EVER LASTING MOMENT VOL.10

2024年11月29日発行

■EVER LASTING MOMENT VOL.10
○昭和の薫り漂うWEBマガジン
○推奨年齢50歳以上
○無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
○小説/散文/妄想/企画 或れ此れ其れ何れなんでも有り
○誤字脱字間違い辻褄合わず各自適宜補完にてよろしく哀愁

いずれ一夜の夢ならば
呑んで謡って ホイのホイのホイ
今宵とことん ホンダラッタホイホイ

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■映画/ドラマ/スポーツなど
●2024年
○おむすび(朝ドラ)橋本環奈
○光る君へ(大河ドラマ)吉高由里子
○それぞれの孤独のグルメ(テレビ東京)
○極悪女王(Netflix)※全5話
○地面師たち(Netflix)※全7話
○機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(Netflix)全6話 ※1年戦争
○ハウス・オブ・ザ・ドラゴン2(U-NEXT)※全8話
○ザ・ホワイトハウス(U-NEXT)※全7シーズン
○STAR WARS アコライト(Disney+)※全8話
○No Activity(Amazon)※全6話
○10/04金 シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024=アレックス・ガーランド)109分
○10/11金 ジョーカー フォリ・ア・ドゥ(2024=トッド・フィリップス)138分
○11/01金 ヴェノム ザ・ラストダンス(2024=ケリー・マーセル)109分
○11/01金 ノーヴィス(2021=ローレン・ハダウェイ)97分
○11/08金 本心(2024=石井裕也)122分
○11/15金 グラディエーターII 英雄を呼ぶ声(2024=リドリー・スコット)148分
○11/15金 ノーウェア(1997=グレッグ・アラキ)83分
○11/22金 海の沈黙(2024=若松節朗)112分
○11/22金 ドリーム・シナリオ(2023=クリストファー・ボルグリ)101分
○11/29金 正体(2024=藤井道人)120分
○11/29金 痴人の愛(2024=井土紀州)104分
○10/12土~11/01金 小説家・山崎豊子 華麗なる映画たち(神保町)
○10/19土〜11/08金 安西郷子生誕90年&新東宝特集(ヴェーラ)
○10/05土〜02/11火 モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)
○11/02土〜11/04月 ブラタモリ(三夜連続放送)
○11/10日〜11/24日 大相撲11月場所
○11/13水〜 プレミア12
●2025年
○01/01水 ローズパレード ※京都橘3回目の出場
○1月 べらぼう(大河ドラマ)横浜流星
○01/10金 劇場版 孤独のグルメ(2025=松重豊)
○02/14金 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド
○02/14金 Jリーグ開幕(現行春秋制最終シーズン)
○コブラ会 最終シーズンPART3(Netflix)※24年7月PART1/24年11月PART2
○03/18火 MLB開幕戦ドジャースvsカブスat東京ドーム
○4月 あんぱん(朝ドラ)今田美桜
○04/13日 大阪・関西万博開幕
◯6月 サッカークラブW杯(新方式、32チーム)
○09/13土〜09/21日 世界陸上(東京)
○10月 ばけばけ(朝ドラ)髙石あかり
○11/06木 ストレンジャー・シングス 未知の世界最終シーズン(Netflix)
●2026年
○1月 豊臣兄弟!(大河ドラマ)仲野太賀
◯02/06金 ミラノ・コルティナ五輪
○3月 第6回WBC
○05/22金 STAR WARS新作公開?
◯06/11木 サッカーW杯アメリカ/カナダ/メキシコ大会
○8月 Jリーグ開幕(秋春制第1シーズン)
○12/18金 STAR WARS新作公開?
●2027年
○世界陸上(北京)
○バスケW杯
○ラグビーW杯オーストラリア ※20→24に増加?
○12/17金 STAR WARS新作
●2028年
○EURO2028イギリス/アイルランド
○07/14金〜07/30日 ロサンゼルス五輪
●2029年
○世界陸上(バーミンガム?)
●2030年
○サッカーW杯モロッコ/ポルトガル/スペイン大会(100周年記念大会)
●2031年
○世界陸上
●2032年
○EURO2032イタリア/トルコ
○07/23金〜08/08日 ブリスベン五輪

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■U-NEXT見放題(R18)VOL.10
※自然に感じられる画を重視してチェック(顔面テカリ否定派)
※撮る角度/照明/髪型・メイク・衣装でどれだけ女優の魅力を引き出しているか?

●シロウトナンパ ヒナ20才 アニメ声の癒やし系美少女(2013年11月)74分
○おしゃれな大学生風、角度によっては結構かわいい、こぶりできれいなバスト
○パパ活設定、男優顔モザ、女性監督
○男優の妙に芝居がかった話し方(演出? 売れない役者?)
○会話をするカフェは暗めで良い(これくらい暗い方が七難隠す)
○フェラ顔まずまず(51分頃)

●新・絶対的美少女、お貸しします 117(2023年11月)131分
○アイドル風、声がかわいい、大きなバスト
○丁寧なフェラ、生活感ある画は悪くないが照明が明るすぎ(27分頃)
○固定の69、生活感&盗撮感(30分頃)
○固定の女性上位、カップル感ある密着度、鏡はほぼ無意味(40分頃)

●白石(24)(2023年11月)61分
○戸田恵梨香的アイドルフェイス、歯並び悪い、微乳、スレンダー
○オイルマッサージ体験設定(前半)
○開脚パンツ食い込ませ、鼠径部のしわが妙にエロい(28分頃)
○バックのPOVアングルまあまあ(47分頃)
○サムネイルはモザイク薄め(50分頃)
○男優は不気味な黒覆面

●並美(26)素人ホイホイ(2023年11月)122分
○角度によっては美人ハーフタレント風、日焼けしたように見える肌
○立ちフェラPOV撮る角度まずまず、その後の固定アオリも悪くない(73分頃)

●美樹(24)素人ホイホイ(2023年11月)87分
○角度によっては清純派女優風、横顔がなかなか魅力的に見える(18分頃)
○途中の手持ちから照明当てすぎ(肌がてかる)
○着衣のままソファによつんばいでバイブ攻め(32分頃)

●ネットでAV応募1620(2021年8月)64分
○アナウンサー風、角度によっては結構かわいい、高畑充と誰かを足して2で割ったような雰囲気、スレンダー
○インテリアの雰囲気が良いホテル風の部屋、照明がいい感じ
○バックのPOV(53分頃)
○最後まで白い小さな靴下だけ脱がない

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■島耕作メモ

島耕作プロフィール
生年月日 1947(昭和22)09.09(乙女座/B型)
出身地 山口県岩国市
出身校 私立鷹水学園高校
出身校 早稲田大学法学部(1970年卒業)
資格 普通自動車免許
資格 実用英語技能検定1級
身長 177㎝
父親はサラリーマン
母親は呉服商
ひとりっ子
大学時代ESS
好きな食べ物 サラミ 
好きな食べ物 トリュフ
好きな食べ物 オリーブオイル
嫌いな食べ物 酸っぱいもの
ワインに詳しい
バリ島が好き
77年結婚、89年離婚(怜子)
12年再婚(島耕作65歳、大町久美子45歳)
長女 奈美(79年誕生)
孫 耕太郎(03年誕生)
*出典「島耕作クロニクル 連載30周年記念エディション」

島耕作職歴
1970年4月 初芝電器産業株式会社入社
1970年11月 本社営業本部 販売助成部屋外広告課
1971年11月 本社営業本部 販売助成部制作課
1976年1月 本社営業本部 販売助成部制作課主任
1980年3月 本社営業本部 販売助成部制作課係長
1983年5月 本社営業本部 販売助成部宣伝課課長 *課長島耕作①
1985年1月 ハツシバアメリカ NY支社宣伝部 *課長島耕作①②
1986年1月 本社営業本部 販売助成部宣伝課課長 *課長島耕作③④
1987年5月 電熱器事業部 営業部宣伝助成課課長(京都)*課長島耕作④  
1988年5月 本社営業本部 販売助成部ショウルーム課課長
1990年5月 フィリピンハツシバ マーケティングアドバイザー
1990年11月 本社営業本部販売助成部総合宣伝課課長
1992年2月 本社総合宣伝部部長
1999年1月 初芝電産貿易株式会社代表取締役専務(出向)
1999年9月 サンライトレコード株式会社代表取締役専務(出向)
2001年4月 本社市場調査室
2001年5月 福岡初芝販売センター代表取締役専務(出向)
2001年10月 福岡初芝販売センター代表取締役社長(出向)
2002年2月 本社取締役九州地区担当役員
2002年6月 本社取締役上海地区担当役員上海初芝電産董事長
2005年2月 本社常務取締役中国担当役員
2006年11月 本社専務取締役
2008年5月 初芝五洋ホールディングス株式会社代表取締役社長
2013年7月 TECOT代表取締役会長
2019年8月 TECOT相談役
2022年1月 TECOT相談役退任
2022年3月 株式会社島耕作事務所設立 UEMATSU塗装工業社外取締役
※2010年1月社名変更(初芝五洋ホールディングス→TECOT)
*出典Wikipedia

●課長031
◯樫村に告白される
・大泉と膝詰め談判(樫村が大泉に島と典子の噂を伝える)
・どうして俺はあんな卑屈になっていたんだろう→屋台でやけ酒
・大学時代の想い出(優秀な樫村、そうでもない島)
 島と樫村は国旗を掲げるヘンな学生寮に住んでいた
 ※村上春樹「ノルウェイの森」の学生寮と類似
・樫村に大泉派に入るように説得される(いつまでもゼンキョウトウ背負って生きるなよ)
・樫村に「昔からおまえが好きだった」と告白される
・京都の工場への転勤辞令(樫村は本社企画部室長代理に昇進)
*本社営業本部販売助成部宣伝課課長
*モーニング87年16号掲載
*課長 島耕作 第4巻(1987)

●課長032
◯京都に赴任(初の地方勤務、全く違う仕事)
・春に京都に単身赴任(行く前に妻と話し合い)
・雨に日に着物の女性と知り合う(「すず鴨」のママ)
・田中哲夫(哲ちゃん、同期入社、販売促進課係長)
・パン焼き器のパン「あまりおいしくない」
・ミツワ企画の三輪(デザイン会社、初芝脱サラ)カラオケで土下座
・哲ちゃんと屋台で反省会(本社にはない仕事の厳しさがこっちにはある)
*電熱器事業部 営業部宣伝助成課課長(京都)
*モーニング87年23号掲載
*課長 島耕作 第4巻(1987)

●課長033
◯蔵重俊一事業部長とお茶屋に行く(接待の下見)
・女子社員の態度が冷たい、原因はパン焼き器のパンの感想
・パンの良し悪しが判るまで毎日昼食にパンを食べる
・祇園甲部のお茶屋「西紋」
 舞妓・立方の芸妓・地方の芸妓(計3名)と仕出しの料理、
 約2時間の料金は銀座の超一流クラブと大差ない(20〜30万?)
・雨宿りした店で先日の女性と再会(怒らせた女子社員・鈴鴨の姉)
*電熱器事業部 営業部宣伝助成課課長(京都)
*モーニング87年24号掲載
*課長 島耕作 第4巻(1987)

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■ダンス・ダンス・ダンス(2004=村上春樹)講談社文庫新装版 ※1988講談社

★発売当時に買った単行本、文庫旧版、文庫新装版と3回は読んでいる筈なのに、覚えているのは「札幌のホテルがどこか変な場所につながっいる?」「前作(羊をめぐる冒険)の続編」程度。以前は覚えていた筈の事をここ10〜20年で忘れてしまっていたようだ。その後に読んだ他の作品とごちゃごちゃになっていた部分もあると思う。

★1冊の本だけを繰り返して読むだけなら読んだ事がある本に関する記憶は混乱しないし、ひとりの作家につき1作品なら混乱の度合いは少ないと想像するが、そんな読み方をする本好きは(本好きでなくても?)たぶん皆無。たくさん書いている作家は似ている部分、同じような事を表現を変えて書いている部分がたくさんあり、読んだ作品数に比例して記憶は混乱する。

★初読の1988年23歳社会人1年目と今回の2024年59歳では状況がすっかり変わってしまった。社会人経験半年で学生気分が抜けていない初読時は、文体や使われている言葉の新しさに酔っていた。いまの僕達の為の新しい小説だと感じていた。いま読み返すと当時新さを感じていた部分が鼻につく。トレンディー。もし僕がユキの父親なら、いや僕が誰であっても、こんな話し方をする34歳独身男は信用できないし友達になりたいと思えない。そもそも現実世界の現実の会話に聴こえない。ほとんど父親と口も聞かないユキはどういう経緯で主人公の事を父親に話す事になったのだろう。もっと言えば一緒に行動する発端、ホテルのスタッフが赤の他人に世話を頼むというのがいまなら勿論、1988年当時でもそんな事はありえなさそう。全編ファンタジーとして読むべき小説なのかもしれない。

★上巻P122〜127の土地開発の話。
取材はしていないのか、取材をした上であえてこういう描写なのか判らないが、黒川博行「悪果」の土地開発に関する話の描写とは全然違う。黒川博行「悪果」の土地の話は、間違いなく取材に基づいて書かれていると思える、人と金と法律が絡む具体に満ちた描写。村上春樹のこの部分の描写は、単行本発売時には特に気に留めていなかったと思うが、黒川博行「悪果」を読んだ直後に読むと、あえて言えば、具体にも観念にも振り切れていない中途半端な印象を受ける。
一番気になるのはこの部分は〈週刊誌の記事の要約〉という点。
週刊誌の記事は、真偽はともかく、普通はもっと人と金と法律が絡む具体的な描写になっているのではないか。特に〈再開発が最終決定して蓋を開けてみるとその土地は誰かの手でしっかり買い占められていた〉はかなり疑問符がつく書き方。
再開発計画の基本かつ最重要な要件はまず第一に土地の確保では?
〈週刊誌の記事の要約〉という体を取らず、関係者からオフレコとして聞いた話を総合した主人公の理解として、もっと観念に寄った書き方の方がしっくりきた気がする。週刊誌の記事には観念的な描写は入ってこない筈なので「要約してコレっていったい元の記事はどういう内容だったんだ?」と思ってしまう。
土地の確保抜きに計画が最終決定する、という現実にはあり得なそうもない話をあえて入れているのは、主人公はこの時点で現実世界とは違う場所にいるという解釈も可能。

