐそばまで近づいて来る。カーテンの向こうのさっきまでのあられのない姿の名残りはどこにもなく、ブラウスのボタンもしっかり留められている。舞香先輩の声を間近で聴くと、内心のドキドキはさらにたかまって、ほとんどえづきそうなレベル。
「えーと、そのつもりだったんですが、楽器を忘れてきて、ちょっと和樹……田所くんに用事もあって……」答えはどうにもしどろもどろになってしまう。
「個人活動届け、出してない生徒は登校禁止だよね。ちゃんと出した?」
「あ、はい、えーと……」
「ダメじゃない。ちゃんと出さないと」
 舞香先輩は僕の肩に手を置いて顔を近づけて囁く。
 驚きとドキドキで腰が砕けそうになってしまう。
「いま来た子も吹奏楽部でしょ……二年の小林綾乃」
「どうして名前……」
「いろいろチェックしてるのよ、日頃から、司と一緒に。まあ、どうにもこうにもなりそうにない人は覚えないけどね」
 そのまま舞香先輩に導かれるように椅子に座らされる。
「……山内徹くん」
 舞香先輩は、僕の背中に手をまわして僕の太ももの上に横向きに座り、僕の耳元に唇があたりそうな距離で言った。
「さっきの、わたしと司の事、誰にも言っちゃだめだよ」
 舞香先輩の囁きに耳をくすぐられて、またもや僕の人生初体験許容量メーターは一気にレッドゾーン。ほんの少し前まで司さんを受け入れていた筈の舞香先輩のその部分は、僕の太もものつけねあたりに密着していて、さっきから上向きに僕の下腹部にはりついている欲棒との距離はごくごくわずか、舞香先輩がほんのでも少し僕の左側に移動すれば確実に触れてしまう。
「……はい、もちろん。というか、自分でも、信じられないっていうか」  
「自分の目で見たのに信じられない?」
「正直、信じられないです。いまこの瞬間も、もしかして夢じゃないかって」
「山内くん、あなた、小林綾乃が好きなんでしょ?」
「え?」
「いま、カーテンの向こうで、司と小林綾乃はなにしてると思う?」
「え、まさか」
「そのまさかかもよ。見てみる?」
「……」
「人はみかけによらないんだよ。山内くんは……」
 舞香先輩は僕の欲棒を指先で軽くすーっとなであげた。ズボンとショーツ越しに軽く触れられただけなのに、肛門のあたりが痙攣するような快感。
「小林綾乃をオカズにして、毎晩、してるんでしょ」
 舞香先輩の指先は僕の欲棒の先端の裏側の一番敏感な部分で止まり、微妙に振動を与えるように刺激してくる。
「……あっ……」
 思わず声が漏れてしまう。
 僕の理性は、とにかく、なんとかこの状況から逃げて、いったん落ち着いた方がいい、と訴えているが、身体が全く動かない。
「いま、あのカーテンを開けて、中を見たら、山内くんが想像している小林綾乃と全然違う小林綾乃を見られるかもしれない……」
 舞香先輩はカリの部分を人差し指と親指で乱暴につまんで、更に強い振動刺激を与えてくる。その振動から発する何かは、肛門のあたりから脊髄を通って脳に至り、僕から思考能力を奪っていく。
「もし、その姿を見たら、もう山内くんは、無邪気な少年ではいられなくなるかもしれない……それでも見たい?」
 舞香先輩は僕の欲棒の根本に近い部分を、いきなり、強く、握った。
「……あっ……つっ……」
 初めて女の子に触られてほとんど射精寸前まで昂まっていた快感と根本を強く握られている痛みが混ざって、今までに感じた事のない感覚がその部分に生じている。睾丸がきゅっと縮み上がっているのは、射精寸前の反応のか、欲棒を強く握られた痛みに対する防御反応なのか。根源的な歓喜と恐怖の波が0.1秒間隔で交互に押し寄せる。なんとか舞香先輩から離れて、綾乃の様子を見に行きたい、もしカーテンの奥で、綾乃が司さんに、いま僕が舞香先輩にされているような事をされている可能性があるとしても、自分の目で確かめずににはいられない。そう思って、舞香先輩の方に手を伸ばそうとするが、身体はどうしても動かない。目を開けている事さえ覚束ない。
 何かとろりとした湿ったものが耳の入り口に触れる。
(舞香先輩の舌!?)
