EVER LASTING MOMENT VOL.4

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■EVER LASTING MOMENT
○全編昭和の薫り漂うWEBマガジン(ほぼテキストオンリー)
○推奨年齢50歳以上
○無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)
○小説/散文/妄想/企画 或れ此れ其れ何れなんでも有り
○誤字脱字間違い辻褄合わず各自適宜補完にてよろしく哀愁

いずれ一夜の夢ならば
呑んで謡って ホイのホイのホイ
今日も明日も ホンダラッタホイホイ

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■映画/ドラマ/スポーツなど(2024/09/05更新)
●2024年
○放送中 虎に翼(朝ドラ)伊藤沙莉
○放送中 光る君へ(大河ドラマ)吉高由里子
○放送中 海のはじまり(月21:00フジ)目黒蓮
○放送中 新宿野戦病院 (水22:00TBS)小池栄子 脚本クドカン
○配信中 STAR WARS アコライト(Disney+)※全8話
○配信中 ハウス・オブ・ザ・ドラゴン2(U-NEXT)※全8話
○配信中 ザ・ホワイトハウス(U-NEXT)※全7シーズン
○配信中 地面師たち(Netflix)※全7話
○06/28金 ルックバック(2024=押山清高)58分 ※一律1700円
○08/09金 ブルーピリオド(2024=萩原健太郎)115分
○08/09金 夏の終わりに願うこと(2023=リラ・アビレス)95分
○08/16金 フォール・ガイ(2024=デビッド・リーチ)127分
○09/06金 エイリアン ロムルス(2024=フェデ・アルバレス)119分
○09/06金 チャイコフスキーの妻(2022=キリル・セレブレンニコフ)143分
○09/06金 ナミビアの砂漠(2024=山中瑶子)137分 ※河合優実
○09/07土 しまねこ(2024=今関あきよし)66分
○09/13金 ヒットマン(2023=リチャード・リンクレイター)115分
○08/31土~09/20金 山口百恵映画祭(神保町)
○09/07土〜09/27金 プレコード・ハリウッド(ヴェーラ)
○08/26月〜09/08日 全米オープンテニス
○09/06金 ハンドボール新リーグ「リーグH」開幕
○09/08日〜09/22日 大相撲9月場所
○09/14土・09/15日 デビスカップ ※錦織圭出場予定
○09/25水~10/01火 ジャパンオープン ※錦織圭出場予定
○09/30月 おむすび(朝ドラ)橋本環奈
○09/30月 呪術廻戦最終回(少年ジャンプ)
○10/05土〜02/11火 モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)
○10/08火 機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(Netflix)全6話 ※1年戦争
○11/13水 プレミア12
○11/10日〜11/24日 大相撲11月場所
○11/22金 海の沈黙(2024=若松節朗)※倉本聰35年ぶり映画脚本
●2025年
○01/01水 ローズパレード(京都橘3回目の出場)
○1月 べらぼう(大河ドラマ)横浜流星
○02/14金 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド
○コブラ会 最終シーズンPART3(Netflix)※24年7月PART1/24年11月PART2
○3月 第6回WBC
○03/18火 MLB開幕戦ドジャースvsカブスat東京ドーム
○4月 あんぱん(朝ドラ)今田美桜
◯6月 サッカークラブW杯(新方式、32チーム)
○10月 ばけばけ(朝ドラ)
○09/13土〜09/21日 世界陸上(東京)
●2026年
○1月 豊臣兄弟!(大河ドラマ)仲野太賀
◯02/06金 ミラノ・コルティナ五輪
◯3月 WBC
○05/22金 STAR WARS新作
◯06/11木 サッカーW杯アメリカ/カナダ/メキシコ大会
○8月 Jリーグ秋春制第1シーズン
○12/18金 STAR WARS新作
●2027年
○世界陸上(北京)
○バスケW杯
○ラグビーW杯オーストラリア ※20→24に増加?
○12/17金 STAR WARS新作
●2028年
○EURO2028イギリス/アイルランド
○07/14金〜07/30日 ロサンゼルス五輪
●2029年
○世界陸上(バーミンガム?)
●2030年
○サッカーW杯モロッコ/ポルトガル/スペイン大会(100周年記念大会)
●2031年
○世界陸上
●2032年
○EURO2032イタリア/トルコ
○07/23金〜08/08日 ブリスベン五輪

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■こんな不測の事態
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

 もともと在宅でする仕事が多かったので、仕事のやり方は変わらなかったものの、制作費削減の波は、最下流の俺の所に如実に押し寄せていて、以前に比べて、受注量も受注単価も激減。仕事の先行きの不透明度がどんどん増す中に今回の伝染病の大流行。いよいよ仕事が減ってきたら近所の飲み屋でバイトでもしようかと思っていた目論見さえ困難になり、暇だけはあるので、売れるあてのない小説を書き始めてはみるが、思うように進まない。そもそも、俺には、何がなんでもコレを書きたい、というモノが果たしてあるのか?
 このせまい1Kの仕事部屋兼住居にずっとこもってデスクに向かっていると、ストレスも溜まるし、腰も痛くなってくる。俺の三大気分転換は、散歩、映画館、夕方または深夜のちょい飲み(時に痛飲)なのだが、この伝染病のせいでいずれも以前のように気楽には楽しめない。散歩はできなくはないが、肺炎を患って以降、常に鼻はつまり気味で喉はタンが絡み気味、長時間マスクをしていると、だんだん呼吸が苦しくなってくる。
 他人が視界にいない時には自分もマスクをアゴにずらすくせに、自分がマスクを着用している時に、アゴマスクやマスクを着けてない人を見かけると妙に腹が立つ。つい先日も、あごマスクで歩きタバコで激しく咳払いをして、道端にタンをはく初老の男(推定年齢70歳)と、ノーマスクで一切口元を覆う事もなく、何度も激しい咳をする若者(推定年齢30歳)に続けて遭遇。俺は、屋外・単身・無言・普通の呼吸で距離がある(またはすれ違うだけ)ならば、ノーマスクで全然構わないと思っているのだが、さすがにこの二人がいた空間を通る気になれずに迂回する。今回の伝染病でこういう世の中になる以前から、咳をする時にエチケットとして口元を覆わない奴を見かけると(死んでしまえ。俺のそばには来るな)と念じて睨んでいたが、こういう輩は他人の視線なんて気にしない。気にしないマインドだから平気で人が近くにいる所で口元を覆う事もなく咳ができるのだろう。
 散歩さえ半ばストレスで、マスクをした状態で混んでいる電車に乗りたくないので繁華街の映画館に行けず、もちろん深夜の飲み屋もやっていない。部屋でひとりで発泡酒を飲んでも解消されないストレスは、自分では意識できないレベルで相当積もっているのかもしれない。
 コンビニで買物をして、タッチパネルで支払い方法を選択して、スマートグラスに連携している電子マネーで支払うと、その横の機械から紙のレシートが出てくる。支払い履歴はネットで閲覧可能なのに長年の習慣で紙のレシートをいつものように手に取ろうとすると、若干のひっかかりを感じる。レシートがきちんと切れていなくて、次の部分のヘッダー部分が印字されているようだ。若い女性店員に見せると「無理に引っ張るとそうなるんで…」と、まるで俺が悪いような言い方をする。「無理に引っ張ってないけど」と言うと「いや、無理に引っ張るとそうなるんで…」と同じ事を繰り返すので「俺が悪いって言うのか?」「いや、とにかく、無理に引っ張ると…」「このマスクも、この邪魔な仕切りも、俺のせいか?」俺はマスクを取り、透明な仕切りを引きちぎり、「キャンセルするから金返せ」と紙パックのジュースを思い切り投げつけた。
 ジュースの直撃をみぞおちのあたりに受けた若い女性店員は「うっ」とうめいてうずくまる。カウンターの上に登った俺は渾身のかかとおとしでレジを破壊して、現金(推定30万円)をつかみとってバックパックに入れた。床に座り込んで苦しそうにうめいている若い女性店員をよく見ると、スタイルがよさそうなのでマスクをはぎとってみると顔も悪くない。怯えた小動物のような目で俺を見て「あ…あ…」と何かを言おうとするが、恐怖でうまく言葉が出てこない様子。俺は店員の口を塞ぎながら床に押し倒し、マウントポジションで両膝で肩を押さえつける。恐怖で目を見開いた店員は「んむんっ…んむん」と、声にならない声を漏らして抵抗しようとするので、更に体重をかける。推定158㎝45㎏の店員は、185㎝90㎏の俺にこの体勢を取られて跳ね返す事は困難で、ただ脚をバタバタさせる事しかできない。
 こんな不測の事態に備えて持ち歩いていたスリープドラッグ(スプレータイプ)をバックパックから取り出し、店員の口を左手で塞いだまま、噴出孔を鼻腔に押し付けて中身を繰り返し噴射する。やがて店員の動きが止まってぐったりする。そのままひきずってバックヤードに連れ込み、店員が首から下げているIDカードで店内のコンソールにログインして、臨時休店の処理を行なう。バックヤードと店内で作業に従事していた数台の作業ロボが停止して、照明が消えてシャッターが降りる音が聞こえてきた。
 スマートグラスでブラックウェブにアクセスして脳波操作モードをONにする。いつもなら感じるチップが埋め込めれているこめかみのあたりの痛みが、いまはアドレナリンが出ているせいか、あまり感じられない。
 俺は以前から、文化作品保存の使命と自分に言い聞かせて、ビデオテープにダビングして保存していた1980〜1990年代のアダルトビデオをデジタルに変換してはブラックウェブに上げていて、その数はほんの数百本だけだったのだが、ちりも積もればヤマト発進で、その対価としてブラックウェブから得られるポイントはかなり溜まっていた。このポイントを使うならいましかない。脳波操作モードのレベルをマキシマムに設定してブラックウェブに全ポイントを投入、状況を脳波で念じて説明すると、こんな不測の事態にも馴れているのか、ブラックウェブに繋がっている精鋭のハッカーから矢のようにリプライが飛んでくる。その情報を元に店内の監視カメラを切り、過去24時間の録画映像を強制消去。同時にハッカーはコンビニの地域管轄本部にハッキングをかけて、特に問題なく通常営業中と見せかけるフェイクデータを送る高度な処理をほんの数十秒で実行させる。
 従業員データから女性店員の素性が判明した。
 小林弥生。21歳。○○大学文学部英文学学科3年。
 興奮している俺が、自分で認識できない尋常でない速度で半ば無意識に脳波で依頼しているのか、あるいはブラックウェブのメンバーの好意なのか、小林弥生のウォールを破る闇アプリ・闇コードがガンガン飛んできて、それを他の誰かが矢継ぎ早に解凍・展開・実行、スマートグラスのディスプレイは、さながら攻殻機動隊のネット内部の戦闘シーンのごとく、無数のアプリの百花繚乱。数分で小林弥生の個人情報は丸裸になり、性犯罪防止プログラムには加入していない事が判明。闇アプリ・闇コードは、小林弥生が使用している全てのデバイスに侵入してライフログ機能を強制的に一時停止して直近のデータを強制消去、クラウド上のデータも消去する。
 いつのまにか、俺のスマートグラスのアプリが起動して極小の高性能カメラが捉えた映像がライブ配信されている。もはや、この操作が俺の意志なのか、俺が接続しているブラックウェブの無数のメンバーの意志なのか、その境目がよく判らないが、いずれ、この映像は、ブラックウェブのメンバーがメタデータを消去して、場所が特定される部分はマスクした上で、瞬時に表のネットの無数の有料アダルトサイトなどに流しているのは間違いない。もちろん小林弥生の顔や体はマスクしない。これで小林弥生の人生は終了、という事になるかもしれないが、俺の知ったこっちゃない。スマートグラスのPOVによるセックスのライブ中継なんていまどき全然珍しくないが、それでも、世界にほんの数億人の視聴者はいる筈だ。
 クスリが効いて朦朧としている弥生をストッカーとデスクのすきま部分の壁にもたれかかるように座らせる。先程からブラックウェブがさかんに推奨しているSEXLIVECAMというカメラアプリを解凍・展開・起動する。照明や色彩を自動調整して女性の顔や肌が一番魅力的に撮影できるアプリのようだ。スマートグラスARの右上にウィンドウを開いて試しにON/OFFを繰り返すと、俺が普段使っているアプリでは弥生の表情は若干不明瞭だが、このアプリをONにすると、明るすぎす暗すぎす、絶妙に自然な感じで確かに魅力的に見える。スリープドラッグの効果が切れてくるかもしれないので、こんな不測の事態に備えて持ち歩いていたセックスドラッグ(錠剤タイプ)を口に含んで舌の上で転がして溶かし、弥生の口の横を指で押して口を開けさせて舌をさしこみ、唾液と一緒に流し込む。
 完全に寝ている状態でやるのは味気ないが覚醒すると騒がれる。セックスドラッグが効いて半睡半覚の朦朧とした状態ならある程度楽しめるだろう。数秒後には、ドラッグが効いてきたようで、俺が口腔に差し入れている舌の動きに呼応して弥生が微妙に舌を動かし始めた。そのやわらかい舌と唇の感触を味わううちに俺の覚悟も完全に決まった。こんな不測の事態を楽しめるだけ楽しんでから死のう。
 スマートグラスのカメラを俺の視線追尾モードから複数カメラの追尾モードに変更して、弥生の赤いチェックのブラウスのボタンを上から外していく。スマートグラスの視界の片隅のウィンドウはふたつに増えて、一方のウィンドウは間近の弥生の顔、もう一方のウインドウは俺の右手の動きを追尾して弥生の胸元をを写している。そこにもうひとつカットインしてきたウィンドウには、俺と弥生を天井のカメラが捉えている映像が映っている。ブラックウェブのメンバーが天井の監視カメラをハッキングしてくれたようだ。この全ての映像は全世界に向けてひっそりとライブ中継されている筈だ。
 赤のチェックのブラウスのボタンを4つ外して胸元を開くと、淡いブルーのブラが見えてくる。ブラの上辺を押し下げると、細めの身体にしては意外に大きなバストと色が薄めの乳輪と乳首が露出する。SEXLIVECAMは光量調整・色補正その他の調整を瞬時に行って、絶妙に魅力的に見える映像をメイクする。スマートグラスの半透明レイヤーのブラウザに、様々な投げ銭のたぐいのアイコンが登場して、俺がゆっくりと指先で乳首を弄び、乳首がその硬度を増す度に、各種アイコンは台風の日の落ち葉のように激しく舞い踊る。ライブアプリは、俺の指示を待つまでもなく、乳首を超クロウスアップで捉えるショットを作り、更に別のウィンドウが開く。俺はもう片方のブラも押し下げて、右の乳首も全世界に晒した。
 両方の乳首を同時にいたぶり、舌先でゆっくりとねぶる。
 目を閉じて脱力したままの弥生が漏らす「あっ……んっ……んむん」という、声にならないような声は、高性能マイクとアプリの補正効果で、ハイパーバイノーラルな24chサラウンドのサウンドとして世界中のほんの数億人の愛好家の耳に、まるで自分もその場で聴いてるかのような臨場感で届き、原初の性的本能を刺戟している筈だ。
 ここ数年ですっかり引退気味だった筈の俺のペニスはいつの間にかギン勃ちしている。立ち上がってジッパーをおろしてペニスを取り出し、弥生の口元に先端を押し付けると、よほどセックスドラッグが効いているのか、弥生は嫌がるそぶりも見せず、俺のペニスの先端を舌先でゆっくりチロチロと舐めてくる……殆ど忘れかけていた快感……ドラッグ効果なのか、本能なのか、身につけているテクニックなのか、21歳のコンビニ店員・小林弥生の舌先の動きは絶妙だった。俺のペニスの先端に触れるか触れないかという微妙の動きをゆっくり繰り返していた舌は、接触強度を増して亀頭の周囲を何度か旋回して、先端に触れるか触れないか、じらしているかのような動きに戻る。それを何度か繰り返されて、俺はたまらずに腰を突き出してペニスを深く口元に導くと、弥生は抵抗せずに受け入れる。両手で弥生の頭を抱えて何度か往復させると、吸い付くように先端部を捉える唇の粘膜の感触は至上の心地よさ、久々に味わうそのあまりの快感に膝ががくがくと震える。
 こんな不測の事態に備えて持ち歩いていた簡易エアマットを膨らませて弥生を横たえて、紺色のミニスカートをめくりあげると淡いピンクのショーツが視界いっぱいに広がる。その中心部分は、さきほど与えたセックスドラッグの効果で、にじみ出た体液が染みを作っている。本来の俺はとっとと脱がせてとっとと挿入してさっさと自分だけが逝く、マッチョなやりかたを好んでいるのだが、多くのブラックウェブのメンバー、いまこのLIVE中継を見ているほんの数億人の視聴者の希望に迎合して、ゆっくり、じっくり、責めて行く事にする。と、いま決めたのは、俺の意思なのか、ネットを通じて伝わってくる数億人の意思なのか。
 こめかみに埋め込まれているチップは、オーバーロード気味なのか、ほんのりと暖かく、脳内を巡っている筈のセックスドラッグとの相乗効果なのか、そのこめかみ部分からなんともいえない、少ししびれるような心地よさが、ぶるぶるぶるぶる漏れている。
 ショーツのその部分に鼻先をこすりつけて思い切り匂いを吸い込む。ちょっとむっとするような女性の分泌液特有の生生しい匂いがガツンと効いて、勃ちっぱなしの俺のペニスが震え、その先端から我慢汁がにじみもれた。ネットを通して匂いを伝達する技術は最近進歩が著しいらしいが、この匂いと俺の興奮は、ほんの数億人の視聴者にも伝わっているのだろうか。
 弥生の両足首を左手で抱えるように持ち上げて腰を浮かせるようにして、ショーツをヒップの方から脱がせてその部分を間近で見る。最近主流の完全無毛ではなく、裂けめの頂点部分を少し覆うように一部を残している。そのあたりを指で少し押し拡げて、隠れていた真珠のような薄いピンクの部分を露出させ、LIVE視聴者にじっくり見て楽しんで貰う時間を確保する。ケースに残っていた数粒のセックスドラッグを口に含み、ゆっくりと唾液で溶かし、その唾液を絡めてぬるぬるにさせた人差し指の先端を軽く弥生の真珠の部分にあてがい、撫で上げるように動かすと、弥生の腰がぴくんと反応する。
 俺は弥生の両膝の裏側を両手でぐっと押しあげて脚をM字に開かせる体勢にして、その部分に顔を近づけて、一回分の規定量を大幅に超えているセックスドラッグが溶けている唾液でしたらせた舌先でその部分に触れて、ゆっくり、じっくり、じらすように舐める。その周囲をなぞるように舌先を何度か周回させた後に、その大きさを変えてすっかり露になっている真珠に舌先で強めに触れたまま、細かい振動を与えると、弥生が漏らし続ける「っんっ……あっ」という声は囁くような音量の壁を割って次第に音量を増す。
 唇でその部分全体を包みこんで軽く吸い込むようにして、舌先を細かくリズミカルに動かして露出している小さな丸みを、不規則なリズムで刺激する。舌先を少し離して動きを止めると、弥生は少し腰を浮かせて継続を要求してくるかのように、自らその部分が俺の唇と舌に当たるようにくねらせてくるので、再びリズムカルな刺激を与えた後、その下のいつのまにか大きく開いている裂孔に舌先を挿し入れた。
 普段は面倒なのでたいてい省略するこの行為。女性にして貰ったお返し的に、求められればおざなりにした事はあっても自ら積極的にした事はなく、正直、コレのどこが楽しいのか、よく判らなかったのだが、いまこの瞬間は、この行為をしている事自体になぜか強烈な快感があり、俺の唇と舌は俺が過去にした事がない、絶妙で繊細な動きで弥生を刺激している。
 もはやこの快感と動きは、俺自身の快感と動きなのか、ネットを通じて、俺のアカウントに感嘆・感謝・要求を絶え間なく送って来る、繋がっている多くの他者の快感が、俺のこめかみのチップで変換されて俺の脳に流れ込んできて、俺の意識と混ざって俺に快感を与えて俺にこんな動きをさせているのか、俺自身には判断できない。
 ラブジュースでぬめっているその部分に指と唇と舌で触れて弥生が声にならないような声を漏らす度に、俺のペニスもぴくんと反応する。いつもならこんなに勃っていたら、女性が濡れているかどうかもあまり確認せずに、強引に挿入しているのだが、なぜか、いまは、まだまだ、この状態を続けていたい、という気分。
 俺にも実はこういう部分もあったのか。
 それともネットの主要意見に同調させられているのか。
 スマートグラスを外してネットを遮断すれば、確かめる事ができるのかもしれないが、とてもそういう気にはなれない。いまこの瞬間がとにかく気持ちいい。
 弥生の一番敏感な部分を刺激する行為をどれだけ続けていたのだろう。
 実際は数分かもしれないし、数十分かもしれない。
 俺は舌と顎に疲労を感じて弥生の股間の中心から顔を離した。
 口の中の錠剤は溶け切っていなかったので、弥生の唇を開かせて、俺の唾液・弥生の分泌物・セックスドラッグがまざったとろとろの液体を、弥生の口に流し込んだ。
 半睡半覚で朦朧とした状態が覚めていない弥生の状態を確認すると、勃起を続けているペニスを弥生の小さな淫裂部分にあてがう。とろとろに溶けた粘液が先端にまとわりついてくる感触を味わいつつ、ピンクの真珠の部分に細かい振動を与えるように動かすと、弥生は「っあっ っえっ んっ」という、感じているような、待ち望んでいるような声を上げる。そのまま下にスライドさせて細かい震動を与えると、とろとろの粘膜に接した俺の先端は、少しづつその暖かい沼の深みにごく自然にはまっていき、淫裂に覆われた先端部分の最先端に少し何かが当たる感触を確認して、ほんの少しだけ腰を入れて押し込んで行くと、なんの抵抗もなく奥までとぅるんと入っていく。ペニスの先端が奥に届くと、弥生は「っんんっあっ」と声をあげて、弥生のその部分がきゅっと収束して、ペニス全体がなんともいえない暖かな感触に包まれる。
 そのままゆっくり動かすと、こめかみのチップの部分あたりから更に強烈な何かが生じて、俺の意識・俺の動き・俺のペニス・俺の快感は、ほんの数億人の視聴者のそれと、文字通りダイレクトにつながったようだ。こめかみ部分から発せられる強い感覚、痛みなのか快感なのか瞬時に判断できない感覚は、瞬時に脊髄を雷のようにビビビビと走ってペニスの先端に到達する。
 あやつられるがごとく動いていた俺の腰のピストン運動は実は数回だけだったのか、あるいは数十回に及んでいたのか、もはや俺の脳には判断できない。ただ、全身をくまなく駆け巡っているとてつもない感覚、人間の感じる感覚そのもののような広い海に流されてしまわないように、必死でどこかにしがみつく。
 いまこの瞬間の感覚に身を任せると完全に〈俺〉が消失してしまいそうな恐怖感があるが、その感覚が快感をとてつもないレベルに増幅しているような感覚もある。
 次の刹那、これままで感じた事のない、とてつもない絶頂感、絶頂感という言葉で表現しきれない何かが、ペニスの先端から脊髄を走って脳天から宇宙へ迸り、俺の視界は真っ白になった……。

