EVER LASTING MOMENT VOL.9

■EVER LASTING MOMENT VOL.9
○昭和の薫り漂うWEBマガジン
○推奨年齢50歳以上
○無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
○小説/散文/妄想/企画 或れ此れ其れ何れなんでも有り
○誤字脱字間違い辻褄合わず各自適宜補完にてよろしく哀愁

いずれ一夜の夢ならば
呑んで謡って ホイのホイのホイ
今宵とことん ホンダラッタホイホイ

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■映画/ドラマ/スポーツなど
●2024年
○放送中 おむすび(朝ドラ)橋本環奈
○放送中 光る君へ(大河ドラマ)吉高由里子
○放送中 それぞれの孤独のグルメ(テレビ東京)
○配信中 STAR WARS アコライト(Disney+)※全8話
○配信中 ハウス・オブ・ザ・ドラゴン2(U-NEXT)※全8話
○配信中 ザ・ホワイトハウス(U-NEXT)※全7シーズン
○配信中 地面師たち(Netflix)※全7話
○配信中 No Activity(Amazon)※全6話
○配信中 極悪女王(Netflix)※全5話
○配信中 機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(Netflix)全6話 ※1年戦争
○公開中 ナミビアの砂漠(2024=山中瑶子)137分 ※河合優実
○公開中 スオミの話をしよう(2024=三谷幸喜)114分
○公開中 憐れみの3章(2024=ヨルゴス・ランティモス)165分
○公開中 シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024=アレックス・ガーランド)109分
○公開中 ジョーカー フォリ・ア・ドゥ(2024=トッド・フィリップス)138分
○公開中 若き見知らぬ者たち(2024=内山拓也)119分
○公開中 デス・ウォッチ(1980=ベルトラン・タベルニエ)130分
○公開中 トラップ(2024=M・ナイト・シャマラン)105分
○公開中 ヴェノム ザ・ラストダンス(2024=ケリー・マーセル)109分
○公開中 ノーヴィス(2021=ローレン・ハダウェイ)97分
○公開中 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(2015=ジェイ・ローチ)124分
○公開中 本心(2024=石井裕也)122分
○11/15金 グラディエーターII 英雄を呼ぶ声(2024=リドリー・スコット)148分
○11/15金 ノーウェア(1997=グレッグ・アラキ)83分
○11/22金 海の沈黙(2024=若松節朗)112分 ※倉本聰35年ぶり映画脚本
○11/22金 ドリーム・シナリオ(2023=クリストファー・ボルグリ)101分
○11/29金 正体(2024=藤井道人)120分
○11/29金 痴人の愛(2024=井土紀州)104分
○10/12土~11/01金 小説家・山崎豊子 華麗なる映画たち(神保町)
○10/19土〜11/08金 安西郷子生誕90年&新東宝特集(ヴェーラ)
○10/05土〜02/11火 モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)
○11/02土〜11/04月 ブラタモリ(三夜連続放送)
○11/10日〜11/24日 大相撲11月場所
○11/13水〜 プレミア12
●2025年
○01/01水 ローズパレード ※京都橘3回目の出場
○1月 べらぼう(大河ドラマ)横浜流星
○01/10金 劇場版 孤独のグルメ(2025=松重豊)
○02/14金 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド
○コブラ会 最終シーズンPART3(Netflix)※24年7月PART1/24年11月PART2
○3月 第6回WBC
○03/18火 MLB開幕戦ドジャースvsカブスat東京ドーム
○4月 あんぱん(朝ドラ)今田美桜
○04/13日 大阪・関西万博開幕
◯6月 サッカークラブW杯(新方式、32チーム)
○09/13土〜09/21日 世界陸上(東京)
○10月 ばけばけ(朝ドラ)髙石あかり
○11/06木 ストレンジャー・シングス 未知の世界最終シーズン(Netflix)
●2026年
○1月 豊臣兄弟!(大河ドラマ)仲野太賀
◯02/06金 ミラノ・コルティナ五輪
◯3月 WBC
○05/22金 STAR WARS新作
◯06/11木 サッカーW杯アメリカ/カナダ/メキシコ大会
○8月 Jリーグ秋春制第1シーズン
○12/18金 STAR WARS新作
●2027年
○世界陸上(北京)
○バスケW杯
○ラグビーW杯オーストラリア ※20→24に増加?
○12/17金 STAR WARS新作
●2028年
○EURO2028イギリス/アイルランド
○07/14金〜07/30日 ロサンゼルス五輪
●2029年
○世界陸上(バーミンガム?)
●2030年
○サッカーW杯モロッコ/ポルトガル/スペイン大会(100周年記念大会)
●2031年
○世界陸上
●2032年
○EURO2032イタリア/トルコ
○07/23金〜08/08日 ブリスベン五輪

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■U-NEXT見放題(R18)
※自然に感じられる画を重視してチェック(顔面テカリ否定派)
※女優を生かすも殺すも髪型/メイク/衣装/撮る角度/照明次第

●ネットでAV応募1704(2021年12月)
○角度によっては上品お嬢様風、美乳、毛有り
○まくらやソファの色の趣味が良いホテル風の部屋、照明がいい感じ
○立ちバック、光の加減がいい感じ(48分頃)
○ほぼ座った状態後背位POV(56分頃)

●ネットでAV応募1607(2021年8月)65分
○アイドル風、髪型・メイク・服装次第ではもっと輝きそう(特に服装がいまいち、髪型・メイクと服装に統一感がない)、スレンダー、残念おっぱい(垂れ乳、乳輪でかすぎ)
○まくらやソファの色の趣味が良いホテル風の部屋、照明がいい感じ
○目を閉じた顔がけっこうそそるフェラ(29分頃)

●ネットでAV応募1605(2021年8月)66分
○角度によっては奈緒、ポニーテイル、薄毛、色素濃い目
○まくらやソファの色の趣味が良いホテル風の部屋、照明がいい感じ
○目を閉じた顔がけっこうそそるフェラ(37分頃)
○後背位POV(51分頃)
○腕絡み立ちバック(57分頃)

●マジ軟派、初撮り。1647 原宿を歩く女の子(2021年6月)
○小悪魔モデル風、茶髪、スレンダー、背中がざっくりあいたシャツ、微乳
○大きな窓際のソファでのからみ、逆光の自然光の陰影グッド
○上半身着衣フェラ(36分頃、44分頃)
○M字開脚セルフバイブ、脚の細さ、厚底サンダルは邪魔(53分頃)
○スレンダー際立つ立ちバック、逆光の陰影(62分頃)

●連れ込みSEX隠し撮り059(2018年5月)60分
○角度によっては渡辺麻友、大きな黒縁メガネ、スレンダー体型、淡いブルーのワンピとピンクのジャケットで清楚風
○うつぶせのマッサージ(15分頃)
○ベッドに腰掛けて対面座位(50分頃)
○自宅盗撮設定でよく見る面白い形の部屋、便座の前のワゴンは高身長の男性は膝が当たりそう
○ナンパ設定や盗撮設定でよく見る声が大き過ぎる男優(顔修正)

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■島耕作

島耕作プロフィール
生年月日 1947(昭和22)09.09(乙女座/B型)
出身地 山口県岩国市
出身校 私立鷹水学園高校
出身校 早稲田大学法学部(1970年卒業)
資格 普通自動車免許
資格 実用英語技能検定1級
身長 177㎝
父親はサラリーマン
母親は呉服商
ひとりっ子
大学時代ESS
好きな食べ物 サラミ 
好きな食べ物 トリュフ
好きな食べ物 オリーブオイル
嫌いな食べ物 酸っぱいもの
ワインに詳しい
バリ島が好き
77年結婚、89年離婚(怜子)
12年再婚(島耕作65歳、大町久美子45歳)
長女 奈美(79年誕生)
孫 耕太郎(03年誕生)
*出典「島耕作クロニクル 連載30周年記念エディション」

島耕作職歴
1970年4月 初芝電器産業株式会社入社
1970年11月 本社営業本部 販売助成部屋外広告課
1971年11月 本社営業本部 販売助成部制作課
1976年1月 本社営業本部 販売助成部制作課主任
1980年3月 本社営業本部 販売助成部制作課係長
1983年5月 本社営業本部 販売助成部宣伝課課長 *課長島耕作①
1985年1月 ハツシバアメリカ NY支社宣伝部 *課長島耕作①②
1986年1月 本社営業本部 販売助成部宣伝課課長
1987年5月 電熱器事業部 営業部宣伝助成課課長
1988年5月 本社営業本部 販売助成部ショウルーム課課長
1990年5月 フィリピンハツシバ マーケティングアドバイザー
1990年11月 本社営業本部販売助成部総合宣伝課課長
1992年2月 本社総合宣伝部部長
1999年1月 初芝電産貿易株式会社代表取締役専務(出向)
1999年9月 サンライトレコード株式会社代表取締役専務(出向)
2001年4月 本社市場調査室
2001年5月 福岡初芝販売センター代表取締役専務(出向)
2001年10月 福岡初芝販売センター代表取締役社長(出向)
2002年2月 本社取締役九州地区担当役員
2002年6月 本社取締役上海地区担当役員上海初芝電産董事長
2005年2月 本社常務取締役中国担当役員
2006年11月 本社専務取締役
2008年5月 初芝五洋ホールディングス株式会社代表取締役社長
2013年7月 TECOT代表取締役会長
2019年8月 TECOT相談役
2022年1月 TECOT相談役退任
2022年3月 株式会社島耕作事務所設立 UEMATSU塗装工業社外取締役
※2010年1月社名変更(初芝五洋ホールディングス→TECOT)
*出典Wikipedia

●課長028 Don’t Explain
◯吉原初太郎会長急死、インサイダー取引に巻き込まれる
・京都の緑風庵で吉原初太郎会長に1987年のカレンダーを見せる(宇佐美、福田、島)
・京都の緑風庵で吉原初太郎会長急死(宇佐美と福田が発見)
・津本陽子名義の株と交換した宇佐美名義の株を証券会社へ(福田の指示)
 ※賞状のような大きさの株券の束を風呂敷で運ぶ、ネット証券登場のはるか以前
・津本陽子に誘われてセックス(赤坂のクラブのママ)
・津本陽子は保守党の代議士種山の女(グレちゃんの報告)
・宇佐美は吉原初太郎死亡で一時的に下がった株を1ヵ月後に買い戻した(インサイダー取引)
・宇佐美常務と福田部長からの謝礼を断る(初めて上に逆らった)
 ※長期シリーズのさらなる予感
*本社営業本部販売助成部宣伝課課長
*モーニング86年40号掲載
*課長 島耕作 第4巻(1987)

●課長029 ムーン ライト セレナーデ(Moon Light Serenade)
◯大泉の派閥に入る事を断る
・石神井公園で8歳の娘に会う、クリスマスに妻の相手(普通のおじさん)が来る
・談話室で大泉から企画室室長代理を打診されて断る(どの派閥にも付きたくない)
・昼間のラブホテルで典子とセックス
・典子が母親の代理として娘の授業参観に来る
・クリスマスを娘とふたりで過ごす(高級レストラン→早稲田大学)
 ※早稲田大学は島と妻の初デートの場所、娘はクルマの中で寝ている
*本社営業本部販売助成部宣伝課課長
*モーニング87年1号掲載
*課長 島耕作 第4巻(1987)

●課長030 ディープ パープル(Deep Purple)
◯大泉が副社長になる
・記者数名が誰が副社長なるか予想(大泉は故会長の娘婿、宇佐美は営業畑の叩き上げ)
 ※記者のひとりは中沢喜一と同じ顔
・大泉が副社長に選出される
・島の独白 “俺は70年安保を経験した代表的不器用人間なんだ”
・樫村建三登場(大泉の秘蔵っ子、島と同期入社)
・典子の家で大泉と鉢合わせ(下着姿でクローゼットの中)
*本社営業本部販売助成部宣伝課課長
*モーニング87年15号掲載
*課長 島耕作 第4巻(1987)

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■アリー スター誕生(2018=ブラッドリー・クーパー)135分

Bradley Cooper演じるキャラクターはなぜ死を選んだのか?(19年1月2日Blogger公開)

音楽映画として「ボヘミアン・ラプソディ」に勝るとも劣らない素晴らしい出来。「ボヘミアン・ラプソディ」はクライマックスのLIVEパートで〈音楽(ロック)の根源的パワー〉が問答無用で圧倒的に炸裂していて、音楽のパワーに関しては「ボヘミアン・ラプソディ」に軍配を上げるが、深みと解釈のしがいがあるストーリー・物語は「スター誕生」の方が勝っていて、総合的には甲乙つけがたい。

〈Lady Gaga主演のリメイクの音楽映画〉程度の予備知識で挑んだこの作品、単純なボーイミーツガール&サクセスストーリーかと思って観ていたら、Bradley Cooper演じるメンターが重層的で良い意味で裏切られた。Cooperは登場時点で既に功成り名遂げた有名歌手で、当初はGaga演じる歌手志望の女性の完全なるメンターなのだが、Gagaはあっという間に売れてしまい、次第に冒頭から示されていたCooperのモンダイ(アルコール中毒)が浮上して来て、「Gagaに出会った事によってCooperがアル中地獄から救われる話に着地するのかも?」と期待を持たせるものの、やはり悲劇的に終わる。映画の原則から言えば、ボーイミーツガールの形式で始まって、出会ったふたりが開始15〜20分であっさりセックスしてしまう作品は、悲劇的な地点に着地せざるを得ない。

Cooper演じるキャラが抱えていたもの(自殺の原因)は何だったのか?
こういう重層的なキャラクターの場合の常として、「本当の事を話しているとは限らない」という問題があるが、それは一応置いておいて(本当の事を言ってる事にして)、殆どの話が父親がらみ(Gaga側の話も父親がらみの話が多い)なので、父親に関する何かであるのは間違いない。決定打は、酔った挙句の大失態(Gagaの授賞式のステージ上で失禁!)を悔いるシーン(多分最重要シーン)で「君(Gaga)の父親の前で…」と言った瞬間に泣き始めた事。

僕が想像(補完)した話は、
◯父親が酔っぱらいでだらしない男だったのは本当
◯父親がいろいろ夢を見て成功できなかったのも本当
◯周囲の誰も認めてくれなかった時点で父親だけはCooperの音楽の才能を認めてくれた
音楽で成功した姿を父親に見せたかったが、父親はその前に死んでいるので、この願いは永遠に絶対に叶えられない(Cooperが抱えていた解決不能の問題)
◯Cooperは酒を大量に飲んで前後不覚になった時だけ父親と繋がっている気がして幸福感を感じる事ができたが、治療を受けて酒を飲まなくなった事で逆に生きるよすがを失って、悲劇的な結末を選んだ

これは鑑賞直後に浮かんだ感想なので、ある時点までは父親の代役を果たしていたかもしれない兄との関係性も含めて、もう一度じっくり観直したら、全然違う感想になるかもしれない。例によって重要な何かを見落としているかもしれないし。

「ボヘミアン・ラプソディ」のクライマックスのLIVEシーンほどでないが、LIVEシーンのGagaにはあっという間に持っていかれる。Gagaがそれほど好きではないという人でも、Gagaの歌の才能はホンモノという事は否定できないと思う。

これが初監督作品とはとても信じ難い出来栄えで、このままコンスタントに監督していけば、Bradley CooperはClint Eastwoodのような存在になる気がする。

※19年3月3日追記
日刊スポーツ19年3月3日号によると、この作品はClint Eastwoodがビヨンセ主演で監督する予定だった(ビヨンセのスケジュールの都合で中止)

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■コラムは笑う(1992=小林信彦)ちくま文庫 422頁 ※1989筑摩書房

“世に言う〈太陽族映画〉とは「太陽の季節」「狂った果実」「逆光線」「夏の嵐」「処刑の部屋」の5本だけ”(P331〜)。僕は「太陽の季節」「狂った果実」しか見た事がない、と今回の再読で初めて認識したような気がする。この本も少なくとも3回は読んでいるのに読む度に新鮮。いったい僕の記憶力はどこまで衰えているのだろう。

若い頃は「知っている人の名前が出てこない」と言う年上の人の発言の意味が判らなかった。知っているなら名前は出てくる筈だし、名前が出てこないのなら最初から覚えていないのでは? と思っていた。一度見聞したものは特に記憶しておこうと意識せずともいつでも自然に出てきた。

「絶対知っている筈の人の名前や作品名がとっさに出てこない」という現象が始まったのは25歳を過ぎた頃。いまでは、もちろん、当時の年上の人の発言の意味はよく判る。

知っているのは間違いないが「名前」が入っている引き出しの場所がよく判らなくなっているような感覚。45歳頃からは年々悪化の一途で、いまではとっさに出てこない方が当たり前。1000%身についている筈の名前、例えば「原節子」「ロバート・デ・ニーロ」が出てこない事もあるし、普通の一般名詞、例えば「茶碗蒸し」が出てこない事さえある。本を読んでいても、読むそばから忘れていくので、読んでいる最中に「この人誰だっけ?」と思って前の方を読み返す事もしばしば。

名前は出てこなくても顔は浮かんでくるし、その人に対して感じている感情のようなものも浮かんでくる。結局「名前」や「作品名」、もっと言えば」「言葉」も単なる記号に過ぎない、という事なのだろう。記憶にまつわるエトセトラは、挙げていけばキリがない。記憶が全てだが、記憶ほど当てにならないものはない。

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■「山田太一未発表シナリオ集 ふぞろいの林檎たちV 男たちの旅路」国書刊行会 2023年発行

映像化されなかったシナリオ4篇収録。
お目当てはもちろん「ふぞろいの林檎たちV」。

「ふぞろいの林檎たちV」は連続ドラマではなく、スペシャルドラマの前後編。懐かしい旧友の顔が見られるクラス会の趣で、たいした話はないと言えばないが、やはり、できれば映像で見たかった。ラストで良雄が幸子(兄嫁)に思いをぶつけるシーン、このシナリオ通りに、オマージュしたパート1の映像が挿入されれば、間違いなく涙腺は緩んだだろう。