 柔らかい軟体動物のような舞香先輩の舌先があちこちに動く。
 同時に欲棒の根本のあたりを強く握っていた舞香先輩の手が緩み、軽く握った状態の素早い上下運動に変わり、耳と性器を刺激された事による性感の神経伝達は腰の奥で瞬時に融合して一気に加速、僕は今までに感じた事がない、凄まじい迸りで射精して、僕の視界は真っ白になった。……。

 床の冷たさを頬に感じて目が覚めた。
 生徒会室には誰もいない。
 身体を起こして、下着の中に手を入れて、まさぐってみるが、どこも濡れていない。激しく射精した感覚ははっきり残っているが、夢だったのだろうか? 立ち上がって、微かに揺れている赤いカーテンの近くに行って耳をそばだててみる。何の音も聞こえない。カーテンの端を少し開けて中を見てみると、その空間には誰もいない。司さんと舞香先輩がいた窓際の空間には、さっきはなかった別のロッカーが立って窓から入る光を遮っていた。
 
 朦朧とした気分で校舎を出ると、いつのまにか、どんよりと曇っていて、一雨来そうな空模様。とにかく、どこかで、昼ごはんを食べよう、と思って「らんぶる」を覗くと和樹の顔が見えた。「らんぶる」の入り口付近のいつもの席にいる和樹の顔を見ているうちに、生徒会室で見た事は白日夢だったような気がしてきた。多分、和樹のキスを偶然見た衝撃で、あんな夢を見たのだろう。それにしても生徒会室の床で寝てしまうなんて、我ながらどうかしているが。
「だから、俺がしたんじゃなくて、向こうからされたんだよ」
 和樹がおかしな事を言うので、食べていたピラフが喉につまりそうになり、僕は、あわてて、水を飲んで食べかけを飲み下した。
「別に責めてるわけじゃないって。いいじゃないか、16人目でついにオッケーして貰って、つい、喜び勇んで先走っちゃったんだろ。でも、あの子、たしか生徒会役員の、なんかショック受けて走って逃げてる感じだったけど、大丈夫だったのか、あの後」
「ショック受けてんのはこっちだよ」
「なんで和樹がショック受けるんだよ、キスできたのに」
「……とりあえず友達から、って言われたんだよ」
 とりあえず友達から。
 未来に希望がつながるフレーズ。
 小林綾乃に言われるのを夢想しつつ、和樹の話に相槌を打つ。
「とりあえず友達から、普通に映画とか喫茶店とかに行くくらいなら。それでもよければ、って言われて」
「それで、喜びいさんであんな所でキスって。和樹ってそんなキャラだっけ?」
「だから違うって言ってるだろ、さっきから。……それでもよければ、って言われて、もちろんOKです、お願いしますって握手したら……」
「だから向こうは握手だけのつもりだったんだろ?」
「俺が引っ張られたんだよ。で、え、なに?って思ってたら、いきなりキスされたんだよ」
 そんな筈はない。
 和樹が引き寄せていきなりキスをしたのを僕はたしかに見た。
 僕の記憶はそうなっているが、距離があったし、廊下の角に身を隠しながらだったので、絶対に間違いない、とは言い切れない、という気がしないでもない。当然男の方が引き寄せてキスするに決まっている、と思い込んでいたので、そう見えたのかもしれない。
「……どっちがどっちは、ともかくとして、とにかく、いきなり、キスした、と」
「まあ、それは、そうだけど」
「友達から、って言っていたのに、いきなりキス?」
「これっぽっちも予想してなかったから、あまりの予想外にびっくりして、どういう事なのか訊こうと思ったら、突き飛ばされて……向うがキスしてきたのに俺が突き飛ばされたんだよ。ショック受けるよ、俺だって……ファーストキスだったのに……」
「で、追いかけてったんだろ? その後どうなった?」
「走って逃げていくから、とにかく、追いかけて、屋上の手前の踊り場で追いついて」
「あの子、一年の生徒会役員だよね?」
「そうそう、一年の広瀬さん」
「まさか、お前……」
「まさか?」