 * * *
 
 最近は以前にも増してリアルな変な夢を見る。
 今朝起きる直前に見た夢は、中年の太った男である私が、コンビニの若い女性店員をレイプする夢。私の勃起しているペニスの先端に若いコンビニ店員の女性の舌先がゆっくり触れてくる感覚、女性店員に挿入してペニスが柔らかな暖かさに包まれた感覚がはっきりとあり、私は、夢の中でとてつもない快感を感じていた。夢の中の中年男性の私は、いまはまだ世の中に存在しないガジェットを使って、自分の行為を全世界にLIVE中継していたけど、夢の中では、それを不思議な事だとは全然思わなった。とてつもない快感で射精する瞬間も、まるで本当に自分にペニスがついているかのようにリアルに感じていた。
 目が覚めても、まだ夢の続きを見ているような、夢と現実の境目があやふやな感覚があり、下半身に手をやって、
(夢の中にペニスを忘れてきてしまった!?)
と、慌てた私は、ショーツを脱いで手で触れて、いつもの場所に宝珠があるのを確認した。
 やがて、意識がゆっくり覚醒してくる。
(……いまのは夢で、私は女の子だった)
 私のその部分はびっくりする程に濡れていて、いつも寝起きに眠気覚ましにするように中指の先で軽くこすりあげるように宝珠に触れてみると、腰が浮き上がる程の快感があり、そのまま下の方に触れてみると、溢れてこぼれおちそうな程にとろっとろな状態。
 こんなに濡れる事は滅多にないので、普段は使っていない極太バイブをベッドの下の引き出しから取り出してあてがってみる。買ったばかりの時に使った時はローションをたっぷりつけても先端を入れただけで広がりすぎるような鈍い痛みを感じて「さすがにこの太さはムリ」と思って捨てようと思ったが、こんな不測の事態にはこれが使えるかもしれない。極太の先端を軽くウェットティッシュでぬぐってあてがってみると、なんの抵抗もなくスルリと奥の方まで入り、振動スイッチをONにすると、その部分から下半身を貫いてつま先に向かって強烈な快感がスパークした。
 これってひとりエッチ史上最高の快感、ひょっとしたら、普通のセックスを通算しても、単純な肉体的快感なら過去最高と言える程の快感かも!? 夢で濡れてこんな快感を味わえるなら、変な夢を見るのも大歓迎なんだけど〜などと思って、振動スイッチを強にして動きに身を委ねると、その快感は更に強度を増して全身を駆け巡る。
(ナニこの快感!? どうにかなっちゃしいそう!?)
と、思った次の瞬間、快感という言葉では表現できないレベルの何かが、私の身体の裡で弾けるような圧力を感じて、視界が真っ白になった。
 どうやら、私は、一瞬、失神していたようだ。
 時計を見ると急いで出ないと遅刻しそうな時間。今日は夕方までソロシフトなので遅刻すると大罰金だ。ベッドの下に脱ぎ捨てていた淡いブルーのブラ、赤いチェックのブラウス、紺色のミニスカートを慌てて身につけて、最低限の化粧をして、慌てて家を出た。
 ブラの色とショーツの色がバラバラな事に気づいたが、今日はバイトの後はライブラリーでリポートを書くので、誰に見せるわけでもないから問題ない。
 前回調子が悪かったレシートプリンターは今日は直っているだろうか、と思いながら、アルバイト先のコンビニに急いで向かった。

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■U-NEXT見放題(R18)
○年上好きおっとり系黒髪美少女 美月(2024年3月)
・目は整形っぽいが角度によって一瞬加藤綾子風に見えなくもない
・ホテルの部屋、服を脱ぐシーンと最後のベッドはやや暗めでまずまず、バスルームは若干明るすぎ。この作品に限らずほとんど作品は無闇にライトを当てる。暗めの画は七難隠すので暗めの画で撮る事を推奨したい
・過去作再編集短縮版、この程度の尺の方がさくっと抜くには多分ちょうど良い(22分)
○りこちゃん(2023年9月)56分
・普通にちょっとかわいい感じのルックス、いかにもセクシー女優っぽくないのが新鮮、角度によってはブス
・半裸で初手立ちバック(41分頃)上半身完全着衣でスカートをめくって…ならもっと良かった
○アナウンサー志望の正統派女子大生と原宿デート(2023年8月)
・冒頭明治神宮を歩くシーン、時々射す光もいい感じで悪くないが、正面ショット多めでデート気分ではない(横もしくは斜め前からの方がベター、時には後ろから撮っても良い)
・角度と光の当たり加減によって時々attractiveに見えるルックス
・隣を歩く男性、目が隠れるほど伸ばした前髪が気持ち悪い(最初は帽子を被っているのかと思った)
 こういうデート企画の相手男性は普通に感じが良い青年の方が好ましい
・最後までガーターストッキングは脱がない
○隠し撮り●れ●みSEX 拡散SP.8(2018年1月)
・自宅連れ込み盗撮設定、記憶では00年代に数本見たシリーズ、会話がそこそこ面白い
・4人の女優は全員キャバクラ嬢風、最初の子は一瞬藤原紀香風

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■島耕作
島耕作プロフィール
生年月日 1947(昭和22)09.09(乙女座/B型)
出身地 山口県岩国市
出身校 私立鷹水学園高校
出身校 早稲田大学法学部(1970年卒業)
資格 普通自動車免許
資格 実用英語技能検定1級
身長 177㎝
父親はサラリーマン
母親は呉服商
ひとりっ子
大学時代ESS
好きな食べ物 サラミ 
好きな食べ物 トリュフ
好きな食べ物 オリーブオイル
嫌いな食べ物 酸っぱいもの
ワインに詳しい
バリ島が好き
77年結婚、89年離婚(怜子)
12年再婚(島耕作65歳、大町久美子45歳)
長女 奈美(79年誕生)
孫 耕太郎(03年誕生)
※参考文献「島耕作クロニクル 連載30周年記念エディション」

●課長010 マイ・フェア・レディ
○先輩が会社の金を横領して愛人が絡んだミュージカルに投資する
・ブロードウェイの劇場に巨大ネオンサイン(HATSUSHIBA)
・水口治雄(ハツシバアメリカ屋外広告課長40歳)にプレスエージェントのクララを紹介される(水口の愛人)
 ブロードウェイのミュージカルの制作の裏側(クララの説明)
 投資は一口8万ドル(2000万円)当時のレートは1ドル250円
・水口が会社の金を横領して二口16万ドル投資(水口本人が認める)
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年11号掲載

●課長011 タキシード・ジャンクション
○会社の金を横領して左遷された先輩が愛人にフラれて会社を辞める
・ミュージカルの初日、観客の反応が鈍い(島の感想)
・社長大泉裕介に水口の件を報告する
・ミュージカルは10日で打ち切り、水口は自宅を売却して会社に金を返す
・クララは水口のプロポーズを断って、投資金目当てだった事を明かす
 「どうして私があなたのような日本人と寝るのよ」
・左遷が決まった水口を勇気一緒にのぞき部屋に入る(基本料金25セント、1ドルで30秒胸にタッチ)
 水口は女性の胸を強く握って離さず、男性数人に袋叩きにされる
※自宅を売却してまで金を返したのなら辞める必要はなかったのでは?
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年12号掲載

●課長012 ムーン リバー
○自宅で妻の浮気の状況証拠らしきものを発見する
・グリニッジビレッジの安ホテルでアイリーンと週末を過ごす
 アイリーンと一緒にいるとリラックス、この気持ちは妻の怜子には感じた事がない
・ニューヨークの物価は1ドル100円で計算すれば大体日本と同じ
・愛と結婚と浮気に関する根源的なやりとり(アイリーン)
・社内宣伝物コンクールで一時帰国(ハツシバアメリカも出品)
・ニューヨークにきてからほとんど妻に連絡してない、妻に連絡しないまま帰国
・妻の浮気を疑って持ち物を調べて、ライターとスキンを発見
・妻には会わずに池袋のカプセルホテルに2泊
・小暮に妻の浮気調査を依頼
※ニューヨークでアイリーンと2日間東京でひとりで2日間の対比
*ハツシバアメリカNY支社宣伝部
*課長 島耕作 第2巻(1986)
*モーニング85年15号掲載

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■ガンダム50音かるた(5-7-5)
た 大西洋 消えたミハルの 血に染めて
た 太陽を 背にして敵に アプローチ
た たくさんの 鏡並べて ソロモン灼く
た 戦いの中で 戦いを忘れた ランバ・ラル
た 戦いは いつでも先読み 二手三手
た 弾幕を 張れとブライト 指示を出し
た 弾幕が 薄いとブライト 声あらげ
た 弾幕が 今日も薄いよ 何やってんの
ち 地球圏 宇宙に拡大 宇宙世紀
ち 地底湖に ズゴック飛び込む 水の音
ち 血塗られたザビ家に似合う永井ナレ
ち 忠国の 志あれど 脆すぎる
ち 忠国の 志虚しく 星の屑
つ 月の裏 サイド3に ジオン興る
つ つばさを広げて… 歌っているのは マチルダさん?
つ つややかな ひとみにもえる うつくし君
て 定期便 今日も来ました ジャプローに
と ときめきの… 歌っているのは マチルダさん?
と 父さんは 酸素欠乏 脳やられ
と 刻を見て 宇宙(そら)の地平に 永遠のララァ
と 翔べ! ガンダム テレビまんがの 主題歌風

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■20XX(オモテとウラ)

──訊きにくい事をあえて訊きますが、例えば、鶴田選手とポジションを争う選手が、鶴田選手が出場しなかった試合でサヨナラホームランを打ちました。そういう時って、心の底から喜べるものなんですか?
「そりゃ、チームが勝てば、それもサヨナラ勝ちだったりしたら、その瞬間は全然嬉しいですよ」
──悔しい持ちは心の片隅にも全然ない?
「その瞬間はホントないですねえ。宿舎や家に帰って来て、寝る前には、いい意味でのライバル意識というか、俺も頑張らないと、みたいに思ったりはするけど」
──ライバル選手がホームインする時にこっそり蹴ったりしないんですか?(笑)
「たまには、こっそり、見えないように(笑)……いや、でも、マジに答えると、野球ってチームスポーツなんで、子供の頃からずっとチームでやってきて、やっぱりチームが勝たないと始まらない。もちろん、自分が活躍して勝つのが一番いいんだけど、チームメイトの活躍を一緒に喜べない人、つまり、性格に問題があるとか、あまりにも協調性がない人は、こういう言い方をするとアレですけど、だんだんチームに居場所がなくなって、プロになる以前に、野球を続けられなくなる事が多いかもですね。実際リトルの時にもいましたよ、そういう奴」
──リトルというと小学生時代のチームですか?
「中学の時の硬式の、げんみつには、シニアって言ってたかな。打たせるとやたら打つんだけど、守備はサボるし、投げるのはからっきしダメだし、とにかくほとんど誰とも喋らない。いつの間にかいなくなってたね」
──一匹狼的な性格の人は野球には向いていない?
「野球に限らずチームスポーツ全般難しいんじゃないかなあ。……投手はちょっと別ですけどね。投手で本当に凄いレベルの人、いざという時に野手に頼らなくてもいい、ギアを上げれば狙って三者連続三振を取れるくらいのズバ抜けたレベルの人は、多少性格に難ありでも許される面はあるかもしれない。まあそこまでの(レベルの)投手は滅多にいないけどね」
──代打専門、DH専門の打撃の職人タイプの人はどうです?
「マスコミにそういう風に(一匹狼的な性格と)言われてる人でも、人の好き嫌いは多少強めという傾向はあるかもですが、僕が実際に知ってる人は、こちらから近づいて質問すれば、バッティングの深い話、細かい技術的な話なんかをするのが好きな人の方が、むしろ、多い印象ですね。やっぱり、とにかく、根本はチームスポーツですから」
──Tボールは、いまは、守備だけとか打つだけという出場が可能で、鶴田選手もここ数年は打つだけの出場も増えていますが、最初の3シーズン、鶴田選手が加入されて最初の3年間は、プロ野球と同様の出場ルールでした。最初の3年間はポジション争いに苦労された記憶はあります?
「Tボールは、ここ数年で完全にプロ野球と肩をならべるレベルになっていると言われていますが、最初の数年は、正直、プロ野球の2軍と独立リーグの中間くらいのレベルだったと思うんですよ。だから、ポジション争いと言うより、自分のコンディション維持の方に気を使ってましたね」
──コンディションが整っていれば、まだまだ、打つ方も守る方も負ける気がしなかった?
「まあ、実際は、なかなか、整わなかった事の方が多かった気がしますが、その中でも、そこそこ数字も残せたし。思い返せば、1年目は、6イニングとは言え、ほぼ1年間全試合出場だったので、体力的には大変でしたね」
──今シーズン限りでの引退が噂されていますが……
「今年で50歳ですからねえ。100%ではないけど、多分、さすがに今シーズンまでかなと思ってます。Tボールに来てから10年、毎年、今年が最後のつもりでやってたんですが、意外とできてたんですよねえ」
──もし守備につけなくても打つ方だけでもまだまだ見たい、というファンの声も大きいようですが?
「そもそも球団が契約してくれるかどうか、って問題もありますからね。いまの気持ちとしては、多分、今シーズン限りという事になると思います」