良雄→兄嫁に告白、岩田→会社の不正疑惑・父親と和解、西寺→忍ぶ恋にケリをつける、とこの3人には一応話があるが、他のキャラにはこれといった話はない。冒頭の40代お見合いパーティーで偶然良雄と陽子が出会い、このふたりのいまさらな恋愛 !? と思ったらそれもない。良雄と晴江がふたりだけで会うシーンもない。晴江が看護師をやめて飲食店の仲居になっている以外は職業も変化なし(本田さんはよく判らない、前回までは在宅だったか?)「IV」の長瀬智也&中谷美紀のようなサブストーリーもない。

日常ドラマは、20代なら恋愛・友情・進路で引っ張れるが、その年代以降は家族・会社というくくりがなければ、キャラ同士が会う偶然・必然を作るだけでも大変。Ⅲは晴江、IVは良雄、今作は岩田が結構無理筋の狂言回し。

小学校時代からの幼馴染みなら、近所にみんなが集まるいきつけの店がある、という安直な方法で集合するシーンが作れるが、大学時代に知り合った仲間が40代になって全員集まるのは現実には結婚式か葬式以外では難しい。誰かの自殺騒動(「Ⅲ」の冒頭)で全員集合も現実にはなかなかありえなさそう。最初に結成したサークルは一度もまともに活動する事なく自然消滅するが、このサークルが卒業後も継続して、全員の副業になるという設定だったらどうだっただろう?「俺たちの旅」は卒業後に一緒に仕事をする話だったような。

「ふぞろいの林檎たちV」は画が浮かび声も脳内で響くので非常に読みやすかったが、他の3篇は、最近はシナリオを読んでない事もあり、読んでいる途中で「これ誰だっけ?」頻発で、スラスラとは読めなかった。

「男たちの旅路」はかなり前に1話だけ見て、鶴田浩二の長台詞の説教くささに辟易した事しか覚えていない。自分が鶴田浩二の劇中年齢に近い年齢になったいま見れば、また違う感想を持つだろうか。今作「オートバイ」は、バイクに乗る連中と話すなら、マンションの近所の道以外には本当に走る場所はないのか、サーキットで走るという選択肢はないのか、など、もっと突っ込んで欲しかった。

「今は港にいる二人」自殺した姉の復讐の為にヤクザのサラ金に殴りこもうとする話。山田太一は「ふぞろい」で良雄が幸子を秘かに思っている話をかなり以前から考えていたという。「ふぞろい」の場合は実の姉ではないが、弟が姉を思う話は、氏にとって秘めたるテーマなのかもしれない。

「殺人者を求む」松竹時代に初めて書いたシナリオ。星新一のショートショート風。ワンシーンで登場人物3人なので読みにくさはない。

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■あの懐かしき苦悩のころ
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

 ベッドに横たわっている瀬山百合のモスグリーンのミニのワンピースを、ゆっくりめくりあげると白のコットンのショーツと縦長のおへそが見えてきた。完全に寝てしまっているような規則正しい寝息を感じつつ、頬に触れた唇をゆっくり移動させて唇に触れ、内股から股間に向けて右手を滑らせていくと、百合はいやいやをするように顔を左右に揺らして身をよじる。
 「……なんにもしないって……」
 薄目を開けて呟く百合の口調は真剣に怒っている風ではなく、起き上がって帰ろうとする動きもないので、首の後ろに左手を入れて顔をこちらを向かせて再びキスをする。キスを受け入れるように百合の唇が少し緩んで来るのを確認して、ショーツの中央の盛り上がった柔らかい部分をそっとなでながら、ゆっくり舌を差し入れていくと、舌先に百合の舌先がおずおずと触れてきた。年上の女性とこういう事をするのは初めてだが、10代半ばならいざしらず、20歳をいくつも過ぎれば、2歳程度の年齢差はどうという事もない。
 カーテンの隙間から差し込んでくる夏の朝日は次第に明るさを増し、ほんの数分前までは僕も眠気を感じていて、とりあえず隣で少し眠っておこうかと思っていたのだが、舌と舌をゆっくり刺激しあうキスをしていると、どこからかエネルギーが湧いてきて、23歳の僕の欲棒は脈を打って充溢していく。キスをしながら片手でブラのホックを外す。クッションに装着させたブラを何度も片手で外す練習をしたかいあって数秒ですんなり外す事に成功。遮るものがなくなった百合の背中から前の方に手を少しづつ移動させて、ややこぶりなバストに触れる。舌先だけが軽く触れ合うキスは続いている。こういうキスは〈軽めのディープキス〉と呼べばいいのだろうか。
 僕の右手がその先に動く事を百合が嫌がっている素振りは感じられないので、数秒前までブラに覆われていた双丘の頂きに手を進めて、先端をかるくつまんで親指の腹で摩りあげる。百合は鼻から暖かい息を大きく吐き、僕の欲棒は力強く自己主張をしているのがはっきりと判る。今回はここまでは順調だ。

「なんか、自分でもよく判らないんですけど、このまま、仙台でずっとこの仕事を続けるのは、なんか違うかもって思って」
 ワークショップ終了後の何回目かの飲みの席で、仙台のラジオ局のアナウンサーを3年で辞めてとりあえず上京した、と経緯を語った瀬山百合は、よく言えば清楚、悪く言えば地味で、今年26歳になる割には幼く見えて、何度見ても強く印象に残らないような顔立ちだったが、少し低めで艶っぽさと甘さが混在するような声はとても印象的で、声優やナレーションの仕事が向いているのではないか、と思った。
 男女あわせて20名の演技ワークショップは、講師が女性だったせいか、女性の方が参加者が多かった。1回目のワークショップでペアを組んで身体の動きにあわせて決められた台詞を言い合うプラクティスで百合とペアになって向かい合って顔を見て手を握った時に、その触れた感触が妙に懐かしさが感じられて心地よく、この子とは仲良くなれるかもしれない、と思ったような記憶があるが、それは、いま現にこうなっている事から過去の記憶が改竄されてそう思っているのか、本当にその瞬間にそう思ったのか、いまとなってはよく判らない。
 百合は、自分が何がやりたいのか、はっきり自分では見えていないようで、上京して一応タレント事務所に所属しているが、仕事は近郊のイベントの司会程度、飲食店のアルバイトもしつつ、いろいろなオーディションを受けては落ちている。何が何でも舞台や映画やドラマに出たい、と思っているわけではなく、やってみないと判らないので、とにかく一度は演じる仕事をやってみたい。
 簡単にまとめるとそれだけの事を語るのに、百合の話は、あちこちに飛んでは戻ってきて、だらだらと続く。絶対に受かる感触があったオーディションに落ちてショックで暫く元気がなくて仙台に帰ろうかと思ったが、一度も行った事がない店に人生で初めてひとりで思い切って入って食べたラーメンがとてもおいしかったので、食べている間になぜか立ち直った、という挿話が、細かい心情描写がふんだんに盛り込まれて体感で30分も続いた。
 オチもなく長々と続く女性の話を聴き続けるのは苦手なのに、百合の話は平気だったのは、隣の席で耳元で話す百合の声が魅力的だったからだ。百合の声は、騒がしい居酒屋の喧騒の中で、決して大きな声量ではないにも関わらず的確に耳に入ってきて、その魅力的な声の響きを、ジャズの即興を楽しむような感覚で、耳で味わっていた。
 酒を飲みながら耳に心地よい声で話す女性の話を音楽のように聴いて、時々、リズムを変えるドラムのように相槌を入れる。話を聞いてあげれば、充分な好印象を女性に与えられるし、自分が話すよりも好意を持ってもらえる事が多いという事が、ちゃんと判ってきたのは、もっと大人になってからで、この時点の僕ははっきり判っていなかったが、この時は、百合の声が耳に心地良かったので、無意識に、結果的に、百合の話をちゃんと聞いてあげることになっていたようだ。人の話を最後までちゃんと聞いてあげられる人は世の中に意外と少ない。どこかで「それってこういう事でしょ?」などとさえぎって自分の話を始める人が大多数だ。

 指先で乳首の先端に軽い刺激を与えつつ、少しづつ舌の動きを強めていくと、百合の舌もその動きに応えてくれるので、ギアを上げて舌を百合の口の中に差し入れて強度を上げて、同時に乳首の先端をつまんで少しだけ強めにつまむ。お返しに僕の口の中に入ってきた百合の舌を唇ではさんで吸い、バストを揉みしだいて親指の腹で乳首をこすりあげると、百合の口から形容しがたい音が漏れた。
 時間を忘れて息が苦しくなるほどディープキスを続けて、百合の身体が完全に弛緩してきたのを感じると、僕は顔を百合の乳首に移動させて、舌で乳首をゆっくり丹念に舐めて、百合のショーツのその部分に指先で軽く震動を与えるように刺激する。百合は、短い「っんっ」「っあっ」という声を時折漏らし、舌先で僕の中指を舐める。
 僕は女性の服を完全に脱がせない方が性的に興奮するので、ワンピースも脱ぎかけのブラジャーもそのままにして、百合の膝の裏を両手でぐっと押しあげて脚をM字に開かせる体勢を取らせる。百合は少し抵抗して体勢を戻そうとするが、股間に顔を近づけてショーツのその部分に鼻先で触れると抵抗をやめる。柔らかいその部分は既にぐっしょりと湿っている様子なのがコットンの布地越しでも感じられ、シャワーを浴びていないその部分が発するなんとも形容しがたい微妙な牝の匂いが鼻腔に充満する。百合は「いやっ」と小さな声を漏らすが、ここまで及んでのその声は「本当に嫌」を意味していない筈と解釈する。
「自分で持って」と百合に膝の裏を抱えさせて、ショーツをずらそうとすると、ショーツの右側の端の方がほんの少しほつれて破れているのが見えて、張り詰めていた欲棒が急速に存在感を失っていく例の感覚が生じる。破れている部分をまとめて左側にショーツをずらしてその部分を露出させて指で触れる。その部分は既にそのまま指先が淫裂の奥にするすると自然に吸い込まれていきそうな程にとろとろに濡れている。陰液で濡れた指先を淫裂の上方の結合部に滑らせて、半分露出している宝珠をそっとなであげて、触れるか触れないかの力加減で微細な震動を与えると、百合は「っあっ」と張り詰めたような声を漏らして腰を浮かせた。

 週1回で全10回続いたワークショップは今日(げんみつには昨夜)が最終回で、講師を含めてほぼ全員が参加した打ち上げで5〜6杯飲んだ僕は、店を出た時にはすっかり夢現のいい気持ちになっていた。帰る方向が同じだった5人ともう少し飲み直す事になって、僕の最寄り駅の近くの居酒屋で数杯飲んだあたりから少し記憶があやふやになっていて、その5人(僕を含めて男3女2)が僕の部屋に来る事になった経緯はよく覚えていない。コンビニで酒やつまみを買って僕の部屋に着いたのは深夜3時頃だっただろうか。2台のテレビで映画とエロビデオ(デッキに入れっぱなしだったのを再生された)を流しつつ、だらだらと飲んでくだらない話を続けて、気がつけば百合は僕のベッドでウトウトしていて、もしかしてこのまま5人で乱交みたいな流れになるのかも、と期待するも、僕は完全に酔っていて、他の男性2人は牽制しあっているような様子でそういう流れにはならず、始発が動き始めた5時頃にお開きにしよう、という事になった。
 もうひとりの女の子に、
「瀬山さん、帰りますよ〜 起きて下さい」
と言われた百合は半身を起こし、
「眠すぎるからもうちょっとだけ寝させて。……ねえ亜蘭くん、絶対私に何もしないって、みんなの前で誓って」
 などと言うので微妙な空気が流れた。
 僕は右手をあげて、
「絶対何もしません」と言いながら、心の中で(多分……)と付け加えた。
 他の3人をマンションの玄関まで見送って部屋に戻ると、百合は窓側を向いて眠っているように見えて、このまましばらく寝かせてあげようか、と思ったが、寝返りをうって仰向けになった百合のワンピースの裾が脚の付け根あたりまでふわっとスローモーションのようにめくれ、その付近を、カーテンの隙間からさしこむ一条の淡い朝の光が照らしたのが目に入ると、酔いが少し覚めて、何かのスイッチが僕の中で点火した。

 指先で細かな震動を与え続けると百合が漏らす声は次第に声量と頻度を増し、百合は自らの手で口元を塞ぐ。僕はこの期に及んでも、百合からは拒否を示すサインは出ていない事をじっくり見極めて、舌を使った最上級の愛撫に移行する。半分程度露出している宝珠に舌先で軽く触れてかすかに動かす。口元を覆った手の隙間から「んんんんん」という声と深い溜息にも似た吐息が大きく漏れる。指を使って更に露出させた宝珠を唇ではさんで少し吸い込みような刺激を与え、舌先を細かく震えさせるような動き、または舌先で円を描くように動きで、時間をかけて舐め続けるうちに、百合の腰は時折短く痙攣するような反応を示す。
 「っあっ……それっだめっ……っんんんっ……」
 抑えきれずに漏らす百合の声は甘く蠱惑的で、その声を聴いている僕の脳は興奮しているのだが、いったん勢いを失った僕の欲棒は、そこに血が通っていないかのように無反応になってしまっている。僕はこうやって百合に快感を与えているだけでもそれなりに楽しいのだが、僕の欲棒の無反応ぶりに百合が気付いたら、彼女は多少がっかりするかもしれない、と想像すると、せめて半勃ちと呼べる程度にはしておきたい、というあせりが生じてくる。唇と舌の愛撫を続けながら、ベルトを外してジーパンを脱いで自分で触れてみるが、その部分は、冬眠中の小動物のように生気が感じられない。さっきまでそれなりに充溢していたのが、なぜショーツのほつれを見ただけで勢いを失ってしまうのか。


 ……百合の手と唇と舌による技巧は大胆かつ絶妙だった。僕の欲棒を擦る百合の指は様々な動きで絶え間なく的確な刺激を与え、もう片方の手は淫嚢を柔らかく包んで繊細な刺激を与え、その間も、百合の舌先は僕の張り詰めた先端から漏れ出した透明な淫液をゆっくり絡め取り、その周囲や裏側の最も敏感な部分を自在に踊る。欲棒の根元を握る指はリズムと強弱を微妙に変えながら膨張の気配を探り、硬度の昂まりを感知すると、握る力と上下運動の強度を高め、さっきまで勢いを失っていた僕の欲棒は充分に怒張していた。
 百合は袋から取り出したゴム製の避妊具を唇ではさんで先端に口づけて、そのままゆっくり唇だけを使って奥深くまで咥え込で根元まで装着させ、音が出る程の吸引力で強く何度も往復する。そんな強さで続けられたあっという間に登りつめてしまう気がして手を伸ばして押し留めようとすると、それより先に百合は唇を離し、馴れた動きで僕の上に乗り、欲棒は、とろとろに溶けた温かいバターのような感触の百合の性器につぅるんと挿入っていく。
 百合は僕の上で微妙に角度を変えながら熟練のバレエダンサーのように優美に滑らかに動く。
 このまま百合に主導権を取らせたままで終わるのも悪くないと思って身を委ねてみるが、ゆっくりと腰を使っていた百合がベッド面に付けていた両膝をあげて和式トイレを使うような体勢になり、下腹部を突き出すように背中を反らしながら激しく腰を上下させ始めると、僕の快感はさらに昂まり、気がつけば僕も腰を使っていた。
 上半身を起こして胸をあわせて抱き合うような姿勢になり、百合のヒップを下から抱えるようにつかんで腕の力で上下に動かす。その動きを続けて普段は聞けない類の百合の声を耳のすぐそばで聞くうちにおしりの奥が疼いて淫嚢がきゅっと縮まる感覚が強くなってきて、この動きを続ければまもなく快感が頂点に達する事が自明になったので、いったんその動きを止めて、百合の背中に手をまわして強く抱きしめて、最高強度にディープなキスを交わす。
 脱ぎかけただった筈の百合の服はどこか視界の外に消えて百合は全裸、僕もTシャツを脱いだ記憶も脱がされた記憶もないのに全裸になっている。呼吸を整えて頂点に達しようとしていた興奮を少し鎮めた僕は、百合の身体を裏返して四つん這いの体勢を取らせた。
「もっと腰を突き上げて」
 命じるように言うと百合は肘をついて腰をあげる。
 僕の目の前に王への献上品のようになにもかもむき出しになったその部分がせりあがってくる。
 遮光カーテンを少しだけ開けると、夏の日差しが百合の秘処を照らして、淫液が煌めく。
 僕は後門と秘孔の間のわずかな緩衝地帯に舌先をつけてしばらくその場所で遊ばせ、ゆっくり上方に移動させて後門の中心部分を穿つように舌先で刺激する。
「…っえっ……そこはやだ……っあっ」
 驚きのニュアンスがこもった声を漏らし、僕の舌から逃がれようとする百合の腰を左手でがっちり抱えて舐め続ける。
 ころあいを見て、小さなピンクローターを押し当てて、ゆっくり後門に挿入して、そのすぐ下のとろとろに濡れて緩みっぱなしの秘孔に中指を差し入れていく。
 上方の内壁からローターの震動が僕の中指が伝わってくるのを感じながら、百合のそのスポットを探り、中指の先の腹が少しざらざらしている該当箇所らしき場所に触れたのを確認すると、ローターのコントローラーのつまみをまわして震動を最強にする。
「……っんっ……っあっ……」
 百合は一段高めの声をあげて腰を揺らし、
「ホントにダメ……ホントにダメ……」を繰り返す。
 抱えた左手の手の平で百合の秘処を下から押し、右手の中指はしっかりその箇所に押し当てて、震動が的確に伝わるようにする。
 百合は腰を激しく痙攣させ、百合の秘処から吹き出た生暖かい液体が僕の顔を濡らした。
 僕は濡れた顔をティッシュで軽く拭うと、弛緩して両脚をしどけなく伸ばしてうつ伏せになっている百合の上にまたがり、直接刺激からしばらく逃れて多少は硬度が落ちている欲望の先端を、ヒップの割れ目に上の方にあてがってゆっくり下方にスライドさせていく。ローターを抜いてもまだひくひくしている後門を経由して目標箇所に到達すると、ゴム越しでもそのしっとりとした感覚は判る。
 先端を擦りつけて震動させるように動かすと硬度が蘇ってくる。入口付近の感覚をじっくり味わいながら、腰を押し付けるようにゆっくり押し進める。欲棒の先端はつぅるんと迎え入れられ、そのままゆっくり、鼠径部が百合のヒップに密着するまで、完全に奥まで挿入する。
 脚を閉じている体勢なので締め付ける感覚は強烈で、ほんの少し動かしただけで射出寸前の状態に近づきそうになるのを深呼吸で鎮めながらゆっくり動く。先端の裏側部分は、いまさっき指で刺激して潮を吹かせたスポットあたりに当たっている感覚があり、その度に百合は違う種類の声を上げる。違う種類の声を聞く度に僕の興奮は、ゆっくり動いていてもどうしようもなく昂まり、百合のなかで更に硬度を増して張り詰めていくのがはっきりと感じられる。
 百合の腰を持ち上げて通常の後背位の姿勢にして、もう一度深呼吸をして、ゆっくり浅めの出入りをするが、欲望の付け根あたりに昂まってきた痺れるような波はもう抑えられそうない。
 先端部分が見えるあたりまで引き抜いて、一気に奥までずんと押し込み、その後は激しく、本能に身を任せて動く。僕の内股と百合のヒップが弾ける音が、相撲の柏手のようにパンパンパンと響く。  
 百合の秘処の入り口の襞は激しく出入りする欲棒にまとわりついて毎回微妙に形状を変える。
 僕の興奮はもう後戻りができない地点を過ぎている。
 僕は百合の背中に差し込む一条の光を何かの象徴のように感じつつ、小さな声を漏らしながら、激しく腰を使って、百合の中で激しく興奮の頂点に達した……