★ユキの父親は、新聞に乗っていた殺人事件=主人公が警察に呼ばれた件、とどうやって知ったのだろう? ユキが父親に「大事な知り合いが赤坂署で殺人事件の参考人として取り調べを受けている」と言うのも想像しがたいが、そうだったとして、それを聞いた父親は、その知り合いはどこの誰なのか、どうやって知り合ったのか、いろいろユキから情報を得て、有能な弁護士が赤坂署の警察官とコンタクトを取って普通は外に出ない情報を入手して「この記事の事です」と父親に告げた、という事なのだろうか。最近続けて読んでいる黒川博行作品の影響で情報が誰から誰にどのように伝達されたのか、という実際の手順が気になる。上記の週刊誌の話と同様で、実は既に現実世界にはいないと思わせる為かもしれないが。

★「少なくとも2回は読み返している」という記憶が怪しい可能性もあるので読書メモを漁ると2008年7月に文庫版を読んでいる。その前に単行本を読み返したような気もするが記録はない。「ダンス・ダンス・ダンス」に限らないが、一度読んだ本を読み返した時、以前なら「そうそう、こういう話だった」と以前の記憶が再浮上しつつ読む事が多かったのが、50歳を過ぎて日々ますます記憶力が衰えているからか、ほぼ初めて読む感覚で読んでいる事が多い。
覚えていた筈の事はいつの間にかどこかへ行ってしまった。
五反田の話は以前に読み返した時はもっと覚えていたような気がする。ハワイの白骨の部屋のくだりを読んでいる時に「メイを殺したのは五反田」とどこからか浮かんで来たが、これがあっているかどうかも判らない(いま読んでいるのはハワイから東京に帰る所)。
先日30年以上ぶりに再読した川西欄「パイレーツによろしく」は初めて読む作品と思えるほどに覚えていなかった。それでもタイトルと作家で「読んだ事がある(持っていた)」と思い出せるのはまだマシで、その記憶さえ曖昧になっている作品も多分たくさんある。

★下巻P294 チョコレートに興味が持てないという〈僕〉に対してユキが「チョコレートに興味が持てないなんて精神に異常があるわよ」が言うと、〈僕〉はダライ・ラマやパナマ運河や日付変更線や円周率やセネガル国家は好きか嫌いかと迫る。チョコレートという身近な食べ物(多くの人が多分好きな食べ物)とは全く性質が異なるもの(殆ど概念に近いもの)を例として挙げて、興味が持てないものがあるのは異常ではない、と主張して、ユキは納得する。
もし僕がユキの立場だったら、いまあなたが挙げたモノはチョコレートとは全然違うモノでしょ、と反論して言い合いになる気がする。現実にこんな事を言う人とは友達になれそうにない。
この部分だけでなく〈僕〉は、もし現実にこんな話し方をする人がいたらちょっと距離を置きたくなる話し方をする。精神に異常がある、は言い過ぎとしても、普通ではない、と思える話し方。これは何を意味するのか。不要とも思えるチョコレートの話をなぜ書く必要があるのか。
〈僕〉は普通の話し方(普通の考え方)をする凡庸な人ではない。
「チョコレートが好きじゃいの?」と訊かれて「どっちかと言えば好きかな」とか「子供の頃は好きだったけど、大人になってからはあまり食べなくなったなあ」などと普通の事を言わず、「興味が持てない」と答えて、チョコレートという身近な食べ物と身近にはないモノや概念でしかないモノを自身との関係性において全く同質に扱う(もしくは食べ物としてのチョコレートも概念として扱う)という奇特な考え方を披露する。
だからこそ一種の媒介者のような役割を与えられている。

★主人公である〈僕〉は一番極端だが、この小説に登場する人物は全員1980年代後半の現実世界の実在の人物のようなリアルな話し方とは微妙に(特に大きく)異なる話し方をしている。読み進めるうちにその話し方の不自然さがだんだん気にならなくなっているのなら、既にマジックリアリズムの小説世界に取り込まれているのかもしれない。

★上記は読んでいる最中、ここからは読み終えての感想。
まずは繰り返しになるがびっくりするほど忘れていたこと。「羊をめぐる冒険」の続編で、札幌のホテルのエレベーターがどこかにつながっている(部屋ではなくエレベーターと記憶していた、「ねじまき鳥」の井戸でイメジージが重なったのかもしれない)という事しかぼぼ覚えていなかった。ユミヨシも五反田は読むうちに多少記憶が浮上してきたが、ユキは相当重要なキャラなのにほぼ忘れていた。左記以外の人物は今回初めて出会うレベルw

★発売当時に単行本で読んだ時も2回目に文庫本で読んだ時も、最後にユミヨシと結ばれる事を良きこと・ハッピーエンドとして読んでいた気がするが、今回はそうは感じなかった。僕自身が恋愛可能年齢を(ほぼ)過ぎて恋愛やセックスに対する考え方が変わってしまったからかもしれないし、小説に対する感受性や考え方がいつのまにかすっかり変わってしまったからかもしれない。下巻P378〜380で長々と〈僕〉がする話(それは決まっていることなんだ)を聞いたユミヨシは「あんまりまともとは言えないわね」と言いつつも自分から服を脱いでセックスする。
初読時は僕自身が〈僕〉に近いひねくれた面倒くさい考え方や行動をする23歳だったからか、〈僕〉の言動に特に疑問を持たず、これはこれでひとつの愛情表現と思って、それでもそれを受け入れてくれる展開を(たぶん僕自身の将来への期待を込めて)良きことと思っていた。今回59歳で読み返すと、〈僕〉の言動は、この場面だけでなく、20歳そこそこならともかく、34歳の男としてはどうなのか、話せば話すほど面倒な事になりそうなので少なくとも友達にはなりたくないという思いが勝り、「あんまりまともとは言えないわね」といいながらも受け入れるユミヨシはどういう考えなのだろう、と思ってしまう。もしあの場面が現実だとしたら。

★事前に電話もかけずに深夜3:00にいきなり部屋に来るのは通常はなかなか考えにくい。ユミヨシとのセックスは生と死の間で見る最期の夢で、実は〈僕〉はぐっすり眠ったまま死んだと解釈して、〈僕〉の最期の願望がそのまま実現する世界だとすれば、普通に聞けば「あんまりまともとは言えない」事を言ってもセックスに展開して固く勃起して「すごい」と言われてもなんの不思議もない。その場合は、最初に羊男に会うユミヨシこそ最初から死ぬべき人を死に導く媒介者のような存在でもうひとつの白骨は〈僕〉だったという事になる。

★加藤典洋編「村上春樹 イエローページ」はユミヨシさんを現実の世界にいるキャラクターと定義している(P163)。
僕も最初に読んだ時は最後にユミヨシさんと結ばれるのは、地に足をつけて現実を生きる事を選ぶ、と解釈していた気がするが、今回はそうは感じなかった。東京と札幌と物理的に離れていて実際に会わなくても〈僕〉に強力な影響を与える事ができるろ「ノルウェイ」直子のバリエーションように感じた。

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■シナリオ人生(2004=新藤兼人)岩波新書 209頁

第1章小津のシナリオの話、話や時代があちこちに飛ぶ文章が、一切一行空きもなく続くので正直読みにくい。三段階の話は、こういう風に任意の一部を抜き出せばストーリーが存在する映画なら全て三段階になるだろう(「東京物語」の抜き出し方はあまりしっくりこない)。そもそも、ほぼ全編暗記するほど好きな作品を除けば、映画でも小説でも、人に語る為にぱっと思い出せるのは、設定・展開・結末の3つ程度なのではないかと思ったりもする。

第2章撮影所で働き始める話、時系列で語られているので第1章よりマシだが、読んでいて面白みを感じない。事実の羅列で流れやストーリーや感情が感じられない。平易な短い文章で語る文体も僕の好みではないようだ。第三者が新藤兼人の人生をまとめているのなら事実に忠実な明快な文章でも(少なくとも研究書としては)良いのだが、本人が書いているのだから、感情の揺れ(その時に何を思っていたのか?)が思わずだだ漏れて欲しい。

第3章溝口健二の話、ひとつのエピソードが長く語られていて第1章・第2章に比べて格段に読み易い。時々一行開けがあればもっと読み易くなるのだがそれはない。妻になる女性と食堂で話すくだりでなぜか心が動く。P93映画「北極光」の話、”村上元三が原作と脚本を書き、私が潤色の役を務めた。つまり現地樺太へ行けば、現地の事情があって、脚本を変化せねばならないので、潤色の仕事はそういうものだった” 昔の映画にときどきクレジットされる〈潤色〉は〈脚本〉とどう違うのかよく判らなかったが例えばこういう事なのか。溝口健二「元禄忠臣蔵」に美術で参加した話はかなり詳細で、溝口の演出・人となりの話としても興味深い。

第4章、自分自身をもひとりの登場人物のように扱う文体に少し慣れてきた。妻が亡くなるくだりは淡々とした短文が続く文体がむしろ効果的。

第5章の戦争の話、後方部隊の具体的な日常のあれこれを興味深く読む。戦地で敵と戦う小説や随筆を読んだ事は多数あるが、国内の後方部隊の話はたぶん初めて読む。

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■大島渚「新宿泥棒日記」1969年公開

初見。Netflixで鑑賞。
Nouvelle Vagueな趣に満ちた怪作。

渡辺文雄や佐藤慶のセックスに関する観念的なやりとりは、当時の若者が劇場で観たのなら同時代的感覚溢れる刺激的なモノだったのだろうか? 俳優がある程度素を出して語っているようにも見える面白さはあるのだが、しっかり表情が判るような撮り方(照明)をしていなくて、そこがまさに前衛的(狙い)なのだろうが、1950年に生まれて18歳の時に新宿の小屋で封切りで観れば全然違った感想を持つのかもしれないが、2017年に予備知識なしでNetflixで見ると「なんじゃこりゃ」と言いたくなる。

新宿駅前の実景、(2017年も同じ)紀伊国屋書店の階段、(実際にこんな感じだったと思われる)状況劇場のテントなどは、ある程度ドキュメンタリー的に楽しめるが、全体的には観念や思想や前衛性が前面に出過ぎていて、その辺りをきちんと理解するには、僕にはサブテキストが必要。

神保町シアターで観た「日本の夜と霧」は観念的で不毛な議論が延々続くのに、なぜか観ているうちにある種の迫力(映画的魔術)で引き込まれる瞬間があった。この作品も劇場で大きなスクリーンで観れば或いは違った感想になるかもしれないが、それにしてもぼそぼそ喋る横尾忠則は魅力不足、ぼそぼそ話すので聞き取れない台詞がいくつかあった。

最近の殆どの映画は映画館だけでなく、自宅でビデオ(DVD、Blu-ray、配信)で見る事も前提にして作られていると思うが、1969年公開の「新宿泥棒日記」はおそらくテレビで放映される事さえ前提になく、新宿の映画館で10代〜20代の観客が観てハマる事を想定して製作された、と想像する。サブテキストで得た知識でその想像を補完して、ある種勉強のつもりで(できるだけ当時の若者になった気分で)見るのが正解なのかもしれないが、その一方で現に37インチのモニターで配信で何度か休憩しつつ見ていて、もっと気楽に楽しみたい、という気分もあり、この手の昔の作品を見る時の僕の立ち位置は、常にその一種のダブルスタンダード的な部分を行き来しているようだ。

可もなく不可もなく破綻もない(そして面白みもさほどない)最近の多くの作品よりは、たとえ自宅の配信鑑賞でも、この作品のザラついた印象はこの先も残り続けると思う。

顔も声もタイプだったヒロイン・横山リエは大いなる救い。
どれだけ掴めなかった作品でもヒロインが魅力的なら許すw
いまリメイクするなら水原希子か? 