 * * *
 
 ライバルの活躍が続いて自分がベンチを温める事が続くと「ちょっとした怪我か故障で少し休んでくれないかなあ」って思っていた。多分殆どのプロ野球選手が心の中でそう思っている。出場機会がないと始まらない。だけど、チームが勝って嬉しい、という気持ちもウソではない。ライバルが打てなくて負けた方が嬉しい、って言うのは、少なくとも、優勝の可能性が残っている限りはない。……ないような気がする。突き詰めて考えるとよく判らない。もし給料がチーム全員均等に頭割りで、優勝すれば他のチームの2倍3倍貰えるなら、チームの勝利が最大優先だけど、現実には個人個人の成績が給料に直結するわけで。何年も中心選手として活躍して、一生分の報酬は稼いでいて、年俸が増えても税金が増えるだけ、と言える程の超高給取りならともかく、僕のような中堅選手、年俸5000万前後の選手は、やはり、自分の成績を上げる事、ライバルの成績が上がらない事を、どこかで意識してしまうのではないか。キャンプインからシーズン終了まで、心の片隅では「オレより打つセミレギュラーの外野手は全員怪我してしまえ、下から上がってくるヤツは俺より打つんじゃねえ」って思っていたような気もする。
 インタビューに答えた自分、いまこうして内心毒づいている自分、どっちが本当の自分なのか、どちらも自分のような気もするし、どちらも自分はでない気もする。そもそも「自分」なんてモノは、それほど確固たるモノではないのではないか。今回のような世間に公開されるインタビューの時は、相手が期待しているような答えを、自分の中の「正しい自分」から引っ張り出してくる、という感覚なのだが、その場所、自分を構成する成分を引っ張り出してくる大もとにあるのは本当に「自分」なのか、そのへんが、よく判らない。なんだか曖昧な、光と闇、本音と嘘が混ざりあった、混沌とした場所のようにも思うのだ。
 そういう事を考え始めると眠れなくなるし、どれだけ考えても結論は出ないので、考えるのはやめて、疲れて何も考えられなくなるまで今夜も素振りを繰り返す。

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■1980年代妄想日記
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

○1981.03.15(日)ガンダムを観る
 春休みの初日。
 ほぼ徹夜状態で5:30過ぎに家を出て、始発のバスに乗り、澄川駅で地下鉄に乗り継いで街へ出た。狸小路の松竹遊楽は既に長蛇の列でグッズは売り切れ。映画「機動戦士ガンダム」公開翌日の初回、満員の館内の観客は、ほぼ全員が男子中高大学生、女子の姿は確認できなかった。
 安彦良和が物理的に可能な限り描き直した、という噂もあった新作カットは拍子抜けする程の少なさ。全体の1割あったかどうか。ストーリーは、報じられていた通り、最初のクールの重要エピソードをほぼそのまま繋いだ総集編的構成で、知ってる話・知ってる台詞なので、ワンダーはない。同じ台詞を話していても、毎晩寝る前に何度もカセットで聴いているTV版と微妙に言い方やテンポが違うので新鮮さより違和感が勝る。
 台詞以上に乗り切れない要素だったのは音楽。TVシリーズの音楽をそのまま使うのは音質的に問題があるのかもしれないが、微妙にアレンジが変えられていて、そういう音楽がかかる度に(オリジナルのままの方が良いのに…)と感じてしまった。最後に流れるやしきたかじんの曲は、やはり、あまり世界観に合っていない。メロディやアレンジに新鮮さもない。999のゴダイゴと大違い。別に無名の歌手でもいいから、どこか新しい何かを感じられる曲の方が良かった。もっと言えば、この曲を使うくらいなら、新曲使用に拘らずに、例えばセカンドBGM集の戸田恵子「いまはおやすみ」でも良かった気がするのだが、いろいろ商売的なしがらみがあったりするのだろうか。
 STAR WARSやヤマトには、明確にメインテーマと呼べる音楽があるが、ガンダムにはない。テレビシリーズと今作で明確になっていないのだから、今後映画版の2作目3作目が作られても多分ないだろう。今回の映画3作品がそれなりにヒットしたら、さらに続編が作られて、長くシリーズが継続する作品になる可能性はゼロではない。そうなった時に、STAR WARSやヤマトのように、一発でその世界にひきこむテーマ音楽がなかったとしたら、それは結構な残念ポイントになる気がする。映画館の大きなスクリーンで見る時は、STAR WARSの開巻の心躍るメインテーマ、ヤマトの例のスキャットのようなおなじみの音楽で、どーんとその世界に引き込まれたいのだ。ガンダムにメインテーマと呼べる音楽がない問題は、作曲担当者がふたりいる事もからんでいるのかもしれない。
 ここ数年のアニメ映画の主題歌・音楽に関しては、ヤマトと999はほぼ文句がないレベル。カリ城は最後にかかる主題歌は正直ちょっと世界観に合わない気がする(もっとヨーロッパ風のメロディ&楽器の方が良かった気がする)が、それ以外は全編的確で、特に冒頭とクラリスの部屋に行くシーンで使われる音楽が素晴らしい。冒頭のあの音楽とジャンプで一気に〈冒険活劇アニメ〉の世界に引き込まれた。
 カリ城は、わずかな瑕瑾と言えば言えるのは最後にかかる主題歌くらいで、あとは全編アニメーションならではの面白さ(絵が動く事の面白さ)に満ちた作品だった。今まで観たアニメ映画でダントツのナンバーワン、アニメに限らなくても、現状のわずかな生涯鑑賞作品中トップクラス。
 全編新作カットの999やカリ城に比べるのは酷だが、ガンダムは1本の映画作品としては正直微妙。カリ城は万人におすすめできるし、999は多くの人におすすめできるが、今回のガンダムは、正直、コアなアニメファン、コアなガンダムファン以外にはおすすめできない。「スターログ」の愛読者でも、ハードSF寄りの人は認めななさそう。
 とは言え、これは、まだ、ほとんど最初の一歩。ここから日本のアニメ新世紀が本当に始まるかもしれないのだ。この作品がコケたら、再び、子供向けの「テレビまんが」ばかりが作られる、我々高校生以上のアニメファンにとっては寒い時代に戻ってしまう可能性がないとは言えない。
 今日は時々雨が降る暖かさで、順調に雪解けが進んできている。青のアディダスのスニーカーで雪が溶けた部分を選んで歩く。丸井、玉光堂、旭屋書店に寄って、ガンダムのプラモデルとレコードと小説を買う。ガンプラは、ザク、シャアザク、グフ、ジオングが未制作なのにまた買ってしまった。
 この高校に合格した事に浮かれていないで、3年後のもっと重要な試験(北大受験?)に向けて、この春休みから勉強癖をつけるべき、という事は頭では判っていても、すっかり気が緩んで、全然、やる気が起きない。3年後の今頃はどうなっている事やら。
 帰りの地下鉄の真正面の席にかわいい女の子が座っていた。最近流行りの松田聖子っぽい外巻きの髪型、大きすぎない目。中2の時に好きだった藤井遥香にちょっと似ている地味かわいい系。
 その女の子も澄川駅で降りて、もしかして家が近所かも!? と期待したが、バスの待合室には入らなかった。澄川に住んでいるならまた偶然見かける可能性は少しはある。何かの用で澄川に来ただけならこの先二度と見かける事は確率的にほぼありえない。こっそり後をつけてみようかと一瞬思ったけど、ガンダムを観た日にそれをするのは、なんとなく不純な気がしてやめた。

○1981.03.21(土)アニメポリス・ペロ
 先週開店したアニメポリス・ペロに和樹と一緒に行ってみた。
 鈴置洋孝(ブライト)のサイン会。
 鈴置さんはやさしそうな雰囲気の人だった。
 客に女子が数人いてちょっとびっくり。こういう所に来る程のアニメ好きの女子を実際に見かけたのはこれが初めて。
「OUT」「アニメック」「アニメージュ」の読者投稿欄で、世の中にはアニメ好きの女子もいるらしい、という事を知ってはいたが、いるとしても東京や大阪が殆どなんだろう、と思っていた(住所が札幌になっている女子の投稿は見た記憶がない)。
 いずれも地味そうな雰囲気の子だったけど、それでも女子は女子。中2中3のクラスメイトでガンダムを見てた女子は、ちょっと見ていた程度で、深い部分まで話せるレベルではなかった。こういう所まで来るガンダムマニアと言える女子と会話ができたらどれだけ楽しいだろう。
 サイン会終了後の帰り際、大学生っぽい集団の男子が女子に何やら話しかけているので様子を観察すると、表紙に手描きのイラストがある紙を閉じた薄い冊子のようなものを見せていた。
 あれが噂に聞く同人誌(ファンジン?)というやつなのか?
 ひょっとして北大(とは限らないけど)にもアニ研みたいのがあったりするのか?
 和樹は「最初からついていきたいから春から代々木に通う」と言っていたが、僕はしばらく様子見するつもり。人間は所詮ひとり。自分の事は自分で決めなくては。自己学習でついていけるようであればそれに越した事はない。
 澄川駅の改札を出た所で和樹に「フード寄ってく?」と言った時に、和樹の横を通り過ぎて行った女の子、一瞬だったので確信は持てないけど、こないだの帰りの地下鉄で見かけた子だったような気がする(多分同じ紺のコート)。
 和樹が一緒でなければこっそり尾行してみたのだが。
 もし同じ子なら澄川駅が最寄り駅の可能性大。
 夜、勉強しようと机に向かった時に浮かんだおとなのガンダムネタ(和樹のガンダムすごろく向けのシモネタ)。
アムロ「やってる最中に僕が気をつけられると思ってるんですか、セイラさん」
セイラ「アムロならできるわ、子供が。だからコンドームをつけなければ」
アムロ「そんなに僕のをおったてないでください……あ、セイラさんのここ、気持ちいい……アムロ、いきまーす(最後は結局コレ)」(注:原典のセリフは「そんなにおだてないでください」)
 和樹が作ったガンダムすごろく、上半身裸のマチルダさん「寝るのもパイロットの仕事のうちよ、さあいらっしゃい」のコマの絵(月を背後に仁王立ち)は、下から見上げる角度の上を向いているバストの形がなかなかのエロさ。和樹の絵はあだち充と高橋留美子を足して2で割ったような感じで独特の雰囲気。
 今朝見た変な夢。
 夢の中の50代半ばの僕は昔の事をいろいろ思い出している。
 15歳から25歳までの10年間は人生で初めて体験するいろいろな事があってそれなりに充実していたが、25歳からの35歳までの10年間はその前の10年間に比べて倍の速度で過ぎ、35歳から55歳までの20年間はあっという間だった。この先の人生には、15歳から25歳までの10年間に経験したような類の楽しさは決して訪れない。あとは老いていくだけ……。
 その寂しさの中で目が覚めた。
 明け方の変な時間に目が覚めて、しばらくの間、夢の中でふりかえっている時の感覚が妙にリアルに残っていた。そのリアルな感覚はうまく言葉で表現できない。とにかくリアル。
 夢の中で〈過去の思い出〉として振り返っていた大学や下っ端社会人時代の出来事、目が覚めてしばらくは、断片的に画とムードが漂っていたのにすぐに思い出せなくなった。
 一種の予知夢のようなものだろうか?
 予知夢だとしたら少なくとも大学には行ける。
 いまの僕は、夢の中の年老いた僕が〈輝かしい10年間〉として振りかえっていた10年間の入り口にいる。
 夢の中の年老いた僕が55歳だとしたら約40年後! 2020年!
 いまの僕は3年後の1984年4月でさえ想像できない。
 西暦2000年は映画かSFの世界。
 ホントに実際に西暦2000年は訪れるのだろうか。
 ノストラダムスの大予言まであと18年と数ヵ月。

○1981.04.01(水)大人と子供のあいだ
 3年前のいま頃、キャンディーズの「微笑がえし」を連日繰り返し聴いては「この春休みが終わったら中学生だから、もう子供じゃないんだよなあ」なんて事を考えていたけど、実際は、あらゆる意味で単なる頭でっかちの子供だった。
 3年経って高校入学を控えたいま、3年前と精神的にはたいして変わってない気がするが、肉体的には大きな変化があった。中学入学時には150㎝もなかった身長は約15㎝伸びて160㎝を超えた(体重はあまり増えていない、相変わらず超ガリガリ体型)。
 中2の夏、風呂場で石鹸をつけて強引に引っ張って火星人ゴーホームを脱却(少し血が出た)して、その直後に女子で言えば例のアレに当たるモノを初めて体験。
 それからは、毎晩、日課のように自主トレをしているが、自主トレでは物足りないという欲望は、この1年半の間に、日に日に大きくなってきているのは、認めたくないものだが事実は事実。若さ故の毎夜撃ち。
 その欲望が大きくなるのに比例して、この1年半、特に好きでもないクラスメイトの女子に対してでさえ、だんだん、きさくに話しかけられないようになってきている。多分「下心があると思われたくない」という自意識過剰。
 本当に「下心は一切ない」と言い切れるのか、と訊かれたら、コレが自信がない。もちろん、できれば、藤井遥香のような女の子を相手に体験したい、と思ってるのは間違いないが(健康な男子なら誰でもそう思う筈)、絶対に誰にも内緒なら、極端に言えば、こいつだけはさすがに生理的に絶対ムリという女子以外なら、誰でもいいから、穴があったら入れたい(入れてみたい)、と思っているような気がする(実際にそうなったらためらってしまうかもだけど)。こうなってくると、恋愛感情と性欲は、ますます、区別できなくなっているような今日この頃。
 高校に入ったら、もっと積極的になって、なんとかして藤井遥香のような女の子とつきあって、ふたりでゆっくり階段を登りたい(最低でもキス、できれば注射)。既に階段を登っている女の子に教えて貰うのも悪くないかも?

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■無限リープ
※無駄に過激な性的描写閲覧注意(R18)