 いまから展開させるつもりのセックスを克明に妄想して、いっこうに滾ってくる気配がない欲棒を自らの右手で擦りつつ、そのやわらかい先端を百合の宝珠の部分にあてがって微妙な震動を与え続けても、避妊具を装着できるレベルの半勃ちにさえ遠い状態から一向に変化しない。
「……してあげようか?」
 百合の甘い提案に飛びつきたくなるが、それをして貰っても反応しなかったら、百合が「私が下手だからなのかな」と傷つくに違いないと思って曖昧な言葉で断った。
 先端部が触れている百合の秘処のとろとろな感触は一応感知する事はできていて、それは本来は性感の昂まりに直結する筈なのだが、目を閉じて集中して、普段から夢想している〈若干アブノーマルなセックス〉を思い描いても、脳内の性感はいっこうに現実のそれには伝わらず、湧き出る冷や汗が作るTシャツの脇の部分の染みがどんどん大きくなっていく。
 もう何分もこの状態は続いていて、百合は内心で呆れているのではないか、そう思って焦れば焦るほど、いっこうに欲棒は、死んだ小動物のごとく、なんの反応も示さない。普段ひとりでする時はほんの数秒の刺激で形態を変えているのに、せっかく自分の右手よりもはるかに心地よい筈のものに触れていて、いつものように勃てば数秒後にはそこに包まれる事ができるのに、どうしてこうなるのか。やはり僕の身体には、僕自身が気付いていない、どこか根本的な欠陥があるのだろうか。
「いやあ、今日でみんなと会うのも最後だと思って、ちょっと飲みすぎちゃったかなあ。百合さんとこうなるって判っていたら、途中から絶対セーブしたのなあ」とでも言って笑い話にして、ちょっと休憩してから、もう一度なんとなく触れ合っていれば、行為が可能な程度には勃ったかもしれないし、「なんか今日は変に緊張しちゃってダメみたいだけど、そのかわり、もういいって百合さんが言うまでクンニするから、もういいって思ったら、もういいって言って」とでも言って、ひたすら今日は奉仕に徹して、もし次の機会があったら再チャレンジで良かったかもしれない。
 もっと気楽に男女の営みに挑んで、もし勃たなければそれを自嘲して笑い話にでもすれば良いのだけの事なのに、僕はそんな精神的な余裕を身につけていなかった。
 この頃の僕は、ひたすら頭でっかちだった10代の頃の傾向がまだどこかに残っていて、セックスをするなら、しっかりと勃起して、ちゃんと相手もある程度満足させるセックスをしなければならない、という、ある種の義務感のような固定観念を無意識に抱え込んでいたのだろう。
 そんな風に冷静に振り返る事ができるようになったのは、これから10年程先の事であった。
 僕は、滴り落ちた脇汗がベッドに大きな染みを作っている事に気づくまで、一切の余裕を失って、実らない同じ行為を繰り返し続けた。この状況で勃たないなんて一大事だ。僕は男性として失格だ。そんな思念が頭の中に渦巻き、そう思う程に欲棒はうなだれ続け、気がつけば、百合のその部分の潤いはいつの間にか相当に失われていて、百合は規則正しい寝息を立てて眠っているようだ。

 僕にしては長めの作品を書き上げてネットブックとして発行した。
 自分のパソコンや個人のアカウントの中に抱えているだけでは売れる可能性はゼロだが、こうやって公開しておけば、いつか何かの間違いで売れるかもしれないし、僕の死後も残り、ひょっとしたら、未来の作家になんらかのインスピレーションを与える事だってできるかもしれない。
 最近何かと話題のOMNICの審査に通れば、自分が書いた事さえ忘れていた作品を勝手に発掘して、各種アドバイスを貰えて、翻訳されて世界中に公開されるという話を最近よく聞く。今日も、どこかの国の誰かがそれで一躍売れた、とネットニュースにあったが絶対胡散臭い。いずれ代理店かどこかが話題作りの為に作った話だろう。一躍売れるような作品を書ける人なら結局はどこかで売れる筈だ。
 20代半ばからかれこれ20年、売れない小説を書き続けている。
 30歳を過ぎた頃に、官能小説が数冊デジタル出版されたが、殆ど売れなかった。文学的っぽい表現による独特な性愛描写、と評してくれる人もいたが、自分で読み返してもみてもそれほどとも思えず、何度も書くうちに性愛シーンを書く事にも飽きてしまった。
 その後も短編や中編をまとめてネットブックとして個人的に発行する事は続けているが、250円の値段を200円、150円、50円と値下げしても殆ど売れないので、値下げするのはやめて500円に固定して、忘れた頃に少しは売れるが、30冊以上販売しているネットブックの売上は微々たる金額。趣味でいくつか書いているブログのうち、1990年代のあれこれを綴った半自伝的ブログは多少の読者がついていて、広告収入は月に数万円、多い時は5万円を超える事もあるが、いずれ、書く仕事だけでは生活を支える収入には到底足りず、40代半ばのいまもアルバイトを続けている。
 30代半ばで一念発起して借金して開店したスポーツバーは赤字続きで1年と続かず、小さなバーの雇われ店長のアルバイトに戻り、系列のセクキャバが忙しい時は助っ人として入る事もある。
 オーナーの杉山さんは60になってさすがにセクキャバの喧騒にはついていけなくなったとこぼすが、それなりにアンテナを張っていて、バーに来る20代30代の若い客の会話にもちゃんとついていっていて、昔の小説や古い映画ばかり読んだり見たりしている僕は、感心することしきりだ。
 日曜日以外は毎晩20:00頃から深夜2:00頃までバーテンとしてバーのカウンターの中に立ち、閉店後は常連と別の店に流れるか、ひとりで別の店でクールダウン。夜が開ける頃にアパートに帰ってきて、朝刊を読んで5〜6時間眠り、午後は2〜3時間執筆。週2〜3回は散歩がてら映画館に行って17:00前後の回を観る。映画に行かない日は喫茶店やファミレスで読書。バーは23:00頃まではたいてい暇なので、スポーツ中継を眺めたり小説のアイディアをノートに書いたりする。
 日曜日は執筆は休んで競馬と居酒屋とサウナで過ごすのが定番コース。
 アルバイトの給料は決して多くはなく、店をやっていた時の借金も返しているので楽ではないが、家賃が安い狭いアパートで殆ど贅沢をしないで生きていく事はなんとかできている。結婚はしていないし特定の彼女もずっといない。若い頃は店に来る客の女性と遊ぶ事もあったが、人間関係がややこしくなるので、ここ10年は基本的に避けるようにしている。こんな生活を続けていて、この先どうなるのだろう、と思わないではないが、どうしようもない。多分僕はこんな風にしか生きられない。

 2レース連続でそこそこの穴を的中させてびっくりするくらい元手が増えた。
 競馬でこんなに熱くなるのは久々だ。
 今日の僕は人生で一度あるかないかのギャンブル運に恵まれている気がする。 
 ここは大勝負に行こう。
 ここでもう1レース、さっきの2レースよりほんの少し高い倍率を当てて、この先10年の生活費を確保しよう。そうすればアルバイトをやめて読書と映画と執筆に集中できる。集中して書けば絶対にいいものが書けて小説家としても遅咲きながら売れて、その後の残りの人生も安泰だ。つまり、この先の僕の人生はこの目の前のレースにかかっている。今日の僕なら必ず的中できる。今日の僕は圧倒的にツイている。絶対的な予感が脳裏に満ち満ちている。絶対に絶対に絶対に来る。なぜなら、この先10年の生活、その先の人生の映像が、いまはっきりと細部まで、我ながら驚くほど明瞭に僕の脳裏に浮かんでいる。こんなに未来の光景が浮かぶのは予知夢の白日夢か神のお告げに違いない。
 かつてない高揚感で脳が沸騰するような感覚で、僕は2レース分の儲けに、更に財布に入っていた紙幣も全額足して、次のレースの馬券を買った。
 今日が僕の人生を変える日になるという強烈な確信が全ての細胞から溢れ出る。
 ……。
 そんな確信は、もちろん、僕の願望が作り出した幻想だった。
 僕が買ったどの組み合わせが来ても20倍以上になる数頭の馬は、どの馬も5着にも入らなかった。2レース勝った時点でやめておけば、半年は生活できる程の儲けだった。仮にこのレースをやるにしても、せめて儲けた分の半分は残しておけば良かったのを、なぜこんな大博打を打ってしまったのだろう。
 大学時代に初めてやった競馬で、バイト代の半分をつっこんで2レース連続で穴が的中して、頭に血が昇って残りのバイト代もつっこんで、全額すった事を思い出した。それ以来、どれだけ勝っても、元手を差し引いた儲けの半分は残す、決して全額はつっこまないようにしようと決めて今日までやっていたのに、今日、2レース連続で当てた瞬間にその誓いがふっとんでいた。25年前の2レース連続で当たった時の高揚感の記憶だけが強烈に浮上してきて、その時の外れた時の消失感・虚脱感の記憶はどこかに追いやられていた。25年経っても全く進化していないギャンブル脳。むしろ退化しているかもしれない。
 財布に残っていた小銭は夕食代にも足りなくて一瞬途方に暮れ、口座に残っている絶対必要な金(家賃と各種支払分)に手をつけて、その分は、いつもはいかない平日の競馬で補填しようか、という悪魔の囁きが脳裏に浮かんだが、交通系ICカードにいくらか余分にチャージしてあったので、それを使って近所のコンビニでつまみとカップ麺を買ってアパートに帰った。
 25年前と同じ失敗をしても競馬をやめようとは思わず、2レース勝った後に感じていた高揚感は、形を変えてどこか体の深い部分に澱のように残っていて、酒がまわってくると、その高揚感の残滓は、最近では滅多に感じない性的な疼きへと形を変え、何度か遊んだ昔なじみに連絡を取ってみたものの、日曜日の遅い時間の急な誘いには誰も返事さえ返してくれなかった。

 昨日の競馬で財布に入っていた紙幣を全額つっこんでしまったので、手元に金がほとんどなくなった。財布の中の小銭はタバコを買ったらなくなり、交通系ICカードの残高は映画館がある街への往復の交通費程度。先週金曜日に引き出したブログの広告収入分、バーのバイト代が入る来週半ばまでの生活費にあてる予定だった数万円は週末の競馬でスッてしまった。ひょっとして昨日発行したネットブックがいきなりバカ売れしてないかと期待して見てみるが、過去に発行した分も含めて、今月は1冊も売れていない。台所のシンクの下を見てみても、米の買いおきもなく、インスタントラーメン1袋と古い缶詰2個とレトルトカレー1袋があるのみ。バーで客に出すつまみを多少いただいたとしても、しっかりとした夕食の代わりにはならず、どうにもこうにも到底来週の給料日までの10日間をしのぐ事はできそうにない。
 消費者金融から借金して競馬で増やすか、消費者金融から借金して競馬はやらずにそのまま消費する。このどちらかしかない。
 競馬で増やすの一択ときっぱりと決意して、最後の1個のインスタントラーメンで朝昼兼用の食事をすませると、以前にも何度か利用した事があるネットから申し込める消費者金融に、キリが良い数字として5万円を入力してエンターキーを押す。スポーツ新聞の競馬欄を広げ、今日ばかりは穴狙いはやめて確実に資金を増やす狙いで買ってみるか、と検討しつつ、そろそろ振込完了の知らせが来ている頃かとパソコンの場面に目をやると、なにやらメッセージが表示されていて、何度読み返しても、要は「今回はご融資できません」という内容。そんな筈はない、今まで何度も借りて、きっちり返しているじゃないか、どうして今回は駄目なんだ、何かの表示ミスで実際は振り込まれているのでないか、と思って銀行口座をチェックしてみるが5万円は振込まれていない。問い合わせチャットを開こうとすると「ただいま大変混み合っています」と表示され、電話番号は載ってないのか、とスクロールしていると、画面いっぱいに最近よく見かける広告が表示される。

         OMNIC
 あなたの全てと引き換えに、あなたに世界の全てを。
 YOU GIVE ALL OF YOUR’S, YOU TAKE ALL OF WORLD.

 何から何まで一切を差し出して審査に通れば、基本生活費が生涯に渡って実質無料になると言われているサービスとして巷で話題になっているOMNICの広告だ。OMNICのポイントアプリは便利なので僕も使っているが、審査に通れば死ぬまで永久に毎月10万ポイント(20万円相当)が支給されてOMNIC直営のホテルや施設を優先的に使えるらしい。そんなおいしすぎる話はありえないので、詐欺なのか、新手の宗教的な何かなのか、ネットでも旧媒体でも頻繁に取り上げられている。
 何から何まで一切差し出すってどういう事なのだろう?
 僕は、ケツの毛まで抜かれて鎖に繋がれている全裸の自分の姿を想像して、こんなのは、いずれ詐欺に決まってる、と思って、右上のバツ印の部分をクリックして広告を消す。
 一番下までスクロールしてもフロントページにはその消費者金融会社の電話番号は発見できなかった。いざとなれば杉山オーナーに給料を前借りさせて貰うか、それもムリなら、店の常連の誰かに5000円貸して貰って毎日インスタントラーメンで過ごすという手もある。いま使えるお金がなくても、10日間くらいなんとかならないわけではないだろうが、元手さえあれば、今度こそ無理のない賭け方で競馬で儲けて、普通にそこら辺の居酒屋や牛丼屋やラーメン屋で食事して、映画を観て、サウナに行く、といつもの生活ができる。他のネット系消費者金融にトライする手もあるが、この手の業者は一番最初は結構面倒で、最初の利用はリアル店舗のみという業者もあるし、今回断られた業者のように、初回からネット審査OKの業者でも、いろいろ入力して、写真付き身分証明書を手に持った写真をいくつかのアングルで撮影、などの面倒な作業が必要だったりする。脳の方はすっかり今日のレース予想モードに入っていたので、いまさらいろいろ面倒な事はしたくない。さてどうしたものか。早く競馬ネットに入金しないと、そそろ9レースのパドックの時間だ。
 手をつけてはいけない金ではあるが、現時点で口座には約10万円の金がある。この金は、家賃・光熱費・新聞代・ネット代・借金返済分など、絶対に必要なお金、いわゆる固定費だが、今日少しだけ資金移動したとしても、その分以上を馬で勝って、また戻しておけばいいだけの話だ。つまり、ここから引き出した5万円を種銭にして堅実な買い方で10万円以上にして、5万円は口座に戻して5万円プラスアルファを来週半ばまでの生活費にすれば良い。
 判りやすいシンプルなやり方だ。高い利子をつける消費者金融なんて最初から利用する必要なかったんだ。
 2〜3倍の堅実な線を狙っていったにも関わらず、9レースも10レースもかすりもせず、元手の5万円は1万円になった。この1万円を10万円にするのは至難の業だ。今日はずっと2〜3倍を目指してやっていたのだから11レースもそのやり方を貫くべきだろう。1万円を10〜20倍に賭けるのは運頼みのギャンブル、それよりもこの1万円に口座の残りの5万円を追加して3倍を狙う方がよほど堅実だ。
 2〜3倍だろうが、10〜20倍だろうが、いずれ堅実とは到底言えない筈なのだが、すっかりギャンブル脳が活性化しているこの時点の僕は勝った時の事しか想像できなくなっている。
 メインレースも中波乱で人気馬が3レース連続で中位以下に沈み、5万円を追加した6万円も一瞬で溶けた。家賃などを支払う為にはオーナーから給料を前借りするか、新規の消費者金融から借金するしかないという状態になってしまった。
 僕の気持ちが通じたのか、オーナーから食事の誘いのメールが来た。