(2017年11月執筆・2024年11月一部修正)

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■私的80年代青春映画ベストテン

★別格:BTTF

●ベストテン
①恋しくて(1987=Howard Deutch)
②レス・ザン・ゼロ(1987=Marek Kanievska)
③プロミスト・ランド 青春の絆(1987=Michael Hoffman)
④セント・エルモス・ファイヤー(1985=Joel Schumacher)
⑤初体験リッジモンドハイ(1982=Amy Heckerling)
⑥フェリスはある朝突然に(1986=John Hughes)
⑦セイ・エニシング(1989=Cameron Crowe)
⑧シュア・シング(1985=Rob Reiner)
⑨リトル・ダーリング(1980=Ron Maxwell)
⑩ブレックファスト・クラブ(1985=John Hughes)
一応順位付けしたが、この10作品はほぼ同格でどれも好きな作品

●選外
○結婚の条件(1988=John Hughes)
○キャント・バイ・ミー・ラブ(1987=Steve Rash)
○ピックアップ・アーチスト(1987=James Toback)
○栄光のエンブレム(1986=Peter Markle)
○きのうの夜は…(1986=Edward Zwick)
○プリティ・イン・ピンク(1986=Howard Deutch)
○ルーカスの初恋メモリー(1986=David Seltzer)
○ミリイ 少年は空を飛んだ(1986=Nick Castle)
○ビジョン・クエスト 青春の賭け(1985=Harold Becker)
○すてきな片想い(1984=John Hughes)
○フットルース(1984=Herbert Ross)
○アウトサイダー(1983=Francis Ford Coppola)
○卒業白書(1983=Paul Brickman)
○プライベイトスクール(1983=Noel Black)
○ランブルフィッシュ(1983=Francis Ford Coppola)
○ラ・ブーム2(1982=Claude Pinoteau)
○エンドレス・ラブ(1981=Franco Zeffirelli)
○青い珊瑚礁(1980=Randal Kleiser)
○ラ・ブーム(1980=Claude Pinoteau)
○リトル・ロマンス(1979=George Roy Hill)

●選考外(劇中の時代設定が80年代ではない)
○ウー・ウー・キッド(1987=Phil Alden Robinson)※1944年
○スタンド・バイ・ミー(1986=Rob Reiner)※50年代末のオレゴン州
○アナザー・カントリー(1984=Marek Kanievska)※30年代のイングランド
○月を追いかけて(1984=Richard Benjamin)※第2次大戦前のアメリカ(要確認)
○フラミンゴキッド(1984=Garry Marshall)※60年代のロングアイランド
○ダイナー(1982=Barry Levinson)※50年代終盤のボルチモア
○パラダイス(1982=Stuart Gillard)
○ポーキーズ(1982=Bob Clark)※1954年のカリフォルニア
○グローイング・アップ(1979=Boaz Davidson)※50年代のテルアビブ ※全8作

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■山葉美枝は今日もモヤモヤ
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

 朝からどんよりと曇っている天気のせいか、頭の中に不透明な薄い膜がかかっているようなモヤモヤ感は今日も続いていて、夏休みだけど少しは勉強しなくちゃ、来年は受験だし、と問題集を開いてみても、どうにも頭が働かない。体調が良くない時に無理に勉強するのは体に悪い、と自分に言い訳をしてベッドで横になり、「ガラスの仮面」の続きを読む。
 マンガに集中している時はモヤモヤ感はあまり気にならない。
 北島マヤは凄い子だ。演劇に対してまっすぐだ。迷いがない。
 北島マヤの演劇に当るものが私にはない。十六年生きて来て何もない。心の奥底では何かをしたいと思っているような気はするんだけど、それが何なのかはっきりしない。自分の気持ちってのはホントによく判らない。
 体感で2時間くらい読み続けているうちに、マンガの世界に集中した心地よさで眠たくなってきた。雪の日にマヤが特訓を受けて先生が倒れた所で寝落ちした。

 スマホが震えて目が覚めた。
〈みんなでカラオケ行く事になったから美枝ちゃんもおいで〜〉
 彩花が誘ってくれたので、のこのこ、出かける事にする。私は自分から誘うのは苦手なので、誘われたら、よほど体調が悪い時以外は断らない事にしている。彩花からの誘いなら特に。彩花がいなければ、私は、連日、ひきこもりの高校生活だっただろう。
 カラオケボックスの詰めれば十五人くらい入れそうな部屋に、男女あわあせて十人くらい。男子の数人はおなじみの彩花のとりまき連中。彩花はすごい美人でスタイルも良く、成績優秀で運動も得意なのに、女王様タイプじゃなく、誰にも壁を作らない。将来政治家になるんじゃないかって思ってる。
「私も彩花みたいな顔と体だったら、なんにも悩まずに高校生活を満喫できるんだろうなあ」
 なんてこぼしたら、
「なんにも悩みがない人なんている?」
「彩花にもあるの、悩み?」
「あるよ」
「たとえば?」
「たとえば……おねがいされると、ことわりきれない、とか」
「おねがいって?」
「美枝ちゃんが考えてるような事」
 彩花の妖しい笑顔にドキンとして、その先を訊くのが怖いような気がして、そこで終わった会話をした事があるけど、あれってどういう意味だったんだろう……。
「初体験は14歳」
「彼氏はいないけどそういう友達は何人もいる」
「テクニックがすごい」
 彩花に関してあちこちから聞こえてくるすごい噂、どれも彩花本人には確かめてないけど、全部ホントだとしても驚かない。だって彩花なんだもん。
 とりまき男子三人を従えて彩花が歌っているのをぼーっと眺めていると、とりまき男子三人は腰を深く折って、彩花に「おねがいします」「おねがいします」と連呼する。彩花は「ちょっとだけだよ」とマイクのかわりに、彼ら三人がズボンの中から取り出したモノを交互に握り、充分に屹立させた後に、ゆっくり舌先をはわせて口に含んだ。
 みんながいる所でそんな大胆な。いくら彩花でも凄すぎするよ。
 周囲を見回すと他のクラスメイトは誰もステージに目を向けず、みんなが隣にいる異性の身体をまさぐりあっている。私だけがひとりで何もしないで馬鹿みたいに座ってる……。
 目をきつく閉じて頭をブルブル震わせて目をしっかり見開くと、曲のアウトロで彩花ととりまき男子三人は肩を組んで普通に歌っていた。
 寝付けない夜中に延々ふとんの中で複数プレイのエッチな動画を見続けるのはやめた方がいいかもしれない……。
 セックスどころかキスも未経験、ちゃんとつきあった事もないバージンの私には妄想だけで一生体験しそうにないこんなプレイも、彩花なら自然に悠々とこなしてそうな気がして、またモヤモヤ感が強まってきたので、毒を持って毒を制す、と眼の前のビールをごくごくと飲んだ。
 彩花にリクエストされて、普段は前に出るタイプじゃないのに〈彩花にリクエストされた〉大義名分があるので別人のように気が大きくなって、毎度おなじみ校長のモノマネを披露する。
「高校時代の夏休みは人生に取って非常に大切な時期です。みなさんの人生の扉が、いま、まさに、開き始めています」
 マイクもあるのに声を張り、上目使いで瞬きの回数が妙に多いというディテールにも気を使う。モノマネをしている時は、人の視線を気にして自分を演じる必要はなく、ただたすらモノマネに集中していればいいのでモヤモヤ感は気にならない。
「開き始めた扉の先に何が見えるか、この夏休み、しっかりと目をあけて、みなさんひとりひとりにとって正しい道を探しましょう」
 校長の言葉に合わせて、しっかりと目をあけて部屋を見回すと、隅っこの方に見慣れない顔の男の子がいた。
「あの人誰だっけ?」彩花の隣に座って耳元に囁いて訊いてみた。
「どれ?」
「一番奥、桃子と話してる子」
「こないだの転校生でしょ」
「ウチのクラス?」
「美枝ちゃんホント男に興味ないよねえ」
「そんな事もないけど」
「あ、そういう事?」
 彩花の目が妖しく光ったので、ちょっと待って、と言おうとするより先に彩花は立ち上がって、むこうの端にいたその男の子を連れてきて、席を順送りに詰めさせて、私の隣に座らせた。
「さっきの、終業式の、校長だよね」
 と言われて、なんて答えるのが正解なのか考えて黙ってると、
「他にもできる?」
「物理の岡田とか」
「やってみて」
「この公式しゃえ覚えておきゃば、まあ、だいたい、だいじょうびゅにゃので……」
「それも似てる気がする。オレ物理取ってないからよく判んないけど……あ、オレの曲だ」
 その男の子の歌は、決して上手くはなく、かと行って下手でもなく、なんというか、まるでバックグラウンドミュージックのようで、場に馴染んで、耳に優しく、でも、しばらく経ったらきれいさっぱり忘れてしまうような感じだった。
「亜蘭圭って、名字も名前もどっちも名前みたい」
 ちゃんと知っていたかのような態度を装って、席に戻ってきたその男の子・亜蘭に話しかけた。本当は、歌ってる間に、こっそり、彩花に教えて貰ったんだけど。
「よく言われる」
「圭ってよぶ人もいる?」
「圭って呼ぶのは親だけかな」
「どっちで呼ばれるのが好きなの?」
「どっちでも。全然別の呼び方で呼びたければ、それでもいいし」
「なにそれ」
「山葉はなんて呼ばれたい?」
「私は……私も、なんでもいいかな」
 私の名前ちゃんと知ってたんだ。
 女子からは〈美枝ちゃん〉なので、いきなり名字呼び捨てで呼ばれると、なんだか、ドキドキするなあ。

 それから、ちょくちょく、亜嵐に会うようになった。
 たいてい昼過ぎにお誘いメッセージが来る。
 私は先の約束は苦手で、楽しみな予定でも、なぜか前日は妙に気が重くなって眠れなくなる事が多々あるので、彩花や亜嵐のように、当日いきなり、具体的に誘ってくれるのはありがたくて、ほいほい、出かけた。
 映画を観てカフェに行ったり、公園のベンチに並んで座ってソフトクリームを食べたり、図書館で一緒に勉強したり、まるでカップルのような行動をしていても、亜嵐も私も、好きとか、つきあおうとか、そういう話は一切なく、好きな映画とか好きな本とか好きなマンガとか好きな食べ物とか、そんな話が多かった。
 亜嵐はぱっとみ普通としか言いようがない顔で、身長は少し高めでやせていて、髪の毛は少し長めで、〈中性的〉って言う人もいるかもしれない。
 亜嵐と私は人間のタイプが似ているのか、一緒にいて会話が途切れても、他のクラスメイトと一緒にいる時みたいに(こういう時はたまには私が何か話した方がいいのかな。でも何も話題を思いつかない)って思って緊張したりする事はなかった。
 会話をしていても、亜嵐は何か他の事を考えているように感じる事も多く、なんだか、一言で言えば、亜嵐はよく判らない、不思議な人だ。もっとも、亜嵐に限らず、男の子全般が私にはよく判らないし、そんな事を言い出したら、女の子だってよく判らないし、何より、自分で自分がよく判らない。
「自分がよく判らない、って感じる事、ある?」
って彩花に訊いてみたのはいつだったっけ。
「自分がよく判らない、ってどういう意味?」
「文字通りの意味だけど」
「たとえば、自分が何をしたいか、何をするのが楽しいか、よく判らないって事?」
「特に、進路とか将来とか……彩花は、はっきりしてる?」
「まあ、いろいろ、やってみたいなあ、って思ってるのはあるけど」
「たとえば?」
「なんか、人と人を繋ぐような仕事に、ちょっと、興味がある。プロデュース的な?」
「そんなに具体的に考えてるんだ」
「そんなに具体的じゃないよ。なんとなくのイメージだよ。美枝ちゃんはないの?」
 彩花になんて答えたかは記憶が曖昧。いずれ、具体的な事はそもそもないんだから言ってる筈はない。ただ黙って苦笑いをしていたのかな。
 亜嵐と話していると、時々、なんとなく、妙にイライラする瞬間がある。
 亜嵐に対してイライラしているのか、亜嵐は関係なく、突発的に発生する自分で自分が嫌になる瞬間が、亜嵐と過ごす時間がそれなりに長いので、偶然その時に起きているのか、自分ではよく判らない。そんな判らない感じを亜嵐にぶつけてみたらどうなるだろう、と想像しても、実行する勇気はない。
 それでも、亜嵐と一緒にいるのは基本的には楽しく、亜嵐と一緒にいる時は例のモヤモヤ感はあまり気にならなかった。