 01

「なんか眠たくなってきた」
 多邑真央は僕の部屋の僕のベッドのふとんに入ろうとする。
 この流れで僕も隣に行けば、真央とセックスする可能性は大いにあり、少なくともあの行為をしてくれるだろう。素人童貞ゆえの楽観的観測でそう判断していた気がする。
 しかしながら、実際は、この日もこの後も、僕は真央とセックスする事はなかった。
 ここで、実際に起こった事(と僕が記憶している行動)と違う行動を取ってみたらどうなるのだろう?
「服、皺になっちゃうから、コレ着れば?」
 トレーナーをさしだすと、真央は、ちょっと渋った末に、
「見ないでよ、着替えるトコ」と承諾してくれた。
 実際とは違う展開になった。
 実際は、真央はワンピースを着たままでベッドに入り、隣に入った僕は、真央の膝丈のワンピースをゆっくりめくりあげて、ショーツの上から、一瞬、そこに触れた。すべすべしたワンピースの感触も、ショーツの布地越しでも判るその部分の柔らかさもはっきり記憶している。
 いくら素人童貞とは言え、言葉もなく、キスもなく、この初手はどうなのか、といまは思う。
 その時は、お互いにベッドに入った時点でOKと思ってしまったのだ。
 真央が着替えている間に、僕もセーターとチノパンから、トレーナーの上下に着替える。
 もし行為が進展するのならトレーナーの上下の方が何かと都合が良い。
 一応ノックして「着替えた?」「大丈夫」とやりとりして、ふすまを開けると、真央は既にベッドに入っていた。
多邑真央は、大学の映画サークル「CINEMAGIKCAL FORCE」の一年後輩で、この当時一年生。長身細身でのスタイルで、古い言葉で言えば、ちょっとはすっぱな雰囲気がある子だった。なんとなく仲良くなって、深夜に長電話をしたり、ふたりで飲みに行ったりするようになった。
 この日は、どういう流れかは覚えてないが、当時の僕が住んでいた私鉄沿線の街で食事をして、そのまま、僕の部屋に遊びに来たのだ。つきあっているわけではなく、当時よく使われていた表現で言えば、友達以上恋人未満という関係と言えなくもない関係。
 真央の事が好きだったのかどうかは、当時もいまも、自分でもよく判らない。
 もちろん、単純に「好き」か「嫌い」で分類すれば「好き」だったのだろうが、実際に付き合えるかどうかは別にして、知人女性全員をランキングすれば、真央よりも上位に来る女性はたくさんいた。そもそも、二十歳前後の性的にストレートで健康な男子、穴があったら挿れたいと思っている男子は、「好き」と「やりたい」を明確に区別する事なんてできっこない。生理的に絶対無理なレベルでない限り、何度かふたりで過ごしていれば、できればセックスしたい、と思ってしまう筈。
 その瞬間の真情は「好きだからやりたい」「やれそうだから好き」のいったいどちらなのか。
 二十歳前後の男子のひとり暮らしの部屋に泊まった女の子がベッドに入っていれば、素人童貞でなくても「これはやれる」と思ってしまうのは仕方がない。
 なぜ真央はあんなに強固に抵抗したのだろう。
 スカートの中に手を入れて、めくりあげて、ほんの数秒、その部分に触れるまでは許してくれた。絶対に指一本触れられたくなかったら、ベッドに入る事もなかっただろう。
 多分、真央の気持ちは、やるかやらないか、50/50だった。
 100%イヤだったら、ふたりで食事をして酒を飲んで僕の部屋に来て自分からベッドに入ったりはしない筈。
 もし迫られたら、そうなった瞬間の素直な自分の感情で行動しよう。
 多分、真央はそう思っていた。
 同じ迫り方をしたら、実際と同じ結果になるだろうから、このまま、あえて、実際とは別のやり方でやってみよう。
 それっぽい音楽をかけるのもひとつの手かと思ったが、この頃の僕の音楽コレクションはアニメのBGMかアイドルソングが殆どで、ジャズのカセットなんて持ってなかった。インターネットやYouTubeは世の中に存在さえしていない。テレビよりはマシな気がしてラジオを適度な音量でつけて、天井の明かりを豆電にした。丸いおしゃれな間接照明を買うのはこの時点から6年後あたり。豆電球は色気がないが致し方ない。
 ベッドの脇に腰掛けて、
「足、寒くない? ズボンも使う?」と訊く。
「ふとん入ってれば平気」と応える真央の顔が少し緩んだように見えた。
 ふとんの中に手を差し入れて、真央の指に軽く触れてみる。
 嫌がるそぶりはないので、ゆっくり、真央の手を握ると、真央も軽く握り返してくる。
 握っている手と手が馴染んで手に感じる体温が同じ温かみに感じられてくる。
 僕は、ゆっくり、ふとんの中に入って、真央を抱きしめてみる。
 真央が嫌がるようならすぐにいったんリトリートするつもりで、少しづつ、抱き寄せる度合いを強めていく。真央の顔は僕の右の鎖骨付近に密着していて、トレーナーの布地越しでも、真央の呼気の温かみが判る。
 そのままじっとしていると、ずっと前から何度もこんな事をしていたような気がしてくる。
 目を閉じると、さっきまで渦巻いていた欲望はすーっとどこかに退いて、状況と流れに全てを委ねればいい、という気がしてくる。この後、更に、何かが起きるのなら起きてもいいし、このままこの体勢で真央の体温を感じながら眠ってしまうのも悪くない。
 ……。
「……寝ちゃった?」
 真央の囁くような声で目が覚めた。
「……一瞬、寝てたかも」
「こんな状況で寝ちゃうなんてヒドくない?」
 冗談めかして囁いた真央はぐいっと密着の度合いを強めてくる。
「そっちも寝てたでしょ?」
 背中にまわした腕に力を込めて引き寄せてもっと密着の度合いを強めると、真央は「寝てないもん」とちょっと不満そうな声を漏らす。
 トレーナーの布地越しでも真央の胸の膨らみが感じられる。
 互いの心臓の鼓動が感じられる気がするほど密着する。
 やがて、真央は、そっと、脚を絡ませてくる。
 互いの鼠径部が重なり、真央の重みと体温を感じた僕の欲棒がぴくんと反応する。
 目の前にある真央のおでこにそっと唇を触れてみる。
 真央は嫌がるそぶりを見せないので、そのまま唇を触れたまま、背中を撫でる。
 その手を少しずらして腰とおしりの境目あたりを撫でる。
 真央が体勢を変えようとするので(嫌なのかな?)と思って、右手の動きを止めると、真央は僕の上に覆いかぶさってきて、僕の唇に真央の唇が触れてくる。
 数秒間のキスに適度に応じる。
 唇を離した真央の顔がすぐ眼の前にある。
 薄明かりなのでその表情を読めないが、僕は、真央の目を見つめて、僕の素直な感情を目で伝えようと念を込める。
 真央の首の後ろにまわした手ではえぎわあたりを軽くホールドして、真央の顔を引き寄せてキスをする。唇と唇が軽く触れた瞬間に、ホールドした手に少しだけ力を入れて、ほんの数ミリ、更に引き寄せると、真央の唇がほんの少し開く。
 握りあっていた手と手と同様に、互いの唇と唇が、ゆっくり、馴染んでくる。
 そっと差し出した舌先に真央の舌先がそっと触れる。
 一度引っ込めてもう一度差し出した舌先に、今度は、しっかり触れてきた真央の舌が、囁くように微妙に揺れる。心を無にしてその動きを受け止めて返す。やがて、真央の舌の動きは次第に大きくなり、ゆっくり、僕の口の中に真央の舌が入ってくる。
 亜蘭くん、女の子とこんなキス、した事ある?
 真央がそう思って攻めてきてくれてるような気がするので、こちらから攻勢に出ず、真央に委ねる。真央の唇と舌が繰り出す動きを受けて返す。
 真央の指がトレーナーパンツの上から僕の欲棒に軽く触れる。
 完全に硬くなっているのを確認するように動いた指は、股間の奥の方に潜り込んで、宝玉袋を軽くつつみこむように触れる。
 欲棒の付け根から先端にむけて、なぞるように擦すられると、トレーナーとトランクス越しでも、痺れるような快感と感動で、鼻から深く湿った長い吐息が出てしまう。その吐息を合図のように、真央の手がしなやかにトランクスの中に入ってきて、直に握られる。ひんやりとした指の感触に、睾丸がきゅっとなって、一瞬、縮みかけた欲棒は、真央の指の動きに馴染むと、たちまち硬さを取り戻す。
 真央の舌は更に強く深く速く僕の口内で踊る。
 真央の指は圧力を強めて往還の速度を上げる。
 この動きを続けられたらすぐに達してしまいそうな快感。
「どうしたい?」
 真央が訊く。
「……僕も、触っていい?」
「……駄目」
 真央はふとんの中に潜っていく。
 こんな風に女の子に委ねてしまった方が、性的行為は楽しい。
多分、本能の一番奥まで行けば、女の子の方が貪欲なのではないか。
もっと若い頃に判っていればよかった。
 真央の温かい吐息をおへその下あたりに感じた次の瞬間、僕の極限まで怒張した欲棒の先端に、生暖かい真央の舌先が触れ、形状をなぞるように動く。真央が舐めてくれる所を見たいと思ったが、多分真央はこの行為を施す事に恥ずかしさを感じているのだろうと想像して、いきなりふとんはめくる事はせずに、身を委ね続ける。
 真央の動きは、若干きごちなく、それが逆に新鮮に感じられる。
 最初は硬さが感じられた真央の舌は、次第に触れている事に慣れてきたのか、なめらかにリズムを刻むような動きになり、欲棒の根本の方を握った指の動きが連動すると、肛門の奥の方から膝にかけて痺れるような快感が断続的に押し寄せてくる。このまま続けられたら、到底我慢できそうにないので、声をかけなくては、と思ったが、なぜか声が出ず、体は金縛りにあったように動かない。
 先輩に口に出されて吐きそうになった。
 真央から電話で聞かされた話が急に蘇ってくる。
 こんなダイレクトな表現ではなかったが、行為の事実としてはそういう話だった。
 このまま続けられた出ちゃうよ。
 そう真央に伝えるか、真央の頭を手で支えていったん休止させようとするが、どうしても、口も手も体も動かせない。
 真央を覆っていた筈の掛けふとんはいつの間にかベッドの下に落ちていて、施してくれている真央の顔と唇と舌が見える。
 全ての神経がそこに集中しているかのように、真央に施されている欲棒周辺の快感はどんどん昂まっていく。
 真央は先端の先端に軽く唇を触れながら、多分透明な液がにじみ出ている筈の裂け目部分を舌先で軽くなぞるように刺激しつつ、指で施す上下運動の幅と圧力を強めてくる。
 奥深い部分で生じたちりちりと痺れるような衝動の塊は、もう自分の意志では制御できず、快感の波が勢いを増していく。
 このままでは迸る白濁液で真央の口元を汚してしまう。
 いったんやめて貰わなくては。
 そう思っても金縛りは続いている。
 快感の波は、急激に力強い奔流に成長して、いままさにダムを乗り越えようとしている。もう後戻りはできそうにない。
 ほんとに出ちゃう。
 次の瞬間、極限まで怒張した欲棒の根本に鈍い痛みを感じた。
 奔流はせき止められた。
 真央の右手がその部分を強く握っている。
 このまま出されるのは嫌なんだな。今度は僕が真央を攻める番だ。
 そう思って身体を起こそうとするが、依然として、身体は動かない。
 真央は根本を握る力を次第に強めてくる。
 鈍い痛みははっきりとした痛みに変わる。
 顔を上げた真央はさっきまでの真央ではなかった。
 鬼のような形相の真央の目は黄色く光っている。
「てめえ、何様のつもりだよ。夢だからって、自分の都合で好き勝手に展開して良いって思ってんのか?」
 真央の声は何か人ならざる者の声と二重に聞こえてくる。
 本能的な恐怖が全身を駆け巡るが、金縛りは続いている。
 真央。ごめん。やめて。
 念じる事はできても声を発する事はできない。
 真央は根本を握る力をますます強めてくる。
 その部分の痛みは耐え難いレベルまで高まっていくが、その痛みの奥深い所に、こんな状況でも、奥深い部分から命の源を放とうとする震えを感じる。
「てめえみたいなやつはこうしてやる」
 真央はエイリアンのように大きく口を開けて、怒張したままのものをすっぽりと口の中に収め、勢いよく上下の歯をがちんと閉じた。
 同時に噴出した紅い鮮血と白い精液は、打ち上げ華火の如く、狭い空間で乱舞した。
 
 02

 ベッドの横の窓の遮光カーテンはきっちり閉めている筈なのに、まぶたに感じる光は強烈で、体はまだ眠りを欲していても頭はゆっくり覚醒してくるようだ。
 目を閉じたまま、直前まで見ていた甘美な夢、大学のサークルの後輩の多邑真央とセックスしそうになる夢を反芻する。
 若い頃は頻繁に見たこういう淫夢も近頃は滅多に見なくなった。
 しかも、いま見ていた淫夢は、過去最高レベルにリアルな夢で、半分覚醒しているいまも、指や唇や欲棒に感触が残っている。
 判りやすい願望夢。
 夢の中の僕は二十歳の頃に住んでいた部屋で、多邑真央に例の行為を施されていて、もう少しで射精するという寸前で目が覚めた。
 このままもう一度眠れば、続き見られるかもしれない、と思って目を閉じてみると、得体のしれない恐怖感のようなものがどこか奥深い部分から生じてくる。射精しそうになった直後に何かとんでもない事が起きたような、ざらついた違和感が脳裏を駆け巡っているようだが、それが何だったのかは浮上して来ない。
 時間をチェックしようと枕の横を探るがiphoneがない。
 おかしい。いつものようにここに置いたおいた筈なのに。
 ゆっくり瞼を開くと、さっきまで見ていた夢の部屋、大学時代に住んでいた部屋の光景が見えてくる。約40年前。上京して最初に住んだ部屋。
 夢から覚めたと思ったらまだ夢の中だった、という夢は何度か見た事があるが、夢から覚めて、またその夢の世界の同じ場所にいる、という夢は初めてのパターン。しかも、さっきまで見た夢もほぼ明晰夢だったが、いま、この瞬間も、これは夢だと認識している。
夏の陽射しを遮るには薄すぎるカーテンを開けて窓を開けると、陽光の強烈な圧力と空の青さが瞳に突き刺さってくる。
その眩しさで一気に眠気がふっとんだ。 
 実際の僕は眠っている筈なのに、脳が覚醒する感覚が、はっきり眉間のあたりに感じられる。
 とても夢とは思えないリアルな感覚。
 一瞬で目の奥に生命エネルギーそのものが生じたような。
 これが若さ……だったっけ?
 こんなにリアルな夢を、夢と自覚して見るのは、50年以上生きてきて初めてだ。
 黒い金属の丸フレームのシングルベッド、ベッドのすぐ横のカラーボックスの上に14インチのテレビ(もちろんアナログ)とステレオ(なんと呼ぶのか名称を思い出せない、アンプとカセットデッキが一体になったモノ)、下の段には2台のビデオデッキ(どちらもベータ)、レコードプレイヤー、カセットテープケース、淡いイエローのダイヤル式電話機。全て記憶通り。さっきまで見ていた淫夢を超える現実感。
汗ばんだTシャツを脱ぐと一切贅肉がついていない腹。
とても自分の体に思えない。軽く腹を殴ってみると軽く殴られた感覚がはっきりとある。頬をつねってみるとちゃんと痛い。いろいろ衰えてきた五十代半ばのいまよりも、むしろ鋭敏に感じられる。夢の筈なのに。
 ベッドから立ち上がって歩いてみると、この当時に比べれば20㎏は増量したいまに比べると、歩く時に感じる自分の身体は鳥のように軽い。
 ラナは軽いなあ、鳥みたいだ。
 コナンが発した台詞が脳裏を駆ける。
 この台詞はコナン(名探偵ではなく、宮崎駿御大の未来少年の方)がラナをお姫様だっこをして走っている時の台詞なので状況は違うが、とにかく軽い。自分の体の重さが感じられない。
 唯一妙な重さを感じるのは何だ、と思って意識を集中すると、短パンの中の勃起した欲棒が歩く度にピタピタと音を立てて下腹部に当っている。朝勃ちなんてひさしく味わっていないので忘れていた感覚。短パンと下着を脱いで眺めてみると、さっきまで見ていた淫夢のせいか、我ながらほれぼれするようなフル勃起だ。おへその下あたりに届きそうな角度。この20年は見ていない角度と硬度。
 このまま夢の中で自主トレしてみたらどうなるんだろう?
「タレントの坂本九さんの生存が確認されました」
 本体前面のタッチボタンを押してテレビの電源を付けると、画面が映る一瞬前、黒い画面の状態で、男性の声が聞こえた。
 お昼のニュース、半壊の日航機の映像。
「……緊急の胴体着陸で半壊した機体から、乗客乗員が次々に運び出されています。中には、自分の足で歩く事ができる方もいるようです。繰り返します。さきほど、今回の不時着事故の日航機に搭乗していた、タレントの坂本九さんの生存が確認されました」
 デスクの上にある卓上カレンダーは「1985年8月」。
 どうやら、この夢の世界では、あの日航機事故で坂本九は死ななかったようだ。
 まあ、どうせ夢なので、どうでもいい。
 それより、せっかくこんなに勃っているコレだ。
 タッチチャンネルの一番下を押して外部入力にして、ビデオデッキの再生ボタンを押すと、懐かしい・見慣れたAV女優があえいでいる顔のクロウスアップが、懐かしすぎるボケボケのアナログ画質でブラウン管に映った。
 ○この女優で何度も自主トレしたなあ(名前なんだっけ?)
 ○やっぱり渡瀬ミクは何度見ても結構タイプだなあ
 ふたつの感想が同時に脳内に浮かんでくる。
 前者はこの夢を見ている50代半ばの僕の感想。
 後者はこの当時の僕の記憶、昨夜も寝る前に渡瀬ミクで抜いた事が〈昨夜の記憶〉としてあり、この瞬間の〈自分の意識として脳裏に浮かんできた。
 いまの50代の僕がこの映像を何かで見たら、20歳の頃に渡瀬ミクを結構タイプに思っていた事を〈思い出す〉事はあるだろうが、この瞬間の後者の意識は、この当時の僕の意識そのものとして鮮烈に浮かんできた。どうせ夢なんだからなんでもありとは言え、これも初めて経験する感覚。こんなに強烈な、時空を超えるような明晰夢なんてありえるのだろうか。
 そのままビデオを再生させながら、欲棒を握って少し摩ってみると、はっと息を漏らしたくなるような鮮烈な快感が全身に走った。
 ○こんなにギンギンなのはいつ以来だろう
 ○渡瀬ミクで続けては飽きるかなあ
 渡瀬ミクを流し続けて刺激を続ける。
 ついでにさっきまで夢の中の夢で見た真央の事を思い出してオカズとして使おうとしたが、目覚めた直後ははっきり覚えていた具体や感触はすでに消失して、真央が登場してなにやらそういう展開になった気がする、という事しか思い出せない。
 思い返せば、この頃は、毎晩寝る前にするのが当たり前だった自主トレも、20代後半あたりから減り始めて、一日最低一回が、二日に一回、三日に一回になり、50代半ばのいまは、週に二回あれば多い方。
 発射の快感も若い頃に比べて激減している。
 全盛期の10代半ば~20代半ばの頃の発射の快感が10だとすれば、50代半ばのいまは3か4。
 溜まっている小便を長く出している時の快感(解放感)とそう変わらないレベルに感じる事もある。
 多分、身体はもうコレを殆ど欲してない。
 雑誌「週刊プレイボーイ」の読者相談コーナーで、リリー・フランキーが「俺はいま59歳だけど、ほんの少し前までは1日2~3回オナニーしていた」と書いていたが、〈ほんの少し前〉が実は30年前というネタではないか。
 それにしても、凄まじいレベルの現実感がある夢だ。
 軽く握ってゆっくり擦るだけで、欲棒だけでなく、脚の付け根から膝にかけて、ちりちりと電気が走るような快感が生じる。この頃、20歳の頃の自主トレは毎回こんなに強烈な快感があったのか。驚き桃の木20世紀。ほとんど忘れかけていた快感。
 女性と性交渉を持ちそうになる淫夢は、たいてい、さあいよいよ、という所で目が覚める。自主トレの淫夢は見た記憶がない。50代半ばという年齢になって、いよいよ、自主トレさえままならなくなったので、こんな強烈な願望夢を見るようになったという事なのだろうか。
 渡瀬ミクは、ベッドに座っている男優の股間に顔を埋めて、例の性技を施している。
 レンタルビデオをダビングした画質はボケボケで、ひとつひとつがとても大きいモザイクは渡瀬ミクの顔の下半分を覆っていて、本当に咥えているかどうかさえ判らない。欲棒の先端部分の形状も女性の舌先の動きもほぼ判るいまのU-NEXTの配信作品とは大違いなのだが、逆にそれを新鮮に感じる懐かしさなのか、この頃はこれで普通に興奮できていた記憶がそうさせているのか、これはこれで悪くない気がする。結局、顔が好みかどうかが一番重要。画質は良い方がいいし、モザイクはない方がいいが、それよりも何よりも顔。タイプの顔なら、後は想像でいくらでも補える。
 思い返せば、この頃は、動いている映像をオカズにできる事に、まだまだ、新鮮さを感じていた。
 僕が自主トレを始めた1970年代後半は、やっと家庭用ビデオデッキが廉価になってきた頃で、僕の周囲には〈アダルトビデオ〉というコンテンツは存在していなかった(余談だが、家庭用ビデオデッキの最初の製品は、ベータでもVHSでもない、大きな弁当箱のようなテープで、本体の価格50万円くらいだった記憶がある)。
 当初のオカズは、雑誌「平凡パンチ」「プレイボーイ」のヌードグラビアや、マンガのエッチなシーン。たまに、集英社コバルト文庫シリーズのエロチックな場面もオカズにして、文字を読んで画を妄想する事で創造力が自然に鍛えられた。好きな女の子を妄想でオカズにする時のストーリーは、コバルト文庫シリーズの展開を無意識に翻案していたような気もする(その殆どは忘れてしまったが)。
 そこから、雑誌「PLAYBOY」のプレイメイト、自販機本、ビニ本、裏本と進化していった。
 自分専用のビデオデッキを貯めていたお年玉で購入したのは、当時としてはやや早く、高校2年(1982年)の秋。その翌年、僕が住んでいた地方の中心都市初のレンタルビデオ店が、街の中心から少し外れた場所に開店した。
 藤木TDC「アダルトビデオ革命史」によれば、この当時、既に世の中にはアダルトビデオと呼ばれる作品が存在して筈なのだが、この店にいわゆるアダルトビデオと呼ばれる作品が置いてあったかどうかはなぜか記憶にない。レンタル料金は〈定価の10%〉で映画のソフトは2~3万円なのでレンタル料金は2000円~3000円。その時に借りた作品「小森みちこ 紅茶夢(レッドティードリム)」のレンタル代は1500円程度だったと記憶する。この頃はコピーガードというものは存在していなかったので丸ごとダビングした。
「小森みちこ 紅茶夢(レッドティードリム)」は所謂イメージビデオでヌードシーンは豊富にあっても絡みは一切なかったものの、自主トレデビューから約5年、初めて動く映像をオカズにした時の衝撃は忘れられない。ものごころついた時にはネットがあって、最初から無修正動画をオカズにデビューした(可能性が高い)いまの若者には想像もできないだろうと想像する。
 日活ロマンポルノの原悦子作品を買ったのも高校3年。価格は6800円だったと記憶する。この作品も繰り返し自主トレに使った。上京した1984年は、いまにして思えば、レンタルビデオ元年と呼ぶ事ができるほどレンタルビデオ店が増えた年だった。僕が住んでいた 東武東上線沿線の駅前に店ができて、最初は数える程だったアダルトビデオ作品はどんどん数が増えて、値段も安くなってきた。この夢の現在である(1985年)はそんな頃だった。 
 ……そんな思い出が、刹那、脳内を駆け巡りつつも、右手による刺激を続ける。
 いまではネットで簡単に無修正の画像や動画を見る事ができるが、そういうダイレクトな画像や動画よりも、実際の経験が一切なかった15歳の頃の妄想の方が、どこか強烈に性欲を刺激していたような気がしないでもないのは、その頃の方が単純に性欲そのものが強烈だったのか、覚えたての自主トレを新鮮に感じていたのか、または、何事につけ、経験する前の妄想の方が実際の経験よりも強烈で斬新に感じるのか、いまとなってはたしかめようもない。
 いまこの瞬間の説明不能な主観的事実は、この19歳の肉体を使っての自主トレには、ここ最近30年は味わっていなかった、格別の快感があるということ。
 このまま、この動きを続ければ、ちゃんと発射に至りそうな身体感覚がたしかにある。
 この頃は1日に2~3回発射に至るのは当たり前の事だったのだ。
 渡瀬ミクはよつんばいになって後ろから男性に突かれている。
 いまの配信作品なら、薄いモザイク越しにその部分の動きがはっきり判る男性の主観ショットがたいてい挿入されるが、そんなショットはない。そもそもこの頃の作品なので疑似の可能性が高い。それでも、なぜか、興奮する。この当時、このビデオでちゃんと興奮していた記憶が、濃密に甦ってくる。
 これだけ夢と判っているのに、なぜか、まだしばらくは覚めないような予感がある。
 こんなにリアルな自主トレが可能なら、この夢の中で、生身の女性との性交渉もできるかもしれない、と思いつく。いますぐこの部屋を出て、そういう店に飛び込めば、自主トレを超える快感を味わえるかもしれない。あるいはどうせ夢なのだから、片っ端から知人を誘い、路上ナンパにも挑戦してみて、もしOKならめっけもん。
とはいえ、いまこの瞬間のリアルな自主トレも捨てがたい。
 このまま、当時の発射の快感を味わってみたいとは思うのだが、こういう夢の常として、その寸前に目が覚めてしまうのではないか?
 いま、この瞬間に賭けるか、それとも、しばらく覚めない事を期待して、もっと楽しそうな事に挑戦してみるべきなのか……。
 突然、大きな音が響いて「何事?」と思って音の方向を見ると、ベッド脇の床に置いてある、淡いイエローのダイヤル式の電話器が鳴動している。iphoneのおなじみのメロディにすっかり慣れている僕の感覚には非常ベルのように聴こえる音。
 アナログ電話機ってこんなに大きな音だったっけ !?
 この頃は、昔ながらの黒電話ではない、様々な色の電話器が流行っていた。留守番電話機能付きのプッシュホンが一般的になるのは、この数年先。
 音の大きさにびっくりしてすぐにも発射に至りそうな感覚が一気に退いた。
 テレビの音量を下げて受話器を取って左耳にあててみる。
「寝てた?」
○懐かしい女性の声
○最近聴き慣れている若い女性の声
 さっきまでの夢で聞いていた多邑真央の声。
 デジタル音声とはどこか違うアナログ電話の独特な生々しさ。
「いま起きた」
「お昼過ぎだよ」
「朝までバイトだったから」
「なんか声が変。風邪?」
「いや、全然、元気だけど」
「こないだ夜中に電話で話した事、覚えてる?」
「なんだっけ?」
「地元の先輩に会った話したじゃん」
「ああ、聞いたような気もする」
「覚えてないの?」
「半分寝ながら聞いてたかも」
「覚えてないならいいよ」
「思い出して欲しいわけ?」
「逆。なんか、ノリで、けっこうヘンな事、言っちゃったから、みんなには内緒にしてね、って言っておこうって思って」
「大丈夫。オレ、意外と口とあそこは硬いから」
「なにそれ。なんか、変だよ、今日の亜嵐くん」
「いまってヒマ?」
「ヒマはヒマだけど」
「とりあえず、そっち行くよ」
「え? そっちってこっち? わたしんちの方?」
「練馬だよね、最寄り駅。いまから行くから適当に準備してて」
「え、いまっていま?」
「練馬の駅前あたりに着いたら電話するから」
 真央の返事を聞かずに電話を切った。
 