 オーナーが来たら立ち上がって深々と頭を下げて、開口一番で給料の前借りを頼むつもりで、約束の時間の10分前に店に入ると、杉山オーナーは既に奥のテーブルに座っている。僕に気づくまでのその表情はどことなく暗い。まずはオーナーの話を訊いてみるか。
「圭ちゃはまだ若いから全然いけるでしょ?カルビも頼んだら?他にも何か食べたいものあったらドンドン頼んでよ」
「いや、僕も、ハラミで全然OKです」
 60歳になる杉山オーナーから見れば、45歳の僕は若者に思えるのか、または最初に会った時の印象がいまだに残っているのだろうか。逆に、僕から見れば、オーナーは20年前から髪の毛は相当に薄かったので、あまり、印象はほとんど変わらない。
 ハラミをどんどん焼いて、ビールをどんどん飲んでも、オーナーは店内で流れているテレビに出ているタレントに関する当たり障りのない話などをするばかりで、いつもの愚痴と毒舌がクロスオーバーする弾むようなトークは影を潜めている。
「たまにはいい肉食べようよ」
 この庶民的な焼肉店にしては高いメニューである1枚5000円のヒレ肉を2枚オーダーするに至って、何かしら頼み事をされるという予感はますます強くなってくる。最悪なのは、数ヵ月前にも軽く打診された、セクキャバ「ピンクパイ」の店長だ。「ピットイン」は、たいして客も来ない小さなバーだから開店後数時間は読書やアイディア出しもできるが、あっちの店ならそうは行かない。半裸の若い女性がたくさんいて目の保養にならない事はないので、たまにヘルプで行くのは気分転換になるが、店長となると、女性の出勤管理だけでも大変なのは目に見えている。入れ替わりも激しいだろうから、昼間や夕方に面接や募集広告の打ち合わせも入るかもしれない。平日午後の執筆や映画の時間が削られるのは目に見えている。起きてから店に出るまでの約8時間、執筆・読書・映画・散歩・時には平日から競馬と自由に使える時間は、なんとか確保したい。
 いろいろ考えながら食べているので、噛んだ瞬間にほぼ溶けていく極上のヒレ肉の味がよく判らない。もしセクキャバの店長に異動を打診されて、即座に断ると、給料の前借りは言い出しにくくなる。今夜は、いったん考えさせて下さい、と答えておいて、前借りをさせて貰い、返事を先延ばしにしてうやむやにするのが一番得策か?
「ちょっとなんて言っていいか、アレなんだけどね……」
とオーナーが切り出してきた。
「ピンクパイの件ですか?」
「うん、それもなんだどね……」
 いったん口ごもったオーナーは、残っていたビールを飲み干して、
「いろいろ考えたけど、早い方がいいので、今月いっぱいで閉める事にしたの」
「それはまた急ですね……でも、ピンクパイ、結構入ってますよね?」
「まあ、そこそこ入ってはいるけど、募集とか、ネット広告とか、駅前で配るチラシとか、いろいろ、なんだかんだかかるから、ほとんどコレ(とオーナーは指で金のサインを示し)は出てないのよ、実際の所」
「ピンクパイはしっかり儲かってるのかと思ってました」
「私が連日入ればその分の人件費がぎりぎり利益になるかどうかで、女の子と従業員の出勤と入りのバランスひとつで全然赤字だったりもして、それでも、若い人と話すのが楽しかったから、半分趣味みたいな感じで続けてきたんだけど、最近、無理に若い人についていくのに、どうにも疲れてきちゃってね……」
「でも、こないだも、むっちゃ盛りあがって……ほら、沼田くんとかと」
「演技よ、演技。そりゃ、この業界ながいから、なんとなく、それっぽくはできるけど……なんて言うんだろうねえ、同じ言葉を使っていても、若い人とは処理方法が違う、全然違うOSを使っているような、どこか通じていない感じが常にあって」
「それって最近の話ですか?」
「かれこれ15年くらいかなあ。50になるまではそうでもなかったけど、ほら、こっちが50すぎると年の差30以上でしょ。こっちはトシ取るのに、女の子や従業員は入れ替わっていつも若いし。30違うと、何から何までなんか違うって感じなんだよねえ。こっちも合わせてるけど、向こうも気い使ってる感じもあるしねえ。圭ちゃんはまだ若いからこの感じ、よく判んないだろうけど」
「45だから若くもないですよ。むしろオーナー側ですよ」
「それに私、今年で60って言ってたけど、ホントは65なのよ。もうホントのホントに若い人に無理に合わせるのはキツい気がするので、この際、全部まとめてやめようって決めたのよ。どっちもまあまあの値段で折り合いもついたので、東京もひきはらう事にして……気が向いたら、田舎で、同世代相手の昼間だけあける小さな店でもやろうかなとは思ってるの。朝から飲めて、コーヒーも出すような店ね。新聞や雑誌やマンガも置いてる、昔ながらの昭和感満載の店。昔はこの辺にもけっこうあったんだよねえ……で、圭ちゃんは、随分長くいて貰ったので、コレ」
 オーナーはそれなりの厚みの封筒を差し出してきた。
「なんですか、これ」
「契約扱いなので、ホントは出さなくてもいいらしいんだけど、長くいて貰ったんで」
「ちょ、待って下さい。え? ピットインも閉めちゃうんですか?」

「誠に勝手ながら今月末で閉店します。永らくのご愛顧、ありがとうございました」と書いた紙をピットインの壁に貼ると、杉山オーナーは「じゃあ、あと、よろしく」といつもと同じ口調で言って出て行った。その紙に書かれた言葉を見つめても、25歳の頃から約20年働いていたこの店が、あと2週間で閉店して、メインの収入源がなくなるという事に対して現実感が湧いてこない。
「随分急だね。なんかトラブル?」と常連に訊かれ、いつもの僕なら、なにか訊かれたら訊いてきた客の数だけ微妙にアレンジを変えて適当な作り話をするのに、今夜は何も浮かんでこないので「オーナーの都合で……」と正直に答える。
 さっきオーナーから貰った退職金で節約すればいまの部屋の家賃を払って半年は暮らせるかもしれないが、とにかく、生活の為の仕事を探さなくてはいけない。てっぺんをまわったあたりから、閉店の情報が拡散したのか、しばらく顔を見せていなかった以前の常連も顔を見せてくれた。常連客におごって貰った酒が次第にまわってくると、20年もバーテンの経験があるのだから何か同じような仕事は見つかるだろう、という思いはどんどん強くなり、節約しようという考えはどこかに消えて、閉店後はいつものように数人の常連と別の店に流れた。

 切り詰めれば半年間の生活費になる筈の退職金と最後の給料は、閉店3週間後にはきれいになくなり、逆に借金が残った。最初の1週間、ピットインの常連客の数人が「次の仕事、決まってないなら、いくらでも紹介してやるよ」みたいな事を言ってくれたので、詳しい話を訊くという名目で一緒に飲んで支払いを持ってあげたが、いざ具体的な部分に踏み込むと、いずれも眉唾な話だった。そういう話をする常連たちに悪気がないように感じられるのがどうにも腹立たしかったが、立場を変えれば、僕も同じような事を言いかねない人間なので、強く文句は言えなかった。要は、酒飲みは、飲む口実さえあれば何でもいいのである。
 次の1週間は心を入れ替えて自ら仕事を探してみたが、年齢的な問題なのか、結局バーテンダーなんて誰でもできる仕事なのか、10店以上にエントリーしてみたが、面接にこぎつける事さえできなかった。当座のつなぎとして、この際単純な肉体労働でも仕方がない、とエントリーする事を考えたものの、自分の中の何かが邪魔をして送信ボタンを押せなかった。どれだけ売れなくても本業は小説家と思っていたつもりでも、20年間メインの生活費を稼いでいたバーテンダーという仕事に無意識で何かしらのこだわりが生まれていたのかもいれない。
 昼間真面目に職探しをしたのだから、という大義名分で、夜は毎晩、普段より少し豪勢に飲食していたので金は更に減った。夜の仕事がなくなった分、執筆に当てる時間は増えた筈なのに、当座の生活の不安からか、執筆意欲は衰えて筆は進まなかった。僕という人間の本質は怠け者である、という事に、この時の僕は気づかないふりをしていたのだろう。小さな店のバーテンという仕事を20年も続けると、それよりも大変そうな仕事は、無意識のレベルでエントリーを避けていたのだ。
 3週目の記憶はすでに曖昧だ。
 ひと晩考えて、何をするにせよ、この先1年分の生活費を手元に置いておきたい、その為には競馬で増やすしかない、という当然の結論に至った。
 最初の数日はトータルで黒字だったのはなんとなく覚えているが、その後の数日間の記憶は、思い出せそうで思い出せない夢の記憶のように朧げだ。気がつけば、わずかな現金・預金は一切なくなり、借金の総額は300万円を超えていた。
 冷静に考えれば、何かのアルバイトで月に15万円を稼げば、5万円の家賃を支払ってもなんとか生きてはいけるのに、その時の僕は、冷静さを失っていたのか、このアパートを引き払って、文字通り、裸一貫でやり直す覚悟さえ決めれば、日雇いの肉体労働でも何でもやる気になるだろう、という所になぜか着地していた。当座のアルバイトが決まっていない状態で、なぜ、アパートを解約して身軽になろう、と決意してしまったのか、いま、思い返してもよく判らない。たまたま、なんとかなっているが、そのまままっすぐホームレスに転落する可能性もあったのだ。
 アパートの部屋にある持ち物を処分している最中、余計なモノは一切持たず、執筆さえできればいいという環境に身を置いてクリーンスレートしたい、という概念がただただ頭の中に渦巻いていた。
 ベッドとデスクと本棚は区の粗大ゴミに出し、時々電源が入らなくなる液晶テレビはピットインの元店員に譲り、ほとんどの服をリサイクルに送付、食器や什器も全て処分。
 少なからずの量の本は、青空文庫で読める昔の作品と図書館で読める有名な作品は処分。ここで手放すと二度と読めないかもしれない作品に関してはさすがに迷っていたが、着払いで送付すると、既にデジタル版が存在する場合はその旨通知され、デジタル版が存在しない場合は無料でデジタル化してくれるサービスを発見して半信半疑で送り付けた。既にマンガに関してはタブレットで読む習慣が数年前からついていた。書籍も徐々にタブレットに移行したいと思いつつ、紙の本を手で持って頁をめくる感覚は捨てがたくて先延ばしにしていたのだが、要は「いま読んでいる本」として文庫本が2〜3冊あれば良いのだ。読み終えたら処分して別の本を入手して、いろいろな本をつまみ読みしたい時は、大型書店や図書館に行けば良い。
 そうやってどんどんモノを処分していくと、愛用していたモノがどんどん消えていく寂寥感を多少は感じたが、それよりも、身軽になっていく解放感の方が大きかった。モノがあればあるだけ、モノの管理や整理に時間を取られる。それは僕に取って無駄な時間。いまこうやって断捨離をする事が、本を読む事や小説を書く事に使える時間が増える事につながる妙な確信があり、同時に、形容しがたい、何かしら、自由になって行く感じが、僕の裡の何かを燃やしていた。
 やや大きめのバックパックに、ノートパソコン、タブレット、スマホ、電源やバッテリー、着替え、上着、洗面道具、寝袋、文庫本3冊を入れて、長年住んでいたアパートの部屋を出て駅の方に歩いていると、行くあてもなく仕事もなく金もないのに、来る所まで来て脳が誤作動を起こしているのか、人生で初めて味わうレベルの解放感が細胞のひとつひとつから溢れ出て体中をぐるぐる駆け巡るような感覚、射精寸前のムズムズが全身に敷衍しているような快感があった。
 このまま南の島に行って、海岸で寝袋で寝ようか。
 飛行機が怖いのでそれはやめておこう。
 駅前の繁華街を適当に歩く。
 いまバックパックに入れてあるモノだって、もし常にサブスク的なレンタルが可能なら、持ち歩く必要はない。パソコンやタブレットや服や洗面道具を常にレンタルできる環境があれば、人間は文字通り何も所有する事なく生きていく事はできるんだよなあ。そんな感慨を公園のベンチでブログにアップして、芝生に仰向けになってひなたぼっこをしながら小型の簡易ソーラーパネルでバッテリーを充電する。
 夏の終わりの午後。
 いまこの瞬間に人生が終わったとしても痛みも苦しみもないのなら別に構わない、と一瞬思い、同時に、この解放感と暖かさはいつまでも無限に続くような気もする。

――「OMNICに全てを提供する」って怖くなかったですか? もし悪用されたら、って考えたら……。
亜蘭「僕の場合は、その時点で、何の財産もなく、あるのは借金だけで、先の展望もなかったから。エントリーが通るなんて全然思ってなかったし」
――アナログの持ち物も提供するんですか?
亜蘭「よく判んないけど、その時のパソコンとクラウドに保管してあるヤツだけじゃない? クラウドに上げてない昔のSDカードまで繋いで、なんて事は求められなかったよ」
――変な写真とか、日記のヤバい話とか、大丈夫でしたか?(笑)
亜蘭「若い頃の写真とか日記にはあったかもしれないけど、もう、その時は、なかば破れかぶれだったから。でも、そういうのが流出した、っていうニュースも聞かないから、意外とガードがしっかりしてるかもね」
――審査の結果が出るまでの時間ってどれくらなんですか?
亜蘭「翌日の昼には出てたよ。あんまり早いから絶対なんかの間違いかと思った」
――そんなに速いんですか!?
亜蘭「審査に関しては眉唾って言うか、僕が通ったんで、友人も何人か、やってみようとしたらしいんだけど、そのうちの何人かは、エントリーページが表示されないって言ってた」
――亜蘭さんはすぐに表示されたんですか?
亜蘭「僕の場合は、その前から、連日、何を見ても広告が表示されてて、その広告クリックで即エントリーページが表示されて、その頁のボタンひとつ押したら即エントリーだったんだけど、表示されない、って言ってる奴は、そもそも、そんな広告は見た事なくって、普通に検索してエントリーページらしい所に行こうとして、ダメだったらしいんだよ」
――それって、OMNICが人を選んでる、って事なのでは?
亜蘭「選んでるだけでなく、エントリー以前にデータを抜かれてる可能性がある、なんて言っている人もいるみたいだねえ」
――亜蘭さんの場合は、亜蘭さんが書いていた小説が、なにかしらOMNICの理念に合致していた、みたいな事かもしれない?
亜蘭「って、僕は勝手に思ってるんだけどね」
――いずれにせよ、審査が通ったいまは、24時間常時監視されてるんですよね?
亜蘭「なんか、そうらしいね。このスマートウォッチとか、このスマートグラスとか、あと体の中になんか入ってるらしいし、コレは言っていい話だったかな? 俺の頭のずっと上にはハエみたいなのが飛んでるみたい」
――ハエじゃなくって、超小型カメラ搭載のスマートバグですね。それも公開されている情報です。そういう監視って気持ち悪くないですか?
亜蘭「もし僕が若くてかわいい女の子だったら、下着や裸も撮られてるのは気になるかもしれないけど、50近いおっさんだからねえ、見たけりゃ勝手にどうぞ、って感じ。むしろ、僕は、ひとりの時に急病で倒れた時の安心感の方が強いなあ」
――あえてつっこんだ質問をしますが、OMNICフルコミット後、ソロプレイとかノーマルプレイとか、普通にやってるんですか?
亜蘭「普通にやってるよ。たまにだけどね。これは小説にも書いた事があるけど、若い頃にアブノーマルバーみたいな店に通っていた事もあるし、そもそも、人前とか別に気にしないしね」
――ノーマルプレイの場合は相手の女性はバグで常時監視されているのを気にしたりしませんか?
亜蘭「相手も同じステータス(OMNICフルコミット)の人としかしてないない。ひょっとしたら、そういうのを気にしないってのが、OMNIフルコミットの最重要条件だったりするのかも」
――OMNICから提案されるジョブは本人がやりやすいものが多いって言われてますが、亜蘭さんの場合はどうですか?
亜蘭「僕の場合は断然そんな感じ。ちょっとした文章の直しとか、映画や配信の感想とか、新しくできた店の簡単なリポートとか、文章系の仕事がズラーって並んでる」
――そんな仕事をコツコツやって借金も返済できたんですよね?
亜蘭「貰えるポイントで生活はできるから、単価はそうでもないジョブで稼いだ分は全部借金返済に
まわして、あとOMNICのサジェスチョンで小説も多少売れるようになったし……1年もかからなかったかな、完済まで」
――OMNICの人は”モノを所有してはいけない”って噂は本当ですか?
亜嵐「別に禁じられているわけでないみたいけど、僕の場合はこのバックパックに入るだけにしてる。モノを持たない生活はホント楽だよ。もしOMNICを追い出されても、モノは持たないんじゃないかなあ」
――エッセイに書いてる事は本当の話ですか? 本当だとしたら、亜嵐さんみたいな人は、衣食住足りたら何もしなくなるのでは?
亜嵐「それが自分でも不思議なんだけど、むしろ、逆に小説を書く時間は増えたんだよ。売れる小説を書かなきゃ、っていう、変なプレッシャーがないから、気楽に書けるようになったみたいなんだよねえ」
――OMNICは何を目指してるんでしょう?
亜嵐「最終的には、人類全体がこの無料な状況を使えるようになる事を目指しているんじゃないかなあ」
――そんな事は物理的に絶対ムリですよね?
亜嵐「よくわかんないけど、エネルギーにかかる費用が限りなく無料に近づければ、可能性はゼロではないんじゃない? なんかそんなような事を言ってる人もいるよね」