 この大雨は明日の午前中いっぱいは続くでしょう、と天気予報が告げて、亜嵐からの誘いもなく、天気のせいかモヤモヤ感が強くて、今日も勉強は手がつかない。いったいぜんたい、このモヤモヤ感の正体はなんなんだろう、一度とことん考えてみよう。
 気を許すとモヤモヤ感が広がって、すーっと世界が遠のいて自分が自分でなくなるような感覚。半覚半睡の状態で夢を見ていて、自分でコントロールができない時のような。子供の頃からたまにはあったのが、今年になってから増えてきて、夏休みに入ってからはほとんど毎日。身体は別に辛くないんだけど、自分の事に関して頭がうまく働かない感じで、難しい事が考えられなくなる。何も考えるな、と誰かが私に命令しているような気もする。
 と、言葉で現すと、どれも違う気がする。
 母親に言わせると「たんなるなまけ虫」。そう言われればそうなのかもしれないけど。
 一番モヤモヤ感が強いのは、苦手な科目の授業の時や、家で勉強している時。こないだのカラオケのように彩花やクラスのみんなと一緒にいる時も強くなる事が多い。勉強をさぼってマンガや本や映画や動画に熱中して、気がついたら三時間経っていたなんて時はそうでもない。
 去年彩花が転校してきて、彩花と仲良くなった頃から、このモヤモヤ感が出始めたような気がする。 
 彩花と一緒にいると、長距離走で同じトラックを走っているけど、彩花はずっと先を走っていて、せめて周回遅れにならないように必死についていこうともがいているような気分が常にどこかにある。それでも、同じトラックを走っているだけまだマシで、途中でやめてしまったら完全におしまいなので、モヤモヤ感を抱えながら、重たい脚をなんとか持ち上げようとしても簡単には持ち上がらない。彩花がいない時に彩花の噂話、特にセックスに関する噂話を聞いた時、耳は聞いているのに、心の奥で拒否しているような感覚があって、私には関係ない話として聞き流してしまいたい、と思ってた。
 彩花と直接話してる時にも同じような拒否感覚があったのは、何の話をしている時だっけ。そうそう。彩花に「美枝ちゃんっていま好きな子いるの」とか「美枝ちゃんって男の子とつきあいたいって思わないの」とか訊かれた時だ。
 多分私の答えがあまりに素っ気なかったのか、最近はあまり訊かれなくなったけど、二年になったばかりの頃は結構な頻度で訊かれていた気がする。
 高校二年。秋になれば十七歳。男の子とつきあってエッチな事をしてみたいと思う年頃。セックスに興味がないわけじゃない。夜中に布団の中でスマホでエッチな動画を延々見て、自分で触れてみる事はある。でも、触れてみても、自分が思っている以上の快感があると、なんだか怖いような気がして、いつも途中でやめてしまう。
 彩花はこんな事を男の子にして貰って、もっともっと気持ちよくなって、男の子にも同じような事をしてあげて、この少し下の方に男の子のモノが入ってきて、それも多分気持ちよくて、彩花が体験しているそれを私も体験してみたいと思う気持ちはゼロではない。ゼロではないと思うけど、私はまだいい、まだ私のままでいたい。
 ……ひょっとして、私は彩花が好きなのだろうか?
 男女とも十数人にひとりは生まれつきのゲイ、ってなんかで読んだ。 
 いや、そんな事はない。美人の彩花と一緒にいるのは楽しいし、彩花を眺めてるのも好きだけど、彩花とエッチな事をしたいとは思っていない……はず。多分。
 そもそも、私がそう思うからモヤモヤしてる気がするだけかもしれないのだ。実際はあるんだかないんだか、曖昧と言えば曖昧。モヤモヤして息も出来ない、とか、モヤモヤして歩く事もできない、とか、そういうんじゃない。現にマンガや本や映像に熱中してる時は気にならないんだし。
 考えても考えても結論は出ない。
 だんだん、考える事に疲れてきた。
 勉強も、セックスも、いまは一時停止にして、もう少し自分が定まってからにしたい。
 いまは、先送りにしたい。
 でも、先送りしても、いつかは直面しないといけない。
 いつかっていつ?
 来年のいま頃は高校三年。高校生活最後の夏。
 どんなに遅くても、その時までには、大学に進学するかどうか、進学しないならどうするか、決めなくてはいけない。あと一年しかない。ウソだ。ちょっと前までは、私はまだまだ子供で、大人になるのはずっとずっと先の事だと思ってたのに。いや、そう思ってたのは〈ちょっと前〉じゃない。十年くらい前、小学校で女子だけの授業があった頃よりもっと前。
 子供っていつまでなんだろう。
 性の意味を知ったら、もう、子供じゃない?
 セックスの事を想像したら、もう、子供じゃない?
 自分でここに触れてみたら、もう、子供じゃない?
 自分で勝手に、まだまだ子供だから、と思っていたいだけで、本当はもうとっくに子供じゃなくなってる事に、私は気づかないふりをしているだけかもしれない。少なくとも、体はだいたい大人だ。身長だってお母さんと変わらない。おっぱいもふくらんでいる。毎月生理が来るようになってもう三年は経っている。セックスすれば妊娠する可能性はあるんだから、体はとっくに大人なんだ。
 彩花を先頭にクラスメイトのみんなはどんどん先に進んでいく。私はそれについていきたくて、でもどこかでついていきたくなくて、じたばたしてる。たぶん。
 来年の秋には十八歳。
 あと二年と数ヵ月で二十歳。
 二十歳は完全な大人だ。お酒だって正々堂々と飲める。
 私の中身は十年前とほとんど変わってないのに、いつのまに、私の体は、こんな風に、ほとんど大人になってしまったんだろう。
 十年前はあんなに長く感じていた夏休みは年々短かくなる。
 この十六歳の夏休みが、ずっとずっと続いて、なにもかも先送りにできたらいのに。

 モヤモヤ感について考えた考え過ぎたせいか、高熱が出て、何日も寝込んだ。寝ても寝ても眠たくて、毎日十六時間くらい寝た。熱が下がった後もなんにもやる気が起きなくて、呆然と過ごすうちに、気がつけば夏休みは残りわずか。
 彩花がお見舞いに来てくれた。私と対称的なほんのり小麦色の肌。
「ハワイ、どうだった?」
「正直、飽きた。ハワイはハワイって感じ」
 彩花は子供の頃から毎年夏休みにハワイに家族旅行に行っている。
「ハワイは飽きた、って言ってみたいよ、私も」
「やっぱり日本の方が落ち着くよ」
「いつ帰ってきたんだっけ?」
「おととい。連絡したでしょ?」
「ずっと、こんなだから、いつがいつだか、よく判んなくて」
「……美枝ちゃん大丈夫? ちょっと話があったんだけど、今度にしようか?」
「話って?」
「桃子のこと」
「桃子? 桃子がどうしたの?」
 桃子は一見地味、よく見るとかわいげがあるような顔で、若干ぽっちゃり系で男子には人気があるらしい。彩花の次に仲良しと言えるクラスメイトだけど、彩花と三人で会う事はあっても、ふたりで会う事ほとんどない。会えば普通におしゃべりするけど、心の奥底には苦手意識があるのかも。 
「なんにも聞いてない?」
「何の話?」
「桃子と例の転校生の話」
「転校生って……亜蘭のこと?」
「桃子には内緒って言われてるんだけど」
 桃子と亜嵐の話は、なんだか、全然、知らない人の話のように聞こえた。あのカラオケの時から、桃子と亜嵐ががしょっちゅう会っていて、しかも、毎回、亜嵐の部屋でセックスしていたなんて。
「……で、桃子としては、つきあってるつもりだから、私たちってつきあってるんだよね、って、亜嵐に訊いたら、君がそう思いたいならそういう事でもいいけど、って言うんだって」
 桃子と亜嵐の事なんて知りたくない、どうでもいいという気持ちと、彩花が桃子から聞いた話を全部知りたい、という気持ちが争って、後者が勝って「それで?」という言葉が口から漏れた。
 ──じゃあ、なんで、この部屋で会うだけなの? 外で映画とかお茶とか散歩とか、普通のデートもしようよ
 ──そういうのは他にいるから
 ──他にって、他につきあってる子がいるって事?
 ──つきあってるのかどうかはよく判んないけど
 ──いつから? 私より前?
 ──ほぼ一緒。みんなでカラオケ行った時から
 ──あの時にいた子? 同じクラスじゃん。誰?
 ──山葉
 ──ヤマバって……美枝ちゃん? 美枝ちゃんと二股かけてんの?
 ──二股なのかどうかよく判んないけど、ちょくちょく、会ってる
 ──つまり、美枝ちゃんとは映画とかカフェとか行って、美枝ちゃんはバージンだし、やらせてくれないから、私とやってる、ってそういう話?
 ──山葉ってバージンなの?
 ──そこはいいのよ、どっちでも。そういうのを二股って言うのよ。
 ──俺としては、山葉は俺と一緒に映画行きたそうに思えたから映画に誘ったし、井上とは……
 ──ちょっと待って。私がやりたそうに見えたから、いきなり、部屋に誘ったってこと? 普通のデートっぽいの全部省略しても、こいつは大丈夫だって思ったってこと?
 ──もし違ってたら謝るけど、俺とやりたいって思ってなかった?
「……桃子だから例によって盛ってるとこもあると思うんだけど、美枝ちゃん、亜嵐と会ってはいたの?」
「……桃子、私に怒ってるの?」
「いや、そうじゃなくって、あの転校生があんまり適当なこと言ってるからじゃない。ほら、桃子って、意外と一途だから」
「私に言われても困る。桃子とそんなことになってるなんて、いま、初めて知ったし」
「会ってはいたんだ?」
「一度も部屋には誘われてないけど」
「桃子が言ってる事がホントなら、転校生……亜嵐だっけ。亜嵐としては、別に、ウソはついてないってことか」
「でも、なんか」
「でも、なんか?」
「何から何までウソっぽいって言うか、何考えてんだか、よく判んないヤツだよ」
「亜嵐のこと?」
「目が合ってても、合ってない感じもするし」
「……さっきから何度も送ってるんだけど、全然、既読つかないんだよ、ほら」
 彩花のスマホの画面には亜嵐あての短いメッセージがいくつか並んでいる。彩花に言われて、私も、亜嵐にメッセージを送ってみたけど、やっぱり既読はつかなかった。

 この二週間あまり亜嵐から全くメッセージがこない。
 あんなにちょくちょく会ってたのにつれないなあ。
 たまには自分から誘わないとダメなのかなあ。
 それにしても、亜嵐と桃子の話はホントなんだろうか。
 亜嵐に訊いたらなんて言うだろう。
 夏休みの最終日の午後、亜嵐からメッセージがきた。
「二週間、大学のサマースクールみたいなのに行ってた」
 二週間会っていなかっただけなのに、亜嵐は、陽焼けして、なんだか、少し、大人びて見える。
「大学? 海辺のサマーキャンプとかじゃなくって?」
「ああ、これ?」
 亜嵐は自らの腕や胸元の陽焼けを確認して、
「沖縄の方の、島全体が大学で」
「沖縄本島じゃなく?」
「船で行くちっちゃい島。(スマホの)電波も届かなくって」
「そうだったんだ」
「昼間、海岸でずっと話したりしてたから(結構陽焼けした)」
「なんのサマースクール?」
「小説を書くという事に関して、だったかな。講座名は」
「え、亜嵐って、小説家になりたいの?」
「子供の頃から、いろいろ、書いてる」
「びっくり。なんで言ってくれないの」
「普通言わなくない? 自分からは」
「どういうの書いてるの? 読んでみたい」
「やだよ」
「なんで」
「だって、山葉は、けっこう本とかマンガとか読むんだろ。けなされたら腹立ちそうだし」
「じゃあ、なるべく、ほめるから」
「ほめられたら、無理してほめてくれてるんだろうなあ、って思っちゃいそうだし」
「向こうでスクールの人には読ませたのに?」
「いや、向こうでは、読んだり書いたりしなかった」
「小説なんちゃらって講座なのに?」
「基本、ひたすら、話すだけ」
「変なの」
「……なんか、すごい自由な雰囲気で、いろいろ話したり、他の人の話を聞いたりして、それが、すごく気持ちよくって楽しかった記憶はあるんだけど、こっち帰ってきて思い出そうとすると、思い出せないんだよ」
「なにそれ」
「最終日の夜に、ちょっとした事があって……やっぱり、やめとこう」
「言いかけてやめないでよ」
「山葉に言うような話じゃない」
「そんな事言われたら気になっちゃうよ」
 エアコンの調子が悪いのか、店内はむっとするような熱気で、頼んドリンクの氷はほとんど溶けていた。
「……最終日の夜に、ちょっとした事があって、それで、なんか、記憶がおかしな事になってるような気があするんだ」
「ちょっとした事って?」
「なんていうか、僕も、まだ、整理できてないって言うか……」
「言いたくないならいいけど……」
 桃子の事を訊くだけ訊いてみたいという心理と、訊いた所でどうにもならないから訊いてもムダという心理が戦っていて、ずっと膠着状態が続いている。訊くにしても、すぐそばに人がたくさんいるこんな場所じゃない方がいいかもしれない。
 正面に座って私の方を見ている筈なのに、なんとなく心ここにあらずで、私を突き抜けて、全然別の何かを見ているように見える亜嵐の顔を見ているうちに、桃子の事と店の熱気があわさって、いつものとはちょっと違う感じのモヤモヤ感が私の内部に充溢してきて、私の意識は、まるで夢の中にいるように現実感が薄れていく。
 私は誰と話してるんだっけ?
「ちょっと、山葉、それ、大丈夫?」
「なにが?」
「顔の汗、すごいよ」
「ホントに?」
 亜嵐に言われて、手の甲で額に触れてみると、シャワーを浴びた直後のように濡れている。脇の下も、背中も、とんでもなく汗をかいているようだ。
 すぐ近所にある亜嵐の部屋で休ませて貰う事になって、夢の中にいるような気分で、誘われるままについていった。
「僕は一階のラウンジにいるから、落ち着いたら連絡して」
 亜嵐から無地のTシャツとショートパンツとバスタオルを渡された。
 数年前の社会科見学で入ってみた昔の電話ボックスよりもっと狭そうなシャワーボックスで、冷たいシャワーを浴びると、だんだん、頭がしゃきっとしてきた。
 亜嵐がこんなワンルームの部屋でひとり暮らしをしてるなんて、今日、初めて知った。桃子の話を聞かされた時は、両親共働きだから昼間は誰もいない家なのかなって思ってた。
 亜嵐はこちらが訊かない事は自分からは言わない。
 小説家を目指してる事も、今日、初めて知った。
 亜嵐は私の事をどう思ってるんだろう。
 桃子の話がホントなら、桃子はカラダ目当てで、私は誘えばたいていほいほい出てくる暇つぶしの相手?
 それとも、自分からは言わないし、匂わせもしなくても、心の底では、私を少しは〈女〉として見ているのだろうか。
 ぼーっとして、部屋まで来ちゃったけど、ひとり暮らしの男の子の部屋で、素っ裸でシャワーを浴びてるなんて、これは、つまり、桃子と同じような展開?「一階のどこだかにいる」って言ってたけど、それは勿論ウソで、私がこのシャワーボックスを出たら、パンツ一丁か、ひょっとしたら全裸の亜嵐が立っていて、ついでにアソコも勃っていて、有無を言わさずいきなり抱きしめられて、私がどんなに抵抗しても強引にキスされて、ベッドに押し倒されて、バスタオルなんか簡単に剥ぎ取られちゃって、胸を触られて、乳首を舐められたら「あっんっ」って声が自然に漏れて力が抜けて……なんて事になったら、どうしよう?
 本能なのか無意識なのか、私の手は自然に、普段よりも丁寧に自分の身体を洗う。いつもは適当に表面を撫でる程度にしか洗わないのに、いつかレディコミで読んだ記憶に従って、片脚を上げてしっかり広げてビラビラの溝の奥の方まで丹念に洗う。
 え? 私って亜嵐とそうなる事を期待してるの?
 桃子が行った事がある亜嵐の部屋なら行ってみたい、桃子が亜嵐とセックスしたのなら私もしてみたい、そう思ってるって事なの?
 モヤモヤ感について考え抜いた時には先送りしたかったセックスが、いざ、現実問題として目の前に示されると、私は私の本心が自分でよく判らなかった。私の本心は拒否しても私の本能は期待しているような気もした。
 もし本当に亜嵐に求められたら、私が抵抗しても、それでも求められたら……そうなった瞬間の感覚に身を委ねよう。抱き寄せられた時に亜嵐の体臭がむっと鼻に付いて我慢できそうになかったら断固拒否するか、「亜嵐もシャワー使って」って言うか、その瞬間の感覚を信じて、その瞬間の感覚に従おう。
 覚悟を決めて、バスタオルだけを巻いた格好で、洗面スペースの引き戸を開けた。
 部屋には誰もいなかった。
 さっきはぼーっとしていて、ちゃんと見ていなかったけど、驚くほどにシンプルな部屋だ。ベッドとデスクとソファとテーブルと収納。
 生活感がない部屋の見本のような部屋。デスクの上の本棚の教科書がなければ亜嵐の部屋かどうか疑いたくなるレベル。教科書の横には数冊の本があるけど、小説家を目指している人の部屋にしては本がなさすぎる。マンガは一冊もない。本もマンガもデジタルで読んでいるのだろうか。
 すぐに着替える気が起きなくて、なんとなく、ベッドに横たわってみる。枕にかすかな匂いがある。 
 嗅いだことがない匂いだったけど、不快感はない。これが亜嵐の匂いなのかなあ。
 要するに、亜嵐は、私の事を〈女〉として見てなかったって事なんだよね。
 桃子の方が女っぽいもんね。
 このベッドのこの場所で桃子は亜蘭とセックスしていたのかなあ。
 想像すると、悔しいような気もするし、そうでもない気もする。
 桃子とはどこか合わない部分があると思ってたけど、桃子は亜蘭の事が好きなんだ、と思うと、
 なぜか、どこか、嬉しいような気がする。
 嬉しい?
 そんなはずはない。
 でも、やっぱり、ちょっと嬉しいような気もする。
 よく判らない。
 やっぱり、自分の事は、いちばん判らない。 
 ……目が覚めた時、一瞬、自分がどこにいるか判らなかった。
 うすい夏掛け布団の中の私は裸で、体に巻いていた筈のバスタオルは、完全にはだけていた。
「ひょっとして、私、寝ちゃってた?」
 デスクに向かっている亜嵐の背中に声をかけた。
「目、覚めた?」
「いま何時?」
「18:30過ぎ」
「え、私、三時間以上も寝ちゃってたの?」
「連絡ないから心配になって見に来たら、あんまり気持ちよさそうに寝ていたから、寝かせておいた」
 そんなこと言って、ホントは寝ている私に変なこと、しなかった?
 ふとんの下でそーっと自分で触れてみるが、なんの違和感も痛みもない。
 いや、そもそも、バージンの私なら、何かされたら途中で目が覚めないわけはないか。
 でも、こんな体勢で寝てたって事は、私の裸は見られちゃったかも。単刀直入に「見たでしょ、私の裸」って訊けば、その反応で判るかなあ。もっと遠回しに訊いた方がいいかなあ。
「これ」亜嵐が服が入ったかごを差し出してきた。
「山葉が着てた服。洗濯しておいたから」
「あ、ありがと」
「今度こそ、着替え終わったら、連絡してよ」
 部屋を出ていこうとした亜嵐は、ドアの所で振り向いて、
「泊まって行きたかったら、泊まって行ってもいいけど?」
 私の返事を待たずに亜嵐は部屋を出て行き、私は、かごの中できちんと畳まれている自分の服を身につける。これ、亜嵐が洗濯して乾燥させて畳んでくれたの? このブラも、このショーツも?
 私は亜嵐に桃子の事を訊いてどうしようと思っているんだろう。
 あっさり認められたら、桃子に譲って、二度と亜嵐に会わないつもりなのか。
 桃子がどう思ってるか判らないのに勝手に決めても仕方がない。
 いや、この際、桃子は関係ない。
 私がこれからも亜嵐と会いたいと思っているかどうかだ。
 どっちかを選べ、と言われたら、今後、二度と会えないのは、なんだか寂しい気がする。
 亜蘭が私の事をどう思っているのか、とことん話をしてみたいような気がするけど、遅くなるなら、親に言い訳をしなくてはいけない。明日から学校だからじっくり話す機会はまたあるだろうし、彩花が取り持ってくれるなら、桃子を含めてみんなで話した方が話が早いかもしれないので、今日は帰ろう。  