 03

 透明な液体が入っている小瓶が机の上にある。
 こんなモノを持っていた記憶は全くない。
 蓋を取って匂いを嗅いでみると独特な甘いような匂いがする。
 なぜか、妙に気になるので、小瓶をジーパンの前ポケットに押し込み、定期入れ兼財布はジーパンの尻ポケットに入れて手ぶらで部屋を出た。
 ウォークマンを持って行こうかどうか迷ったが、有線のイヤフォンが煩わしく感じられそうだったのでやめた。
 一歩外に出た瞬間に目が覚めるのではないか、と危惧しつつ、部屋の外に出て、サングラスをかけて歩き始めても、まだ夢は続いている。
 スマホもデイパックも持たずに外出するのはあまりに久々で新鮮。思い返せば、この頃は手ぶらで外出するのが普通だった。デイパックを使うようになったのは、スマホはジーパンのポケットに収まりが悪く、スマホのバッテリーも持ち歩くようになったからだ。
 二十歳の頃の身体で手ぶらで歩くのはとても心地よい。
 外を歩くと、身体の軽さはより一層実感できる。
 思いっ切りの歩幅でどんどん歩く。夢の中にいるせいか、自分の身体の重みを本当に感じない。地上数センチの高さの風に乗って移動しているような、さっきまでの発射寸前の自主トレとはまた違う種類の心地よさ。
 多邑真央が住んでいる練馬に行くには、東武東上線で池袋に出て、西武池袋線に乗り換えるのが確実。タクシーを使うという手もある。この夢が覚める前に真央に会う確率を高めるなら、電車かタクシーの方がいい。そんな判断といまこの瞬間の肉体的快楽を天秤にかけて、あまりにも徒歩で歩くのが心地よいので歩いて行ってみる事にする。 
 二十歳の頃に住んでいた町の懐かしい光景。
 記憶通りの駅前のロータリー。
 このあたりの道は当時もいまもよく知らない筈なのに、なぜか、まるでVRでGoogle Mapsを見ているかのように、地図と進むべき道が脳裏に浮かぶ。
 川越街道を渡り、城北中央公園を抜けて石神井川沿いの道を進むうちに、気がつけば、下腹部の怒張は収まっていた。
 散歩をしていると、自宅のデスクに座っている時に比べて、前向きなアイディアがよく浮かぶ。
 夢の中にいるこの瞬間も、歩いていると、当時の想い出、半ば忘れかけていた事柄が、身体から湧き出るように脳裏に浮かんでくる。
 多邑真央とは何度か夜中に長電話をしていた。
 この頃は、真央だけでなく、クラスの友人やサークルの友人とよく長電話をしていた。
 真央が地元の先輩と一緒にホテルに行った時の顛末は、さっきの真央からの電話では「覚えてない」と言ったが、本当は覚えていた。

「ホテル行ったけど、結局、やらなかった」
「ホテル行ったのに?」
「うん」
「誘ったは向こう?」
「当たり前でしょ」
「迫って来たよね?」
「多少はね」
「でも、やらなかった?」
「なんか、いやになって、やめてって言って」
「途中で?」
「途中で」
「なんだよここまで来て、とか、言っちゃいそう。俺がその先輩なら」
「ちょっと、そんな、感じだった」
「でも、やらなかった」
「やった、やらないで言えば、やらなかったけど」
「けど?」
「吐きそうになった」
「飲み過ぎ?(酒)」
「そっちじゃない」
「そっちじゃなければどっち?」
「わかるでしょ?」
「ああ、あっちの話って事?」
「あっちって?」
「例のあれ」
「例のがわかんない」
「口でしてたら……みたいな」
「最初から判ってる癖に」
「なんて言うんだっけ? あれ?」
「言わない」
「顛末は言えても、単語は言いたくない?」
「言いたくない」
「言えないんだ?」
「言おうと思えば、言えるけど」
「言ってみて」
「ホントに聞きたい?」
「聞きたい」
「ちゃんと言葉にしたら、生々しいかもだよ?」
「生々しいかどうか、言ってみて」
「口でしてあげたら、いきなり、口の中に出されて、吐きそうになりました」
「まあまあ生々しいね」
「あんなに飛び出る、って思わなかった」
「飛び出る?」
「喉の奥の方にピュッって」
「ああ、そういう事ね(やっと判った)」
「びっくりして、吐きそうになった、マジで」
「それしたの、はじめてだったとか?」
「まあ、はじめて、ではないけど」
「けど?」
「口の中で出されたのは、はじめて」
「その瞬間は見た事なかったんだ?」
「瞬間?」
「いわゆるひとつの、男が達して、出る瞬間」
「見た事はあるけど」
「その時は、勢いは、そうでもなかった?」
「その時は、もっと、どろっと出る感じだった……え、それって、やりかたで、違ったりするってこと?」
「やりかた?」
「だから、手の時と、口の時じゃ、違うとか」
「どろっと、の時は、手?」
「……ちょっとだけ、口でして、あとは手」
「ちょっとだけって?(具体的に知りたい)」
「いいでしょ。細かい話は(恥ずかしかった事を思い出してちょっと恥ずかしい)」
「吐きそうになった、とか、言っといて?」
「だから、ちょっとだけはちょっとだけよ。判るでしょ」
「なんとなく、判るような気もするけど……多邑の口から聞きたい」
「ヘンタイ」
「男はみんなヘンタイなんだよ。俺なんか、そうでもない方だよ」
「で、どうなの?」
「なにが?」
「だから、やり方によるの?」
「手だとそうでもなくって、口だと凄い勢いで出る(でまかせ)」
「ホントに?」
「あのさあ、そういうのは、男の俺じゃなくって、経験豊富な女の先輩とかに訊けば」
「いいじゃん、教えてくれたって」
「だって、俺が知ってるのは俺の話だけだよ?」
「なんか、訊きやすいし、亜蘭くんの方が」
「女子どうしってそういう話するんじゃないの? 男がいない時は」
「するけど、わたしは、結構苦手」
「俺とは、さんざん、してるじゃん」
「男から聞いた方が確実じゃない、情報が」
「じゃあ、直接、その先輩に訊けばいいじゃん」
「ずっと猫かぶってるから」
「先輩に会う時?」
「なんにも知らない、純情な後輩です、って感じで通してんの」
「やる事やってるんだから、もう、いいんじゃないの、素のキャラで」
「やる事やってないよ」
「やってんじゃん」
「やってないもん。最後までは」
「あれ? そうなの?」
「私はまだ、汚れなき純潔の乙女よ」
「そこそこ汚れてはいるっつうの。……その後、仕切り直さなかったんだ?」
「まあ、いいよ。先輩の話は。もう会わないかもだし」
「吐きそうになったから?(冗談)」
「そうそう、勢い良すぎて吐きそうになったからもうムり~って、そんなわけないでしょ……そもそも、つきあってたかどうか、よく判んないし」
「そうなんだ」
「顔と体はいいんだけど、話すと、なんだかなあ、って」
「顔と体がよければいいじゃん。割り切ってつきあえば」
「……で、ホントはどうなの?」
「なんだっけ?」
「だから、口だと、凄い(勢いで出る)のが普通なの?」
「いや、それは、多分、やり方じゃなくって、その時のアレだよ」
「アレって?」
「その時の調子とか、どれくらい溜まってるか、とか(実体験はないのであくまで想像)」 
「溜まってると、凄い(勢いで出る)?」
「溜まってて、いい感じだと、多分、凄い(勢いで飛び出る)」
「いい感じ?」
「多邑のテクニックが、いい感じだったから、凄かったんだよ」
「変なこと言わないで」
「いいじゃん、上手な方が、何事も」
「亜蘭くんは、いつも凄いの?(からかっている)」
「まあ、俺は、たいてい、凄いかな(強がり)」
「今度、見せてよ」
「見せてってなんだよ」
「他の男の子のも見てみたいかなあって。先輩しか知らないから」
「なんで俺なんだよ」
「いいじゃん、別に、ヘンタイなんでしょ」
「多邑が手伝ってくれるなら、別にいいけど」
「手伝う?」
「だから、手とか、口とか」
「わ、想像しちゃったじゃん!」
「急に大声出すなよ」
「全然ムリ、想像しただけで、もう、ホントにムリ」
「んだよ、そっちから言い出しといて」
「冗談に決まってんじゃん。え、本気だと思った?」

 こんな会話の記憶がいきなり浮かび上がってきた。
 互いが発する言葉のニュアンスや真意が判る程に鮮明に、まるでAirPodsProの空間オーディオのように脳内で聴こえてきた。
 脳内再生されたこの会話のどこまでが、本当なのだろう?
 昨夜の夜にかわした会話だとしても、こんなに、細かく覚えてはいない筈。
 当時の僕の記憶をいまの僕が脚色しているのか?
 電話で「吐きそうになった」と聞かされたのは50代半ばのいまでも明確な記憶として残っている。その電話の最中に、この子とは、なんとなく、仲良くしておけば、ちょっとはエッチな展開になるかも(ワンチャンあるかも、という言い方は1985年には存在しない)と思っていた事も。
 もし、このまま、1985年の8月のこの夢が続いて、実際に真央に会う事ができたら、いったい、どうなるのだろう。この50代半ばの意識と記憶を保ったまま、面と向かって話をする事ができるのだろうか?
 現についさっき、電話で会話する事はできたのだから、会って話をして、展開によっては〈ワンチャン〉あるのかもしれない。
 さっき部屋で受けた電話で真央をかわした会話も実に奇妙な感じだった。
 真央とは、大学卒業以来、会っていない。
 数十年ぶりに声を聴いて「ひさしぶり」と言いそうになったが、それを遮るような勢いで、僕の口は勝手に言葉を発して真央と会話を始めていた。1985年当時の記憶、2020年代のいまの僕が忘れている細かい記憶がどっとせりあがってきて、僕の意識を満たしてきて、僕の口からは、つい最近も真央と話をしたような流れで言葉が自然に出ていた。台詞を忘れた僕を的確に二十歳の頃の僕がプロンプトしているような、または、二十歳の頃の僕が話すのをいまの僕が二人羽織で楽しんでいるような、そんな奇妙な感覚。そして、会話をしながら、当時の僕がこの当時の真央に抱いていていた、いまでは殆ど忘れかけていた、言葉では表現できない感情やムードが、濃密に僕の意識を侵食してきたのだ。 
 だめもとで直球の提案をしてみる、というやり方は、いろいろ正攻法でさんざん失敗した後、20代後半以降の僕が使いはじめた手法。
 真央の自宅に遊びに行った事はあるが、当時住んでいた上板橋の部屋から歩いて行った記憶も、夏休みに行った記憶もない。もちろん、単に、忘れてしまっている可能性もあるが。
 それにしても、これだけ明確に、夢である事を自覚している明晰夢なんてありえるのだろうか。しかも、五十代半ばの記憶と二十歳の頃の記憶が、どちらも〈最近の自分の記憶〉として意識の中で共存しているような感じなのだ。