 
 OMNIC特別区に引っ越して約半年が過ぎた。
 以前の生活と同じように、昼頃に起きて、買っておいたパン2個とジュースを摂る。紙の新聞の宅配はOMNIC特別区内は原則不可なので、壁一面に投射された画面でニュースサイトを眺める。スマートグラスのARでポインタをあわせて瞬きをすると埋め込まれた動画が再生される。たしかに便利で指も汚れないが、なんとなく味気ない。
 このパンとジュースは外の普通のスーパーやコンビニで替えば数百円、仮に1日500円なら月に15000円はかかるのが特別区内では格安。家賃はネットや光熱費なども込みで5万ポイントなので、OMNIC特別内でOMNICのサービスで生活するだけなら毎月支給される10万ポイントで充分賄える。どうしてこんなに安価に提供できるのだろう?
 HIROBAで時々話す男は「あくまで僕の想像だけど、人工衛星の太陽光発電と空間エネルギー伝送、これでエネルギーのコストは限りなくゼロにる。で、ロボットに働いて貰えば、モノの値段は限りなくゼロに近づくんですよ。日常の食料や雑貨に関して言えば、ご存知の通り、ここの住人は全員生活パターンを完全に管理されているので、需給バランスを限りなく一致させる事ができるでしょ。で、ロボットが働くローコストの工場から個人へのダイレクト物流を一元管理すれば、無駄なコストは相当減らせる。もっと安くても不思議じゃない」みたいな事を言っていた。理屈は判るし、先日のインタビューでもその男の受け売りでそんなような事を答えたが、どうも釈然としない。OMNICフルコミットに選ばれた僕たちだけがこんなに恵まれた生活を送る事ができるのは、どこかで誰かが犠牲になっているのではないか、と思ってしまうのは、20世紀型高度資本主義に洗脳されているからなのか?
 午後はデスクに就いて執筆を試みる。完全防音モードを最強にすると、どういう技術なのか、上下左右に並んでいる同じ間取りのコンパクトなワンルームの部屋から漏れてくる生活音、廊下を歩く音、ドアの開閉音などが一切聞こえなくる。最初は夢のような執筆環境だと思ったが、なんの音も聞こえない状態が長く続くと、自分が生きているか死んでいるか判らないような変な感覚がじわじわ湧いてきて落ち着かない。いまは完全防音モードは最小設定にしているが、それでも、物音は殆ど聞こえない。僕が最小にしていても周囲の部屋の人が最強にしていれば聴こえないのかもしれない。安普請のアパートで執筆していた数ヵ月前までは、そこかしこから聞こえてくる物音を執筆に集中できない言い訳にしていた。いまは物音は聞こえてこないが筆は進まない。
 先月受けたネット媒体のインタビューの動画を見返してみる。正直に素直に答えていたように記憶しているが、僕の受け答えは、やたらとOMNICをホメているように聞こえる。もっとOMNICに対して懐疑的な事も話した筈なのに、編集でカットされているのか、そういう発言はない。どういう質問をされてどう答えたか、よく思い出せない。頭上を飛んでいるスマートバグが常時記録している筈のビデオを探してみると「該当日時にはライフログとして保存に値する映像音声情報がなかったのでローカルには保存していません。クラウド保存分の管理に関しては担当者にお問い合わせ下さい」と表示される。全てを保存するのがライフログと説明を受けた気がしたが、あるいは僕が設定を変えたのかもしれない。
 「バディ」と呼びかけてPAを呼び出して「ライフログに関して担当者に問い合わせ」と命令すると数秒後に「現在担当者と繋がりません」との返答。「担当音は誰?」と訊くと「私には回答する権限がありません」との返答。これだ。いつもこれだ。なんでも答えてくれる最高レベルのPAの筈なのに。
 初めてちょっとだけ売れてちょっとだけ話題になって、インタビューを受けるきっかけになった短編集を視線スクロールで読み返してみる。AIが手を加えて修正した文章は無駄な部分がごっそり削除されて、繰り返されている語句は置き換えられ、すっきりと読みやすい文章になってはいるが、僕の文体にあった妙な癖・変な味はなくなっていて、読み返しても、自分が書いた文章に思えない。
 3時間デスクに向かってみたが今日も殆ど書けず、いったん気分転換をしようと思い、部屋を出て
地下のパブ「HIROBA」に入った。早い時間なので広大な店内に客はまばら。カウンターに座って
ビール(250ポイント)を注文して、モニターに映っている画面をぼーっと眺める。スマートグラスを連動させれば音声も聞けるが、それよりも、店内に流れているジャズのような音楽に身を委ねている方が心地よい。
「こないだはどうも」
 声が聞こえた方向を振り向くと30代半ばに見えるスタイルが良い女性。好みの顔立ち。顔を見ても判らなかったが、ゆるやかに開いた胸元の黒子を見て思い出した。先日のマッチング相手のレイカ(プレイネーム)だ。
「すみません、なんか調子が悪いみたいで、修理に出してるんですよ」
 人差し指で目元をトントンして、スマートグラスをかけてない事を示して、本当は思い出していたが思い出せないふりをする。相手の女性のスマートグラスには、僕に関する公開個人情報だけではなく、ひょっとしたら前回のマッチングでセックスした時に記録された動画も映っているのかもしれない。
「あら、(スタッフに)言えば、すぐ(代替機を)貰えますよ」
「たまに(情報を)遮断して、ゆっくり飲むの、好きなんですよ」
「こないだ(けっこう激しいプレイの後で)、ちゃんと部屋に帰れました?」
「ええ、なんとか」
 本当は全く記憶がなかったが取り繕う。
「……また、機会がありましたら」
 レイカは顔を近づけて囁いた。あの夜と同じ香水の匂い。
「こちらこそ」
 レイカが去ってしばらく経っても残る香水の匂いが、あの夜の記憶、あの夜に感じた恐怖を引きずり出してくる。

 条件にこだわらなければOMNICのアプリは100%マッチングして、その日のうちにでベッドをともにできるので、最初の頃は3日とあけずに利用した。この年齢にも関わらず、毎回提供されるスペシャルドリンクの効果なのか、毎回強烈に勃って毎回かつてないほどの快感があった。
 約2週間前のあの夜も、いつものようにプレイスポットをOMNIVC施設内のプレイルームに設定して、年齢・体型・性癖のこだわり条件を「特になし」にすると、数時間でマッチングしてHIROBAで対面した。
 プレイネームはレイカ、年齢は30代。お互いプライベートな話はNG設定だったので最近見た映画の話など、さしさわりのない話をした。明文化はされてないが、互いの意志の確認の時間として、初めてマッチングされた場合はパブリックスペースで約15分会話する事が推奨されている。
 ……この話は誰に聞いたのだろう。思い出せない。初めてマッチングされた時から、当然の事として約15分会話していたような気がする。
 HIROBAに隣接するエリアにあるプレイルームに移動すると、いつものようにスペシャルドリンクがデカンタでサーブされていた。甘くて飲みやすい。飲む媚薬として最高級の効能を持つドリンクと噂されているドリンク。詳細な成分は明らかにされていない。
 ドリンクを飲んで少し話をしてシャワーを使って、部屋の照明を落として、いつものようにプレイに入った。いつものキス、いつもの前戯、いつもの挿入。
 突然、言葉にすれば、恐怖心のようなものが、裡のどこからか湧きあがってきた。
 ついさっき知り合った女性の後門に差し込んだバイブの震動を感じながら、怒張した欲棒を出し淹れしているいまこの瞬間の僕は本当に僕なのか? いまこの瞬間は本当に現実なのか?
 僕とレイカは最初からずっとスマートバグのカメラが記録している。施設内のあらゆる場所に肉眼では見えない大きさの超マイクロカメラが設置されている筈なので、この部屋にもいくつものカメラがある筈だ。こんなに簡単に性交渉を持てて、こんなにちゃんと勃って、こんなに快感があって、その全てをカメラに記録されていて、僕はいまは使ってないが、エリカはいまこの瞬間のLIVE映像をスマートグラスで見ているかもしれない。どちらかが公開OKに設定していれば、いまこの瞬間のLIVE映像をOMNICフルコミットのメンバーは誰でも見られるんだっけ?
 それまでは特に気にしていなかった、おそらくスペシャルドリンクによるハードエレクトと持続と常にカメラに撮られているという状況に、急に、恐怖を感じた。
 裡に湧き上がった恐怖で身体が震えたが、その震えは欲棒に伝わってくるバイブの震えと一体化して判別しがたくなる。
 怖い。簡単すぎて怖い。でも気持ちいい。
 怖い。こんなに勃ってこんなに快感があるのが怖い。でも気持ちいい。
 やがて、強烈過ぎる快感が、足のつま先から頭のてっぺんまで稲妻のように秒速で疾り、射精の震えと恐怖の震えが一体になって、全身が痙攣したように激しく震えて、頭が真っ白になった。
 目覚めた時は自分の部屋のベッドにいた。プレイルームからこの部屋にどうやって戻ったのか、全く記憶がない。それ以来マッチングは利用していない。

 このままHIROBAにいると先日のレイカの記憶にどんどん侵食される気するので、とにかく外に出よう、と思い立ち、ゲートを通ってOMNIC特別区の外に出た。
 地下鉄の最寄り駅への道を歩く度に〈仮出所〉という言葉がふと頭に浮かぶ。
 設定をOFFにすると僕の上空で僕の行動を常に記録している小さな虫(スマートバグ)はスマートグラスのフレームに止まって充電をはじめた。そのスマートグラスの電源も切ってバッグに入れて、普通のメガネにかけかえた。
 ”OMNICの施設外ではスマートバグによる常時監視は義務ではありませんが、なるべく常にどこでもONにされる事を推奨します。”
スマートバグによる常時監視をONにしていれば、仮に周囲に誰も人がいない状況で血管破裂や心臓停止で意識を失って倒れてもバグが直ちに医療機関に通報してくれる。最初の頃はONにしている事を意識さえせずに常に飛ばせていて、部屋にひとりでいても見守られている安心感があった。
 外に出てこうやってバグをOFFにすると、見守れていない不安感より、誰にも監視されていない解放感の方が大きい。何がどうなろうと死ぬ時は死ぬ。むかしながらの単なる視力矯正メガネだと遠くはよく見えないし、衝突防止警告が表示・鳴動する事もないが、こうやって歩いているだけで、やはり、なんともいえない開放感がある。
 こどもの頃からずっとバグやグラスを使っていれば、常に使うのが当たり前という感覚になるのだろう。先日HIROBAで話した若者はそんなような事を言っていた。OMNIC特別区で生まれ育った彼は、OMNICの常時監視下でOMNICポイントで生活する事に一切疑問も持っていないようだった。生まれた時からずっとそうならそうも思えるのだろう。
 選考基準のようなモノは明文化されてないので僕が選ばれた理由はよく判らない。選ばれた理由がよく判らないという事は、ある日突然、よく判らない理由で解除されるかもしれない。その不安は通奏低音のようにどこかにある。
 電車で移動して駅前のATMで口座から現金を引き出した。いまでは殆ど見かけなくなったATMだがこの界隈にはまだいくつか残っている。小さな居酒屋で鳥の唐揚げをつまみに生ビールを2杯飲んで競馬場に入った。
 部屋の大きなスクリーンかスマートグラスのVRでLIVE中継を見ながら、OMNICポイントで馬券を買う事ももちろんできるのだが、なぜか、OMNIC特別区の自室で競馬をやっていると、毎回罪悪感に襲われた。禁じられているわけではないのだが、支給されているポイントをこんな事に使っていいのか、という思いに毎回襲われた。
 数ヵ月前から印税の振込をOMNICポイントではなく銀行口座への現金振込に変えて貰った。作品の取材も兼ねて競馬場で現金と紙の馬券握りしめて……ってのをやってみたいんですよ、と理由をつけて。OMNICから提案される文筆系の案件はやめて、晴れて体調が良い日は斡旋所に足を運んで、現金当日払いのアルバイト(軽作業)をする。OMNICの文筆系案件に比べて報酬は安いが、運動不足解消を兼ねて数時間働いて現金を貰う。
 いつものように中穴(10〜20倍狙い)で1レースに1万円投資。
 3レース目で的中して約10万円の払戻金を受け取って、一瞬、往復の交通費と飲食代と今日の投資分をキープする事を考えたが、次のレースに全額ぶっこんで的中、更に次に全額ぶっこんで的中すれば、それなりの金額になる。目の前の数万円より2レース後の数百万と思って次のレースに全額ぶっこんだ。
 現金で買った紙の馬券を握りしめて肉眼で馬を見る競馬は、部屋でパソコンとモニターでやる競馬より全然楽しい。周囲で同じように紙の馬券を握りしめている人たちの感情にどこかで無意識に同調しているからなのか、いまこの瞬間この場所にいる全員で、過去も未来も忘れて全力で競馬を楽しんでいるという感覚が強烈にある。
 その後の2レースはかすりもせず、ATMでおろした5万円は消えてなくなって財布も軽くなったが、気分転換をして、一瞬でも夢を見たと思えばどうって事はない。
 頬に当たる夜風が心地よく、ほろ酔いとレースの高揚感が、数時間前にエリカの香水の匂いが呼び起こした怖い記憶をどこかに消し去ってくれたのか、久々に、なんとなくよおしてきた。2週間前のマッチング以来ずっと自トレもしていないので、この年齢でも溜まるものが溜まっているようだ。
 駅前に戻ってそれっぽい店が立ち並ぶ薄暗い路店を物色する。2週間も射精していないのは自主トレを覚えて初めてで、その路地に漂う匂いとムードだけで欲棒がぴくんとかすかに反応する。こんな風に街を彷徨ってそういう店を探すのは杉山さんのバーで働き始める前、20代の半ば以来だ。
 20代の頃から20年以上住んでいた部屋にあったモノをほとんど全て処分して、バッグパックひとつでほぼホームレスになって、公園の芝生に寝転んだ時に感じた解放感は、その後OMNICに選ばれて生活が保証された安心感と結びついて、いまの僕の基盤になっているのは間違いない。にも関わらず、ほんの半年間で、いまのOMNIC特別区の安心感に、どこか居心地の悪さを感じるようになってきている。いまの生活の方がどう考えてもあの頃より断然マシなのに、なぜか、あの部屋で暮らしたあの頃に戻りたいと思う。
 結局、人はどんな状況になっても、いまとは違う状況に憧れるという事なのかもしれない。
 だんだん選ぶのが面倒になって適当に入った店で、ポラロイド写真から適当に選んだ女性に相手をして貰った。女性の舌と唇が与えてくれる感覚は心地よく、わずかな時間で後門の奥の方にせつない疼きが生じてきつつも、欲棒はぴくりとも反応せずに縮こまったまま。僕は、施し続けてくれる女性に対してかける言葉を考えながら、これが僕だ、と感じていた。  

【了】

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■青春ラブコメ「電霊昇天 愛バイブレーション」

○登場人物
久志(20)…………大学生
綾乃(20)…………大学生
隼人(20)…………大学生
望美(20)…………大学生 
鳴尾(21)…………大学生
井東(21)…………大学生
槍杉(21)…………大学生
江森(35)…………ゲームソフト開発スタッフ
その他(大学教授、高校のクラスメイトなど)

○ログライン
彼女との初体験直前に事故死した二十歳の童貞男の霊が彼女が使う電子機器に宿る。彼女の他の男との初体験を何度も撃退した男の霊は、最終的にバイブに入って彼女と結合、彼女の絶頂を全身で味わって思いを果たす。


  1. 1 海辺の公園(夏・夕方)
  2. 2 ゲームメーカー・研究室
  3. タイトル「電霊昇天 愛バイブレーション」
  4. 3 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  5. 4 綾乃の部屋
  6. 5 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  7. 6 綾乃の部屋
  8. 7 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  9. 8 綾乃の部屋
  10. 9 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  11. 10 綾乃の部屋
  12. 11 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】*時間経過*
  13. 12 ハンバーガーショップ(※3ヵ月後)
  14. 13 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  15. 14 大学・ラウンジ
  16. 15 綾乃の部屋(翌日) 
  17. 16 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  18. 17 綾乃の部屋
  19. 18 綾乃の部屋(夜)
  20. 19綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  21. 20 川沿いの道(久志と綾乃の回想)
  22. 21 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】(回想あけ)
  23. 22 綾乃の部屋
  24. 23 綾乃の部屋・ワイヤレスキーボードの中【電脳空間】
  25. 24 綾乃の部屋
  26. 25 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  27. 26 大学・ラウンジ
  28. 27 高校のグラウンド(隼人の回想)
  29. 28 駅への道(数カ月後)
  30. 29 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  31. 30 綾乃の部屋
  32. 31 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  33. 32 綾乃の部屋
  34. 33 綾乃の部屋(夜)
  35. 34 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  36. 35 バスの待合所〜道(久志と綾乃の回想)
  37. 36 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】(回想あけ)
  38. 37 綾乃の部屋
  39. 38 綾乃の部屋・電動歯ブラシの中【電脳空間】
  40. 39 綾乃の部屋
  41. 40 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  42. 41 大学・ラウンジ
  43. 42 野球部・ロッカールーム(隼人の回想)
  44. 43 大学構内(約3ヵ月後)
  45. 44 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  46. 45 綾乃の部屋
  47. 46 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  48. 47 綾乃の部屋
  49. 48 綾乃の部屋(夜)
  50. 49 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  51. 50 ホテル・客室・クローゼットの中(修学旅行の回想)
  52. 51 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】(回想あけ)
  53. 52 綾乃の部屋
  54. 53 綾乃の部屋・コントローラの中【電脳空間】
  55. 54 綾乃の部屋
  56. 55 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  57. 56 大学・ラウンジ
  58. 57 ハンバーガーショップ・店内
  59. 58 公園
  60. 59 高校・放課後の教室(隼人の回想)
  61. 60 高校・グラウンド(夕)(隼人の回想の続き)
  62. 61 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  63. 62 綾乃のマンション(1ヵ月後)
  64. 63 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  65. 64 綾乃の部屋
  66. 65 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  67. 66 綾乃の部屋
  68. 67 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  69. 68 駅への道(数日後)
  70. 69 綾乃の部屋(夜) 
  71. 70 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  72. 71 綾乃の部屋(深夜) 
  73. 72 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】
  74. 73 綾乃の部屋
  75. 74 バイブの中【電脳空間】
  76. 75 綾乃の部屋
  77. 76 大学・教室
  78. 77 駅への道
  79. 78 綾乃の部屋(別日)
  80. 79 宇宙空間に浮かぶ地球の全景 
  81. 80 どこかの戦場
  82. 81 地球の傍らの宇宙空間

1 海辺の公園(夏・夕方)

海沿いの遊歩道をお調子者風の久志(20)とお嬢様風の綾乃(20)が歩いている。
久志「……怖いかもって話? 」
綾乃「……って言うか、セックスしちゃったら、わたしたちどうなるのかなぁって……やっぱりちょっと怖いかも……」
久志「どうなるかなんて……(綾乃に顔を近づけて芝居がかった感じで)もっと仲良くなるに決まってるって話でしょ」
綾乃「(笑って)二十歳の誕生日に高級シティホテルで初体験なんてドラマみたいで照れちゃう……。でも、久志、ムリしてない? そのバイト、なんかあぶなくない?」
久志「全然大丈夫だって。一日でこんなワリいいバイト他にある? ちょっと脳波かなんか計るだけ事で十万だよ十万。ハンバーガーショップなら何回いらっしゃいませ言わなきゃなんないのって話」
綾乃「なんかだんだん楽しみになってきちゃったかも!」
久志「でしょ! あ〜、もう、今度の土曜日が楽しみすぎる〜 (と、ひとりでどんどんスキップして行く)」
久志の姿が遠ざかって闇に同化して見えなくなる。