「あの踊り場でキス以上の事に及んだとか? いたいけな一年相手に……」
「んなわけないだろ」
「冷静な話しあいをしただけか?本当に?」
「つきあったら速攻でキスして、向こうが俺のキスで感じて満更でもみたいな雰囲気をちょっとでも出したら、一気に次の段階まで進むって、冗談では言ってたけど……実際、そうなると、そんな余裕はないって言うか、そもそも、向こうからされるなんて想定してないし」
「お前の感想はいいよ。なんか話せたのか? あの踊り場で」 
「それがさあ、ごめんなさい、さっきのはなかった事にして下さい、忘れて下さい、お願いします、お願いします、って言うんだよ」
 泣きながら笑うような、いままで見せた事がない和樹の表情。
「忘れて下さいってのは、キスの話? 交際オッケーの話?」
「それがさあ、俺が告白した事もなかった事にして下さい、普通の先輩後輩の関係でお願いします、って、言うんだよ」
「うーん、そう来たか」
「そんな事言われても、ココに残っているキスの感触は、急になかった事にできないよ、って思ったけど」
「急になまなましいな」
「必死に何度も頭下げてお願いします、って言うのを見てたら、なんだか、何も言えなくなって来て。……なんて言えば良かったんだ?」
「さっきのキスはなんだったんだよー、とか?」
「言えるか、お前だったら、そんなの? 」
「言えない。一生言えない」
「なあ、コレって、俺はほんの一瞬つきあってフラれたって事? なかった事にって言われたらなかった事にしないとダメなのかな?」
 僕は、つきあったの一瞬すぎるだろ、と、つっこもうと思ったが、唇が触れ合っていた一瞬の刹那、和樹の脳内には、壮大な未来の予感が渦巻いていたのかもしれない、と思ってやめておいた。
 
 和樹と別れてから、どこをどう歩いて、何をしていたか、記憶がない。もっとげんみつに言えば、和樹と一緒にいた喫茶店で支払いをした記憶、店から外に出た記憶もない。

 気がつくと、僕は、司さんの家のリビングにいる。
 ここに来るのは、初めての筈なのに、なぜか、懐かしいような気がする。
 司さんも舞香先輩も、ソファに座らずに、リラックスした感じで床に座っているので、僕と小林綾乃もそれに倣う。深い毛足のとてつもなくいい感触の絨毯。ホームパーティーの招待状のようなものを貰ったからここにいる、と思い出すが、それを、いつ、どこで、誰から貰ったかの記憶は曖昧だ。
「生徒会長の僕と、副会長の舞香が、勧めた事は内緒だよ」と司さんが勧めてくれた、黒みがかった赤い色でとろりとした飲み物をひと口飲むと、頭がぼーっとして、とてもいい気分になる。ビールも日本酒もウイスキーも試しに少し飲んだだけではたいした事はなかった。こんなに少量で効いたのは初めてだ。しかもとても口当たりが良い。
「あんまりがぶ飲みしない方がいいよ、意外と強烈だから」
 舞香先輩が注意してくれのるを聞いていないのか、綾乃はグラスを一気に空にした。
「すっごく、飲みやすいですね、これ」
「ああ、飲んじゃったね〜」
 舞香先輩は普段学校では見せないような顔で怪しく笑う。
「これってカクテルですか?」
「ウチに代々伝わるスペシャルドリンクだよ」
 司さんはラベルが何も貼られていない大きな太いボトルから、空いた綾乃のグラスに液体を注ぐ。
「ありがとうございます……あの、司さん、昔の私の事、覚えてないですよね?」
「もちろん覚えているよ、むさし学習塾。僕と舞香が六年の時に四年生の君が入ってきた」
「え、新堂さんもいたんですか?」
「舞香は、あの塾には馴染めなくてすぐにやめちゃったけどね」
「全然、気付かなかったです」
「三学年合同授業には、多分、数回しか出てないし、いまと違って、全然、地味だったしね。……でも、私と司は、その頃からあなたの事をチェックしていたわよ、小林綾乃さん」
 司さんと舞香先輩と綾乃が小学校の時に同じ塾?
 司さんと舞香先輩がその頃から綾乃をチェック?