 04

 身体は19歳の筈だから、徒歩60分程度の距離なんて余裕と思っていたら、心肺機能は全然平気なのに、この身体は、長い距離を歩きなれていない感じ。歩き始めて15分も立たずに、膝と膝裏と足の裏が痛くなってきた。この感じは、50歳の頃に長い距離の散歩をするようになった当初の感覚だ。連日歩いていると、自然に長い距離を歩いても平気になり、数年後には、30分ならウォーミングアップ、痛みや疲労を感じるのは60分を過ぎてから、という散歩好きの体質になった。痛みがあっても、あまり気にせずに歩き続れば、そのうち治まる事が多い、という事も学んだ。
 19歳の身体はあちこちに痛みを感じているが、この程度の痛みはどうって事はない、と言い聞かせて、あまり気にしないようにして歩き続ける。
 夏の午後の陽射しが眩しい。
 この当時の8月半ばは、最近20~30年に比べれば気温は低かった筈とはいえ、札幌育ちの僕にとってはいまもむかしも充分暑い。よく考えたら、五十代半ばの僕が、60分の散歩が全然平気なのは真夏以外の季節で、真夏は30分も歩けば大量に発汗して疲労を感じていた。
 氷川台駅そばの商店で現金でポカリスエットを買う。
 現金を使ったのはいつ以来だろう。支払いは現金のみの名画座系の映画館や飲み屋にも久しく行っていない。硬貨は嵩張って重いので嫌い、とこの当時から感じていた事を思い出しながら、おつりはジーパンの前ポケットに入れた。
 稲荷公園の木陰のベンチに座って、プルトップを外し、ガラス容器の丸い縁に口をつけて飲むと、その曲線が触れる唇が心地よく、いつもより美味しく感じられる。缶やペットボトルで飲むより断然良い。
 瓶が触れている唇から物怪がぶわーっと湧き出すように、5歳の頃に銭湯上がりにカツゲンを飲んだ記憶が鮮烈に甦ってきて全身を満たす。こんな異常な明晰夢の中にいるからなのか、頭の中に光景や心情が浮かんでくるというレベルではなく、全身が持っていかれて本当にその場にいるかのような現実感。五十代半ばの僕も、19歳の僕も、5歳の僕も、同時にこの瞬間を生きているような感覚に目眩がして、次の瞬間、急激な眠気が襲ってきた。
 目を閉じると、普段眠りに落ちるのとは全然違う感覚、全く未知の得体の知れない世界に引き釣りこまれるような恐怖感に襲われた。いまのこの世界が超絶リアルな夢の世界だとしたら、ここで眠った時にどんな夢を見るのだろう?
 夢の中で強烈な眠気を感じて寝てしまう夢を見た記憶はない。
 ここで眠ってはいけない、と思っている僕は、本当は眠っているのかもしれない。ならば、ここで目を覚まして、五十代半ばの僕が生きている現実世界に戻った方がいいのか?
 強引に金縛りを打ち破る時の気合で目を開けると、今度は、自分が何者で、いまどこにいるのか、よく判らない感覚が強烈に襲ってくる。絶対知っている筈の俳優の名前が全然出てこない物忘れの感覚が、意識全体、身体全体に拡がって、そのまま、どこかに連れていかれそうになる。
 ここはどこ?
 僕は誰?
 極薄の透明な膜に包まれて世界と隔絶しているような、どこか快いようにも思えるその感覚は、手に持った飲みかけのポカリスエットを認識した瞬間に、すーっとひいていった。
 1985年、19歳の夏の夢の世界にいる。
 この夢の中で、大学の映画サークル「CINEMAGIKCAL FORCE」の後輩・多邑真央が住む練馬に向かっている途中、この公園のベンチで休憩しているのだ。
 瓶に残っていたポカリスエットを飲み干して、ベンチ脇の金属製のゴミ箱に空き瓶を捨てた。ゴミの分別が細かくなるのはこの当時から見てもう少し先。この頃は公園や駅にこういうゴミ箱がたくさん置いてあった。
 それにしても、瓶に触れた唇の感触も、ポカリが舌の上を流れて喉を通過して行く感覚も、あまりにもリアル。現実以上にリアル。
 この世界が夢の世界ではない、という可能性もあるだろうか?
 もし、超絶リアルな明晰夢ではないない、としたら、他に何が考えられるだろう?
 ①普段見る夢とは違う夢(現実の50代の僕は昏睡状態?)
 ②実は僕は既に死んでる(この夢は死ぬ間際に見る永い夢)
 ③実際に過去の自分の肉体にタイムリープしている
 ④誰かの夢の世界にいる(ツイン・ピークスのモニカ・ベルッチの夢)
 ⑤これまでにフィクションでさえ描かれていない全く新しい事象
 ④の「ツイン・ピークス」のモニカ・ベルッチの夢、という考えが浮かぶと同時に、2017年制作のシーズン3の第14話の12分頃、という情報が浮かび、劇中のそのシーンが鮮明に蘇る。
「We are like the dreamer who dreams, and then lives inside the dream.」
「But who is the dreamer?」
 まるで16KのARのように鮮明に眼の前のスクリーンにそのシーンが流れる。
「ツイン・ピークス」は大好きなドラマで、このシーンは、全シリーズ中、最も重要なシーンとして何度か見返したが、第何話の何分かなんて覚えてないし、この台詞も、聴けばああそうだった、と思っても、正確に覚えている筈はないのに、いま、脳内(多分)に鮮明に甦っている映像と台詞と音楽と情報は、完全に正解という強烈な確信が、僕の意識を強烈に覆う。
 単なる明晰夢でも、現実でも、人類の誰も経験していない別の種類の何かでも、考えた所で結論は出ない。できる事をやってみるしかない。何が起きているか判らないので誰に助言を求めていいかも判らない。マーフィーにとってのドクはこの瞬間の僕にはいない。
 考えてみれば、実際の人生でも、結局同じ事だ。
 いまこの瞬間にできる事をやるしかない。
 その次の瞬間には急に心臓か呼吸が停まって死んでいるかもしれない。
 とにかく、やるだけの事はやってみよう。
 ベンチから立ち上がってみると、何かがリセットされたような感覚があって、身体の痛みが軽減しているようだ。

 夏の陽射しを浴びて石神井川沿いを歩き続ける。
 西武池袋線練馬駅はもうさほど遠くない。
 最近は滅多に見かけなくなった、虫取り網と虫かごを持った少年の集団とすれ違う。
 僕があんな少年だったのはもう50年近く前の事だ。
 それにしても、いまこの瞬間の意識は、この夢(夢でない可能性もあるが結論は出ないので夢という事にしておく)を見ている50代の僕の意識なのか、それとも、この身体の持ち主である19歳の僕の意識を、50代の僕が、あたかも自分の意識のように感じているのか、全く区別できない。
 とにかく、いままでに見た事がない強烈にリアルな夢。
 夢の中で肉体感覚や光景をこんなにリアルに感じた事はない。
 先日体験して衝撃を受けた最新型没入型VR以上の現実感覚。
 時間の感覚もあまりにもリアル。腕時計を見ると、部屋を出た時間から約30分が過ぎている。僕の内的な感覚でも約30分。30分は30分に感じられる。こんな夢は見た事がない。そもそも、夢の中で、時間経過を気にした事はない。
 本当にこれは夢なのか?
 さっき考えた5個の可能性の3番目、実際に、50代半ばの僕の意識が何かでタイムリープして、昔の僕の肉体に宿っている可能性もゼロではないかもしれない。
 いまの知識と経験を持ったまま、若い頃の自分になりたい、という空想は、まだ自分が若いと言える年齢の頃から何度もしていた。30歳の頃には15歳の頃に戻ってやり直したいと思っていた。実際に年齢を重ねて、身体や性欲が衰えてくると、その思いは、どんどん強くなっていたが、そんな事はSF小説の中だけでの話で実際に起こる筈はない、という事も、もちろん、頭では理解していた。
 若い頃の記憶が再構成されているような夢を見て目が覚めて、ずっと夢の中にいれたら良かったのに、と思った事は数知れない。
 そのどの夢も、こんなリアルな夢ではなかった。
 夢の中のリアル感が増すと「これは夢だ」と気づいて、それからほどなく目が覚めてしまう事が多かった。
 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公のマーフィーは、1955年に跳んで、撃たれて納屋から脱出した直後に「ヘビーな夢だ」と言っていた。マーフィーは、どの瞬間に「これは夢ではない」と気づいたのだろう? 
 映画的正解は、多分、駅前広場で新聞の日付を読んだ時に「本当に1955年にいる」と半分以上思い、母親の部屋で目覚めた時に確信に至った、という事だと思うが、この映画は、どこまでも何もかも夢、マーフィーはいままで見た事がないリアルな夢(リアルに1955年にタイムスリップした夢)をずっと見続けている、と解釈する事もできなくはない。
 ベッドで眠っているとドクから電話がかかってきて駐車場に行ってデロリアンに乗る。この電話以降エンドタイトルまで全てマーフィーの夢。実際はマーフィーはベッドで眠り続けているのだ。
 もうひとつ気になるのは、もし本当にタイムスリップして帰ってきて現在が変わってしまったのだとしたら、タイムスリップ前の世界にいたマーフィーの家族はどうなったのだろう、という事。ピザ屋でバイトしていたさえない兄ちゃんは、マーフィーがタイムスリップした瞬間に気を失って、過去の記憶が全て改竄されて、目が覚めたら、家族全員ランクアップされている現実を現実として認識するのか。それとも、マーフィーがタイムスリップした瞬間に世界は分岐して、ピザ屋でバイトしていたさえない兄ちゃんがいる世界のマーフィーはある日突然消えてそのまま戻ってこないのか。
 本当にタイムスリップした話だとしたら、最後の最後にデロリアンに乗って再びどこかに跳ぶのも気になる展開だ。タイムマシンを自由に使って確実に行きたい時代に跳べる瞬間が一度でもあるなら、何か問題が生じる前にその直前に跳んで来て警告すれば、マーフィーが過去に跳ぶ事もなくなる。そうすると過去のドクはタイムマシンの着想を得る事ができないのでタイムマシンを発明できない、という堂々めぐりになってしまう。
 タイムマシンを映画に登場させるなら、主人公の一人称視点で描き、タイムマシンの使用は1回だけ、跳んで戻ってきたら壊れてしまわないといけないと思う。本当は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンは戻ってきたら壊れてしまわなければいけなかったのだ。その意味ではPART3は正しい終わり方。
 とは言え、所詮、娯楽映画なのだから、そんな細かい事を気にせずに楽しめばいい。
 実際、最初の鑑賞では、そんな事は一切気にせずに大いに楽しんだ。小林信彦がキネ旬でホメていた事にも多いに同意した。ビデオやDVDを買って繰り返し見るうちに、いろいろな事がひっかかるようになってきた。
 基本的に、何事につけ、細かい事が気になり、自分の中で整理したくなる性質(たち)なのだ。
 これは、12歳で日記をつけはじめた頃から変わっていない。
 そんなような事を、同時並行的にあれこれ考えながら歩き続けて、練馬駅前に着いた。
 相変わらず、とても夢とは思えない、確かな肉体感覚があり、足の裏と膝の裏の痛みも続いているが、そもそも、実際の人生だって、ある意味では、いつか突然に「死」で幕を閉じる夢のようなもの。醒めるまでやるだけやってみよう。

 05

 練馬駅前で周囲を見回した。
 もともと殆ど来た事がない町なのでなんの感慨も湧かない。
 歩きタバコ・立ちタバコの人が何人もいる。駅前に新聞や雑誌がぎゅうぎゅう詰めの売店(キオスク)があり、その向かい側に多数の公衆電話が並んでいる。バス停のベンチに座っている人が新聞や雑誌を読んでいる。ネット以前の時代にはおなじみの景色。
 もちろん、スマートグラスの人も、耳にBluetoothイヤホ手にスマホの人もいない。
 この景色は現実の1985年の練馬駅前そのものではなく、この夢を見ている僕のが適当にでっちあげた景色かもしれないが、それは確かめようもない。
 多邑真央が住んでいたマンションには、記憶では、大学二年の冬に一度遊びに行った事がある。それが、85年の年内なのか、あけて86年の二月あたりなのかは定かではない。いずれ、この肉体の持ち主、十九歳の僕の現在からは少し先の話で、その中にいる五十代半ばの僕も、むかし過ぎて思い出せない。
 駅前の公衆電話ボックスに入って、受話器を取って「ツー」という音で回線が繋がっている事を確認後、十円玉を念の為に三枚投入して、財布に入っていた電話メモを見てプッシュホンのボタンを押すと、ワンコールで真央が出た。テレホンカードが登場するのはまだもう少し先。
「もしもし」
「亜嵐だけど」
「いまどこ?」
「練馬の駅前」
「ウソ、ホントに来たの?」
「歩いてきたら結構疲れた。夏の暑さを考えてなかった」
「いまからなんて、冗談かと思ってた」
「むっちゃ汗かいた。真央の部屋でシャワー使わせて」
「え?」
「シャワー、一緒に浴びようよ」
「暑さで頭おかしくなった?」
 この電話が〈史実〉にはなかった筈の電話だからか、さっきの電話とは違って、五十代半ばの僕が完全に発語の主導権を握っているような気がする。
「シャワーは冗談だとしてさ、どんな感じか見てみたいんだけど、多邑の部屋」
「一応、女の子のひとり暮らしだよ?」
「一応、警戒してるの?」
「別に警戒はしてないけど」
「じゃあ、適当な喫茶店入って、そこから、また電話するよ」
「……なんかやってる?」
「なんかって?」
「怪しいクスリとか」
「なにそれ」
「だって、今日の亜蘭くん、なんか、いつもと違う感じだよ」
「そう?」
「いつもの、いかにも童貞っぽい、おどおどした感じが、あんまりない」
「童貞じゃねえし」
「別に、来たいなら来てもいいけど、変な事はしないでよ?」
「しないしない、考えた事もない」
 このリアルな夢の世界では、五十代半ばの僕の意志で、記憶している過去では起きていなかった事をリアルに体験できるのかもしれない。そう判断して電話を切り、教えられた道順でマンションに向かう。
 マンションの玄関前に真央が立っている。
 懐かしい。
 実際の記憶よりも、断然、魅力的に見える。
 五十代半ばの目で見れば、二十歳歳前後の女性は誰でも魅力的に見えると言う事なのか。それとも、超久々に顔を見て、当時の淡い恋心(あるいは強い性欲?)が甦っているのか。余談だが、二十歳を〈はたち〉と読むのは、2020年代には死語になりつつある。
「まだ顔も作ってないよ。亜嵐くんなら、まあいいかって思って」
「いつもとそんなに変わらないように見えるけど」
 真央を間近で見ている感慨で胸がいっぱいになって、なんて話そうか、と思っているうちに、また口が自然に動いて、当時の僕が言いそうな台詞が口から出た。五十代半ばの僕が言い淀んた時は、この当時の僕が咄嗟の反射神経で対応しているような気がする。
 実際に遊びに行った時の記憶はすっかり飛んでいて、真央の部屋は、1980年代半ばの女子大生が住む部屋にしては地味なようにも感じられたが、これは、もう少し後のバブリーな時代に知り合ったひとり暮らしの女性の部屋の記憶が混入しているからかもしれない。
 1DKのメインの部屋は和室で、冬はコタツになりそうな正方形のテーブルと洋服収納ケース(ファンシーケース)が目についた。
 真央が持ってきてくれた冷たい麦茶を一気に飲んで、〈強〉にした扇風機の風にあたっていると、火照った顔から汗がひいてきた。
「ちゃんと守ってよ。さっき電話で言ったこと」
「なんだっけ」
「覚えてないならいいけど」
「……地元の先輩とやっちゃった話だっけ?」
「やってはいない……やっぱ、変だよ、今日の亜嵐くん」
「そう?」
「そんな軽口ほいほいのキャラだっけ?」
「なんか、嬉しくて、ついつい、出ちゃうんだよ」
「何かいいことあった?」
「いま」
「いま?」
「いま、真央の部屋で、真央と一緒にいる」
「ちょ、やめてよ、いきなり下の名前で呼び捨てとか」
「あれ、真央って呼んでなかったっけ?」
「ちょっとドキッてしちゃったじゃん」
「真央と一緒にいるから夢気分」
「ああ、もう、完全におかしいよ、今日の圭は」
「うわ」
「ドキッてするでしょ?」
「下の名前の呼び捨てなんて、母親にしかされた事ないよ」
「しかえし」
 真央と会話を始めると、電話で話した時以上に、本来の僕、この夢を見ている五十代の僕は自然に〈後退〉していく。五十代の僕が〈前面〉にいては、当時の多邑真央を間近で見ている感慨で、とてもこんなふうにポンポン会話を進められない。
 その一方で、十九歳の僕なら、女の子の部屋でふたりっきりという状況で性欲を抑え込む事に必死で、何気ない会話をしようと意識するとぎこちなくなりそうな部分を、五十代の僕がしっかりと後ろで支えているような感覚もある。
 真にコントロールして発語しているのはどちらの僕なのだろう?
「ねえ、これって、夢じゃないよね?」
「そんなに嬉しい? 私みたいなかわいい女の子に圭って呼ばれて?(からかう)」
「なんだか、ホントに夢のような気がして、いまこの瞬間が」
「ホントにホントに変だよ、今日の亜嵐くん」
「今朝の夢のせいかなあ」
「亜嵐くんって夢見るんだ」
「見ないの、夢?」
「私は見ない」
「見ても忘れるだけでしょ」
「忘れるのが普通じゃないの?」
「僕は、覚えてる事もあるよ」
「たとえば?」
「今朝、起きる直前に見てた夢も……あれ、起きたばっかの時は覚えてたんだけどなあ。なんか、いままで見た事がない強烈な夢で……」
「ほら覚えてないじゃん」
 鏡の中の真央はリップをひいている。
 その唇をなんとなく眺めているとふいに何かが脳内で弾けた。
「あれ、なんか、今朝見た夢に、真央が出てた気がする」
「だからやめっててば、呼び捨ては」
「……」
「……亜嵐くん?」
「……」
「……寝ちゃった?」
「ねえ、いまこの瞬間って、ホントに現実だよね? 夢じゃないよね?」
「いいかげんにしてよ」
「ちょっと、この辺、ぶってみて」
 真央のすぐそばに顔を突き出す。
「こんな(暑い)日に歩いてきたりするから」
 真央は僕の顔を間近でしげしげと見て、
「男の子の顔なんてぶった事ないから、これでどう?」
 おでこの真ん中に真央のでこぴんがパチンと当たる。
 デコピンされた衝撃がまっすぐ脳髄を貫いて、一瞬で僕をどこかに連れ去り、真空になった意識を何かが満たした。50代の僕でも、19歳の僕でもない、知らない誰か。それでもどこか懐かしいような気がする誰かに導かれるように手を上げて真央の頬のあたりに触れる。
「We are like the dreamer who dreams, and then lives inside the dream.」
「But who is the dreamer?」
 囁く声がリフレインする。
 真央の頬と耳の辺りの体温を感じて、夢でも現実でも、僕が誰でもどうでもいい、いまこの瞬間に何をしたいとかと言えば……。
 真央の顔をゆっくり引き寄せて、唇緊張あと5センチの距離から更に最後の距離を縮めようとすると、真央は両手で僕の胸の辺りを力強くドンと突き飛ばす。
「いてててて……」
「夢じゃなないって、わかった?」
「え、俺、なんか、いま、変な事、しようとしてた?」
「完全に暑さにやられてるよ。亜嵐くん、いつもと違いすぎ」   
「そうかもしれない」
 座り直してジーパンの前ポケットからハンカチを出すと、同じポケットに入れていた小瓶が飛び出て床に転がり落ち、カーテンの隙間から差し込んでいる一条の陽光で小瓶のガラスがキラキラと乱反射する。
「それ、なに」
 ハンカチで額の汗を拭いて、小瓶を拾い、
「多分、香水だと思う」
「多分?」
「買った記憶も、貰った記憶もないんだよ、なぜか」
「ちょっと見せて」
 にじりよってきた真央に小瓶を手渡す。
「なーんも書いてないね」
 真央は蓋を開けて鼻を近づけて、
「なんかヘンな匂いだよ。香水じゃないでしょ?」
 真央が差し出した小瓶に鼻先を近づけると、
「ウェーイ」
 真央はふざけた調子の声を出して、小瓶の先端を僕の鼻の穴に勢いよく押し込んだ。
 反射的に払い除けるより先に、小瓶から吹き出た液体が鼻の奥を濡らした。ツーンとする痛み。
 鼻の奥から喉に流れた液体を少し飲み込んでしまい、鼻の奥と喉のあたりに、なんとも形容し難い、何かに侵食されるような違和感が広がっていく。その違和感が快なのか不快なのかよく判らず、何度も咳をする。
「大丈夫? ちょっと強く入れすぎちゃった?」
 真央が背中をさすってくれる。
 払い除けた小瓶は真央の傍らに転がって、残っていた液体はその勢いで床に飛び散っているようだ。
 いままでに嗅いだ事がない匂い。
 重く、甘く、粘りつくような匂い。
 床に流れた液体が発している匂いなのか、自分の鼻の奥で発している匂いなのか、判然としない。
 尋常ならぬ夢の中で、尋常ならぬ状況に陥って、ただでさえ混乱している僕の意識は、半ば朦朧としてくる。何かが僕を圧迫してどこかに押し出そうとしている。
 この夢は危険だ。
 この夢から逃げた方がいい。
 咳が止まらない。
 呼吸が苦しい。
 演技なのか本気なのか、心配そうな表情の真央の顔がすぐそばにある。
 僕は圧迫から逃れたくて、縋るように真央の顔を一瞬見て、ぐいっと引き寄せて、いきなり激しいキスをする。
 「ちょ……」
 身を引こうとする真央の顎をぐいっと持ち上げて唇を開かせて、ぐぐぐっと舌を押し込んで、僕を内部から圧迫する何かを真央に逃がすかのように、舌を激しく動かして真央の歯茎に僕の唾液を擦り込ませ、そのまま床に押し倒す。いまこうしているのが、50代の僕の意志なのか、この肉体の19歳の僕の意志なのか、それとも僕を圧迫している何かなのかよく判らないまま、僕は、2020年代なら、不同意性的行為として訴えられても仕方がない行為を押し進めて行く。
 床に押し付けられた真央の少しウェーブがかかった髪の先は、床に流れた液体に触れている。
 身をよじって逃れようとする真央に体重をかけ、首の後ろにまわした手で真央の左手の動きを封じた体勢で、僕は喉の奥に生じた熱い何かを真央の口内に植え付けるが如く、舌で真央の歯茎と唇を責め立てる。
 口の両端を強く指で圧迫して強引に真央の上下の歯を開かせると、その隙間から出てきた真央の舌が、僕の舌を外へ押し出そうとするように強く押す。僕はその動きに負けないように更に舌で押し返す。
 愛撫としてのキスではなく、戦いのようなキス。
 舌をすばやく退却させて、一瞬相手を見失って突き出たままの真央の舌を、唇ではさみこみ、舌を抜くような勢いで強烈に吸い込むと、真央は喉の奥から「ンググ」と声にならない音を漏らした。
 こんな風に強引にやっちゃ駄目だ。
 この夢を見ている主体の筈の50代の僕の声がかすかに聞こえるが、僕は動きを止められない。
 やがて、真央の目は虚ろになり、抵抗が弱まっていく。
 ……僕は下半身に何も身につけていない真央の股間に顔を埋めて、その中心の小さな突起の形状をなぞるように無我夢中で舌を動かしている。
 もっと正しいやり方がある、と頭の片隅で誰かがささやくが、そのやり方は思い出せない。
 ……思い出せない?
 いや、これをするのは、これが人生で初めての筈だ。
 記憶を持たない子供のように、ただひたすら舌を動かし続ける。
「大丈夫? ちょっと強く入れすぎちゃった?」
 小瓶を鼻に突っ込まれた時の真央の声がリフレインする。
 よつんばいになっている僕のアナルに、真央が装着したペニバンの硬い塊がゆっくりと挿入っていく。
「強く入れすぎちゃった?」
 僕と真央は身体を交換して、僕の女性器に真央の男性器が最初はゆっくり、途中から加速して一気に奥までズンと入って来て、体の内部が震える。
「強く入れすぎちゃった?」
 そんな妄想が暴走する僕のエンジンを動かし続ける。
 これは違う。
 間違った場所で、間違った方法だ。
 そんな声がどこからか響くが、僕は、どうしても行為をやめられない。
 僕は半勃ちの欲棒をその部分に摩り付ける。
 真央のその部分の感触を確認する余裕はない。
 欲棒の先端を真央の突起に押し当てて根本を握った手で細かい振動を与えると、真央の口から短い「んっ」という快感とも苦痛とも聞こえる声が漏れて、僕の欲棒はその声に反応して次第に硬くなってくる。
 余裕も知識も経験もない僕が優位を占めていて、真央の状態や反応を冷静に観察して正確に見極める事はできない。
○渡瀬ミクで自主トレよりこっちの方が断然いい。
○こんな風に何かの力を借りてやるのは正しいやり方じゃない。
○このポーションは原液だから薄めて使わないとダメよ。
 様々な声が意識の中を飛びかう。
 こんな風に硬くなったモノを、いま触れている部分のすぐ下の窪みに挿入する以外の行為は、いまこの瞬間には考えられない。
 完全に硬くなった欲棒を数センチ下に移動させて位置を確認する。
 柔らかい襞をわけいって、ゆっくり挿し入れていく。
 軽く抵抗を感じる場所を先端に感じて、更に進もうとすると、僕はとてつもなく強い力、さっき鏡の前で僕を突き飛ばした真央のそれとは比べ物にならない力で、はるかかなたに突き飛ばされた。