2 ゲームメーカー・研究室

いかにもマッドサイエンティスト風の江森(35)が久志の頭にいかにも一見怪しそうなヘルメットを装着させている。
江森「つまり、コレで君の意識を電子的・量子的に分解・再構成して……」
江森、久志のヘルメットから伸びているコードをノートパソコンに繋ぐ。
江森「ゲームプログラムの中に取り込んでしまいます。君はこのゲームの中で、まるで自分自身が動いている感覚でゲームをする事ができるという事なんですね」
久志「ワオ! なんかすごいすね〜。未来すね〜」
江森が最後のケーブルを繋ぐと、久志のヘルメットの電極の一部から小さな火花が一瞬散る。
久志「(急に不安になって)あの、コレ、安全なんすよね?」
江森「(無視してパソコンのキーボードを操作する)」
江森、パソコンのキーボードを操作する。
久志、急に眠りに落ちたように動かなくなる。
死んだように眠っている久志。
久志のヘルメットが点滅を続け、パソコン画面の棒グラフが次第に伸びていき、[transfer succeed]と表示される。
江森が微笑んだ次の瞬間、久志のヘルメットが激しく爆発する。


タイトル「電霊昇天 愛バイブレーション」


3 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

押し入れの中のような狭い薄暗い空間。
全身白い着ぐるみ(モジモジ君風)に包まれた久志(電霊)が、自分の正面の壁にある大きなスクリーンを食い入るように見詰めている。
スクリーンに綾乃の部屋の様子が映っている。


4 綾乃の部屋

思いつめたような表情の綾乃、純朴そうな雰囲気の隼人(20)、派手な茶髪の望美(20)がテーブルを囲んで座っている。テーブルの上に久志が映っている写真が多数ちらばっている。
隼人「……ホントに大丈夫、綾乃?」
綾乃「(久志の写真を数枚手に取って眺めて、意を決したように目を閉じて)うん。いつまでも泣いてちゃダメなんでしょ、望美?」
望美「そうそう。死んだオトコはナニしたって帰ってこないんだから。四十九日も済んだんだし、綾乃はミボウジンとして充分ナニしたって事なんだから、どんどん切り替えて次いかなきゃ」
隼人「(複雑な表情で綾乃を見ている)」
久志の声「……死んだオトコって……四十九日って……オレの事って話?」


5 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志がスクリーンに触れると記事が表示される。
[電脳ゲームテスト中の事故で大学生死亡]の見出し。記事に添付されている顔写真をズームすると……それは明らかに久志の顔である。
久志「……やっぱりギャラが高いバイトは危ないって事だったんだなぁ。もう二度とやらないぞ……ってもう死んでるからできないって話か……」
更に久志がスクリーンに触れる(綾乃のパソコン内を検索)と久志の葬式の写真やビデオが表示される。
久志「綾乃と一回もセックスしないで死んじゃうなんて、あんまりといえばあんまりって話しでしょ〜」
久志の体が次第に発光する。


6 綾乃の部屋

隼人「でも、別にここまでしなくても……」
望美「あーもー、オトコってのはいつもコレだから。綾乃がいいっていってんだから、いいの。はい綾乃(と、写真を数枚綾乃に手渡す)」
綾乃、写真をシュレッダーに入れていく。


7 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「オレは……オレはまだ準備できてないって話だよ……」
と、握った両拳でスクリーンを何度も叩く。
久志の体が更に発光する。
綾乃が最後の一枚をシュレッダーに入れようとしたのがスクリーンに映った瞬間、久志が消える。


8 綾乃の部屋

パソコンから飛び出た発光体(久志)がシュレッダーに吸い込まれ、シュレッダーが停止する。
綾乃「あれ、急に動かなくなっちゃった……」
最後に一枚残った写真。
高校の制服姿の久志と隼人が綾乃を中心に三人で肩を組んでいる。
屈託のなさそうな最高の笑顔。
望美「(写真を手に取って)この後さ、泣いてたよねー、隼人と久志。持ち上がりで大学一緒なのにナニ寂しがってんだとか思って笑ったわー」
隼人「望美はサバサバし過ぎなんだよ」
望美「隼人はウジウジし過ぎなんだっつーの。過去なんて振り返ったってなんにもなんないんだから」
シュレッダーから飛び出た発光体(久志)がパソコンに戻る。


9 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

片隅に久志がうずくまってゼーゼーと肩で息をしている。
久志「いま……マジで気合入れたら、シュレッダーに飛んでいったよな、オレ……」
久志の着ぐるみの一部がほつれている。
久志「……んで、『オレとの想い出を全部粉々にするのはやめてくれ』って念じたらシュレッダーが止まった。コレってどういう話なんだろ」


10 綾乃の部屋

綾乃「(最後に残った一枚の写真を見て)わたし、この一枚、しばらく持ってる」
隼人「…………」
望美「……じゃ、もすこし経ってからにする? さっきの話」
綾乃「ううん、紹介して。だって忘れるには……それしかないもん多分」
隼人「(綾乃を見ている)」
望美「……じゃ、マジでホントに探すから」
綾乃「(冗談っぽく)なるべくかっこいいのにしてね!」
望美「ガッツリ肉食系のヤツ紹介するから。ウチの学校は久志の事知ってるヤツ多いからアレなんで、彼氏のツテとかナニして他の学校とかから……」


11 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】*時間経過*

スクリーンの中の綾乃、小型ステレオでクラシックを流しながら、シュレッダーで飛び散った写真のかけらを掃除機で吸い取っていく。
久志「(スクリーンを見て)綾乃……」
ペットロボット犬が綾乃の後をちょこちょことついてまわっている。
久志「(スクリーンを叩いて)オレはココにいるんだよ〜、綾乃〜(と、叫ぶ)」
綾乃、一瞬パソコンの方を見るが、何も応えない。
久志「やっぱりいくら叫んでもオレの声は届かないって話だんだよなぁ……(と、がっくりとうなだれる)」
……数秒後に久志が顔を上げると、スクリーンにワンピースを脱ごうとしている綾乃が映っている。
久志「ワオ!」
パソコンのカメラは久志の意思に自動的に反応して綾乃のバスト近辺にズームする。
ブラを外す瞬間、綾乃はこちらに背中を向ける。


12 ハンバーガーショップ(※3ヵ月後)

店内はクリスマスグッズでデコレーションされている。
カウンターで笑顔で接客をする綾乃。


13 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

片隅にうずくまって、死んだように眠っている久志。


14 大学・ラウンジ

綾乃「……どうって、まだちょっとしか会ってないし……明日、遊びに来る事になってるけど……」
望美「綾乃の部屋に? 結構全然ちゃんと進んでんじゃん」
綾乃「なんか外で会うより部屋の方が緊張しない気がして……」
望美「鳴尾さんならいいんじゃないかなー」
隼人「(綾乃を見て)…………」


15 綾乃の部屋(翌日) 

綾乃のドレッサーの前でイケメン風の鳴尾(21)が自分の前髪を直している。
綾乃「ねえ鳴尾さん、それのドコが乱れてるんですか?」
鳴尾「ホラ、ココのこのヘンがさ(と、前髪の一部を指先でつまみ)ちょっとこっち向いてるじゃない?」 
鳴尾は何度かの試行錯誤で理想的な前髪の形を作り、傍らのバッグから取り出したスプレーを念入りにかける。
鳴尾「これでバッチリ決まってるでしょ?」
綾乃「(先程との違いがよく判らず)う、うん……」
鳴尾「綾乃ちゃんはさー(と、綾乃の前髪を両手でいろいろな形にほぐして)こんな感じがいいんじゃない?」
綾乃「あ……(と、思わず感じてしまう)」
鳴尾「(そのまま綾乃を自分の方に引き寄せる)」
綾乃と鳴尾、ゆっくりベッドに横たわっていく。


16 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志、スクリーンを通してふたりの様子を悶々として見ていた。
久志「久々に目が覚めたらコレだよ。ったく、いつのまにこんなナル男と仲良くなったんだっていう話だよ。この先どうなるのかちょっと見たいような……いやいや、ムリムリ、見たくない!」
久志の体が次第に発光する。


17 綾乃の部屋

パソコンから飛び出た発光体(久志)が部屋の隅にある掃除機に入る。
綾乃と鳴尾の唇が重なろうとした瞬間、掃除機が急に動き出し、吸い込み口が鳴尾の髪の毛を吸い込む。
鳴尾「いててててててて」
鳴尾、髪の毛を押さえながら逃げまわるが、掃除機はそれを追い回す。掃除機のスイッチが「最強」に切り替わると、鳴尾のカツラが外れる。
鳴尾「ぎゃーーーーーー(と、尋常でない叫び声を上げながら部屋から逃げて行く)」
カツラを拾って呆然とする綾乃。
綾乃の横に掃除機が親しげに寄り添っている。


18 綾乃の部屋(夜)

綾乃がデスクでワイヤレスキーボードを叩いている。
綾乃、手を止めて、デスクの上の写真立ての写真(シュレッダーにかけなかった最後の写真)をしばらく見つめ、再び機械的にキーボードを叩く。
綾乃の手。


19綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「(スクリーンの中の綾乃を見つめて)もう一回だけでも綾乃と手を繋ぎたかったな〜」
久志の体が次第に発光する。


20 川沿いの道(久志と綾乃の回想)

夕陽が照らす通学路を、高校の制服の久志と綾乃が手をつないで歩いている。
久志「哀しい感じ?」
綾乃「ちょっと哀しい……。このままずっと、沈みそうで沈まなくて、この瞬間がずーっと続けばいいんだけど、必ず沈んじゃうでしょ?」
久志「大丈夫。おひさまが沈んだ後も絶対この手を離さないから」
綾乃「絶対?」
久志「絶対」


21 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】(回想あけ)

久志「……行けるなら、行くしかないって話でしょ!」
久志の体の発光が勢いを増す。


22 綾乃の部屋

パソコンから飛び出た発光体(久志)がワイヤレスキーボードの中に入る。


23 綾乃の部屋・ワイヤレスキーボードの中【電脳空間】

やはり押入れの中のように狭い薄暗い空間。 
久志「(空間天井に両手の手の平を付けて恍惚の表情で)そうそう、こんな感じだったよ、綾乃の手……ああ綾乃……」


24 綾乃の部屋

綾乃の目の焦点がどこか合っていない……


25 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「(横たわってゼーゼーしながら)念じればこうして飛べるって話なら、ユーレイも悪くないかも……」
久志の着ぐるみのほつれが増している。


26 大学・ラウンジ

望美「掃除機が勝手に動くとかチョー受けるんだけど!」
綾乃「興奮してたから幻を見たのかなぁ。でも、どっちみち私は鳴尾さんはちょっとダメだったかも」
望美「私は結構面白かったけどねー、芝居がかっててさー」
綾乃「望美、ひょっとして、セックスしたの、鳴尾さんと……?」
望美「……2〜3回だけだよ」
綾乃「…………」
望美「私と竿姉妹になりそこねたねー」
綾乃「サオシマイ?」
望美「また別なの紹介するからさー、凝りずに頑張ってみて」

望美「……だから、それは、綾乃が久志と手をつないだ時の事をリアルに思い出しちゃった、って事でしょー」
綾乃「でも、凄いリアルだったよ。ホントにホントに手をつないでる感じだったよ?」
そこに隼人が来て、
隼人「なんの話?」
望美「隼人んトコは出る?」
隼人「?」
望美「久志のオバケ」
隼人「(綾乃を見て)…………」


27 高校のグラウンド(隼人の回想)

ランニングをしている野球部員の中に久志と隼人がいる。

守備練習。
レギュラーの久志はサードのポジション、外野の控えの久志はレフトあたりの数人の中にいる。
ノッカーの声「もういっちょー」
ノッカーが打った強い打球が久志の正面でイレギュラーして、久志の右手に当たってファールグラウンドに転がる。
その場にうずくまる久志。
隼人、ファールグラウンドに転がった球を拾う。
隼人「大丈夫、久志?」
久志「(痛みを堪えている)」


28 駅への道(数カ月後)

桜並木の下を綾乃が歩いている。


29 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

片隅にうずくまって、死んだように眠っている久志。


30 綾乃の部屋

派手な原色の服を着た井東(21)と綾乃がベッドの上で向かいあって座っている。
綾乃「ホントにカラダが動かない……コレって何?」
井東「(オネエ口調で)信じる気になった? ワタシの超魔力」
井東、目を閉じて右手を前に出す。
井東「ハッ!」
井東が指先を綾乃の首元に向けて、ゆっくりとその手を下げて行くと、その動きにあわせて、綾乃が着ている服のフロントジッパーがゆっくりと下がっていく。
綾乃「うそー。何ですかこれ。絶対ありえないから!」
井東の袖口の内側に小さな金属の塊(超強力磁石)が縫いこまれているのがかすかに見える。
綾乃の服のジッパーが最後まで下ろされ、井東が掛け声をあげて両手を左右に広げると、それにあわせて服がが大きく左右に広がり、綾乃のブラが露になる。
綾乃、それを手で隠そうとするが、
井東「動いちゃダメって言ったでしょ」
と、言われて思わず固まってしまう。
井東が両手を前に出し、ゆっくり指先を動かすと、綾乃のブラが上から少しづつ下にズレていく。


31 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志、スクリーンを通してふたりの様子を悶々として見ていた。
久志「久々に目が覚めたらコレだよ。ったく、いつのまにこんないんちきエスパーみたいな男と仲良くなったんだっていう話だよ。この先どうなるのかちょっと見たいような……いやいや、ムリムリ、見たくない!」
久志の体が次第に発光する。


32 綾乃の部屋

パソコンから飛び出た発光体(久志)がベッドの枕元にある小型ステレオに入る。
綾乃のブラがますます下にズレていき、今にもバストトップが露になりそうになったその瞬間、
小型ステレオからラップミュージックが大音量で流れる。
井東がビックリして動きを止めた瞬間、流れる音楽の音量がさらに上がり、小型ステレオが宙を飛んで井東に襲いかかる。
井東「なんなのコレ……(小型ステレオが井東の頭に当たる)……きゃー……これがホントのラップ現象?」
井東、小型ステレオの攻撃を避けながら部屋から走り逃げていく。
井東が出ていくと小型ステレオは元の場所に戻り、クラシックを奏でる。


33 綾乃の部屋(夜)

綾乃が電動歯ブラシで歯を磨いている。
デスクの上にあった写真立ての写真(シュレッダーにかけなかった最後の写真)をもう片方の手に持って見つめながら。
綾乃の口元。


34 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「(スクリーンの中の綾乃を見つめて)ああ、綾乃ともう一回だけでもキスしたかったな〜」
久志の体が次第に発光する。


35 バスの待合所〜道(久志と綾乃の回想)

      
雨。屋根付きで三方にベンチがあるバスの待合所。
久志、綾乃の他に数名の人がいる。
バスが来て久志と綾乃以外の数名が乗り、バスが発車すると同時に、久志が綾乃にキスをする。

雨が止んで雲間から初夏の陽光が射し込んでいる。誰もいない道をスキップしながら歩いていく久志。
綾乃「ねえ!」
久志、どんどん先に行ってしまう。
綾乃「ホントに歩くの? まだ結構あるよ〜」
久志、振り向いて凄い勢いで戻ってきて綾乃にキスをする。面食らう綾乃。
久志「だから歩くっていう話でしょ!(と、またスキップで行ってしまう)」
綾乃「(思わず笑顔になって、小走りに後を追いかける)」
次第に輝きを増す陽光がふたりを照らし続ける。


36 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】(回想あけ)

久志「また行かせてせてもらいまーす!」
久志の体の発光が勢いを増す。


37 綾乃の部屋

パソコンから飛び出た発光体(久志)が電動歯ブラシの中に入る。


38 綾乃の部屋・電動歯ブラシの中【電脳空間】

押入れの中のように狭い薄暗い空間。
久志「(壁に唇を付けて恍惚の表情で)そうそう、こんな感じだったよ。綾乃の唇……ああ綾乃……」


39 綾乃の部屋

綾乃、唇を半開きしてうつろな表情。


40 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「(横たわってゼーゼーしながら)飛ぶのは楽しいけど、結構消耗するよなぁ。ホントに死にそうって話だよ」
      久志の着ぐるみのほつれが更に増している。


41 大学・ラウンジ

望美「あれー井東さんもムリだった? なんか妙に真剣で面白かったんだけどねー」
綾乃「ひょっとして、望美、井東さんとも?」
望美「二〜三回だけだよ。普通のセックスに飽きた時とかに。あの人なんでかオネエ口調でおもしろいよねー」
綾乃「…………」
そこに隼人が走ってきて、
望美「おっす隼人」
隼人「おっすじゃないよ。もう講義始まってるよ」
望美「いいんだよ、あのじーさん、どうせ話長いんだから」
隼人「でも今日は出欠取ってるって」
望美「マジ?(と、勢い良く立ち上がって)じゃ、行かないと」
三人、走って行く。


42 野球部・ロッカールーム(隼人の回想)

ユニフォームを脱いで上半身裸の隼人。そこに制服の久志が入って来て、隼人の前に右手の白いギブスを突き出す。
隼人「(久志のギブスに触れて)あちゃー」
久志「やっちまったよ。とりあえず秋はムリって話だよ」
隼人「マジ?」
久志「多分お前だって、正式発表はあしただけど」
隼人「何が?」
久志「何がって、サードのレギュラーだよ、オレの代わり」
隼人「え、そんなのムリだって」
久志「あれこれ考えずに、来た球打って、来た球捕ればいいんだよ」


43 大学構内(約3ヵ月後)

初夏の陽光の下を歩いている綾乃。


44 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

片隅にうずくまって、死んだように眠っている久志。


45 綾乃の部屋

一見優男で目の奥に異常な光を宿している槍杉(21)ベッドの上で綾乃の肩を抱いている。
綾乃「ねえ槍杉さん、何もヘンな事はしないって言ったじゃないですか」
槍杉「だから、縄でしばったり、ろうそく垂らしたり、そんなヘンな事はしないですよ。……僕の事、嫌いですか?」
綾乃「嫌いじゃないけど、まだ、心の準備っていうか……」
槍杉「小六デビュー、経験人数五百人の僕にまかせておけば大丈夫です(と、綾乃の手を自分の股間に導いて)ほら綾乃さんを求めて、僕のロドリゲスがこんなに……」
綾乃「やだ(と、言いつつも、手でその部分に触れる)」
槍杉と綾乃の唇が重なろうとした瞬間、綾乃が顔をそむけ、槍杉は綾乃の耳にキスをする。
綾乃「あ……(と、思わず反応してしまう)」
槍杉の指が綾乃のスカートをめくりあげて、ゆっくりと内股をなぞる。