 全く知らなかった事が次から次へと出てきて、頭が混乱して、このカクテルが更に効いてきたのか、急激に瞼が重たくなってきた。

 気がつくと、僕は、目隠しをされてベッドに仰向きに横たわっている。
「動いちゃダメよ」
 舞香先輩の声が右耳のすぐそばで聞こえ、指先が僕の乳首を軽くこすり上げた。欲棒がピクンと反応するが、それを抑える筈の下着やズボンの感触が全く感じられない。どうやら僕はこの黒い目隠し以外は何も身につけていないようだ。これは生徒会室で見た夢の続きなのか? それにしても、舞香先輩の声、舞香先輩の息や指の感触、ほとんど光を通さない目隠やすべすべのシーツの質感、その全てがとてつもなくリアル。現実に体験した事がない状況にいるせいか、何もかもが、現実以上にリアルに感じられる。生徒会室の時と同様になぜか身体が動かない。本当に身体が動かないのか、動けばこの状況が終わってしまうと思っているから動かないのか、自分でもよく判らない。
 右の乳首に触れた柔らかいぬめぬめした何かがちろちろと動く。
 これは舞香先輩の……舌?
 舞香先輩に舐められている?
 既に屹立している僕の欲棒はその舌の動きに呼応して、ぴくんぴくん、自らの意思を持った生き物のように脈動して、その先端が少し左側に傾いているのを自ら感じた時、自分の左側のすぐそばにも誰かがいる気配を感じる。その気配が近づいてきて、左の乳首に舞香先輩の指とは違う感触の指と唇と舌が触れてくる。いま、僕の右の乳首を舐めているのが舞香先輩だとしたら、左側にいるのは、ひょっとして綾乃? それとも別の誰か?
 目隠しを取って確かめたい衝動が湧いてくる。
 生徒会室で聞いた舞香先輩の声、「山内くんが想像している小林綾乃と全然違う小林綾乃を見られるかも」「見たら無邪気な少年ではいられなくなる」「それでも見たい?」「見たい?」「見たい?」が頭の中で谺する。内なる衝動と反比例するように身体はますます動かない。
 乳首が解放されて両側の気配が移動した、と思ったら、欲棒が握られて、先端に、さっきまで乳首に感じていた感覚を更に増幅した快感が与えられる。
「っあっっ?」と思わず声が漏れる。
 毎晩夢想していたあの行為。
 その快感は想像をはるかに上回っている。
 握った手による繊細で微妙で上下運動は自らが行うそれとはどこか違い、予想外の動きによる驚きが快感を増幅させる。
 同時に、充溢した欲棒の先端は柔らかい舌先による縦横無尽な刺激を受ける。
 更に、睾丸袋を軽く持ち上げるようにしっかり包み込んだ手は、軽い振動と指先で軽く握るような動きで、今までに感じた事のない、くすぐったさと心地よさ。
 人生で一度も味わった事がない快感を三箇所同時に与えられ、自分が溶けてしまいそうな気がしてくる。
 握っていた手の上下運動が止んだと思ったら、付け根辺りから裏側をゆっくり舐められ、同時に先端にはまた別の刺激が与えられ続け、睾丸袋を包んでいる手とは逆の方向から伸びている濡れた指先が肛門をそっと撫でる。ひとりにされてもとてつもない初めての事を同時にふたりにされている。しかもそれは、ひとりは舞香先輩で、もうひとりは綾乃?
 僕の唇はぬめぬめしたやわらかいものにいきなり覆われ、息を飲んで開いた僕の唇のすきまから柔らかいものが侵入してくる。
 キスされている?舞香先輩?綾乃?