 その夜、私史上第一位の変な夢を見た。
私は、夢の中で、彩花になってとりまきの男の子とエッチな事をしていた。三人だった筈のとりまき男子がいつのまにか増えて四人になってると思ったら、亜嵐だった。私が彩花のわけないじゃない、って思ったら、さっきまで亜嵐だった男の子は彩花になっていた。
 私は彩花に股間の中心の小さな突起を延々と舌先で刺激されて、腰を震わせながら、抑えても抑えられない歓喜の声を漏らし続ける。こんなに声を出したら、親にも聞こえちゃうと思ったら、さっきまで見知らぬ部屋だった場面は、私の部屋・私のベッドになり、そんなに声出しちゃダメだって、という冗談まじりの声が響いて、私の口に丸みを帯びた温かいモノが押し付けられる。私は違和感と懐かしさを同時に感じながら唇を開いてそれを受け入れて、その先端を、いつものように、舌先でゆっくり刺激する。目を開けてそのモノの持ち主が誰なのか、見ようとしても、どうしても瞼を開く事ができない。仕方がないので、亜嵐だと思い込む事にして、いつも亜嵐にしてあげているやり方、亜嵐が気にいっているやり方でほどこす事にする。
 一心不乱に施すと、私の股間に顔を埋めている人も、私の一心不乱に同調して、速度や強度を強めてきて、私の感度が上がるにつれて、私の口の中のモノはどんどん硬くなっていく。私の興奮が昂まるに連れて、私に口を使わせている男の興奮も、どんどん昂まって行くのがはっきりと判る。男の興奮を感じている唇から、股間の小さな突起に向かって、痺れるような何かが身体の裡を貫いて、それが私の興奮を更に高め、そのふたつを目まぐるしく往還する、痺れるような何かは、私自身が認識できないほどの速度になり、その何かが、私を丸ごとどこかに連れて行こうとする。
 ちょっと待って。
 このまま、この快感に身を委ねたら、私が私でなくなっちゃう。
 そう思っても、私は、口元にある張り詰めたモノを舌と唇で刺激する事をやめる事はできず、いつのまにかその根元を握ってしごいてもいる。私の股間に密接している誰かの唇と舌を押しのける事もできない。いつのまにか、私のもう片方の手は別の張り詰めたモノをしごいていて、私の両方の乳首は別々の舌による刺激を同時に受けている。与える快感と与えられる快感、私と私が触れている誰か、もはや亜嵐なのか彩花なのか、それとも全然知らない誰かなのか判らなくなっている誰かとの境界は、どんどん溶けて渾然一体になっていく。

 目を覚ますと全身にじっとりと汗をかいていた。
 変な夢やエッチな夢は時々見るけど、こんなに具体的で、ここまで変な夢は初めて見た。ぐっしょり濡れているのは汗のせいだけではない感じがしてショーツの中に手を差し込んでみると、その部分はびっくりするほどぬるぬるになっていて、少し指を進めると、第二関節あたりまでとぅるんと吸い込まれる。すごい夢だったけど、夢の中でも男の子のがココに入ってはこなかったな。実際はこんな私の細い指より全然太いんだよね。中指をさらに奥まで差し入れてみる。なんの抵抗もなく、指の根本まで入る。
 溶けたバターのような、生暖かい、ぬるぬるした感触。
 自分の体だけど自分の体じゃないみたい。
 上の突起を指先で弄ぶ事はあっても、指を入れてみたのは初めて。以前、こころみた時は、こんなにとろとろになってなくて、ごく入口に近い部分がしっかり閉じているような感じで、全然入らなかった。内蔵に突っ込んでいるような感じで指はなんだか気持ち悪い。ゆっくり抜こうとして、少し曲げた指の先が内壁にやや強く触れた……と思った瞬間、その部分から、何かが弾けて、さっきまで見ていた変な夢の感覚が走馬灯のようにフラッシュして、そのあまりの快感に、思わず声が出そうになって、慌てて口元を抑えた。
 普段より少し早いけど、もう起きてもいい時間なので、ベッドを出てシャワーを浴びた。少し冷ためにしたシャワーを浴び続けるうちに、体中が火照ったような感じは少しづつ醒めてくる。股間のぬるぬるしたものをボディソープで洗い流して、シャワーをフックにかけて、頭からシャワーを浴び続けていると、昨日の午後、亜嵐の部屋でこうしていた時の自分がぐぐっと、いまの私を侵食してくる。
 あの時、本当は、シャワーを出たら、部屋に亜嵐がいて欲しかった。
 口に出して呟いてみると、それが自分の本心のような気がした。
 でも、あの時、部屋に亜嵐がいなかったのでほっとした。
 まだ、私には準備ができていない。
 何がどうなれば準備完了なのだろう。
 いろいろ考えると、やっぱり何もかもまとまらない。
 学校では亜嵐と話した事はない。どんな顔をして会えばいいんだろう。もしみんなの前で昨日の事を言われたらどうしよう。亜嵐なら、そんな事はしないと思うけど。桃子は何か言ってくるだろうか。

 なかなか寝付けなかったのに、妙に早く目が覚めて、二度寝すると起きられそうにない気がしたのでそのまま起きて、早めに登校した。
 誰もいない教室を見て違和感を感じた。
 夏休み前まで本当にこの教室が私のクラスだったんだっけ……。
 朝のホームルームが始まっても、彩花も桃子も彩花のとりまきも来ていない。
 窓際の一番うしろの席だった筈の亜嵐もいない。
 ひょっとして違う席だったのかな?
「始業式の前に報告事項」
 特長がないので担任はモノマネしにくい。
「1学期に転校してきた亜蘭圭くんですが、また、転校する事になりました。夏休み中に既に引っ越しているので、みなさんに挨拶なしですみません、との事です」
 え? どういう事? 昨日会ったよ?
 始業式が終わってから、亜嵐に連絡してみるが既読にならない。
 いきなり電話する勇気はない。電話で話した事は一度もないし。
 みんなが帰って誰もいなくなった教室を見回すと、朝に感じた違和感がさらに強くなっていた。
 彩花も桃子も欠席だったのに、誰も、それを話題にしてなかった。
 彩花には朝から何度も連絡を入れてみてるけどひとつも既読になっていない。

 【了】

———————————————————————————————————————

■ジョニーの伝言
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

 1

 酒に酔った勢いで「野球拳でもする?」と半ば冗談で誘うと、さやかも酔っているのか、「いいよ」とのってきて、数分後には男はふたりともパンイチ、さやかもブラと小さめのショーツだけになっている。数年前にはぺったんこだったさやかのバストは、いつのまにか、薄いピンクのブラからはみだしてしっかりと谷間を作る程に発達している。
 次の勝負、「よよいのよい」でじゃんけんをすると、また、さやかが負けた。
 グラスに半分程度残っていたビールを飲み干したさやかは、後ろを向いてブラジャーを外して、まくらで胸元を隠してこちらを向く。
 次に負けた男が最後の一枚を脱ぐのをためらっていると、さやかは「男らしくさっさと脱ぎなさい」と近づいてきて、下着を脱がせる。その動きでまくらがずれてさやかのバストトップが露になり、脱がされた男の十七歳の男子の健康の証がそそりたった形状を晒す。
 もうひとりもさやかに脱がされて、そういう流れになっていく。
 さやかの双房の先端をふたりで舐めると、さやかは囁くような声で応じる。
 さやかのショーツの両脇の紐を「せーの」でふたりで一緒にほどく。
 人気アイドル歌手としてさっきまでコンサートをしていたさやかと、そのコンサートにバックダンサーとして出演していた男ふたりが、深夜のホテルの一室で、こんな遊びをしていいのだろうか、という逡巡を、世間の高校二年生だってちょっと遊んでる連中はこんな事をしてるよ、という言い訳が凌駕して、三人の今宵限りの触れ合いは、大胆に進展していく。
 この行為をするのはまだ数回目のさやかの舌と唇の動きにはまだぎこちなさがあり、ふたりがお互いにほどこしあっている快感には及ばないものの、若さゆえの無尽蔵なその力は、酒の酔いに関係なく、昂まりは持続する。
 さやかは左右の手でふたりの昂まりに同時に過激な刺激を与える。
 もし自分がアイドル歌手・杵築さやかのファンだとしたら、さやかにこんな事をして貰ったらとんでもなく興奮するのだろう、と想像すると、ふたりの昂まりは更に硬度を増して、ふたりは互いの顔を見ながら、ほぼ同時に、勢いよくエキスを放つ。