46 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志、スクリーンを通してふたりの様子を悶々として見ていた。
久志「ったく、たまに目が覚めるとまたもやこんな展開だよ。いつのまにこんなヤリチン野郎と仲良くなったんだっていう話だよ。この先どうなるのかちょっと見たいような……いやいや、ムリムリ、見たくない!」
久志の体が次第に発光する。


47 綾乃の部屋

パソコンから飛び出た発光体(久志)がペットロボット犬の中に入る。
槍杉の指が綾乃のショーツに触れたその瞬間、ペットロボット犬が槍杉に襲いかかり、槍杉の股間にかみつく。
槍 杉「いててててててて」
槍杉、なんとかロボット犬をはねのけようとするが、ロボット犬はなかなか離れず、やっと力任せにはねのけた勢いで槍杉はベッドから転落してテーブルの角で股間を激しく強打する。
槍 杉「ぎゃーーーー僕のロドリゲスがーーー」
そのまま股間を押さえて部屋から逃げて行く槍杉のバッグから、未開封のバイブレータが落ちてベッドの下に転がる。
呆然とする綾乃の横に、ペットロボット犬が親しげに寄り添っている。


48 綾乃の部屋(夜)

Tシャツとショーツ姿の綾乃、モニターの前でゲームコントローラを握って真剣な表情で格闘ゲームをしている。
ステージをクリアした綾乃、写真立てを手に取って最後に残った一枚の写真を手に取ってしばらく見つめる。
次のステージがはじまる。
コントローラを激しく上下に振る綾乃の手。


49 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「(スクリーンの中の綾乃を見つめて)綾乃に一回だけ握って貰った事があったな〜」
久志の体が次第に発光する。


50 ホテル・客室・クローゼットの中(修学旅行の回想)

(王様ゲームで選ばれてクローゼットの中で三分過ごす事になって)薄暗闇の中で抱き合っている久志と綾乃。
クラスメイトの声「2分経過〜」
綾乃「……触ってみていい?」
久志「え?」
綾乃「(ジャージの中に手を入れて久志の男性器を握って)すごい……」
久志「今夜の綾乃はなんだか突然ダイタンって話?」
綾乃「(手を動かしながら)……なんか、みんなの体験バナシ聞いてたら、ヘンな気持ちになっちゃって……」
久志「……やばいって。そろそろ3分経つって話だよ」
クラスメイトの声「はい3分経過! そこまで!」
クローゼットの扉が開けられると同時にふたりはすばやく体を離すが、久志の男性器はジャージの上からもはっきりと判る程にそそり立ったまま。


51 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】(回想あけ)

久志「カラダが勝手に反応するよ〜」
久志の体が次第に発光する。


52 綾乃の部屋

パソコンから飛び出た発光体(久志)がコントローラの中に入る。


53 綾乃の部屋・コントローラの中【電脳空間】

やはり押入れの中のように狭い薄暗い空間。
久志「(「壁」に下半身を密着させて恍惚の表情で)そうそう、こんなだよ、こんな感じだったよ。綾乃に握って貰った時の感触…………ああ綾乃……」


54 綾乃の部屋

コントローラを見つめる綾乃の目がとろんとしている。


55 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「(横たわって激しくゼーゼーしながら)マジ限界が近いかもって話だよコレ……ホントに死にそう……」
久志の着ぐるみのほつれがますます増している。


56 大学・ラウンジ

望美「もったいないなー、槍杉さん凄いんだけどなー」
綾乃「望美、ひょっとして、槍杉さんとも……」
望美「あー槍杉さんとは5〜6回したかも。なんか思い出したらしたくなってきちゃったし」
綾乃「私はムリかも……望美みたいになるの……」
望美「ムリだと思うからムリなんだって……あれ今日は隼人見ないねー休みかなー」
綾乃「…………」


57 ハンバーガーショップ・店内

制服を着た綾乃がカウンターに立っている。
綾乃「いらっしゃいませ。あ、隼人……」
隼人「(綾乃を見る)」


58 公園

ベンチに綾乃と隼人が座っている。
綾乃はハンバーガーショップの制服姿のまま。
綾乃「いいなぁ……って、どういう意味?」
隼人「だって、久志がいる気がするんでしょ?」
綾乃「望美に言わせると単なる妄想なんだけどね……」
隼人「僕のトコにも来てくれないかなぁ。ねえ、もっと詳しく教えてよ、どういう時にどういう風に来るの?」
綾乃「えっ、そんなのムリ。教えられないよ……恥ずかしくって……」
隼人「……えっ、そういう話だったの?」
綾乃「(動揺して)違う違う。そんな話じゃないって、ヘンな想像しないで……」
隼人「(動揺して)ヘンな想像って、どんな……」
綾乃「(急に立ち上がって)わたし、そろそろ戻ろないと」
綾乃、駈け出して、何かに躓いて転びそうになりながら走り去って行く。
隼人、綾乃の後を追うが、同じ所で転びそうなる。


59 高校・放課後の教室(隼人の回想)

隼人が窓からグラウンドの方を見ている。
グラウンドの片隅で向かいあって話をしている様子の久志と綾乃の姿が見える。
やがて久志はひとりで校舎の方に戻って来る。
久志、息せき切って教室に入ってきて、
隼人「……どうだった?」
久志「(上気した顔で)オッケーだって」
隼人「(ほんの一瞬絶句して)……よかったね(と、作り笑い)」
久志「隼人、オレどうしよう? ……裏門で待ってるって……一緒に帰ろうって。オレ綾乃とナニ話していいか判んないって話だし……隼人も一緒に来てくれよ」
隼人「(目をふせて)綾乃とふたりだけの方がいいって」
久志「だって隼人、オレたち幼稚園の頃からずっと毎日」
隼人「(さえぎって)僕、ちょっと寄りたい所があるから、先に出るよ。じゃあまた、あした(と、走り出て行く)」


60 高校・グラウンド(夕)(隼人の回想の続き)

隼人、ひとりでどんどん走っていく。


61 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

片隅にうずくまって、死んだように眠っている久志。


62 綾乃のマンション(1ヵ月後)

隼人が走って来る。
マンションの前でしばらく立ち止まり、意を決した表情でマンションに入る。


63 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

綾乃と誰かが話す声がかすかに聞こえる。
久志が目を覚ます。


64 綾乃の部屋

隼人、思いつめたような表情で綾乃を見つめて、
隼人「……子供の頃からずっと久志を見て、久志の真似をして、久志みたいになりたいって思ってて……いくら写真を捨てたってココ(と、胸に手を置いて)にいる久志は一生消えるわけないし……」
綾乃「ねえ、ちょっと待って隼人。なんか今日の隼人って、隼人じゃないみたいで、なんか怖いよ」
隼人「(綾乃ににじり寄って)……でも綾乃が久志の事をどうしても忘れたいなら、僕は綾乃に会わない方がいいのかもしれないけど……でも綾乃の事も…………綾乃とも一生仲良くしていたいし……(と、綾乃肩を抱く)」
綾乃「え。ちょっと待って。急にそんな事言われても……」
隼人と綾乃、そのままベッドに倒れこんでいく。
隼人「どんな風にしたの、久志は……」
綾乃「え?」


65 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志、スクリーンを通してふたりの様子を悶々として見ていた。
久志「これホントにホントにどうすりゃいいのって話だよ。変なナル男やヤリチンに比べたら、そりゃ隼人の方が全然いいけど……この先どうなるのかちょっと見たいような見たくないような……ああ神様、どうすりゃいいの!」
久志の体が次第に発光する。


66 綾乃の部屋

隼人の唇が綾乃の唇に一瞬ためらいがちに触れる。
綾乃「(目を閉じたまま)……久志……」
隼人「…………(ハッとして綾乃から身体を離す)」
パソコンから飛び出た小さな発光体(久志)が隼人のそばでしばらく空中に停止して、部屋を一周して再びパソコンの中に戻る。
隼人、慌てて部屋を出ていく。


67 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

久志「ああ……オレはなんてココロが狭いオトコなんだって話だよ。綾乃と隼人の事を考えたら応援するべきなのに……」


68 駅への道(数日後)

強風。桜並木の梢が激しく揺れる。


69 綾乃の部屋(夜) 

綾乃「(テレビの天気予報を見ながら)今夜から明日にかけて大荒れ? 折角の二十一歳の誕生日なのに……」


70 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

片隅にうずくまって、死んだように眠っている久志。


71 綾乃の部屋(深夜) 

激しい雨と風が窓を叩く不気味な音。
ベッドで綾乃が眠っている。
綾乃「(激しい雷に反応して目を覚まして)きゃー」
ドーーン!と、耳をつんざく激しい落雷の音!
パソコンのモニターが消え、部屋が真っ暗になる。


72 綾乃の部屋・綾乃のパソコンの中【電脳空間】

強烈な白い光(落雷のエネルギー)が久志に迫って来る。
久志「(白い光を浴びて)わわわわわ……(と、巨大化しつつ壁の外に押し出されて行く)」


73 綾乃の部屋

綾乃のパソコンの中から白い光に包まれたと等身大の久志がゆっくり出てくる。久志の着ぐるみはあちこちが破れてボロボロになっている。

アロマキャンドルの神秘的な光。
綾乃「(大真面目に)やっぱりすっとそばにいてくれてたんだ。そんな気がしてたんだ」
久志「死んでも死にきれなかったって話なんだろうね、多分」
窓ガラスが割れんばかりの強風。
綾乃、久志に抱きつこうとするが、久志の体を素通りしてしまう。
綾乃「話はできても、ユーレイさんはユーレイさんなんだね……」
久志「ごめんな綾乃。約束守れずに死んじゃって……」
綾乃「ごめんね久志。私がもっと早く、セックスしたいって言えば良かったんだよ。……二十歳の誕生日に高級シティホテルなんて、子供の頃の少女マンガみたいな憧れだけで、ホントにどうでも良かったのに……」
久志「いや実はオレもちょっとそうだったんだよ。ガマンしてるオレ、なんか偉いって思ってたって話……だから綾乃がそんな風に思う事ないって(と、突然床に膝をつく)」
綾乃「(驚いて)久志! 大丈夫?」
久志「(震えながら)結構限界が近いかも……なにしろホントは死んでるんだし……ねえ綾乃、アレなに?(と、ベッドの下のバイブを指さす)」
綾乃「槍杉さんの忘れ物かな……」
久志「オレがアレに入れば、もしかして……」

ベッドの上の全裸の綾乃、手にしたバイブのスイッチを入れ、指と唇でバイブを愛撫する。
綾乃「(バイブに向かって)この中にいるの? 久志?」
バイブがうなずくかのように一瞬強く鳴動する。
バイブは綾乃の手を離れてひとりでに動き、綾乃の身体のあちこちを刺戟していく。
綾乃「……あ……」
バイブが綾乃の女性器を刺戟して、綾乃の中にゆっくりと入っていく。


74 バイブの中【電脳空間】

縦に立てた土管の中のような狭い薄暗い空間。
久志「この感触は凄すぎるって話でしょ! 全身を綾乃に包まれている感触!コレ(と、自らの勃起したモノに触れて)が入っている感触も確かにあるし! 凄すぎて死ねる!」


75 綾乃の部屋

綾乃「ああ……久志……久志が、いま、ココにいるよ……この光はなに? おひさまの光みたいにあったかい……」
ふたりは、実際に抱き合って、実際にセックスをしているかのような奇跡を共有する。
綾乃の絶頂に達すると同時にバイブから飛び出た発光体(久志)は天井を突き抜け、遙か天空へと上昇して行く。
目を閉じて眠っているような綾乃。
綾乃の目から一筋の涙がすーっと流れ落ちる。


76 大学・教室

老年の教授が教壇に立って講義をしている。
教授「すなわち、アガペーとは神の人間に対する無限の愛、無償の愛の愛の事であり……」
望美「……だから、それって夢の話でしょ?」
綾乃「私は久志が約束を果たしてくれたって信じてるの。一年遅れちゃったけど」
望美「隼人はまさか信じてないよね?」
隼人「もちろん信じてるよ。綾乃と久志の話だもん」
望美「(呆れて)ありゃりゃんりゃん」
教授「……エロス、すなわち肉体的な愛とは違い、アガペーは究極の愛と言えるです」


77 駅への道

真夏の陽光が燦々と照らす道。
隼人がゆっくりこちらに歩いて来る。


78 綾乃の部屋(別日)

カーテンの隙間から明るい陽射しが射し込むベッドの中で裸の綾乃と隼人が抱きあっている。
隼人「……ココ?」
綾乃「……もっと下」
久志の声「そうそう。ふたりともリラックスが大事って話だよ」
綾乃「ねえ、いま……」
隼人「うん、聞こえた。久志の声。リラックスしろって……」
深呼吸した綾乃の動きにあわせて、隼人が再び体を深く重ねて行く。
綾乃と隼人の行為がゆっくりと勢いを増す。


79 宇宙空間に浮かぶ地球の全景 

綾乃の声「ああっ!」
綾乃の絶頂と同時に地球上の一点が光り輝くと、それに呼応するかのように様々な場所から絶頂の声がこだまして、地球上の様々な場所が純白の「愛の光」で光り輝き、その光が地球を覆って行く。


80 どこかの戦場

少年兵が小銃を構えている。
ライフルの照準の中央に小銃を持つ敵兵。
少年兵が引き金をひこうとした瞬間、「愛の光」がその戦場全体を包み、少年兵は引き金をひくのをやめてライフルを置く。
敵兵もライフルを置く。


81 地球の傍らの宇宙空間

「愛の神」になった久志(スターチャイルド風)が微笑んで地球を見つめている。
                        
【了】

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■おきらく★ドラクエウォーク日記★おさんぽ
●2024.10.29(火)
○16章が公開されたが15章の最後をクリアしてないので進めない。ネットで色々調べて装備やこころを換装して挑むのがどうにも面倒に感じられ、5年やってキリもいいのでやめてしまおうと思ったが、よく考えたら、これまでもストーリーもイベントも会話はスキップして何が起きているか理解せずに続けていたので、ボスや強敵は無視して、散歩のおともとしてのお気楽育成ゲームとして続ける事にする。
○装備やこころは原則いじらない(おすすめをそのまま採用、心珠のみ武器に合わせる)
○戦闘は全てオート、オートで勝てない敵には原則挑まない。
○ひたすらのんびりただただ基本セットを育成する。
○基本セットの現在のレベル…ゴドハン66/守り人70/大神官70/大魔道士71
●2024.10.30(水)
○メタルキングの大剣、ジェム3000の5回目で出る。
○超久々の麻雀、1回だけのつもりが延々約1時間やってしまう。僕の視力ではスマホの画面では牌を判読するのが大変。
●2024.10.31(木)
○女神セレシアのつるぎ、ジェム3000の1回目で出た! メタキン大剣とセレシアでジェム12万消費を覚悟していたけど1.8万で済んだ(まだ約19万残ってる)

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■1984年日記
●1984.10.29(月)
○銀行でお金をおろしてヨーカードーで買物。インスタント中心に約3000円。
○7·8映画表現論。イタリア映画について。「特別な一日」を観ること。
○SWゲーム3回、いずれも4面でゲームオーバー。
○深夜、入れっぱなしに気付いて行ってみたらコインランドリーは閉まっていた。
●1984.10.30(火)
○10:30過ぎS浦より架電。麻雀、映画のこと。午後「ポリス・アカデミー」。
○22:00過ぎ3人来る。半荘3回。7:00頃まで。
●1984.10.31(水)
○昼間は殆ど寝て過ごす。
○19:30頃「かつ友」でショーガ焼定食。
○EP2枚LP1枚レンタル。部屋の掃除。ダビング。
●1984.11.01(木)
○11:00U野がいきなり来て起こされる。30分程で帰る。4日デート(?)とのこと。
○ベーコンエッグ、パスコ、ティー。
○レコードを聴いて、ビデオを見て、タバコを吸って、雑誌の頁をめくって、1日が過ぎる
○18:00頃ロッテリアでチキンセット。STARLOG12月号。
○家庭教師のバイト。
○今日から新札。ガンジー首相死す。
○日米決戦、オリオールズ4勝1敗。衣笠が悪すぎる。
●1984.11.02(金)
○「最前線物語(THE BIG RED ONE)」「サイコ」見る。レコードダビング。
○12:30頃浦野から架電、昼過ぎに来ると言っていたが……(寝ていて気づかなかった?)
●1984.11.03(土)
○「ニューヨーク1997」見る。スネーク・プリストン/カート・ラッセル。
○オリコンのぶんかパーティに参加。自分もそうだが、やはり、外見は「暗そう」なのが多い。
るなちっく・うえる、とか。石川誠壱が来ていた。近所の公園〜シェーキーズ〜早稲田祭→渡辺千秋、高橋美枝。約30分にっかつに寄って21:00頃帰宅。
●1984.11.05(月)
○にっかつ早番後、「ヴァージンなんか怖くない」「イヴちゃんの姫」。鎌田みゆきはたしか昭和40年生まれ。歌はヒドいけど普通の声はけっこうかわいい。芝居もまあまあ。
●1984.11.06(火)
○「デラックス・トーク」読む。やはり小林信彦は読み易い。「名探偵ホームズ」放送開始。
●1984.11.07(水)
U野、S浦、M浦、F田と3Bで軽く1杯(チューハイ1杯だけ)、修学旅行の話、女の子の話、学園闘争の話。
●1984.11.08(木)
○1·2英1。にっかつ早番。
●1984.11.09(金)
○12:30〜21:00にっかつ。
○SOUND BOXで「音楽図鑑」レンタル。
●1984.11.10(土)
○14:30過ぎ起床。日米野球見る。
○18:00 両親と食事。日本酒2合程でけっこう酔う。
※オリオールズは1983年ワールドシリーズ優勝
●1984.11.11(日)
○S浦と聖徳園祭。池袋→(20分)→秋葉原→(10分)→新小岩。
○ビデオにて竜二ほか、金子正次は髙橋似