 僕の口腔内に入って動き回る舌先に本能的に舌を絡める。
 その間も、僕の欲棒と睾丸と肛門は、ひとりだけでは不可能な愛撫を与えられ続けている。舌先で生じた快感のスパークが瞬く間に脊髄を通って下半身の快感と直結して、電流のようなしびれが、股間の奥に生じる。いつもならとっくに射精に至る筈の快感がなぜか持続して、僕から思考力を奪う。
 軟体動物のような舌がゆっくりと僕の口腔内から抜け出ていったかと思うと、また別のぬめぬめしたやわらかいものが僕の唇に押し付けられる。人生で初めて嗅ぐどこか原初的な匂い。唇ではないが唇の感触に似た何かが、僕の口のあたりに押し付けられ、僕の両頬はベッドのシーツに匹敵するようなすべすべした肌に触れている。
 その正体に思い当たった僕はおずおずと舌を伸ばす。
 舌をあちこちに動かして、上の方に叢があるのを確認すると、その叢の下側の生え際の奥に潜んでいる目標物を目指して舌先を動かす。舌先がかすかな凹凸に触れると「っあっ」という小さな声が漏れる。その声を聞いても、おそらく僕の方をむいてまたがっているその女性が舞香先輩なのか、綾乃なのか、ひょっとして別の誰かなのかは判らない。判らないまま、かすかな凹凸を舌先でなぞり、その奥に潜む小さな丸みを帯びた突起の先端部分を舌の先端を細かく動かして刺激する。全く初めてする行為なのに、男の本能なのか、こうするのが正しいような、不思議な感覚がある。僕の顔にまたがっている女の子が深くはいた息を感じて、舌の先端が触れる強度を強めて、動きを加速させると、「っあっああっっちいい」と言う声が響き、瞬間、何かが反転して、僕は、目隠しをした男の子の顔に足をひろげてまたがって、股間の中心から自分が溶けていくような快感を感じている。僕は女の子のクリトリスを激しく舌で愛撫しながら、同時にその女の子がいま感じている快感を自分の快感として味わっている。
 与える快感と与えられる快感、僕と司さんとふたりの女の子。
 さっきまでははっきりあった筈の僕の世界の境界線は限りなく揺らいで、目まぐるしく形を変えている。
 僕は、僕が溶けてなくなるような曖昧な怪しい場所で全身で快感の海に浸っていた。【了】

———————————————————————————————————————

■2024年日記
●2024.09.06(金)はれ
○夕食はネギトロ、ゴーヤチャンプル、はんぺん、納豆、キムチ、味噌汁、ごはん1.5杯、金麦。
○今日もまたもや延々Match Factory!やってしまう。多くて5回時間にして10分程度やってやめられるならやってもいいがそれができないならやめるしかない。そう言い聞かせてやり始めて延々やってしまう心理はなんなのだろう。ひとつは難しい面をクリアするとその高揚感で次の難しい面が来るまでやってしまう。クリアの快感。もうひとつはMatch Factory!に没頭している間はクリアする事しか考えてないので現実を忘れられるからだろう。
○何かの間違いなのかGoogle AdSense1日で約2400円売上がある。月7.5万でもいまならありがたいがどうせ何かの間違いだろう。1日の瞬間風速なら以前も約3500円ってのがあった。
○明け方、冷奴、ゆでたまご、ミニベビースターラーメン、焼酎水割り2杯。
○戸田恵梨香と加瀬亮のドラマのタイトル、Sが絶対ついてアルファベッドで3〜4文字、シックスとシックが近い、セックスではない。ここまで出てきているのに「SPEC」が浮かんでこなかった。最近は人の名前の作品名も(特にここ20〜30年にモノは)すっと出てこないのがむしろ当たり前。20代前半までは覚えようとしなくても数回見聞すれば自然に覚えていたのが、25歳頃から徐々に出てこなくなり、50代なかばで更に悪化したようだ。出てこなかった人名や作品名は手書きでノートに書くようにしているが焼け石に水。こないだ出てこなかったのは誰だっけという事も頻繁にある。
人物Aが出ていた作品Bが出てこなくて、作品Bに出ていた別の人物Cの名前も出てこなくて、Cが出ていた作品Dも出てこなくて……と出てこない連鎖がどんどん続いて、その会話を続けるうちに最初に出てこなかったのが誰だったか忘れてしまう、というネタをよく話していたが、それが現実になる日も近いかもしれない。
●2024.09.07(土)はれ
○最悪の睡眠パターン。6:30頃ベッドに入るが延々寝付けない。途中から諦めてベッドでテニス準決勝流しつつゲーム、これなら一度起きた方がまだマシだった。寝付いたのは9:00頃? 何度か目が覚めては二度寝して15:00頃までウトウト。