 2

「ちょっと待てよ。おまえ、あの頃、ジョニーさんも満更でもないって言ってただろ?」
「そうやって、人の過去、勝手に捏造するの、やめて貰っていいすか。瀬川さん」
「せがちん」
「はい?」
「せがちんって呼べよ。あの頃みたいに。やまちん」
「……僕も、瀬川さんも、あの頃の、夢見る十代の少年じゃないでしょ」
「シャネルだかジバンシーだか、いい匂いで、ジェントルタッチで……って、言ってたじゃねえか、青山のロイホで……それが、こうなったら、カネ目当てで被害者ズラか?」
「だから、誰か他のアンダーの奴の話とごっちゃになってんでしょ、それ」
「深夜に、いつもの一番奥の席で、スパゲティアラビアータとか食いながら……おまえの笑顔とか、オレンジのバンダナとか、全部はっきり覚えてるっつーの、まったく。最近の事はどんどん忘れるのに」
「たしかに青山のロイホには何度か行ったけど」
「ほら覚えてるじゃねえか」
「ロイホには行ったけど、瀬川さんとそんな話はしてないよ、はっきり言って」
「俺の目ちゃんと見て、もう一度言ってみろよ」
「僕は、あの頃、瀬川さんにも、他の誰にも、ジョニーさんにされたひどい事を話せなかった。ひとりで抱えて、三十年以上、ずっと、苦しんでた」
「なかなかの名演技だなあ、たいして売れなかった割には。それだけできれば大したモンだよ、まったく」
「なんと言われても、これが真実ですよ。はっきり言って」
「……ついでに、オレとの事も、なかった事にしてんのかよ? 山辺サン」
「……」
「オレは、おまえの声も顔も体温も、全部、覚えてるよ」
「ホント、マジで、やめて貰っていいすか、そういうの。絶対、誰か他のヤツとごっちゃになって」
「上等じゃねえか。あの時と同じようにしてやって、思い出せてやろうか?」
「……」
「オレの中には、あの頃のオレが、いまでもいるよ。おまえの中のやまちんはどこ行っちまったんだよ、まったく」
「そんなの、とっくに、いなくなってるよ!」
「俺とふたりだけなのに、そんな無理すんじゃねえよ。つまんねえ大人になりやがって」
「瀬川さんといまさら青春ごっこしても、どうにもなんないだよ、はっきり言って」
「ごっこで悪かったな」
「いいすか、瀬川さん。とにかく、今回の話は、瀬川さんにとってもチャンスなんだって。聞いてるよ、シャイニングスターズ、結構やばいって」
「そんな事ねえよ」
「やればやるほどアカだって」
「おまえの方はどうなんだよ。最近、全然、見ねえけど、まだ、いろいろやってんのか? 」
「芸能活動って事すか? 一応、看板は出してるけど、この十年くらいはさっぽりあかんですよ」
「だから、必要って事か、まとまったカネが」
「それは、瀬川さんも同じでしょ?」
「どうしてんだよ、家賃とか、生活費とか」
「食う為にバイトしてますよ、普通に」
「どんな?」
「飲食とか、大学生に混じって」
「情けねえなあ。食わしてくれるワンフーのひとりやふたり、いないのかよ」
「瀬川さんはいるんですか? ババアのパトロン」
「……おまえ、オレのオファー、断ったよな? アレはなんだったんだよ? オレを避けてたのか?」
「オファー? 何の話?」
「旗揚げだよ、シャイニングスターズの、十年前の」
「そんなの全然初耳ですよ、はっきり言って」
「本人の意向で今回は……って」
「誰と話したんすか?」
「名前は忘れたけど、おまえの担当のジャーマネだよ。なんか、やたら、まわりくどい話し方の」
「……あいつか」
「なんだよ。おまえに伝わってなかったって事か?」
「話せば長くなるけど、さんざんかきまわして、カネ持ってトンズラこいたやつがいたんすよ、多分あいつだ」
「チョクにおまえに言ってれば、出てくれたか?」
「シャイニングスターズでしょ? そんなの、出るに決まってるじゃん」
「そっか」
「出たくない人なんていないでしょ、シャイニングスターズ」
「逆に良かったかもな。泥舟に乗らずにすんで」
「……ホントにそんなにやばいんすか。噂はいろいろ聞いてるけど」
「あることないこと言うやつがいるんだよ」
「やってもやってもアカって聞いたけど」
「ミュージカルはどうしてもかかるからな、いろいろ」
「今回のコレでガッポリ貰って、立て直して、スケールアップすればいいじゃん」
「そんなにガッポリ貰えんのか?」
「人数が多いほどいいし、こういう言い方するとアレだけど、はっきり言って、瀬川さんみたいに、ちゃんとグループでデビューして売れて、いまも業界に残ってる人がいれば、結構違うかもって」
「ジョニーさんにやられて、ずっと苦しんでて……みたいな事をオレが言えば、おまえの取り分もアップするって、そういう話か?」
「僕だけじゃなく、瀬川さんも、他のみんなも、みんなハッピーって事ですよ。どうせ、あっちはむっちゃカネ持ってんだから、貰えるもの貰っても、誰も文句言わないって」
「オレは無理だよ、お前みたいな演技力ねえから」
「実際された事を普通に言えばいいんすよ。もし覚えてなければ、会の連中が証言したの読めば思い出すかもしれないし、最悪、適当にでっちあげたって」
「ハナシ、あわせてただけなんだよ、おまえやみんなに」
「あわせてた?」
「オレは、やられてないんだよ、ジョニーさんに」


 
 本当はよく覚えてなかった。
 昨日、久々に会った山辺に、俺は全部覚えている、あの頃の自分はいまでも残っている、みたいな事を言ったのは、なかば、その瞬間のでっちあげだ。
 三十年も前の事なんて、それらしい記憶があるにはあっても、どこまで事実に即した記憶なのか、自分でもよく判らない。山辺が言うように、他の誰かとの記憶がいろいろごっちゃになっているのかもしれない。全てが曖昧。
 もっと親密な感じで、最初は思い出話から入るのかと思っていたのが、ど頭からひたすらビジネスライクな山辺の態度に腹が立って、それで「いまでも残っている」なんて事を言ってしまったのかもしれない。
 直前に食べたものならなんとか覚えていても、数週間も経てば、日記やメモに残して置かない限り、ほとんど覚えていない。日記やメモがあったとしても、そこに書いてある事が、嘘や勘違いという可能性だってある。三十年の前の事なんて夢のようなもの。
 合宿所や旅先のホテルで、アンダー同士がじゃれあった末に性的行為に及ぶ事は度々あった。それは、なんというか、遊びの延長、レクリエーションの一貫、という感じで、時に、その遊びに、同世代の女性アイドルが加わる事もあった。他のアンダーのメンバーがどう感じていたかは知らないが、俺の場合は、そういう戯れ事(時に性行為そのものにエスカレートする事もあった)は、別にアイドル予備軍でなくても、遊んでるミドルティーンの男女なら、普通にやっている事なんだろうという感覚だった。
 そういう行為を完全に拒否するアンダーもいたが、お互いに見せ合う、勃起させるまでの速さを競う、大きさを比べる、といった遊びにさえ参加しなかった奴は、ごく少数だった。
 山辺と俺がベッドをともにしたのも、そういう遊びの延長の感覚だった。お互いに「痛いのはイヤだからケツはやめておこう」と一致してフィニッシュには手か口を使った。山辺の手の使い方は、自分とは若干違っていて、それを新鮮に感じた。女性にされた経験も皆無だった十六歳の山辺は、強がって口を使う性技を先に俺に施してくれて、それは最初は全然下手だったが、攻守を変えて俺が山辺にしてやった後は抜群に上達した。
 山辺が言うように、実は、俺は山辺とは寝ていなくて、まぎれもなくこの身体が覚えているような気がするこの記憶が、実は他のアンダーの誰かとの記憶、もしくは、夢か妄想を実際の記憶のように感じている可能性もあるのだろうか?
 いや、そんな筈はない。
 少なくとも最初の時の、山辺の声も肌さわりも、山辺が放った絶頂の匂いさえ覚えている。
 だけど、もし、夢の記憶が、現実の記憶以上に鮮烈だったとしたら?
 三十年も経てば、当時の記憶の全てが夢のように感じられる。
 実際の記憶と思っているこの記憶が、それは夢の記憶だ、と言われたら、俺はそれを覆す事はできない。他に誰もいない部屋でふたりっきりで施しあった山辺と俺の行為は、山辺に否定されたら、あったともなかったとも証明できっこない。
 昨日、山辺に「俺はジョニーさんにやられてない」と言った。
 実は、これも、本当は、よく覚えていない。
 ジョニーさんに手で触られて射精したような、曖昧な記憶はあるのが、この記憶が、現実なのか、夢の記憶なのか、次の日の朝の時点で、既に曖昧だったのだ。
 半分眠っているような状態の時に誰かがベッドの中に入ってきて、後ろから抱きつくような姿勢で触られて、いつのまにか脱がされて、手で触られてあっという間に射精した。触れられた瞬間に「あ、この指の感触、この匂いは、ジョニーさんだな」と思った記憶はたしかにある。
 だが、最初から最後まで、暗がりでふとんの中で、顔を見る事なく行われたので、極論、指がささくれだっていて、ジョニーさんと同じ香水を使っているアンダーの誰か、という可能性もある。
 更に言えば、最初から最後まで、夢の記憶だった、という可能性もある。
 それもこれも、いまとなっては、俺にとっては、青春の一時期の良い思い出だ。
 もし、本当にジョニーさんにやられたとしても、俺の場合は、一度だけだったし、夢の中の出来事のような記憶で、嫌な思いはなかった。
 〈性加害〉と騒いでいる連中は、本当に、そんなに嫌だったのか?
 本当に、そんなに、何度も何度もやられていたのか?
 被害者の会の中には、山辺以外にも、同時期に合宿所にいたアンダーもいるが、当時はそんな事は一切言っていなかった。ジョニーさんも亡くなってしまったいま、本当の事かどうか、検証する事は多分難しいだろう。それにしても、社長になったニッシーの「甚だしい非道」は大うそつきもいいところ。ジョニーさんとアンダーが絡んでいる場にニッシーがいた事は何度もあったし、ふざけて遊んでいるのを少しづつ発展させて、性的行為に持ち込むのをニッシーが率先してやっていた事もあった筈だ。
 バイセクシュアルと言われればそうだったかもしれない俺の性癖は、二十歳を超えて体が完全に大人になると自然に消えた。あの頃の男同士の戯れは、性的に男性も好き、というよりは、自分自身と戯れていただけだったのような気もする。本来はひとりでするべきマスターベーションを戯れにふたりでやっているような感覚。自分と他人の境界が曖昧に感じられるくらい、ほんの一時期、俺と山辺は一心同体のような日々を過ごしていた。 
 被害者の会に参加して、山辺が言うように、1000万単位の賠償金を得たとしても、シャイニングスターズはもう駄目だ。いまのやり方を続ける限り、必ず、赤字になってしまう。怪しい有象無象の連中に制作資金の一部が流れてしまうのを全てリセットしない限りどうしようもないが、連中を排除しては興行が成り立たない。続けるも地獄、やめても莫大な借金は残る。八方塞がりだ。
 昨日、山辺の前では強がってみせたが、実情は、限界に近い。四十代半ばになって身体も以前のように動かなくなってきた。ミュージカルの演出家、振付師としての才能はない事も、この約二十年ではっきり判ってきた。あの有象無象の連中が、それでも、俺をかついで、ほめてくれるのは、全ては金の為だ。判っていながら、ずるずると続けてきたが、心も、資金繰りも、もう限界だ。

 4

 本当はよく覚えていた。
 昨日、当時ぶり、約三十年ぶりに、瀬川くんにふたりっきりで会って正面から顔を見ながら話をして、「やまちん」と呼ばれて、厳重に蓋をして奥底に封印した筈のあの頃の事がどーっと蘇ってきて、涙が出そうになったのを必死に堪えた。
 三十年も前の事だけど、まるで先週の出来事のように鮮明に、はっきりと覚えている。
 部活の延長のような気分で、レッスンして、ステージでバックダンサーとして踊って、飲んで歌って騒いで。合宿所や旅先のホテルでアンダーの仲間や同世代の他のアイドルの男女と戯れて、時にそれが一線を超えたりもした。
 僕の人生で唯一輝いていた青春の日々。
 昨日、瀬川くんと話しながら、少しでも気を抜くと、昔の記憶の世界に浸って現実から目をそむける生活に引き戻されそうになりそうで、必死でそれに抗っていた。あの頃の出来事の意味を真逆にして、今回の賠償金を貰って生活を建て直さないと、この先、どんどん先細っていくだけの人生だ。
 昨日、瀬川くんに皮肉を言われたけど、本来の僕は、平然と嘘をつけるようなタイプの人間ではない。ジョニーさんにされた事は、瀬川くんが言っていた通り、少なくとも当時はそんなに嫌な事だと思っていなかった。でも、今回、ちゃんと賠償金を貰う為には、あの頃の事を全部〈嫌な想い出〉にしなくちゃいけないんだ、どうしても。
 去年までの生活には、もう戻りたくない。
 例の伝染病もあって、芸能の仕事がほとんどゼロになって、家賃を払えなくなって最低限の部屋に引っ越した。将来の希望もなくなって、生きて行く為に居酒屋の皿洗いと店内清掃のアルバイト。深夜に帰宅して、アンダーとしてスパークスのバックで踊っていた三十年年前の自分をVHSビデオで繰り返し見て、紙パックの焼酎を飲むうちに夜が明けて、気絶するように眠る。
 過去の栄光に縋るだけのそんな生活から抜け出す為には、過去を換えてしまうしかない。
 あの頃は、僕の人生で唯一輝いていた青春の日々ではなかった。
僕は叶わない夢を追い続けていた身の程知らずだった。
その象徴がジョニーさんに何度も体を弄ばれた事だ。
 過去を捨てて記憶を換える為に、昔のメモもVHSも捨てて、新しいノートに嘘の心情、当時を完全否定するような事を書いた。
 その文章を何度も何度も読み返すとノートに書いてある方が本当のような気がしてきた。
 瀬川くんの喋り方は三十年前とはすっかり変わっていたけど、それは、ミュージカルの製作・演出・出演という、多くの人を引っ張っていく仕事を続けていれば、ああいう口調で渡り合っていかないと仕方がないのだろう。喋り方は変わっても、声そのものは、三十年前と殆ど変わっていない。その声を聴いていると、過去を捨てて記憶を換える為に今年に入ってから数ヵ月続けてきた努力も、被害者の会に託されたミッションも、全て忘れて、三十年前の世界に浸る生活に引き戻されそうになった。
 あの頃のように、瀬川くんや同世代の仲間と戯れて、ただその瞬間だけが愉しいだけの毎日に戻れたら……なんて夢想をしてしまった。
 そんな事はできる筈もないのに。
 だから必要以上に強い口調で瀬川くんが言う事を否定した。