 06
 
 亜嵐くんとやっちゃったのかもしれない。
 キスされたのははっきり覚えてる。
 ものすごく唐突で強引なキス。
 浩司にされた一番ディープなキスより断然すごかった。 
 でも、ここだけの話、押さえつけられて、ものすごく強引にされたのに、嫌だけど嫌じゃない、苦しいけその苦しさがいい、って気が、ちょっとだけしてた。
 私には、いままで気づかなかった、マゾな部分があるって事?
 モンダイはその後。
 その後の記憶が曖昧。
 押し倒されて、激しいキスを延々されて、その後──
 下だけ脱がされて✕ ✕ ✕ ✕ されたような……
 最後には、亜嵐くんのが入ってきたような……
 どうしても、よく思い出せない。
 夕方、目が覚めたら、亜嵐くんはいなくって、服もちゃんと着てた。
 全部済ませてから、パンツはかせて、黙って帰ちゃった?  
 そんな事ってありえる?
 
 亜嵐くんが持ってた小瓶の中身はなんだったんだろ?
 ふざけて亜嵐くんの鼻に突っ込んで、床に転がって、中の液体がこぼれて、すごく独特な匂いがしてたのに、その辺りの匂いを嗅いでもみてもなんの匂いもしないし、染みもない。
 昨日の亜嵐くんは、最初からいつもと違ってて、途中から完全に別人だった。
 夏休みに入ってから、なんかあったのかな?
 私の話をなんでも聞いてくれる、話しやすい先輩だったのに。
 もうひとつ不思議なのは、玄関のドアの鍵が閉まっていた事。
 引き出しの中の予備の鍵はちゃんとある。

 ✕ ✕ ✕ ✕ ✕
 
 やっと亜嵐くんに電話が繋がった。
 昨日は夕方から映画館のアルバイトだったそうで。
 なんとびっくり!
 亜嵐くんは、昨日の事を何も覚えてなかった。
 覚えてなかったどころか、
「多邑の部屋なんて行ってない」
「多邑から電話なんてかかってこなかった」
「昨日の午後は暑くて部屋にいられなかったから、はやめにバイトに行って映画見てた」
 とかなんとか。 
 どういうこと?
 あんな事しておいて、なかった事にした、って事?
 信じられない。
 オトコなんて信じられない。

 07

 目が覚めてからしばらく呆然としていた。
 いま見ていた夢はなんだったんだろう。
 いままで見た事がある夢とは全然違っていた。
 いつもなら、起きてから、トイレ・洗顔・運動と決まったプロセスをこなしている間に頭がまともに働き出すのだが、そんな事をしていると、いま見た夢を忘れてしまいそうなので、できるだけ文字として残して置こうと思って、ベッドからデスクに直行してパソコンのキーボードを叩いている。
 夢の中の僕は二十歳の頃の身体で多邑真央とセックスをしていた。
 げんみつには、欲棒の先端が入ったかどうかという所で目が覚めた。
 数分前に触れていた真央の下半身の中心部分の感触、とろっとろに溶けた温めたバターのような感触が、右手の中指の先端と欲棒の先端にいまもありありとリアルに感じられる。
 こんなに感触がリアルな夢は見た事がない。
 もっとも、こんな身体感覚は、いまこの瞬間の僕の意識が勝手に誇張・増殖しているのかもしれない。
 夢の中で、リアルな感触以上に驚愕していたのは、その瞬間の意識。
 この夢を見ている五十代半ば(いまの僕)の意識、二十歳の頃の僕(夢の中の僕)の意識、それに加えて誰かの意識が、同時に3つのレイヤーのように存在していて、僕はその同時存在性に驚きつつ、それを楽しんでいた。  遂にVRもここまで来た。瞬間の意識や感覚さえ、こんなにリアルに操れるようになった、と思っていた。
 的確な強度と速度と角度で、的確に真央の感度を高めていく〈僕〉の動きは、五十代半ばの僕と二十歳の頃の僕とその双方を総合的に監督している誰か(未来の僕?)の意識の総合が生み出しているうようでもあり、三者の僕がめまぐるしく入れ替わっているようでもあった。そしてそれを、夢の中の僕は、現実(記憶)を超えるリアルを体験できるVRのアプリとして楽しんでいた。
 若い頃に果たせなかった願望、当時好きだった女の子と当時の身体でセックスするVR。これこそ男性が(女性も?)求める究極のVR。だが、ここまでリアルなVRを味わってしまったら、もう現実にセックスする必要はないのではないか。
 こうやって文章にしてみても、夢の中で僕が感じていた驚愕は表現できない。特に、三者の意識が、めまぐるしく入れ替わりつつ、同時に存在している感覚は、言葉で表現できない。
 自分の意識は、もともと自分が思っているほど強固なものではなく、VRが極限まで進化したら、VRによって繋がっている世界と、自分の意識の境界は曖昧になる。
 そんな事も、夢の中で意識していたような気がする。
 そんな事を意識している大局的な僕がいる一方で、同時に目の前の行為にも熱中している僕もいた。どの僕も可能性としての僕で、僕は言葉で定義可能な世界をはるかに超えていたようだった。
 こうして文章を打って、正しい漢字を選んでいる数秒の間に、夢の記憶、夢の中で確かに感じていた肉体感覚はどんどん零れ落ちて希薄になっていく。
 現時点の僕が持っている知識と経験の範囲内で素直に解釈すれば、五十代半ばの僕の奥底にある願望が強烈に顕現した夢、という事になるのだろうが、過去に見ていた夢がアナログのVHSだとしたら、いま見ていた夢は16Kの360VRと表現したくなる程の現実感と臨場感の違いがあった。
 …………。
 言葉で表現しきれない感覚をなんとか言葉に置き換えようとする作業にこれ以上没頭すると、脳が沸騰しそうな感じがするのでいったんデスクを離れた。
 冷たい水で顔を洗う。
 軽い運動をしてシャワーを浴びる。
 ジュースとコーヒーを飲みながら紙の新聞を読む。
 いつものルーティーンでいつもの自分を取り戻したと自分に言い聞かせてデスクに戻り、昨日まで書いた分の最後の方を少し読み返して、書きかけの小説の続きにとりかかかろうとするが、夢の残滓が邪魔をして、キーボード上の手が動かない。
 ひょっとすると、さっき見た夢は実際の記憶で、僕は、本当に多邑真央とセックスしかけて、それを忘れていただけではないのだろうか。
 いや。そんな筈はない。
 あの当時、多邑真央の部屋に遊びに行った時、他の女の子の後輩サークル部員もいて、実際は何も起こらなかった。夢の中の行為に及ぶ可能性があったのは、当時の僕の部屋に多邑真央が遊びに来た時だが、結果的にはほぼ何もなかった。
 これは、何度も繰り返し反芻した事がある確かな記憶……の筈だ。
 雑念と振り払って、仕事に取り掛かろうとしても、どうしても集中できない。
 キーボードを打とうとする指先に感触が蘇る。
 脚を組み替えるとかすかな擦れた先端に感触が蘇る。
 三十分かけても数行しか書けない。
 あるいは、これは、何かを伝える類の夢で、ひょっとして多邑真央に何かあったのだろうか?
 多邑真央とは、大学卒業以来連絡を取っていないので連絡先も判らない。SNSで名前を入力して検索しようして思いとどまった。卒業後、五年十年ならともかく、三十年以上経っている。僕の事を覚えてさえいない可能性も充分ある。このまま、楽しい夢を見て良かった、という事案に落とし込んで自分の中で処理してしまおう。
 すんなり仕事モードには入れそうにないので、この際、いったん仕事は忘れて、逆に当時の想い出に浸る事にする。
 デジタルスキャン済の当時の手書きの日記を引っ張り出して(実際は検索してファイルを開いて)読み返してみると、記憶と違う事が書いてある。
 自分が書いた筈なのに全く思い出せない内容。
『1985年8月13日(火)
 多邑真央から電話、言っている事が意味不明なので、北口にっかつ(注・バイト先の映画館)そばのサ店で話す。
 多邑の言い分は、おとといの午後、僕は多邑の部屋に行って、変な事をした。
「変な事って?」
「だから、キスとか、もっとその先」
「その先ってどこまで」
「覚えてないの?」
 実際に会って話しても電話と同じ話で全く意味不明。
 おとといは、暑くて部屋にいられなかったので、早めにブクロに出て、バイトの時間まで山本奈津子の映画を観てた。多邑の部屋なんて行ってない。』
 デジタルの文書なら、誰かが改ざんした可能性はゼロではないかもしれないが、どう見ても当時の自分の書き文字。
 多邑真央が言っている話は、今朝、僕が見ていた夢の中で起きた出来事に符号するが、それはあくまで夢の話の筈。そもそも、もし多邑真央とこんな話をしたら、少しは覚えていてもいい筈なのに、全く記憶にない。
 どういう事なのだ。
 現実と夢の境目が時空を越えてあやふやになっている……?
 数日後の日記。
『ひょっとすると多邑真央が言っていた事が本当なのかもしれない !?
 さっき見た夢……夢の中の僕は、多邑真央の部屋で✕ ✕ ✕ ✕ した事を、自分の最近の記憶として振り返ってた。多邑真央の身体(肝心なあの部分)の形や感触を反芻していた。とてつもないリアルな夢。そして、昨日までははっきり記憶していた山本奈津子の映画の内容が思い出せない。それどころか、見ようと思っていたのに急な用事で見られなかった、という記憶が、どこからともなく滲み出てくる。夢で見た出来事、多邑真央が言っていた事が本当のような気がしてくる、何がなんだか、よく判らない。』
 またもや夢の話だ。
 ひょっとして、いまこの瞬間の僕も、夢の中にいるのか?
 覚めても覚めても夢の中なら、どうやったら、いまこの瞬間は現実だと認識できるのか。
 とにかく、気を鎮めようと、こんな時の常として、なんでもいいからキーボードに文字を打とうとすると、ノートパソコンの画面が急に真っ暗になった。こんな時にシステムエラーと嘆息して、再起動しようとすると部屋の明かりも消えて真っ暗になった。
 システムエラーではなく停電だったのか。
 デスクの横においてある緊急持ち出し袋のサイドポケットの懐中電灯を取り出してスイッチを押すが明かりはつかない。こんな時に限って電池切れ? そういえばこの懐中電灯も、随分長い間ちゃんと点灯するかどうか確認していない。
 そうだ、スマホのライトだ、と思い出して、デスクの上をまさぐろうとするが、デスクの上には何もない。さっきまで間違いなくあった筈のノートパソコンも、その横に立てかけてあった筈のスマホもない。デスクの天板の妙につるつるした感触がどこまでも続いている。
 どういう事なのだ。これも夢なのか。
 それにしても、停電にしても暗すぎる。
 いまはまだ昼間の筈なのに。
 カーテンを開けると窓の外は漆黒で、「ええっ?」と驚愕するやいなや、その漆黒が部屋の中に入ってきて、視界は全くの暗闇になった。
 根源的な恐怖を感じて、とにかく、いったん座って落ち着こうとするが、数秒前に座っていたチェアはどこにもない。
 そのすぐそばにある筈のデスクもない。
 足の裏に触れている筈の床の感触も失われてくる。
 漆黒の闇に溶けて何もかも失われていく。
 意識も、言葉も、意味をなさなくなっていく。
 やがて、僕と世界の境界は溶界して漆黒と同化した。
 ……。
 これが全ての終わりではない。
 方法はある。
 問題はその方法を思い出せるかどうか。
 思い出したら、もう一度、どこかから、何度でも、やり直せばいい。 〈了〉

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■ドラクエⅢ日誌(続き)
※当時の日記そのまま採録

1988.03.16(水)
ピラミッドに行って〈まほうのかぎ〉をとる。
魔法使いはよく死ぬのでみかわしの服を買うこと(それでも死ぬが)。
特にミイラおとこのつうこんいちげきに注意。
今夜はなんとバグが発生。
〈まほうのかぎ〉その他のアイテムを死ぬ思いで取り、教会に行き、魔法使いを選択すると、
カンダタについての情報コマンド(ウィンドウ)が表示され、何をやっても消えない。 
〈まほうのかぎ〉で開かない扉も存在する。
約2.5時間プレイ(うち1時間はバグで徒労)。

1988.03.17(木)
〈まほうのかぎ〉をどんどん使う。いままで行った所全部。アリアハン〜イシス。
ポルトガの王「くろこしょうを持ってくれば船をやる」。
王からもらった〈おうのてがみ〉をホビットのノルドに見せると東へのぬけみちをあけてくれる。
東の地に入ってバハラタのまち。
くろこしょうの商人の息子と恋人がとうぞくにさらわれている。
更に東にはダーマの神殿があるが、いまのレベル(15程度)では転職させてもらえない。
バハラタのまちの北東の洞窟。
とうぞくとは、またもや、カンダタの事である。
約3時間プレイ。

1988.03.19(土)
ひとくい箱に出会ったら災難と思うしかない。
90程度のダメージを与えてくるので僧侶、魔法使いはひとたまりもない。
ぼうぎょするのがベスト。
カンダタはとにかく異常に強いのだ。
ルカニ(1回しか効かない)スクルト(3回くらいかけること)をかけて、
まず子分を倒し、あとは持久戦。
5〜6ターンひたすら攻撃してやっとこうさんしてくれる。
「ゆるしてくれよ」で「いいえ」を選んだらどうなるのだろう。
バハラタにもどるとお礼に〈くろこしょう〉をくれる。
ポルトガの王に〈くろこしょう〉を差し出すと船をくれる。
ポルトガの南のほこらの男から6つのオーブの話。
陸沿いに南を廻り、東へ。バハラタを通って更に東に行くとジパング。
ジパングの横の洞穴の地下2階にやまたのおろち、これが異様に強い。
ルカニは効かずスクルトを3回かけても全滅してしまう。
はんにゃの面が関係あるのかもしれない。
約3時間プレイ(途中リセットミスで1.5時間ロス)。