○夕食はグリルチキン、豚肉煮、キャベツ、ごはん、スープ。
○明け方、冷奴、ゆでたまご、ミニおっとっと、チーズクラッカー、焼酎水割り2杯。
○横浜DeNA9回2死で守備固めの三塁柴田が普通のゴロを悪送球(ハーフバウンド)、代打中山ヒットで同点。
●2024.09.08(日)はれ
○寝る前にほんのちょっとだけのつもりでまたもやMatch Factory!2時間以上やってしまう。案の定また目が冴えてしまって寝つけない。
○夕食はパイシーチキン、フライドポテト、オクラ、寿司、日本酒、金麦。
○大相撲9月場所、毎場所文言も同じ協会挨拶、今回も「千秋楽」は「せんしゅらく」に聞こえる発音(もはやネタか?)。NHKの実況はNHKにあるまじき絶叫調で間違いも多いアナウンサー。今日も大の里戦を「押し出し〜」と力強く間違えていた(テレビでLIVEで見ていても熱海富士の手の方が早く見えた)。どんなスポーツでも絶叫実況は不要。アナウンサーが絶叫するのは日本が滅びるような事態が生じた時だけで良い。豊昇龍の一番、モンゴル勢の微妙な一番物言いつかない問題今場所も発動。舞の海は「これは物言いをつけた方が良かったですね」。
○若い男が歌っている(と思われる)知らない曲がラジオから流れてきても全く聴く気が起きなくなったのはいつ頃からだろう。興味が薄れてきたのは35歳頃から、顕著になってきたのは50歳を過ぎた頃だったような。特に前向きでアップテンポな曲がダメ。ボリュームを絞りたくなる。そういう曲でも自分が若い頃に流行った曲なら全然平気。
○「ザ・ホワイトハウス」シーズン2#22。死んだ秘書と話をした後の約5分が冗長。シーズン最終話の最後だから盛り上げたいと思ったのだろうが、通常通りのハイテンポで語って欲しかった。会見場への移動やCJの前ふりも全カットして質問される前に自ら「出馬する」と宣言で良かった。
●2024.09.09(月)はれのち一時雨
○もう日記に記すのも嫌になるがまたもやMatch Factory!2時間以上やってしまう。
○詳細な日記をつけようとしても数時間前の事でも既に記憶が曖昧。
○高校時代の日記を読み返すと当時も寝坊や長時間の仮眠で時間を無駄にしてしまったと頻繁に嘆いている。三つ子の魂ではないが40年経っても同じような事を繰り返しているので、これはもう一生治らないのだろう。その中でなんとかかんとかやりくりしてやっていくしかない。
少なくとも分割睡眠2回目(理想は9:00〜12:00)の前はMatch Factory!はやらない。
○夕食は「手包みワンタン麺 広州市場」。ワンタン麺をシェアして他2品、瓶ビール2本でお腹いっぱい。柚子が入っているワンタン麺独特な風味でおいしい。油淋鶏、揚げワンタンも500円以下にしては十分。入店中に降っていた雨は出る時にはあがっていた。
○夜食はチーズクラッカー、ライトミール、焼鳥缶でごはん1個、焼酎水割り。
2024.09.10(火)はれ
9:30頃から14:30頃までベッド。約4.5時間睡眠。
大きな教室で自己紹介の順番を待つ夢。
もうすぐ僕の番だから何を言おうか考えているが順番はまわってこない。
黒板にはなんの事かさっぱり判らない数式。
15:00頃から16:00頃まで読書/マンガ。柳沢きみお、黒川博行、畑中佳樹。
16:00頃シャワー、洗髪(シャンプー)。
16:15頃から17:45頃までエバラス。コーヒー。
3本打ったら嫁に行く少し直す。ファイル整理(EVERLASTINGMOMENTフォルダ作成)。
20:00頃 たまごかけご飯、ささみ揚げ、キムチ、ライトミール。
若干体調微妙な感じなので金麦はやめておく。
23:30頃から1:00過ぎまでベッド。約3.5時間睡眠。
1:30KICK OFFと勘違いしていた(実際は1:00KICK OFF)。日本5-0バーレーン。バーレーン終盤やる気なし。
今日も微妙に体調が怪しい。夜中、チーズクラッカー、ゆでたまご、チンごはん。
「上田と女がDEEPに吠える夜」ルッキズムの話。
「言われた人」や「そのやりとりを見聞している人」が不快に感じる話はしない方がいい、なんて事にしたら、何も言えなくなる。
言ってる人は良い意味で言っても言われた方がどう感じるかは誰にも判らない。ましてやそのやりとりを見聞している人の心理をや。
家族の幸せエピソードだって離婚した人や家族を事故で失った人にとっては不快な話かもしれないし、
一番無難っぽい天気の話だって、自分や身近な人が水害・熱中症etc.で大変な目にあった人にとっては嫌な記憶が蘇る不快な話かもしれない。
万人が絶対に不快に感じない話なんて世の中に存在しないのでは?