 5 

 ホテルの大きなベッド、互いの息がかかる距離。
 薄暗い照明のせいか、横にいる男の顔は、あの頃の顔にしか見えない。
 心がそう思いたがっているだけなのか、本当にそう見えているのか。
 自分で自分の目が信用できない。
 果てて、ほぐれていく、その部分に、互いにそっと触れている。
 目を閉じたまま、ボソボソと話す。
 その声もあの頃と同じ。
 この三十年が夢か幻で、実は、お互い、いまも十代の少年なのでないか。
 
「あの頃、ジョニーさんにこういう事されるの、ホントのホントに嫌だったのか? 」
「多分、あの頃は、そんなに嫌でもなかったと思うんだけど、せがちんに言ったほど平気ではなかったかも。会の人たちの証言読んでると、自分もそうだったような気もしてくるし。あの頃は、ジョニーさんよりもっとジジイとやったりもして、それでも意外と平気だったような気もするし……せがちんは、ホントのホントに一度もなかったわけ? 」
「いや、実は、ひょっとしたら、ジョニーさんだったかも、ってのはあったんだけど、寝ぼけてて、よく判んないんだ」
「ホントに手だけ?」
「いや、それも、よく覚えてない。でも、あったとしてもその1回だけだったし、やまちんは何度もだったんだろ? 多分、オレは、ちょっと、大人びていたから、好みじゃなかったんじゃないかな。ジョニーさんは、あの頃のやまちんみたいな、いかにもいたいけな少年、みたいなのが好きだったじゃん」
「あれ、せがちん、なんか、話し方が昔に戻ってるね?」
「ああ、言われてみれば、そうかな」
「なんか、チンピラみたいな話し方だったのに」
「あれは、なめられちゃいけないと思ってさ、無理にああいう感じにしたんだよ、独立した時に」
「無理してたんだ」
「でも、そのうち、ああいう風に話すのが当たり前になってたなあ」
「いまの方がいいよ」
「四十半ばのおっさんが、こんな、ナイーブな感じ、気持ち悪いだろ」
「じゃあ、いまだけ」

「……ジョニーさんとそういう事にならないと、デビューできないってのいはデマだったって事?」
「現にやまちん、デビューできなかったじゃん」
「せがちんはデビューしてるもんね」
「ジョニーさんはさ、たしかに変態だけど、本物を見抜く目は本物だったと思うよ」
「ジョニーさんとそうなって、デビューして、人気が出た奴って、ひとりもいなかったんだだっけ?」
「いや、それこそ、ニッシーは、そうなってから覚悟が決まって本気になったんじゃないかって、俺は思ってるよ。やまちんがくる前だけど、最初の頃のニッシーって、素質はありそうなのに、練習嫌いで、やる気があるんだかないんだか、よく判んない感じだったからな」
「僕が入った頃は、たしか、もうデビュー間近で、キレッキレの頃の印象しかないなあ」

「……結局、俺にあったのは、ある程度人を集めるだけの何かだけで、ジョニーさんみたいにホントに凄いレベルのショーを作る才能はなかったんだよ」
「でも、客は入ってるんでしょ?」
「満杯になるのは中規模以下の小屋だけさ。一回だけ帝劇でやった時は、最後まで半分くらい余ってて、最終的にはダータでばらまいたんだ」
「どっかから廻ってきたDVD見たらすごかったけどなあ」
「ジョニーさんとかコージみたいな、突き抜けた演出の才能は俺にはない。自分が演者として突出してなかったから、演者にもとことん厳しくいけない。ホンもそんなに良くないのは判っていても、それを直す才能もない。それが判ってきながら続けてきて、せめて見た目だけでもってセットや衣装や照明には凝るから、毎回、赤字」
「話はよく覚えてないけど、ちっちゃいテレビで見ても、オープニングで鳥肌立った」
「幕が上がって、音楽がジャーンとかかって、照明がバーンと当たって、その瞬間だけ、借金の事も何もかも全部忘れて、ああ、やって良かったって、思っちゃうんだよ」
「でも、小さな小屋なら満杯になるんでしょ? いろいろ見直せば利益出るんじゃないの? 」
「毎度おなじみのヤバい方々も絡んでるんだよ」
「いまでもそうなんだ。あの頃は当たり前だったけど」
「多分、次が、最終公演かな。これ以上ヤバい方面から金引っ張ると、自己破産もできなくなるし」
「でも、せがちんは、なんだかんだ言っても成功者だよ。一応デビューもしたし、ミュージカルだって十年以上続けたんだから」
「どこが成功なんだよ。グループはあっと言う間に解散、毎年ミュージカルやって残ったのは莫大な借金だけ。会社つぶしたら、寝る所もないんだよ、まったく。自宅もとっくに手放して事務所に寝泊まりしてるんだから」
「一回でもあの舞台に立ったら成功者だよ」

「……ホントに1000万単位で入りそうなのか、賠償金?」
「せがちんも、適当に証言して、貰っておきなよ」
「貰えたって、そのまま借金返済に廻るだけだからなあ」
「もし、僕の分を貸してあげても、全然、足りない?」
「なに考えてんだよ、おまえは、その金で、どっかで店でもやるんだろ?」
「そのつもりだけど……」
「繁盛させて、俺も雇ってくれよ」
「あ、それいいじゃん。小さなステージがある店にしてさ、ときどき、僕とせがちんが、合間にちょっとだけ、歌ったり、踊ったり」
「いいね。照明と音響だけはちゃんとしよう」
「だめ、せがちんに任せたら、いくらお金あっても足りないから」
「昔の仲間にも声かけてゲストで出て貰おうぜ」
「さやかとか?」
「……俺も、いま、さやかの事、考えてた」
「でも、さやかは無理か。全然現役バリバリだもんね」
「そこを店長のおまえがなんとかしろよ。昔のよしみで、お友達価格で」
「うわ。なんか、いま、さやかと一緒に歌ってる画がうかんじゃった」
「小さな店でも、大きな夢、だよ」
「夢をみるなら大きな夢……あれ、いま、この瞬間も、ひょっとして、夢かな?」
「人生なんて夢みたいなもんだからな」

 日本の法律が適用されない例の特別区にだめもとで申請したらなぜか審査に通り、OMNICアプリを通して発注する事で基本的な部分は格安で済んだので、ステージや音響や照明に金をかけた。
 席数三十の小さな店は今宵も満員。
 今夜は特別ゲストとしてさやかがステージにあがって当時のヒット曲を歌い、いつもはふたりだけでステージを盛り上げる俺と山辺がいまはバックダンサー。
 一瞬の暗転の時に山辺の耳元で囁いた。
「あの隅のおじさん」
「うん、僕も気づいてた」
「似てるよな」
「あれはそうだよ、ジョニーさんだよ」
 さやかの曲が終わって、店全体の照明がいったん完全に明るくなった瞬間に、よく目を凝らして見たらよく似た雰囲気のおじさんだった。すぐにさやかの2曲目が始まって照明はピンスポになり、次に少し明るくなった時にその方向を見たらいつの間にかいなくなっていた。
 3曲だけ歌う予定だったさやかは客席のノリとリクエストに応えてアイドル時代の曲を1時間以上歌い続けた。

 通常の営業が終了した深夜0:00以降は希望者だけが参加するシークレットパーティーの時間。どこにも告知していないのに噂が噂を呼んで、最近の客は、ほぼ全員が参加してくれる。店のシャッターをおろして照明を落とすとパーティータイム。
 老若男女全員ショーツ1枚でなんでもありの酒池肉林。
 今日はさやかも特別参加。
 さやかが仕入れてきたスペシャルドリンクを飲むと意識も景色も朦朧として、店にいる人全員が20歳前後の若者に見える。
 夢か現かよく判らないが、いま、この瞬間が楽しければいい。
 どんな夢もいつかは覚めて、人生はいつかは終わるのだから。
 今夜だけは朝まで楽しもう。

【了】

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■1984年日記
●1984.11.12(月)
○12:00過ぎ起床。何も食べずに5·6体育。とにかく寒い。1試合動くとなんとかなったが。
○7·8映画表現論サボって「秋桜」でスパ・セット(U野、S浦、M浦)。
○S浦とロサ会館4F「どっ来処(どっこいしょ)」300円で酎ハイ飲み放題。

●1984.11.13(火)
○サークル総会。副部長より外務の方が良かった。
○ピカデリー2で「エレクトリック・ドリーム」。
○家庭教師。

●1984.11.14(水)
○3·4英2。和定食。5·6仏2。
○午後麻雀。+27(M浦+21 S浦−16 U野−32)。
○芳林堂で「エロチック街道」。
○サークルの機関誌の企画考える。

●1984.11.15(木)
○15:00頃起床。全欠席。

●1984.11.16(金)
○全欠席。
○深夜から朝まで麻雀。半荘3回。M浦+78。途中セブンイレブンの隣でビーフカレー。

●1984.11.17(土)
○12:30前起床。何も食べずに急いで行くが、総会が始まったのは14:30過ぎ(予定は13:00)。
前年度活動報告はけっこうシンラツな質問も出て盛り上がる。
○1次会2500円、2次会「磯善」ロサ6F 2000円。2次会で久々にS子とちゃんと話す。話が通じる人ってのはなかなか少ないと思う。A谷さんM子さんとにっかつ。A谷さん終電がなくなって泊まっていくことに。

●1984.11.18(日)
○13:30頃起床。すぐ部屋を片付ける(麻雀やりっぱなしのまま)とかするべきなのに「スーパーJ」などぼけ〜っと見てしまう。
○にっかつ遅番。早番はA谷さん。S子ちゃんのシナリオ受け取る。
○休憩時間、旭屋書店で「私説東京繁昌記」「道化師のためのレッスン」、「マイアミ」でピラフ。
○18:30前S子ちゃんにっかつに来る。新体制の映研班の話。

●1984.11.19(月)
○にっかつ1時間代理、N嶋さんから1時間分即貰う。
○マクドナルド、チーズバーガー230円、ポテトS140円、コ−ラS120円(計490円)。
○昼休み後半スコープ。S子ちゃんに映夢を。
○5·6体育。トレーナー1枚じゃ寒いのなんの。ハンドボールで得点1、やたらと驚かれる。
○7·8映画表現論久々に出席。蓮實先生、寝ていなくてお疲れ。異様に早く終了(15:40)。
 サークルの人たちと2食でとりうどん。
○テアトルダイヤで「セカンド・チャンス」「メル・ブルックスの大脱走」。

●1984.11.20(火)
○にっかつ早番。キネ旬、ファイトを読む。
○東武12F「マイアミ」でピラフ(550円)。
○夕方、家庭教師のアルバイト。
○朝晩の寒いこと! 向うと変わらない感有り。

●1984.11.21(水)
○16:30前起床(!)。全欠席。洗濯。
○テアトル池袋で「お葬式」。
○ケンタッキーでマイパック(440円)。
○帰宅した所にS子ちゃんから架電、約20分。バイトの話「コーラのお金を出しているとミニスカートの下半身に客の視線が……」
○深夜小林信彦読む。

●1984.11.22(木)
○安田成美コンサートat慶応大学三田キャンパス。構内で迷って迷って間に合わないかと思ったが20分遅れで開演。
○ファミレスで牛焼肉セット(800円)、ゴハンが少ない、味噌汁しょっぱい。
○SOUND BOX、料金値上げでシングル100円。
○にっかつでS木sanの8m/m班映画構想聞く。

●1984.11.23(金)
○祝日。駅売店でORICON、ビッグコミック。1stキッチンでハンバーガー、チーズバーガー。
○にっかつ早番。昼過ぎA谷さん来る。休憩取らずに16:00で上がって16:20の回を観る。
○車寿司、SOUND BOX(返却のみ)、芳林堂で「ブレイバック」「リーンの翼3」。
○「ガリアン・ワールド」最近のアニメ主題歌はかっこいい。
○深夜、おでんで日本酒をたしなみつつ「逃れの街」を見る。水谷豊がシブい。甲斐智枝美のヌードなかなか、演技は……? なんというか、いたたまれない、見終わってスッキリしない映画。

●1984.11.24(土)
○夕方池袋へ。STAR WARSゲームやっと4面メド。
○マクドナルドの隣の3F「JUMBO」にて日替わりディナー(1000円)。
○H野と「BIRTH」「時かけ」「ナウシカ」見る。

●1984.11.25(日)
○「かつ友」にてショーガ焼き定食。戻ってまたウトウト。
○高田馬場で英検2級2次。Tさん(サークルの先輩)「全部試写会で観たので正月に観るものがない」「グレムリンもゴーバスもいまいち」。面接は約10分。意味が殆ど判らない。質問は多分0点だろう。
○部屋に戻ってH野とまたトランプやビデオ。
○フロ屋の向かいのラーメン屋「分福」ラーメン300円ギョーザ250円。
○「時かけ」を再び見返す。高柳がオモロイ(デ・ジャ・ブー)。