1988.03.20(日)
今日は進展なし。
ガルナの搭で行き詰まり、やまたのおろちにはどうしても勝てない。
レベルが低いのか、何かが足りないのか、他を攻めるべきなのか……?
ガルナの搭に関しては何の情報も入手していない筈だが……。
約3時間プレイ(計約24時間)。

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■2024年日記
●2024.08.23(金)はれ
○夕食はゴーヤチャンプルー、カニカマ、スモークタン、納豆、キムチ、味噌汁、ごはん、金麦。
○iphoneで撮影してみると想像以上にハゲ散らかしている。赤い血溜まりのようなのも多数。
襟足とサイドだけ刈り上げにしていれば気付かなかったかもしれない状態。多発性円形脱毛症。
○黒川博行「後妻業」文春文庫
悪いやつがたくさん出てきてどんどん話が進んで面白い。悪人の心理や悪事を行う理由は説明せずに現在形の行動のみ。主要人物の外見描写はほとんどないのに公式文書は妙に丁寧に全文掲載。全く余韻がないぶった切るような終わり方に感心。
○「うどうのラジオ」熊谷アナの「うどうさん」の発音、あいかわらず頭アク(標準語の正解)と「おとうさん」に近いアクセントが混在。別に東北訛りでも良いと思うのでどちらかに統一して欲しい。混在が気持ち悪い。有働アナは「ブルーノ・マーズ」を「ブルー・ノマーズ」と聞こえるような発音も、曲あけは指摘されたのかちゃんとした発音。ラジオは音だけなのでちょっとしたアクセントがどうしても耳に残ってしまう。

●2024.08.24(土)はれ
○夕食は和風ハンバーグ、ねぎとろ、ひきわり納豆味噌汁、ごはん、金麦。
○Match Factory!(3Dパズルゲーム)iPadで最初からやりなおし、スマホでは何度やってもダメだった41あっさりクリア。大きな画面でやる方が断然やりやすい。

●2024.08.25(日)はれ
○夕方近所プール。ロッカーが開かないので水着のままフロントに行ってスタッフに来て貰う。相当強く奥まで入れて力を入れてまわさないと開かない。ウォーキング専用は水深が浅すぎて距離も短いが、メインのフリーレーンはやや深すで泳いでいる人や立ち止まってる人がいて常に確認する必要があって気疲れする。碑小学校のウォーキング専用レーンが一番歩きやすかった。碑小学校のプールは上の階にあるので窓からみはらしが良いのも良かった。
○夕食はピーコックの寿司、魚フライ、揚げなす、ホルモン、越後の辛口、金麦。日本酒を2杯飲むと金麦をそんなに飲まなくても酔う。
○明け方、豆腐、ゆでたまご、焼酎水割り3杯。
○川西蘭「パイレーツによろしく」集英社文庫
大学時代に単行本を2冊持っていて愉しく読んだように記憶していたが、約40年ぶりに再読して、自分でも驚くほど内容を覚えていなかった。愉しく読んだ記憶はもう1冊(多分「はじまりは朝」)の方だったのかもしれない。ベランダに遊びに来る猫を殺す強烈なくだりも全く覚えていなかった。こんなに全編ひとつも覚えていない再読体験は初めて。酒に酔った主人公は住宅街の道端に座ってタバコを吸って電柱に小便をする(P234)。80年代にはそうめずらしくもない出来事だが2024年のいまなら下手すりゃ通報事案。大人に向かって小難しい事を言う主人公の態度に当時は共感していたような気もするが、いまこの年齢で読み返すと、もし20代前半の若者にこんな台詞をはかれたら嫌悪感の方が勝る。自閉症で不能のプログラマー(主人公の友人)は「ふぞろい」本田さんの類似系。当時の流行語「〜ものね」と丸文字をまんま掲載しているのは資料的価値有り(P123)。丸文字も「〜ものね」も流行の源になった作品があった気がするが、当時からどっちもあまり好きではなかった事もあって思い出せない。マチルダが多用する「〜のよ」も多分80年代の流行。「ふぞろい」で石原真理子がよく使っていたが最近は聞かない気がする。この文章を書いているうちになんとなく記憶のイメージのようなものが浮かんできたが、当時は、表層だけを読んで、村上春樹より10歳くらい若い分、よりモダンに、どこにも拠り所がない80年代の青春を描いている、と思っていたような気もする。
○最近20〜30年の記憶は曖昧でも若い頃(15歳〜25歳)の事はよく覚えている、特に大学時代の事はよく覚えていると思っていたが、その記憶自体がもはや怪しい。最近20〜30年に比べれば圧倒的にイベントが多かったので覚えているイベントの絶対数が多いのは間違いないが、日記を読み返すとすっかり忘れている事も多い。50代なかばで急速に記憶力や語彙力が衰えてきた実感があるが、この衰えの中で、反芻されてない昔の記憶はどんどん抜け落ちてしまったのかもしれない。

●2024.08.26(月)はれ/夜中に一時雨
○Match Factory! 92は1回目でクリア。やはりコツコツ消して減らすしかない。そのまましばらくハート尽きるまで延々やってしまう。
○「16:00」が「じろ」に強制変換される問題、google日本語入力の履歴を削除していろいろOFFにしてもダメ。Macのシステム設定からライブ変換や予測変換をOFFにして変換学習をリセットしてもダメ。キーボードから[1][6][:][0][0]と打ち込んでもenterで[じろ]に変換される。謎すぎる。
○ガーデンプレイスのエビスビールのイベント。終了時間ぎりぎりに入って期間限定のビール800円。「ノベルティ」という言葉を思い出すまで約20分かかる。
○夕食は日高屋で冷やし中華をシェアして他2品、瓶ビール、ドラゴンサワー。セブンでミニエクレアとアップルパイ。
○全米オープン1日目。西岡第5セット第1ゲーム全身のけいれんでコートの中で倒れて途中棄権、
第4セットに2本あったマッチポイントはダブルフォルトなどで逃す惜しい試合。もう本当に男子も3セットマッチでいい。5セット5時間とか見る方も大変だし。

●2024.08.27(火)くもり
○またまた寝る前に少しだけMatch Factory!延々やってしまう。125はいまの僕の反射神経では、通常の秒数(1分45秒?)でノーアイテム(無課金)では到底無理そう。このゲームは目と指と脳を激しく使うので寝る前にやる事として一番ふさわしくない。起床後のいつものダンベル運動で妙に左肩が痛い。原因はベッドでMatch Factory!やってる時の左肘をついた寝姿勢と気づく。
○duolingoスペイン語、正確なスペルまで覚えられないし、スマホでタイピングをするのは超絶面倒。書き問題はキャンセルするバージョンが欲しい。
○夕食はいわしの缶詰、キムチ、インスタント味噌汁、ごはん2個、金麦、ライトミール。
○明け方、ゆでたまご、チーズ、ミニハッピーターン2袋、水割り3杯。
○多発型円形脱毛症どんどん進行している。今年の春に丸刈りにした時には襟足の少し上と左眉上の2ヵ所、いずれも直径2㎝程度だったのが、今回約5ヵ月ぶりにほぼ丸刈りにしたら後ろ側だけで5ヵ所、右眉上・右側頭部・頭頂部にもある事が判明。日々拡大して左眉上は最長部5㎝以上で頭頂部とつながりつつある。このペースで広がれば普通のキャップでは隠しきれない部分まで広がりそう。
ほぼスキンヘッドまで短くしてしまおうと思っても、頭頂部は田んぼの畝のごとくでこぼこしているのできれいに刈れない。この年齢なので自らのルックスに対するこだわりなどなくなっているので、
全部抜け落ちてくれるならそれでもいいのだが、いまのようにはげ散らかしている状態は少々憂鬱。
○柳沢きみお「悪の華」kindle unlimited
芸能プロダクションの話。スカウトした人を売り出す話は尻切れトンボもしくはバックストーリー扱い。美形のゲイの少年の話は少しは展開するかと思ったらこれも唐突に終了。いまの芸能界をぶっ壊すとか言って復帰してきた老人はいきなりあっさり死んでしまう。それでも、他の柳沢きみお作品に比べれば脱線・暴走は少ない方で、最後に順子の話に戻ってくるが、やはり、どこかその場の思い付きで書いているような印象。格段驚くような展開はないのに読んでいる最中はなぜか続きを読みたくなり、読み終えるとどんな話だったかよく思い出せず、人物の曖昧な印象のみ残る。ほとんどの柳沢きみお作品に共通する読後感。うまく言葉で説明できないが、他の作品に比べて、画力も展開も設定も、どこかちゃんとしてない、その独特な不安定さがなぜか癖になる。電子版の奥付は電子版の発行年しか記載されていない。オリジナルの紙のコミックスがいつ発行されたのか検索してみると、ゴマブックス全6巻は1996年から発行、kindle unlimitedにある「悪の華 新装版」は全12巻で数が合わない。新装版が紙で出ていたかどうかも不明瞭。「悪の華 新装版」が紙で発行されているかどうかも判らない。その作品が書かれた時期は読んでいる時に結構気になる。デジタル版が出て絶版がなくなるのは良いのだが、原本の掲載媒体掲載時期などは奥付に記載して欲しい。
○全米オープン2日目。大坂なおみ2-0でOstapenko⑩に勝利。試合終了直後に感極まった様子。
ダニエル2-0から逆転負け。Tsitsipas⑪1回戦敗退。

●2024.08.28(水)くもり
○中目黒を少し歩いて図書館で4冊借りて週刊文春コバホークの記事を読む。蔦屋の新刊平積みのほとんどが知らない作家。東急でいつもの日本酒、支払い機がカードを読み込んでくれす3回やり直す。
○夕食は納豆、キムチ、刺身、肉野菜炒め、味噌汁、ごはん、金麦少々、日本酒少々。ライトミール。多発型円形脱毛症があまりにもどんどん進行しているので今日からしばらく節酒してみる。
○深夜iText Expressレインボーカーソルくるくるで保存できなくなる。FirstAid、再起動、Onyxでなんとか治ったようだが新規保存は時間がかかる。いずれこのマシンはそろそろ限界かもしれない(2019年購入)。
○深夜〜明け方、ミニチョコを時々かじって水をちょくちょく飲み、円形脱毛症のツボを押す。
○西武、ロッテに開幕から16連敗。開幕からの同一チームの連敗として史上最多。

●2024.08.29(木)くもり/雨
○起床後2〜3時間エアコンを切って窓を開けて上半身裸で過ごす暑熱順化を約2週間続けるうちに段々暑さに慣れてきて、扇風機の風を顔のあたりに当てれば32℃くらいまでは平気になってきた。
○仕事が一段落した所で円形脱毛症ツボ押し。約15分ウトウト。
○夕食はピーコックのそば、スモークハム、キムチ、コロッケ1個。
○全米オープン、Alcaraz2回戦敗退(0-3)。大坂なおみ2回戦敗退(0-2)。

●2024.08.30(金)雨
○ベッドで柳沢きみお、畑中佳樹、村上春樹、黒川博行読む。
○ピーコックで買った水と水道水を両方冷やして飲み比べてみる。味の違いは全然判らない。
○夕食は魚の西京焼き、レバー、オクラんの胡麻和え、納豆、豆腐の味噌汁、ごはん、金麦ひとくち。
○明け方、時間延長アイテムが出たのでMatch Factory!。125は結局時間延長アイテムを使わずにクリア。その後溜まっていたライフなどで延々。。
○全米オープン、Đoković②3回戦敗退(1-3)。※②=第2シード

●2024.08.31(土)くもり
○日本時間15:00Zverevの試合まだやっている。時差13時間。現地は深夜2:00。
○夕食はカレーライス、アボカドサラダ、昨日のレバー、金麦ひとくち。アド街新大久保は韓国ネタのオンパレード。
○またまたMatch Factory!延々2時間近くやってしまう。中毒。到底無理だと判っていても何度もやってしまう(156)、100G所有していた事に気付いて60秒時間延長、落ち着いてやればクリアできそうだったのにあせって失敗。時間制限がなしでゆっくり自分のペースでやれればちょっとした気分転換・頭の体操にはなりそうだが、現状ではどんどんあせってドキドキするだけで、僕のような年齢の人間には体に悪そう。

●2024.09.01(日)くもり/雨
○Match Factory! iPadで無理筋156をやった後、またまた延々iphone8でやってしまう。昨日から通算して10時間以上やっている。時間の無駄。右手手首は腱鞘炎気味。
○札幌2-0川崎F後半途中からiPadで。可能性があるのは多分川崎F、京都、柏、湘南まで。14位川崎Fとの勝点差は9。残り9試合いよいよ正念場。
○夕食はグリルチキン、卵焼き、冷奴、味噌汁、炊き込みご飯2杯弱、金麦ひとくち。

●2024.09.02(月)
○あれほどやめるつもりだったMatch Factory!を寝る前に2時間以上やってしまい、目と脳は刺激で覚醒して体は睡眠を欲しているような状態で昼頃まで眠れない。結局昼過ぎから約4時間睡眠。
○夕食はたまごかけご飯、ライトミール、チーズクラッカー。
○またまたお茶をこぼす。これで今年4回目? 充電ケーブルをつけたままで扇風機を引っ張ってこぼすのも2回目。

●2024.09.03(火)雨/くもり
○珍しく途中で一度も目が覚めずに約5時間睡眠。
○夕食は焼鳥缶詰、キムチ、漬物、味噌汁、ごはん2個、金麦350。デザート2種類。節酒しても効果はないようなので今日でやめる。結局1週間も続かなかった。
○黒川博行「国境」文春文庫
前作「疫病神」の産廃と同様に、今作の北朝鮮と中国の朝鮮自治区に関しても、かなりの取材をしている印象。巻末に掲載されている参考文献は約50冊。細部にリアリティが感じられる全5話の実録風ドラマの趣。一級のエンタメ。詐欺の主犯・石井が逃げ出す時に手がかりなるモノをゴミとして残しておいたのは小説的ご愛嬌。もっと言えば、石井が本当に用心深い男なら一切のモノを残さないだろうし、それ以前に飲食店で本名や住所を明かしたりもしないだろうとも思うが、エンタメ小説に対してそこまでつっこむのは野暮。または、石井は捕まって本当に足を洗いたいと自分で気付かない深いレベルで思っていて(半ば無意識に)手がかりなるモノを残していた、という可能性もあるかもしれない。撃たれた所も死体も見てないのに二宮が何度も「桑原が死んだ」と言うのは、これはもう、一言、小説的お約束。
○全米オープンZverev④QF敗退。

●2024.09.04(水)はれ
○今日も寝坊で出遅れ。どんなに遅くとも13:00には起きないと映画にも行けない。その為には寝る時間を早めるしかない。3:00には仕事を終えて4:00〜5:00の間に就寝、11:00〜12:00起床が理想。
○夕食は鮭野菜炒め、唐揚げ、納豆、キムチ、ごはん、金麦500。
○「大竹まこと ゴールデンラジオ」オープニングトーク、「さんま食べたんだって?」というフリに「そうそう、スーパーで買ったら高かったんですよ、さんま」とすっと本題に入ればいいのに、高校生の息子からラーメン食べて帰るので夕食いらないと連絡があったので、じゃあ夕食どうしよう、スーパーで何か買おうと思って云々という前段をくっつける意味が全く判らない。こういう不要な部分を付け加えるのは圧倒的に女性が多い気がする。やはり男性と女性では会話に関する脳の使い方が違うのだろうか。意味がない内容を時系列で延々語ってオチがない、という話ができるのは子供に言葉を教える為に遺伝子に刻み込まれた女性ならでは能力、という説をどこかで聞いた気がするが、この説が正しいのだとすれば、この遺伝子のせいなのかもしれない。
○「上田と女が吠える夜」腕回しチャレンジ、成田凌はしっかり指を組んでいるが上田は最初からあまり組んでなくて、通す瞬間はぎりぎり触れている程度まで離しているようにも見える(敬称略)。
○全米オープンSinner①3-1Medvedev⑤(QF)。Sinnerの相手はイギリス人、もう片方のSFはふたりともアメリカ人選手。女子もアメリカ人選手がふたり残っている。アメリカ勢の復活の始まりか?

●2024.09.05(木)はれ
○昨夜0:00頃20〜30分ウトウトしたので眠気が訪れず、7:00頃までデスク、眠りについたのは8:00頃、12:00頃のアラームで起きてはみたが、顔を洗っても運動してもシャキっとしない。やはり5〜6時間は眠らないとムリそう。
○ガーデンプレイス方面散歩。気温は随分マシになったがそれでも30分も歩けばびっしょり汗をかいてくる。陽が短くなってきて18:30でまっくら。ガーデンプレイスは奥の方はガラガラだが入口付近は混雑していてベンチも相当埋まっていた。ガーデンプレイスの坂を下ってピーコックが見えてくるのは、以前なら洗足方面散歩から遊歩道で戻ってきて西小山東急が見えてくる感覚。ピーコックは今日も米の棚は空っぽ。
○夕食はざる中華、えびにら饅頭、金麦350、ライトミール、チーズクラッカー。食後約30分ウトウトするも眠気取れず結局約3時間仮眠。
○iPadとFireTVstickのDAZNアプリ、アプデしたら手間が増えた気がする。配信は電源と数字ボタンの2アクションで見たいチャンネルが表示できるテレビ放送に比べて必要な手間が多すぎる。現状は①テレビの電源②外部入力ボタン②FireTVstick起動③十字ボタン何度か押してDAZN選択④十字ボタン何度か押して見たいコンテンツ選択、③④は押下する回数は最低3〜4回なのでアクション数としては軽く10を超える。理想はFireTVstickが僕の視聴傾向をあらかじめ分析して事前バッファして、FireTVstick立ち上げと同時にその時一番見たい筈のコンテンツを即再生。今日の19:30頃ならFireTVstickの左上電源ボタンを押せば0,1秒で巨人vsヤクルトLIVE、リモコンの十字ボタン上を押せば0.1秒で横浜DeNAvs広島LIVE(次に見たい筈のコンテンツ)が理想。これくらいできるようになって初めてテレビより便利になったと言えるのでは。もちろん究極の理想は一切合切脳波で操作。
○セもパも.300以上はひとりだけ。パは.280以上は3人しかいない(セは9人)。両リーグとも首位打者が.300以下になる可能性も充分ありそう。

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