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■2024年日記
●2024.10.28(月)くもり
○昼食はうどん+たまご、昨日のおかずの残り、あんぱん。うどんを昨日届いた金属製のなべで茹でてみる。いままで使っていた土鍋より若干多くて大分深めなので食べ慣れないがしばらく使ってみよう。初回に気になったIHの変な匂いは今回は普通の距離なら気にならない(すぐそばまで鼻を近づけると臭う)。
○夕食は居酒屋「大樽」。窓際の席で道行く人を観察しつつ。サッポロ黒ラベル大瓶、レモンサワー3杯。ホッケはイメージするホッケの1/3の大きさだが味は悪くない。
○数年前に将来の柱と期待してい3投手(井上、直江、横川)、井上は今季ブレイク、横川はブレイクの兆し、直江は戦力外通告。
●2024.10.29(火)雨
○「男の星座」第6巻。地元のヤクザとのトラブルとヤクザの情婦にホレられる話は眉唾な感じ。ヤクザが本気で落とし前をつけようと思ったら店を狙って大人数でいろいろ仕掛けてくるのでは。もちろん創作であっても面白ければ別に良いのだが、情婦が台詞で説明するホレた理由はなんだかしっくりこない。
○夕食はごはん2個、缶詰、味噌汁、さつまいも煮、焼酎お湯割り。
○ジェシーを「じぇーしー」と読むのは関西弁では普通なのか?(さんまの発音)。
○横浜DeNA東好投、ソフトバンクの日本シリーズ連勝は14でストップ。初球の真ん中付近の球をスイングを「初球 “から” 振っていきました」と実況するのはそろそろやめた方がいいと思う。打てそうな球をスイングするのは打者として当たり前の仕事。
●2024.10.30(水)雨/はれ
○昼食はたまごうどん、冷奴。金属の鍋はどうも慣れそうにない。土鍋に移す方がまだマシか?
○WOWOWセゾンカードを解約(使用せずに維持なら来年1月から手数料発生)。
○夕食は肉野菜カレー炒め、納豆、キムチ、白菜ベーコンスープ、ごはん1.5杯、金麦、焼酎お湯割り。
●2024.10.31(木)はれ
○昼食は納豆卵ごはん。
○EVERLASTINGMOMENT VOL.8発行。
○15:30過ぎ外出。ガーデンプレイス、TSUTAYA、ピーコック。ガーデンプレイスに仮装している人がふたり。他にも空いているベンチがいくつもあるのに僕が座っているベンチに貧相なジジイが座ってくる。これも一種のトナラーか。
○夕食はカルビ弁当、納豆2個(期限切れ)、キムチ、オクラサラダ、金麦350、スイートポテト。
○神保町シアターのサイト、本日の上映予定ページにたどり着けない。誰もが一番知りたい情報だと思うのだが、どういう設計なのだろう。
○伊東輝悦50歳今季で現役引退。
○ワールドシリーズ第5戦、0-5から逆転でドジャース4勝1敗で優勝(4年ぶり8回目)。ヤンキースの先発コール、4回まで0安打も5回表エラー2個などで2死満塁、緩い1塁ゴロでベースカバーを怠って一挙5失点。野球の怖さ。5点差逆転はWS史上初。MVPフリーマン。最後に投げたビューラーはプロ初セーブ。
○最強打者②で①②③を原則固定する打順が好き。その意味では横浜DeNAの打線はNPBの中では一番マシではあるが、日本シリーズに入って毎試合変えすぎ。1年間の活躍を考えて牧と心中するなら②牧を貫くべきだし、直近の調子が良い打者を上位に置くならオースティンは②or③。①桑原②牧③オースティンで良い。④以降は調子の良い選手、投手との相性などで日替わりでOK。
○渋谷ハロウィンを過剰規制する当局の思想の深い源流には学生運動の記憶があるのではないかと想像する。若者が大勢集まって自由気儘に振る舞う状況を発生されたくない、渋谷ハロウィンのように自然発生してしまうなら管理下に置く訓練をしておきたい、という……。渋谷全域を車両侵入禁止にしてなんでも有りにしてそこらじゅうで飲食できるようにすれば莫大な経済効果があると思うのだが。
●2024.11.01(金)くもり/雨
○ミニ財布のカード類を先日買った茶色に移す。多少膨れるが全部ひとつにまとまっている方が多分使いやすい。
○17:30過ぎ、てぶらで近所散歩、ピーコック。雨予報なのでガーデンプレイスまで登らずカルピスの横の道。帰路かすかな小雨。
○夕食はローストビーフ、エビ・ホタテ・野菜(グリル)、キッシュ、かぼちゃスープ、ガーリックライス、ワイン。(誕生日ディナー)。
○東京暮色(1957=小津安二郎)140分 U-NEXT
深刻なシーンに呑気な音楽(メインテーマ)が流れるシーン多数(対位法)、「秋日和」で杉村春子が泣くシーンと同じ音楽に聞こえる。山田五十鈴が室蘭に旅立つ上野駅のシーンで明治大学の応援歌延々。最後に登場する家政婦の名前はやっぱり富沢さん。
●2024.11.02(土)雨
○夕食は鶏肉ゴーヤチャンプルーほか他1品、納豆、キムチ、味噌汁、ごはん1.5杯、焼酎お湯割り。
○Match Factory! これまでは再インストールすると直前履歴だったのが仕様が変わったのか最初からやり直し。ちょっとだけのつもりが約90分。以前は苦労した所が砂時計たくさんあるからかノーミスでクリアできるのが気持ち良い。100までノーミス。G300以上。
○雨に殺せば(2003=黒川博行)創元推理文庫 305頁 ※1985文藝春秋
大阪府警シリーズ第2段。1作目に比べると全体的にパワーアップ。1作目ではあまり性格の違いが明確でなかった主役コンビ、マメちゃんがボケ(二宮化)で黒さんがツッコミになってきて、ふたりの会話の面白さが増してきた。別の作品にも登場する碧水画廊が絡む美術品売買の暗部、拘束・両建・浮貸など銀行の暗部の詳細な描写。ラストの種明かしは自殺するつもりの犯人が自ら電話してくる1作目よりが相当マシだが、マメちゃんがつきつけた〈証拠〉に対してあくまで朝野がしらをきっていたら、と思えてしまう。あくまでとぼけるつもりならそもそも朝野は任意でさえないのに犯行現場に行かない、あの場所に行った時点で朝野の覚悟は自殺するか逮捕されるかのどちらかを決まっていたという事なのだろうか。1作目では妻と娘がいた黒さんが独身設定になっていてマルチバース!?と思ったら一応別人設定だった(1作目黒木、本作は黒田)。
●2024.11.03(日)はれ
○昼食はスパゲティカルボナーラ。
○全日本大学駅伝、立教7位シード権獲得。国学院出雲に続いて優勝。
○札幌の失点シーン、この期に及んで数的不利に見えた。
○17:00過ぎ 代官山〜恵比寿西〜恵比寿駅方面散歩。ピーコック。歩き始めは涼しさを感じるが30分も歩くと汗だく。半袖短パンでも良かったかも。
○夕食はフライドポテト、鶏皮揚げ、照り焼きチキン、味噌ナス、寿司、金麦350各自、日本酒。
○横浜DeNA11-2ソフトバンク。横浜はセリーグ3位から下剋上日本一。98年以来26年ぶり3回目の日本一。セリーグのチームの日本シリーズ連覇は00年ジャイアンツ01年スワローズ02年ジャイアンツ以来。リーグ3位からの下剋上日本一は10年ロッテ以来史上2回目。10年ロッテは貯金7、今回の横浜は貯金2、いまのシステムなら勝率5割以下のチ−ムが日本一になる可能性もある。ポストシーズンを続けるならチーム数を増やすべき。4地区16球団が理想。
●2024.11.04(月)はれ
○ゆでたまごを作ろうとして握って割ってしまい、捨てるのは忍びないのでカップに垂らしてレンチン。ラップするのを怠って何度かポンと爆発音。レンジ内に飛び散った破片を取る手間はラップかける手間の数倍。
○夕食は山手通りのステーキ店「ギューギュー MASA」。ハラミステーキ、サラダ、ガーリックライス、生ビール。空腹を感じていた筈なのに途中で満腹感。
○「MASA」で指摘された右顎の腫れ、鏡で見てみるとたしかに垂れている。いままで洗面所で鏡を見ていて気づかなかったのか、夕方以降急速に進んだのか。顔全体がたるんでいるのでよく見ないと気づかないのかも。
○「東京物語」と小津安二郎(2013=梶村啓二)平凡社新書 205頁
言われてみればそうかもしれないと思える深い解釈あれこれ。「〜かもしれない」「〜ではないだろうか」という表現を使わずに全て言い切ってくれたらもっと良かった。いずれ映画はどう解釈しようと自由だし、個人が書いた文章は言い切った所で個人の考えなのだから。
P82〜83「原節子と香川京子の衣装がまったくと言っていいほど同じ」「クローンのように相似形」「完全な鏡像」はちょっと首肯し難い。ブラウスは原節子は色付きで香川京子は白で襟の形・ボタンの色・袖の長さも違う。特に胸元のデザインが全然違う。スカートは丈の長さは同じくらいだが色はあきらかに違う(香川京子は黒に見える)。原節子は裸足、香川京子は靴下をはいている。髪型は原節子は左から右に流していて、香川京子はセンター分け。向かい合って話している横向きの全身ショットが〈一見鏡像のように見えるほど似ている〉と言いたかったかもしれないが、だとしても「鏡像」「クローン」は大袈裟すぎる。この後のバストショットを見れば、原節子の色付きのブラウスの大きく開いた胸元、香川京子の白いブラウスの一番上まで留めたボタンは、ふたりの成熟性の違いを充分表現している。〈おでこを出した髪型・無地のシャツ・無地のスカート〉でクローンのように相似形なら、この時代の小津安二郎作品に登場する若い女性はほぼ全員該当するのでは?
○籠の中の乙女(2009=ヨルゴス・ランティモス)96分 U-NEXT
初見。怪作。きょうだい3人(女2男1)がずっと閉じ込められて生きている(らしい)理由は最後まで説明されない。「女王陛下のお気に入り」にもあった女性が女性を舌で愛撫するくだり監督の生涯モチーフ? U-NEXT配信版はいまどきありえない程の広範囲なぼかし。ネットに転がっている完全版を見てみると丸出しだが、いまの時代にこれが映っていたところでどうという事はない。
●2024.11.05(火)くもり
○夕食は焼鳥缶詰、キムチ、インスタント味噌汁、ごはん2個。
○Match Factory! 青い鍵を触ったつもりが他に触れた判定でバー満杯で100G、まだ時間はあると思っていたのが時間切れで200G、もひとつは何か忘れたが300G、あっという間に1ゲームで600G失う。通常4〜5個展開している左側のイベントは、×10を維持し続けているせいか、ずっと2個しかやってない。×10を維持をしようとしても、結局500を超えたあたりであの手この手で課金に誘導すアルゴリズムなのだろう。
○葵ちゃんはやらせてくれない(2021=いまおかしんじ)98分 U-NEXT
ヒロインとセックスできるのか? で引っ張っていく展開かと思いきや、最初の方であっさり脱いでほぼ目的は果たしてしまう。基本的に大好きな話だが自殺したという設定はちょっとひっかかる。自殺という形で人生から退場しておきながらやり残していた妄執で蘇ってくるのはどうなのか。自殺しようと思って準備する→あおいちゃんと1回でもセックスしたかったという妄執で踏みとどまろうとするが何かのアクシデントで自殺に見える形で死んでしまう、という真相が明らかになるのかと思って見ていたがそうはならず。蘇った時点でもまだまだ若いのに、大学時代に戻ってセックスする必然性も何か欲しかった。ヒロイン小槙まこはなかなかattractive、しっかり乳首を舐められる絡み。
●2024.11.06(水)くもり
○Match Factory! 一気に15やって200Gゲット。夕方同じ事をやろうとすると途中にとてつもなく難しい回出現、同じ回をX10を手放しててぶらで何度かやると見るからに簡単な回が出た。いずれ無課金ではクリアできないようなアルゴリズムになっているのは間違いない。対戦相手も実在の人間ではない可能性もある
○夕食はグリルチキン、ナスの煮浸し、納豆、キムチ、味噌汁、ごはん1.5杯、焼酎お湯割り。
○ブラタモリ見たらオザケンを聴きたくなってYouTubeで2曲。
○夜中肌寒さを感じて薄手の長袖Tシャツをトレーナーに替える。
○MacBook Airのキーボードの挙動不審、SMBCリセットで改善したようだ。
○トランプ圧勝。
●2024.11.07(木)はれ
○島耕作以外に読みたい作品がないのでDモーニング解約(月額500円、12/4まで継続)。
Kindle Unlimited月額980円でも映像配信系に比べれば若干割高感あり、雑誌単品で500円でいかにも高い。各社横断して作品を個別に選べるサブスクの登場をずっと以前から期待しているが、大手出版社が一度廃業して再編されない限り難しいだろう。
○昨年2月からほぼ毎日読み続けてきた柳沢きみお作品(翔んだカップル以降)、kindle unlimitedにあるのは只野仁以外はほぼ読み尽くしたようだ。ドラマを見ていた只野仁は設定・展開を知っているのであまり魅かれない。過去にもあった同じうような話かと思いきや、どんどん脱線して唐突に終わる、という柳沢きみおワールドにすっかり取り憑かれているので、基本設定から多分脱線しないと思える只野仁はついどんどん読んでしまうという事態にならない(それとも原作は脱線するのだろうか?)。
○弘兼憲史「黄昏流星群」連載開始の頃の30代の僕は「ジジイとババアの恋愛やセックスの話なんて……」と思っていたが、自分が作中人物より年上になったいま読むと普通に染みる(第1巻)。全巻読みたいがkindle unlimitedにあるのは1巻だけ。
○15:30前外出。小学校の返却ポストで3冊返却。西ピーコックのダイソー。タコ公園周辺散策。赤い壁のBAR発見できなくて同じ道を再び。マックの奥の壁席が空いているようにも見えたがなんとなくスルーして出てきてしまう。ちょっと前までは半袖短パンだったのに、今日は厚手半袖Tシャツにパーカーでも寒い、風が冷たい。
○夕食はインスタントラーメン+たまご、コロッケ。
●2024.11.08(金)はれ
○ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985=黒沢清)amazon、小津映画の例の音楽が使われている(37分頃、アレンジは違う)。今までに何度も見ていて去年も流し見したのに今回初めて気付いた。直後にエキストラ出演した僕と思える人物が映っているシーン(初台ロケ)。
○夕食はサーモンソテー、ブロッコリー、ハム、納豆、キムチ、味噌汁、ごはん1.5杯、焼酎お湯割り。Qさま世界遺産。
●2024.11.09(土)
○「てるのりのワルノリ」流行語大賞の話。吉田照美はびっくりする程に候補に入っている言葉を知らない。70代の一般男性なら興味がない事に関しては知ったこっちゃないで全然OKだが、生放送番組のメインを張るラジオパーソナリティーとしてはどうなのか。ネットニュース、スポーツ新聞、雑誌の特集記事にざっと目を通しておけば殆どの言葉は一度は目にする筈。どんな話題に関してもある程度しったかぶりができる程度の知識は常に補充しておくのは仕事のうちだと思う。
○①テレビの電源を入れる②fireTVstickが接続されている外部入力が選択されていなければ外部入力をボタンを押す③fireTVstickを立ち上げる④十字ボタンを何度か押してDAZNを選択⑤十字ボタンを何度か押してJリーグ札幌の試合を選択。見たいコンテンツを画面に映すまでに多ければ10回以上手指を使う必要がある。地上波でやっていてくれれば①電源ボタン②チャンネルボタンの2回で済んだ操作が配信なら数倍。せめて③fireTVstick立ち上げた瞬間に札幌戦を映してくれるようになって欲しい。難しいアルゴリズムを組まなくても僕の普段の視聴傾向を分析すれば札幌戦(次候補として清水戦)を提案する事は充分可能は筈。
○無線のリモコンが登場してチャンネルが登録できるできるようになった時に「以前は本体のチャンネルを回してしたテレビはずいぶん便利になった」と思った。リモコンの種類・設定によってはチェンネルボタンを1個押すだけでテレビの電源ONで選択したチェンネルが映った。配信でたくさんのコンテンツを見る事ができるようになったが映す前の操作に関しては便利さが後退している。理想はスマートグラスなどのデバイスと脳波・意識が連結して「考えただけで電源ON見たいコンテンツ表示」だが、それはすぐには無理にしても、せめて上記の学習して自動表示は実装して欲しい。
○宇能鴻一郎の濡れて悶える(1979=西村昭五郎)65分 U-NEXT
オープニングのコミカルな音楽良い。処女のインターン・原悦子が医学の勉強の為にいろいろ体験する話。テニスに役立つ腰の力を鍛える為にいろいろ体験する話に換えれば「濡れて打つ」の基本設定になるんです。
●2024.11.10(日)はれ
○夕食は水炊き(たら、肉団子、豆腐、ネギ、白菜)、レバー、ウニホタテ、いんげん、ごはん2.5杯、日本酒、金麦350。ごはん食べ過ぎでお腹痛くなる。
○海に眠るダイヤモンド(TBS日曜21:00)第1話
池田エライザが街角でアカペラで歌いだして群衆が息を呑んで聴き入るシーンをそう判断するべきか。階段のかなり上の方にいるので現実にはノーマイクでは殆ど声は届かない。池田エライザの歌い方も屋外ではるか遠くまで届くような歌い方には全く聴こえないリアリズムよりはファンタジー寄りのドラマであると宣言していると解釈するべきか? 数年前の朝ドラの頃はまだまだいけそうに見えた神木隆之介の若者設定、顔に肉がついてきてキツくなりつつある。少し前の山崎邦正のみたいな顔になってきた。逆に土屋太鳳は顔が細くなって大人の女性の顔になった。
○大相撲11月場所初日、土俵と控え力士や審判との間隔が更に広がり、花道の辺りの空間も広くなったように見える。以前から思っている事だが、力士が客席に勢いよく転がり落ちてぶつかれば場合によっては大怪我に繋がる。頭部に当たればする可能性もゼロとは言えない。大型力士が増えた事による転ばぬ先の杖だろう。
○ルックバック(2024=押山清高)58分 amazon
モノ作りに携わる人・挑戦している人・挑戦した事がある人には刺さる作品。読みたいと強く言ってくれる人がたったひとりでもいる事がどれくらい支えになるか。想像で補えそうな部分を止め絵のモンタージュでどんどん飛ばせば58分でも充分ドラマは語れる。

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