●2024.09.11(水)はれ
○変な夢をたくさんみる。やや大きめの浴槽に入浴していて気がつけば木くずなどのゴミがたくさん浮いている、その浴槽の横の排水溝めがけておしっこをする。
○夕食は白身魚西京焼き、納豆、にんにく野菜スープ、ごはん、金麦ひとくち。
○若干体調不良でオレンジジュースが飲みたくて深夜にコンビニ。ついでにたまごサンドとミニホットケーキも買う。
○直近のアジア最終予選連勝スタートは2014年大会(3-0オマーン、6-0ヨルダン)。本大会はご存知の結果なのでアジアで圧勝してもあてにならない。
○「新宿野戦病院」最終回ラストの主題歌にサザンが本人出演。Aメロもちゃんと繰り返し(心はセブンティーン)。
○「あちこちオードリー」山田邦子ってこんな目だったっけ? 僕が記憶している80〜90年代の顔と繋がらず、ぱっと見40歳くらいのおっさんに見えた。
●2024.09.12(木)はれ
○夕方以降喉に若干違和感、昨夜のにんにく野菜スープにごはんとたまご投入して食べてベッドで横になるが眠れない。仕事ができないほどの体調不良ではないので、眠れないならベッドを出て何かすればいいのにだらだらと深夜まで。ベッドにいるにしても本かマンガでも読めば良いのに、Match Factory!ハートが切れた後は延々ショート動画。
○ここ数年ずっと感じている通奏低音。何がどうなろうとも後は老いて死ぬだけ。頭で想像はしても何であれ実行する事を面倒に感じる。これが老いか……。35歳から55歳までの20年間は本当にあっという間だった。子供も持たず、仕事で他人に対して責任を持つポジションにもつかなかったので、内面が全く成長していない実感があるが、内面は35歳でも肉体は着実に老いている。多発型円形脱毛症、視力低下、足の指の腫れは何かの病気の現れなのかもしれないが、遊びさえ面倒に感じるのだから、ましてや病院をや。仮にちゃんと売上があって健康に不安がなくたってチンポは勃たないし、どっちに転んでもダメ。いまこの瞬間耐えられない痛みはなくなんとか生きている事に感謝するしかない。
●2024.09.13(金)はれ
○Match Factory!ハートないので数回で強制終了後、延々YouTubeショート。空腹を感じていったんベッドを出て冷奴、塩タンメン、焼酎水割り2杯。
○作って1年経ってないメガネ、当初はまずます見えていたが、いまは数m先のテレビの文字も二重に見える。
○5㎏の米が1袋だけ残っていたのでカゴに入れて筋トレ状態で2Fで買物。
○夕食はタンドリーチキン、はんぺん、ブロッコリー、納豆、キムチ、たまごスープ、ごはん、金麦。
○夜食は冷奴、ミニおっとっと、チーズクラッカー少々、焼酎水割り3杯。
○左足中指と右足小指の違和感(腫れ)は常時気になるレベルになってきた(特に右足小指)。
●2024.09.14(土)はれ(暑い)
○デビス杯、スマニューの記事によると、当日券数十枚あっという間に完売して12:30の開門前に長蛇の列。テレビで見ると大きな日の丸が広げられている上の方の席には多くが空席。暑さを考慮して錦織の試合だけ見ようとしている人もいるのかもしれない。
○札幌0-2東京V。失点シーンは全てが緩い。裏に通されて3-2の数的不利。どういう守備戦術なのか。CBがスライディングに行ってかわされるくらいならシュートコースに立っている方がまだマシ。
デカい選手を3枚前線に配置したのにふわーっとしたフィードは殆ど入らず、ライナー性のボールをカットされてカウンターを食らう。守備も攻撃も戦術が確立されていなくて出たとこ勝負をしているように見える。
○中目黒図書館3冊借りて、ほんの少しだけ駅周辺を歩いて、蔦屋書店で新刊平積み眺める。気がつけば並んでいる本の殆どが知らない作家。