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■2024年日記
●2024.11.11(月)はれ
○渋谷中央図書館までロングウォーク。小学校の返却BOXで本返却。恵比寿西を抜けて線路際の道、途中で下をくぐって明治通り。渋谷駅前を抜けるのに一苦労。観光客多く、原宿あたりは結構な人出。パソコンが使える4Fの席に座ってみるが椅子とテーブルの高さが合わないので非常に打ちにくい。出かける時に100%だった充電、取り出してみるとファンがまわって発熱して50%。いずれにしてもこのMacBook AirはTO GOはきつい。閉館間際にキャレル席にちょっと座ってみるがこっちは高さは問題ない。斜めにねっている天板が気になるが。来た道とは別の道の暗い道を抜けて明るい方向を目指すと結局竹下通り、原宿から山手線で帰る。
○夕食、くら寿司はかなり待ち時間あるのでスルー、魚原価と謳ってる店は空いているように見える席があるのにやたらと待たされるのでやめて、少し歩いて結局サイゼリヤ。7品+デカンタ×2(白1赤1)で結構酔う。料理頼みすぎて途中から完全に満腹。ふたりで約3200円。

●2024.11.12(火)はれ
○夕食はごろも缶詰、ゆでたまご、キムチ、インスタント味噌汁、ごはん2個。
○ほんの少し仮眠のつもりが23:00頃から4:30過ぎまで寝てしまう。
○明け方、冷奴、肉うどんヌードル、焼酎水割り2杯。
○「爆笑問題カーボーイ」ホテルの部屋の副流煙の話、その部屋は空気清浄機完備などで完全に換気できる部屋だったのだろうか? 100%換気できないのであれば吸っている最中でも吸った後でもいずれ大差はないのでは。

●2024.11.13(水)はれ
○サクラステージまで散歩。風がけっこう冷たくて厚手半袖Tシャツに薄手のジップアップでどうかと思ったが歩いているうちに全然平気になってくる。以前に比べてかなり店が増えていた。2Fの東急ストア、4FのTSUTAYA・飲食街をチェック。
○せっかく渋谷に来たので映画を観るつもりで道玄坂を抜けてセンター街方面へ行くが、歩き回っている間になんとなく観る気が失せてくる。観光客と若者に溢れているいまの夜の渋谷に、30年前に感じていたホームタウン感はほとんど感じられない。スクランブル交差点手前から地下に入って東横線、電車に乗るまで相当歩いて相当下る。ハチ公前の階段から簡単に乗れた時代を記憶しているだけにこの距離はキツい。乗るまでにこんなに歩くなら歩いて帰った方が気が楽。
○代官山のピーコック、水は高い、ライトミール売り切れ、チーズクラッカーもポンスケも置いてない。
○スリープしていただけのMacBook Air今日も異常発熱して44%、そのままこの日記を打っているとたちまち22%。だめだこりゃ。
○夕食はスパイシーチキン、春巻き、納豆、キムチ、野菜スープ、ごはん、焼酎お湯割り。
○最後にもう一度テストのつもりでSMCリセット&PRAMクリアしてスリープ、2時間後にチェックするとバッテリー100%で発熱もしていない。通常作業で約60分で87%に低下。この状態なら充分TO GOできるが以前にもSMCリセットの直後だけOKだった事はあったのでどうなるか。

●2024.11.14(木)くもり
○約1時間スリープテスト、100%のままで発熱なし。いよいよ買い替えるとなったら最後の本気を出したのか? 約2時間使用で約30%減った。
○今夜死ぬ可能性だってゼロではないのだから極端に切り詰めた生活はしない。なるべく毎日なにかひとつは新しい事に挑戦する。行った事がない店や公園に行く。行った事がある店で違うモノを頼む。……と決意しても、15:30を過ぎて暗くなってくるとだんだん出かける気が失せてくる。冬場は「なにはともあれ遅くとも15:30までに散歩には出る」と決めた方がいい。そうしないと近所散歩さえ行かない言い訳を脳の野郎が次々と用意してくる。
○夕食はカップそば+たまご、ごはん1個、キムチ。

●2024.11.15(金)くもり
○MacBook Air、約6時間のスリープ中に充電0になってシャットダウン。やはりダメっぽい。
もう一度SMCリセットして今夜テストしてダメだったらあきらめる。
○最近洗顔用のタオルがいつも湿っている感じがするので検索するとタオルの寿命は洗濯回数30回、いま使っているタオルはいつ買ったのかも思い出せないくらいだからとっくに寿命。
○近所散歩。階段を登って代官山〜恵比寿西飲み屋街から駅前に抜けてピーコック。
○夕食は肉野菜炒め、納豆、キムチ、味噌汁、ごはん1.5杯、焼酎お湯割り。
○深夜、冷奴、ふりかけとキムチでごはん1個、ポンスケ、焼酎水割り2杯。
○本日届いた親指サポーター、シリコン製(?)で圧迫感強すぎ、着脱もすっといかないので、以前から使っていたタイプを発注(かぐや姫、amazonでは売り切れだったが楽天にあった)。
○大相撲11月場所6日目御嶽海が土俵下で動けなくなってたんかとストレッチャーで退場(初めて見る退場方法)。
○プレミア12、僕が監督なら①栗原②牧③森下④清宮or佐野と組む(⑤以降は当日の調子などで日替わり)。②に小技ができる選手を置くクラシカルな打線は初回に小技を絡めて1点を取る確率は上がるかもしれないが、長い目で見れば強打者に多くの打席を与える方が多くの得点を上げる確率は上がると思う。
○26年W杯アジア最終予選インドネシア0-3日本。インドネシア代表の選手のほんんどが生粋のインドネシア人には見えない。

●2024.11.16(土)くもり
○MacBook Air 約50分で100%→75%、やはりバッテリーは限界なので、MacBook Air2024(M3)をポチる。
○昼食は高菜チャーハン&スープ。
○映画「あんのこと」amazon。河合優実主演以外予備知識なしで。結構悲劇的な映画だった。
○夕食は豚肉・白菜・ネギ・豆腐の寄せ鍋、レバー、刺身、金麦。
○着衣体重約75㎏に到達。いよいよ小太りじいさん体型になりつつある。
○大相撲11月場所7日目貴景勝の解説が具体的で面白い。こんなに話せる人だったのか。引退すると現役時代の勝利力士インタビューとうってかわってよく喋る力士は多い。いまぱっと他に思い浮かぶのはハギ(稀勢の里)だけだけど。

●2024.11.17(日)はれ
○昼食はパスタ、スープ。
○午後、中目黒公園、目黒川、大鳥神社前(お祭り)、不動公園、林試公園など、約2時間散歩。平和通りから円融寺を抜けた辺りで疲労感。碑文谷公園はやめて学芸大学から電車で帰る。
○カウリスマキ「枯れ葉」U-NEXT。スマホ、パソコン、テレビが殆ど登場しない世界。古い大きなラジオからロシアとウクライナの戦争のニュース。客も店員も中高年なかりのカラオケバー。今作はしないのかと思った犬は終盤に登場してなかなかいい演技をする。例によってカウリスマキ作品の良さは言葉では説明困難。
○夕食はフライドポテト、照り焼きチキン、オクラごま和え、とろろお吸い物、寿司、日本酒、金麦。
○夜食は温奴、キムチ、ゆでたまご、焼酎お湯割り2杯。

●2024.11.18(月)くもり
○8:00〜22:00の間に配達はいつ来るか判らないので精神衛生上よくない。これならコンビニ受取の方が良かった。配達中のバーは朝から殆ど進まない。
○やっと届いたMacBook Air2024(M3)を夕方からセットアップ。移行前にOSアプデ。移行は最初は例によって5時間などと表示されるが、たちまち減って、それでも30〜40分はかかったか。
案の定BetterTouchToolはそのままでは使えないが画面の指示に従ってすぐに使えるようになった。
心配だったiText Expressも無事起動、マーク設定も問題なし。〈16:00〉と打つと〈じろ〉と変換されてしまう謎のエラーは新マシンにも引き継がれていた……。
○夕食は「AFURI」でゆず醤油+炙りチャーシュー。麺もスープもチャーシューも美味しい。約1400円。この30〜40年で一番値段が上がったの身近な食べ物はラーメンではないか。
○昨日の昼間は半袖でも平気そうな夏の陽気だったのに今夜は完全に冬の寒さ。
○夜食はミニポテチ、ゆでたまご、チーズクラッカー、ウイスキーお湯割り2杯。

●2024.11.19(火)はれ
○恵比寿西から駅近辺散歩。恵比寿市場の中に昼からやっている小さな飲み屋を発見。
○このマシンのキーボードのタッチに少しづつ慣れてきた。以前のマシンはこのキータッチだった筈。非常に軽いタッチで打てる感覚。
○夕食は焼鳥缶詰、キムチ、インスタント味噌汁、ごはん2個、金麦。
○夜食は冷奴、カップ肉うどん、焼酎お湯割り1杯+焼酎水割り2杯。
○「大竹まこと ゴールデンラジオ」〈白い吉野家〉ってのは赤坂にあった高級吉野家の事だろうか?普通の牛丼が500円弱の時にこの店は1000円くらいしたと記憶。マスコミでかなり話題になっていた。僕が一度だけ行ったのは1990年頃。

●2024.11.20(水)時々雨(寒い)
○ステイサム「ワイルドカード」冒頭約20分、映画ノートを見返すと18年に見ているのに全く覚えてない。
○夕食は甘だれチキン、ブロッコリー、納豆、キムチ、味噌汁、ごはん2杯、焼酎お湯割り。
○夜食はおかずの残り+ごはん少々、キムチ、ゆでたまご、ポンスケ、焼酎お湯割り2杯。
○勝敗の数字を間違える(尊富士戦、「失礼しました」と言わずにしれっと正解を言う)。時間いっぱいに気づかず?「おっと、立ち会い成立」(玉鷲戦、こっちは「失礼しました」有り)。”現在”の「ただいま」を”帰宅”の「ただいま」のアクセントで読む。ミス連発のNHK実況アナ。

●2024.11.21(木)くもり
○胃の右下辺りの痛でで目が覚めて痛みでしばらく眠れない。起床後の運動は普通にできたがいまも押すと痛みがある(硬くなっている)。
○夕食はカップ焼きそば、キムチ、チーズクラッカー、チーズ1個、金麦。
○Match Factory! 前回てぶらでは絶対ムリだった699ウルトラ難しい、×10+砂時計+100Gでやっとクリア。
○夜食はごはん1個、温奴、焼酎水割り2杯。

●2024.11.22(金)はれ
○「ダンス・ダンス・ダンス」(下)読了。
○ガーデンプレイスのファミマイートイン。後ろが壁のテーブルはパソコン作業には圧倒的に低い。窓に面している5席はまだ少しマシに見える(満席)。
○ピーコックに向かう坂の狭い歩道、ちょうど前方にしばらく人が見えないので最大速度で歩いていると、中年男性が後ろから小走りで追い抜いていき、僕の歩行速度なら数秒後には追いついてしまう所で普通の歩きに戻り、向こうから来る二人組と追い抜き地点が重なりそうになる(せっかくあげた歩行強度を下げたくない)ので、止むなく小走りでその中年男性を追い抜く。なぜ小走りで追い抜いて行ってほんの数秒で小走りをやめたのか理解に苦しむ。そのまま小走りでどんどん行ってくれれば良いのに。
○夕食はおでん、肉団子、鶏肉甘辛煮、納豆、キムチ、ごはん1.5杯、焼酎お湯割り。
○夏場は夕方以降少しでも気温が下がってから散歩というスケジュールで無問題だが、冬場は暮れてきて寒くなってくると出る気が失せてくる。15:00を過ぎてぼやぼやしていると暗くなってくるのでできれば14:00前に出たい。

●2024.11.23(土)はれ
○昼食は高菜チャーハン。
○夕方シャマラン「オールド」。どんどん年を取ってしまう謎のビーチ。1日で6歳の子供が中年に。充分楽しめたが真相はいまいち。
○夕食は焼餃子、水餃子、キムチ、ごはん、金麦350×2、デザートに柿。
○夜食は冷奴、ゆでたまご、キムチ、せんべい、焼酎3杯。

●2024.11.24(日)はれ
○起床後起きてからしばらく軽い目眩。昼頃ほぼ治まる。
○三人の女 夜の蝶(1971=斎藤光正)ながら見。ロマンポルノに移行直前のにっかつ作品。松原智恵子(1945年誕生)が藤竜也との絡みでぎりぎり露出(背中のヌード)。クラブのシーンで毎回歌っている青江三奈、歌声が大きすぎて台詞が聴き取りにくい。鏑木創の音楽にいくつか良曲。
○昼食はたまごうどん。
○午後、祐天寺〜学芸大学商店街〜碑文谷公園散歩。山手通りに下る駒沢通りの銀杏は2本だけ黄色。油面公園は来年3末まで改修工事。祐天寺のオオゼキ、例の白パン売り切れ
○ジャパンC1番人気③ドウドュース武豊。馬券はかすりもせず。
○大相撲11月場所、13勝1敗同士千秋楽直接対決、甥っ子(豊昇龍)仕切り戦で足が滑って琴櫻が初優勝。先日の正代も仕切り戦で足が滑っていた。滑らない素材にしてくれ。八角理事長の舌足らずな話し方ますますひどい(「内閣総理大臣」をまともに発語できず)。
○夕方、大林宣彦のドキュメンタリー。
○夕食はフライドポテト、鴨ロースト、ブロッコリーのおひたし、とろろお吸い物、寿司、日本酒、金麦。
○食後テレビつけたままウトウト。プレミア12決勝0-4敗戦を夢現で聞く。先発戸郷4失点(ソロ&3点弾)。
○「海に眠るダイヤモンド」杉咲花と宮本信子では声の質が違い過ぎるので違和感しかない。

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