○夕食は炊き込みご飯、ささみスティック、オクラ、ナスの煮浸し、豆腐と油揚げの味噌汁、金麦。録画しておいたアド街熱海見ながら。
○夜食は炊き込みご飯1膳、焼酎水割り。
●2024.09.15(日)はれ(暑い)
○デビスカップ2日目、錦織が出場回避したダブルスは負け、4戦目西岡勝利で勝ち抜け(日本3-1コロンビア)。
○夕食はグリルチキン、ポテト、アボカドしらす、オクラ、寿司(塩)、とろろお吸い物、日本酒、金麦。ポテトはフライドポテトとはちょっと違うほくほくしたポテト。ビールも日本酒もすすんで結構酔う。
○iPadで「プロレススーパースター列伝」読み、「ゴダールの探偵」冒頭約20分見る。
○夜食は冷奴、ゆでたまご、ミニベビースターラーメン、肉うどん、焼酎水割り3杯。
●2024.09.16(月)くもり
○最近は正午頃に2回目のバスに乗って早くても15:00頃までベッドにいるのが当たり前になりつつある。分割睡眠自体は悪くない。延々起き続けて眠れないよりはマシ。
○夕食は駅のそばのうな串「う福」。いろいろ食べられて酒も充分飲めてうな重より良かった。セブンで買ってきたスイーツ2種アド街井の頭公園冒頭見ながら。
○Match Factory!129、100Gとラストワン使ってやっと攻略。
●2024.09.17(火)はれ
○Match Factory! ほんの少しのつもりでまたもや2時間以上やり続けてしまう。
○日記を書こうとすると数時間前の事なのに既に記憶が曖昧。以前まではベッドを出る時に見た時間(時計)の記憶がもっと鮮明だった気がするのだが。正確な時間を記録しようと思ったら、その都度すぐに書くかメモを残さないとダメって事だ。
○夕食はレトルトカレー、ふりかけ、ごはん2個、チーズクラッカー、金。
○夕食後の仮眠から目覚めると金麦350を1缶しか飲んでないのに少し頭痛。
○夜食は冷奴、ゆでたまご、ミニおっとっと、きつねうどん、水割り2杯。
○ロッテ10回表に勝ち越すもその裏国吉打たれてサヨナラ負け、楽天とのゲーム差1になった。パリーグはロッテと楽天の3位争い以外はほぼ順位確定。
○新フォーマットのCL24-25開幕。ずっと変えて欲しいと思っているノックアウトラウンド(準決勝まで)のホーム&アウェイは従来通り。アウェイゴールがなくなって少しはマシになったが2試合合計得点を考えながら見るのは面倒、いまやっている試合に勝った方が次のラウンドに進むという形式の方が潔いし判りやすい。予選ラウンドで好成績を残したクラブがホーム開催権で良いと思う。ためしにWOWOWオンデマンドをもうひとつつけてみると視聴可能、CL開幕のサービスか?
●2024.09.18(水)くもり
○数回のつもりでまたMatch Factory!延々45分ライフなくなるまでやってしまう。
○夕食はサーモングリル、酢鶏、納豆、キムチ、ワカメの味噌汁、金麦。
○気分が落ち着かないのでだらだらと自由に誰にも見せないつもりの文章を約2000字。
○夜食はおかずの残り+ごはん、ミニベビースターラーメン、チーズクラッカー、水割り2杯。
○大相撲9月場所11日目正代 – 豪ノ山戦、転がってるし充分な内容だが豪ノ山の得意の負けパターンにも見える(組んだら負け)。ガチ度40%。
○「ホンマでっか!?TV」堀未央奈も目に違和感。こんなアニメキャラみたいな気持ち悪い目だったっけ?
●2024.09.19(木)くもり
○ガーデンプレイス方面散歩してピーコックで買物。歩き始めは夜はマシになってきたと感じるが、15分も歩くと汗をかいてくる。
○夕食はピーコックのそば、コロッケ(鎌倉土産)、カレーパン、金。
○ヤクルト吉村、5〜6番手のイニングイーターで8-8(8勝8敗)なら上出来の投手かと思っていたが意外と化けるかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました